DT880

音質
 やや高音より。低域は、厚みはそれほどないが、量は十分。質的には柔らかい感じ。中域はしっかり聴こえてくるし、変な癖もない。高域はやや細く硬い感じで、量も十分出る。
 分解能、音場感ともになかなか良い。原音忠実性は悪くない。エッジはややきつめだが、適度な刺激として楽しめるレベル。
 明瞭さはそれなりで、暗めの音調。音の鮮やかさは悪くない。厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはかなり良い。非常にウォームで暗い音調ながら、刺激的で飽きさせない。暗い音調というのと矛盾するようだが、ある種の爽やかさがあるように感じる。ノリの良さと繊細さを非常に高いレベルで両立させている。響きは適度。beyerdynamicの中ではかなりおとなしい部類に入るようだが、刺激的な部分があるのは確か。ジャズに合うと言われているのに思わず納得する音。
 弦楽器は繊細さと心地よさを併せ持っており、原音の実体感も十分。思わず聴き入ってしまう。金管楽器は非常に鮮やかで、勢いや力強さがある。打ち込み系の音の表現はいまいち。中高域の鮮やかさは悪くないのだが、低域は締まりが足りない。

装着感
 良好。側圧は普通。ヘッドバンドはあまり柔らかくないので長時間使用すると頭頂部が少し痛くなる。また、ヘッドバンド調節の固定が多少しづらい。
 イヤーパッドは耳をすっぽり覆うサイズで、左右方向の角度調節があまりできないがほとんど気にならない。材質はしっとりした布製で、なかなか心地よい。
 ハウジングとアームが大きいため視界に入るのが気になる。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪いが、セミオープンのため普通の開放型よりは良い。
 デザインや作りが悪いとは思わないが、イヤーカップを支えるアームが金属製で手荒に扱うと手が痛く、イヤーパッドも肌触りは良いのだが光沢があり見た目は微妙。インピーダンスが高く感度も低いため音量は取りづらい。延長コードとしっかりした収納ケースが付属しているが、この収納ケースは扱いを間違えると怪我をしそう。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、硬くて癖が付きやすいため扱いづらい。イヤーパッドのサイズは、外周104mm×104mm、内周58mm×58mm、深さ20mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
5m延長コード
収納ケース



参考
不定期コラム『第8回 10万円以下の高級ヘッドホン比較』
不定期コラム『第19回 収納ケース特集』
不定期コラム『第36回 周波数特性のグラフと実際』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

HPとHPAの相性『DT880』

周波数特性グラフ


比較メモ
DT770PRO
全体的に非常に近い音。DT770PROの方が低音の厚みがあるが、超低域はDT880の方が出る。また、ハイハット等の高域の鳴らし方の癖が似ている。低域の抜けと高域の透明感がDT880の方が若干良い印象。それによってDT880はDT770PROと比べてある種の空気感が楽しめる。分解能、音場感ともにほぼ互角。どちらも原音にかなり近いが、DT880の方が低域の自然な抜けや弦楽器の繊細さで一歩勝る。エッジのきつさ、聴き疲れのしやすさはほぼ同レベル。明瞭さはほぼ互角だが、超低域が強いソースではDT880の方が曇ってしまうため悪く、チェロやベース等の一般的な低域が強いソースではDT770PROの方が悪い。基本的にはどちらも非常に鮮やかで刺激的な音調。ヴォーカルの艶っぽさや温かみはほぼ互角。ソースによってはサ行の音がややきつく感じるところや、擦れ具合など非常に近い。どちらもノリの良さと繊細さを持ち合わせているが、低域の厚みがあるのと音自体にやや粗があるせいかD770PROの方がノリが良く感じる。響きはほぼ同じだが、低域を大音量で鳴らすとDT770PROは密閉型特有のこもり感が気になる。前述のとおり弦楽器の表現はDT880が勝っているが、金管楽器の美しさは互角で、どちらも非常に良い。得意分野はどちらもジャズだが、クラシックや女性ヴォーカルものもなかなか美しい。

DT860
DT860の方が若干低音より。低域はDT860の方が厚みや弾力のある鳴らし方で、量も若干多いように感じる。中域はDT860の方がややうわずり気味ではっきり聴こえてくる。中高域はDT860の方が目立つが、高域はDT880の方が細く高い音を鳴らす。分解能、音場感、原音忠実性すべてDT880の方が上。細部の描写はDT880の方がかなりうまいし、原音に近い。音場は、DT880の方がやや耳から離れたところで音を鳴らすおかげで把握しやすい。DT860の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはDT860の方が上。厚みはDT860の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはDT880の方が上。ノリの良さならDT860、繊細さならDT880。響きはDT880の方が豊か。DT860の方が音が粗く、サラサラした質感。DT860は明るく爽やか、DT880はしっとり落ち着いた鳴らし方。ただし、どちらも高域が刺激的な点は似ている。弦楽器はDT880の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はDT880の方がしっかりと安心できる鳴らし方。DT860はDT880と比べるとチープに感じる。打ち込み系の音の表現はDT860の方がうまい。厚みや切れで勝っている。得意分野はDT860がポップス、DT880がジャズ。使い分けるなら、明るく楽しみたいときはDT860、そうでなければDT880。

DT990PRO
かなり似た音だが、DT880の方がフラット。低域は、特に超低域がDT990PROの方が強く、大抵のソースでは一段低い音を鳴らすように感じる。高域は量はそれほど差がないが、DT990PROの方が細い。分解能、音場感はほぼ同等。原音忠実性はDT880の方がやや上。DT990PROの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さは低域が弱い分ややDT880の方が良いように感じる。音の鮮やかさはほぼ互角。厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらも暗い音調でありながら高域が刺激的なのは良く似ている。どちらかと言えばDT990PROの方が荒削りでノリが良いように感じる。響きはどちらも適度。DT880の方が安心して聴ける。弦楽器はほぼ互角だが、低い楽器はDT990PROの方が心地よく楽しめる。金管楽器はどちらも非常に高く鮮やか。ただ、DT990PROはやや音が割れすぎか。打ち込み系の音の表現はどちらもあまりうまくないが、どちらかと言えばDT880のほうがうまい。得意分野はどちらもジャズ。使い分けるなら、単に低域が欲しいときや、高域が刺激的でも構わない場合にはDT990PRO、それ以外はDT880だろう。

HP1000
HP1000の方が低音より。低音はHP1000の方が出るが、高音はDT880の方が出る。分解能はDT880の方が良い。音場感はほぼ互角。原音忠実性ではDT880の方が一歩上。どちらもエッジが若干きつめだが、刺激として楽しめるレベル。明瞭さはDT880の方が上。HP1000は低域が支配的で明瞭とは言えない。ただし、それでもハイハットなどの高域は非常に良く聴こえてくる。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらもなかなか良いが、どちらかと言えばHP1000が良い。DT880はさわやかで刺激的な音調だが温かみはある、HP1000は温かみと刺激を両立した音調。どちらもノリが良いのだが、音の伸びが良いのとウォーム過ぎる嫌いがあり打ち込み系の曲には合わない。音の厚みはともかくスピード感に欠ける。響きはDT880はあっさりめ、HP1000は豊か。弦楽器はほぼ互角。金管楽器はDT880の方が良い。得意分野はどちらもジャズで、ジャズならDT880の方が一枚上手。HP1000は温かみと刺激を両立させ、しかも女性ヴォーカルが非常に美しいので、女性ヴォーカルをじっくり聴き込むのに適していると思う。

K701
DT880はやや高音より、K701はかなりフラット。低域は全体的にDT880の方が出る。質感的にはDT880の方が柔らかい。中域はどちらもはっきり聴こえてくるし癖もない点は良く似ている。高域はDT880の方が高く硬い音を鳴らすが、粗がある。こうして見ると、この2機種に限ればDT880の方がドンシャリ。分解能及び音場感はほぼ互角。DT880の方が細部の表現が優れているように感じるが、これはサラサラした質感で付帯音があるせいでもあるため、厳密にはどちらが上とは言いがたい。原音忠実性はK701の方が上だが、原音の粗はDT880の方が感じられる。DT880の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはK701の方がやや上。音の鮮やかさは、DT880の高域がかなり目立つためそこに目が行きがちだが、それを除けばほぼ互角。厚みはK701の方がややあるように感じるが、これはK701の方がやや芯の通った音であるためにそう感じる部分もあるし、それほど差はない。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはDT880の方が上。どちらもノリの良さと繊細さを高いレベルで両立させているが、総合的に見るとどちらにせよK701の方が若干上のように感じる。その代わり、DT880にはK701にはない味わい深さがあるように感じる。響きはDT880の方が豊か。DT880は長所と短所があるのに対して、K701はとにかく無難な印象。弦楽器はK701の方が癖のない表現だが、DT880のサラサラした質感や低域の量感も素晴らしいものがあるので、ソースや好みによって評価が分かれるところだろう。金管楽器はDT880の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現は、低域が出る点ではDT880の方が良いように感じるが、それ以外の点についてはK701の方がややうまいように感じる。ただし、どちらにしてもそれほど相性が良いとは言えないだろう。得意分野はDT880がジャズ、K701がクラシック。使い分けるなら、ジャンル云々よりも、刺激が欲しいならDT880、無難な方が良いならK701という方法の方が良いだろう。

PROline2500
PROline2500の方が低音より。超低域、低域ともPROline2500の方が出る。PROline2500は厚み・量ともに十分、DT880は厚み・量ともに必要量は出るがそれほどでもない。高音はどちらもしっかり出るのだが、ややDT880の方が強い。分解能はDT880の方がやや良く、音場感はPROline2500の方がやや良い。原音に近いのはDT880。DT880は全音域に渡りかなり原音に近いが、PROline2500は逆に全音域にわたりかなり味付けされている。どちらもエッジがきつめだが、DT880の方がおとなしい。PROline2500はサ行の音がかなり痛いが、DT880はそんなことはない。高音よりであることもあり、DT880の方が明瞭に感じる。温かみやヴォーカルの艶っぽさはPROline2500の方が上だが、むしろPROline2500は暑苦しく、DT880は程よい温かさに感じる人も多いかもしれない。PROline2500は非常にノリが良く、DT880は程よいノリの良さという感じ。響きはPROline2500はかなり豊か、DT880は適度。弦楽器、金管楽器ともにDT880の方がやや上の表現力。使い分けるならジャズやクラシックはDT880、ポップスやロックはPROline2500になる。

SR-225
DT880の方が超低域が出るが、それ以外はかなり近い。どちらも高域を綺麗に出してくれるが、SR-225の方が若干高い。低域の厚みはSR-225の方がある。分解能及び音場の明確さはほぼ互角だが、音場の広さではDT880の方が上。DT880の方が原音に近い。どちらもエッジがきつめでやや聴き疲れするが、DT880の方がまだおとなしい。明瞭さや音の鮮やかさ、厚みはSR-225の方が若干良いようだが、両機種ともこの点は非常に良い。DT880の方が温かみがありヴォーカルも艶っぽい。これはDT880に水気があるだけでなく、SR-225が乾いているため。ノリの良さではSR-225、繊細さではDT880といった感じだが、どちらも刺激的ではある。響きはDT880の方が豊か。SR-225は音の立ち上がりが良い上、非常に切れがあり、抜けも良い。弦楽器は全般的にDT880の方が繊細で自然かつ温かみがある。金管楽器はほぼ互角で、どちらも非常に魅力的。低域のふくよかさが欲しいならDT880、トライアングルを聴きたいならSR-225。打ち込み系の音の表現は、両機種とも得意ではない。SR-225は抜けが良すぎてスカスカになってしまい、DT880はウォームな感じになってしまう。得意分野はSR-225はロック、DT880はジャズ。使い分けるならロックはSR-225、それ以外はDT880となるだろう。SR-225はソースによっては安っぽい音を鳴らすが、DT880はそんなことはない。

T1
どちらもやや高音より。低域はDT880の方が若干量が多い。T1の方が締まりや制動が感じられる。DT880の方が薄く曇ったような質。重心の低さはほぼ同レベル。中域はT1の方が若干明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はT1の方が若干量が多い。T1の方が硬く明るい質で目立つ。分解能はT1の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は、広さはほぼ同レベル、明確さはT1の方が上。T1の方が見晴らしが良く把握しやすい。原音忠実性はT1の方が若干上。周波数特性上の癖のなさは大差ない。原音の粗や生っぽさはT1の方がやや感じられる。エッジはT1の方が若干きつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろT1の方が若干鋭く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはT1の方が若干上。厚みはT1の方が若干ある。温かみはDT880の方がやや感じられる、ヴォーカルの艶っぽさは微妙。ヴォーカルは、DT880の方がややスモーキー、T1の方がやや擦れやリップノイズを出してくれる。T1の方がやや明るくノリが良い。切れやメリハリがある。響きはDT880の方が若干豊か。T1の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器は、DT880の方がやや心地よい、T1の方がやや生楽器らしさが感じられる。金管楽器はT1の方がやや鮮やかで、金属的な質感を出してくれる。打ち込み系の音の表現はT1の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、聴き疲れのなさや低域の量を求めるならDT880、分解能や高域の量を求めるならT1。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第7回 So What/Miles Davis「Kind of Blue」より
第14回 ヴィオラ・ソナタ 作品147/ショスタコーヴィチ
第24回 The Boy With The Gun/David Sylvian「Secrets of the Beehive」より
第28回 New Kid In Town/Eagles「Hotel California」より
第36回 Change The World/babyface 「a collection of his greatest hits」より
第40回 For the love of you (Vanski's superdooper dance mix)/Candy Dulfer「For the love of you」より
第52回 交響曲第4番「ロマンティック」/ブルックナー
第58回 悪魔を憐れむ歌/ローリング・ストーンズ「ベガーズ・バンケット」より
第67回 Astaroth/「SHADOW HEARTS U Original Soundtracks」より
第69回 夢ノエンアレ/PE'Z「千歳鳥」より
第77回 EXEC_PHANTASMAGORIA/./「月奏〜ツキカナデ〜 Artonelico Hymmnos concert side 紅」より
第80回 「必殺仕掛人」 〜必殺!/「必殺 The BEST」より
第85回 若葉の頃 First of May/須川展也「sugar」より
第95回 Capone/the band apart「Eric.W」より

曲別HP探索2
第10回 なごり雪/イルカ「イルカベスト」より
第16回 Parachute/トクマルシューゴ「EXIT」より
第34回 蒼氓/山下達郎「僕の中の少年」より
第36回 色彩のブルース/EGO-WRAPPIN'「色彩のブルース」より
第42回 Dance With My Father/Luther Vandross「Dance With My Father」より
第48回 異教徒の群れ/「グラディエーターオリジナルサウンドトラック」より
第56回 Whatever/oasis「Whatever」より
第57回 Don't Know Why/Norah Jones「Come Away With Me」より
第58回 濃/ゆず
第64回 はじめて/一青窈
第71回 ミラクルペイント/OSTER project feat. 初音ミク「OSTERさんのベスト」より
第72回 Different Trains/Steve Reich「Different Trains」より
第84回 平調越天楽残楽三返/「雅楽「越天楽」三調」より
第91回 ヴァイオリン協奏曲/ブラームス
第94回 新大阪/ゴスペラーズ「G10」より
第96回 襟裳岬/森進一「森進一 ベスト」より





※生産終了。後継機はDT880 Edition 2005。外観や付属品が変更。音質も多少異なる。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 半開放 5Hz〜35kHz 96dB 250Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
270g - 3m 片出し 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4.5 4 2 2 4 1 均(高) 29800円
※生産終了。後継機はDT880 Edition 2005。

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公開日:2004.11.28