第84回 平調越天楽残楽三返/「雅楽「越天楽」三調」より

 今回取り上げるのは雅楽、平調越天楽残楽三返です。演奏は宮内庁式部職楽部で、録音年は明記されていませんがおそらく1970年頃だと思われます。古めの録音ですが、ノイズはなく各楽器もきちんと聴き取れます。
 越天楽は雅楽の演目で、雅楽の曲の中で最も有名なものの一つとして知られています。平安中期に唐から伝わったという説や日本で作られたという説があり、由来ははっきりしません。使われている楽器は笙、篳篥、龍笛等です。宮内庁式部職楽部とは宮内庁の内部部局のひとつで、雅楽の演奏・演舞を担当しています。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、今回はリクエストされた曲ではないので私が決めたいと思います。楽器の質感をきちんと出してくれることと、違和感なく聴けること、今回の曲のゆったりした感じが損なわれないことの三点を重視したいと思います。


・1台目 APHN-AC30(VOX)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの点についても特に問題ないと思います。質感だけでなく音色にもあまり癖がないため、違和感なくすんなり聴ける感じです。
 他にはATH-TAD500、CPH7000、DT231PRO、HD449、PRO DJ100等で聴いてみました。ATH-TAD500は悪くないのですが、篳篥の音色が若干明るいせいかやや違和感があります。CPH7000は篳篥の音色が明るすぎてそればかり聴こえてくる感じです。DT231PROは楽器の質感を出してくれることは出してくれるのですが、全体として雅楽ではなく別の音楽のような雰囲気になってしまう違和感があります。HD449は違和感なくすんなり聴ける点は良いのですが、楽器の質感はあまり出してくれません。PRO DJ100は楽器の質感は出してくれるのですが、あまりゆったりした感じではありません。
 不満点は特にありません。全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 SRH840(SHURE)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの点についても特に問題ないと思います。1台目と比べると一つ一つの楽器がしっかりしていて存在感がある印象です。
 他にはHA-MX10-B、K612PRO、MDR-CD900ST、MDR-MA900、MUSIC SERIES ONE等で聴いてみました。HA-MX10-Bは楽器の質感は出してくれるのですが、篳篥の音色がやや明るく目立ちすぎる感じです。K612PROは最後までSRH840と迷いましたが、SRH840の方が若干楽器の質感をきちんと出してくれるように感じられたのでそちらにしました。MDR-CD900STは悪くないのですが、やや聴き疲れしやすいせいか違和感が残ります。MDR-MA900は楽器の質感は出してくれるのですが、あまりゆったりした感じではありません。MUSIC SERIES ONEは悪くないのですが、篳篥の音色が若干明るいせいかやや違和感があります。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・3台目 K701(AKG)
 色々聴いてみた結果これになりました。最初に書いた条件についてはどれも問題ないと思いますが、どちらかと言うと楽器の質感をきちんと出してくれると言うよりは違和感なくゆったりした感じで聴ける傾向だと思います。今回の曲はヘッドホンによっては篳篥の音色が明るく目立ちすぎたり違和感があったりすることが少なくないのですが、K701はそういうことがありません。1、2台目と比べると音場が広くこもり感がないという意味で更に聴きやすいです。
 不満点は特にありません。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 更に色々聴いてみた結果これになりました。最初に書いた条件についてはどれも問題ないと思いますが、3台目と比べると若干楽器の質感を出してくれる傾向で、そのぶん聴き疲れしやすい印象です。
 他にはHD800、SR-007+SRM-717、SRH1840、T1等で聴いてみました。HD800は悪くないのですが、篳篥の音色が若干明るいせいかやや違和感があります。SR-007+SRM-717は独特の質感のせいかやや違和感があります。SRH1840はなかなか良いのですが、3、4台目と比べると篳篥の音色が若干明るいせいかやや違和感があります。T1は楽器の質感は出してくれるのですが、あまりゆったりした感じではありません。

・5台目 MDR-EX1000(SONY)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。あまりゆったりした感じではありませんが曲本来のものを損なってしまうほどではありませんし、楽器の質感をきちんと出してくれる上、違和感なく聴けます。総合的に見てこれがベストだと判断しました。色々と聴いてみたのですが、ER-4Sはあまりゆったりした感じではない、Image X10は楽器の質感をあまり出してくれない、SE535は全体的に曇っているような感じでやや違和感がある等の不満がありました。
 他にはUE400VIとZH-DX200-CTが良かったです。違和感なく聴けます。


 今回は篳篥の音色が予想外にシビアでこのような結果になりましたが、小音量だとそこまで問題にならないのでまた違った結果になってくると思われます。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。最初に書いた条件を最も満たしているように思われます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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