第16回 Parachute/トクマルシューゴ「EXIT」より
トクマルシューゴは日本のミュージシャンです。様々な楽器に加えて玩具等の非楽器も自在に操り、オシャレで聴きやすく色彩感溢れる音楽を紡ぎ出します。元々海外のインディーズレーベルでデビューしたこともあってか、海外での評価が高いようです。
今回取り上げるのは2007年発表の3rdアルバム「EXIT」の1曲目です。柔らかいヴォーカルとエッジの丸い流れるようなギターが特徴です。理屈ではなくただ感性に身を任せて聴きたくなるような印象を受けます。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。ヴォーカルが柔らかく心地よく聴こえること、ギターのエッジが適度に立っていてしっかり聴き取れること、明るすぎず重すぎず曲全体に一体感があることの三点を重視したいと思います。それから、今回の曲は高域が少なめで全体的に曇り気味なのですが、この点が気にならないように聴きたいのかそれとも曇りまで含めて魅力と考えてそこまで込みで楽しみたいのかによって選ぶヘッドホンがだいぶ変わってくると思います。今回は適度なバランスのところを狙っていく方針です。
・1台目 SE-M870(Pioneer)
前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。特にどの点が良いというわけではなく、すべての点についてある程度高いレベルで満たしてくれる印象です。それ以外の点についても、バランスが良く特に欠点や違和感は見当たりません。どちらかと言うと曇りまで含めて楽しめるような感じです。SE-M870は高域の癖が気になることも多い機種ですが、今回の曲は高域が少なめなこともあってかほとんど気になりません。
他にはHD215、HP-RX900、MDR-XB700、UR/40等で聴いてみました。HD215は明るすぎて一体感がないように感じたので外しましたが、SE-M870では曇りが気になるという人には良いと思います。HP-RX900はヴォーカルに変な芯が通っている上に擦れが気になります。MDR-XB700は悪くないのですが、SE-M870と比べるとヴォーカルがやや埋もれ気味な点とエッジが丸すぎる点が不満です。UR/40は最後までSE-M870と迷いましたが、悪い意味で若干曇っていてエッジの表現でもやや劣るように感じたので外しました。
不満点は、もう少し音場が広くこもり感がない方が良いと思われる点です。
・2台目 RP-21(Equation Audio)
1台目の不満点を踏まえて選びました。比較的1台目に近いバランスを保ちつつ、音場が多少広くなってこもり感が気になりにくくなります。ヴォーカルの表現は1台目同様ある程度柔らかい感じです。ギターは1台目よりややメリハリがあり、しっかりと鳴らしきるような印象です。1台目から素直にランクアップを考えるとこれになると思います。
他にはHD280Pro、HP-AURVN-LV、HP-M1000、SE-A1000等で聴いてみました。HD280Proは、音場は広いですしエッジの表現も良いのですが、ヴォーカルは低いところが削られたような感じで柔らかさに欠けますし、曇りまで含めて楽しめるような感じではありません。HP-AURVN-LVは最後までRP-21と迷いましたが、ヴォーカルの線が若干細い点が気になったので外しました。HP-M1000はなかなか良いのですが、1台目の不満点を改善することはできませんし、1台目と比べて特にどこが良いということもなくわざわざ選ぶことはないという印象です。SE-A1000は音場が広くて抜けが良く爽やかでこれはこれで楽しめるのですが、1台目と比べると一聴して違和感がありますし、ヴォーカルに変な芯が通っている上に擦れが気になります。
不満点は特にありません。全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。
・3台目 DT880(beyerdynamic)
2台目であまり具体的な不満点がなかったので、最初に書いた条件を最も満たしているようなものを探した結果これになりました。特にヴォーカルは柔らかく心地よいです。ギターのエッジも適度に立っています。1、2台目と比べると若干暗い傾向ですが、十分"明るすぎず重すぎず"と言える範囲内ですし、一体感という意味では最も良いように感じます。音場が広く全体的にゆったり伸び伸びと聴けるような余裕のある鳴らし方である点も好印象です。バランスが良く特に欠点や違和感は見当たりませんし、曇りまで含めて楽しめるような感じです。
不満点は特にありません。2台目でも十分満足でしたが、更に満足度が高い印象です。ただ、これ以上暗いと今回の曲には合わなくなってくると思います。
・4台目 PROline750(ULTRASONE)
いくつか聴いてみて、独特の相性の良さ、魅力があると感じたので選びました。一つ一つの音に存在感があり生き生きしています。今回の曲を聴くのに躍動感がそれほど大事だとは思っていませんでしたが、PROline750で聴いてみてそういう聴き方もおもしろいと考え直しました。ヴォーカルはややざらつくものの柔らかくそれなりに聴けますが、それよりもギターが非常に目立つのが印象的です。実体感がありエッジもしっかり立っています。当然ながら一体感という意味ではいまいちですし、総合的に見て3台目には及ばないと思いますが、それでも人によっては非常に魅力的に感じるのではないかと思います。
他にはATH-AD2000、K701、KH-K1000、RS-1等で聴いてみました。ATH-AD2000はそれほど悪くはないのですが、ヴォーカルに不要な芯が通っているような感じが気になります。K701は最後までDT880と迷いましたが、PROline750と比べるとヴォーカルがやや硬く、ギターのエッジの表現もいまいちに感じたので外しました。とは言え、PROline750とは別の意味で独特の相性が良さがあるのも確かで、人によってはK701が最も良いと感じるのではないかと思います。今回の曲の雰囲気やセンスの良さがストレートに感じられる印象です。KH-K1000は他の機種と比べて薄く引き延ばしたような感じで、すべての音が主張してこないような鳴らし方です。RS-1は音そのものは良いのですが、狭い空間でガチャガチャ鳴らしている感じで一体感がありません。
・5台目 Super.fi 5 Pro(Ultimate Ears)
最初に書いた条件を最も満たしていると感じたので選びました。特にどこが良いというわけではないのですが、ヴォーカルの柔らかさ、ギターのエッジ、曲全体の一体感どれも平均以上だと思います。色々と聴いてみたのですが、ER-4Sはヴォーカルがやや硬い、Image X10はなかなか良いもののSuper.fi 5 Proと比べると音場が狭いぶん頭の中でゴチャゴチャと鳴らしている感じが気になる、m5はヴォーカルが不自然な上に低域が変に目立つ、Westone3はヴォーカルは柔らかくて心地よいものの全体のバランスが重すぎる等の不満がありました。
他にはCX95とSHE9700が良かったです。ヴォーカルは比較的柔らかく聴きやすいですし、明るすぎず重すぎず曲全体に一体感があります。
今回選んだヘッドホンはどれもかなり良かった印象ですが、選ばれなかったUR/40、HP-AURVN-LV、K701にしてもなかなか魅力的だと思います。また、今回の曲はフィーリングに合うかどうかが非常に大事になってくるように思います。なので、あまり結果にとらわれずに「自分の好みに合うのはどれか」という視点で選んだ方が良いと思います。
ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が合うと思いますが、ヴォーカルを柔らかく鳴らして欲しいならAT-HA2002も良いと思います。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴は下のamazonのページで。
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