第64回 はじめて/一青窈

 一青窈は日本や台湾で活躍する女性歌手です。「もらい泣き」や「「ハナミズキ」のヒットで知られます。
 今回取り上げるのは2008年発表のシングル「はじめて」です。エレキ・ギター、キーボード、ストリングス等が使われていますが、基本的にはシンプルなヴォーカル曲です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。主役のヴォーカルがしっかり聴こえてくること、ヴォーカルの音色や質感が自然であること、ヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力があることの三点を重視したいと思います。


・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの点についても問題ありませんが、特にヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力という点では他の機種と比べて頭一つ抜けている印象です。DT231PROは曲によっては高域がかなり痛いこともあるのですが、今回の曲ではほとんど気になりません。
 他にはAPHN-AC30、ATH-TAD500、HD449、MDR-ZX700、UR/40等で聴いてみました。APHN-AC30は音色の自然さは良いのですが、ただ鳴らしているだけという感じで説得力はあまり感じられません。ATH-TAD500はなかなか良いのですが、DT231PROと比べると説得力でやや見劣りします。HD449はAPHN-AC30と似た感じです。MDR-ZX700は独特のマイルドさがあってこれはこれで魅力的と感じる人もいるでしょうが、基本的に質感が自然とは言いがたいです。UR/40はなかなか良いのですが、DT231PROと比べると説得力でやや見劣りします。
 不満点は、ヴォーカルのサ行等が若干痛いと感じることがある点、もう少し音の広がりが感じられればなお良いと思われる点です。

・2台目 DTX900(beyerdynamic)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。どちらの点についても若干改善される印象です。1台目の重心を全体的に少し落としたような音で、最初に書いた条件についてはほぼ同レベルのように感じられます。1台目同様、ヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力があります。
 他にはATH-SX1、HP-AURVN-LV、MUSIC SERIES ONE、SRH840等で聴いてみました。ATH-SX1とHP-AURVN-LVは悪くないのですが、ヴォーカルの力強さがもう少し欲しい印象です。MUSIC SERIES ONEはDTX900と比べると全体的に明るめなこともあってか伴奏との調和がやや気になります。SRH840は悪くないのですが、DTX900と比べると説得力でやや見劣りします。
 不満点は特にありません。全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。2台目の音色を更に自然にして音の広がりを良くしたような感じです。2台目同様、ヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力があります。HD650は曲によってはヴォーカルが低域の曇りに覆われる感じになることもあるのですが、今回の曲では低域があまり多くないこともあってかほとんど気になりません。とは言え、他のヘッドホンと比べてヴォーカルが目立って欲しいという考えの人は避けた方が良いと思います。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 色々聴いてみた結果これになりました。全体的な方向性としては2、3台目とそれほど変わらないと思いますが、高域が若干目立つ印象です。2、3台目では重すぎると感じる人にはこちらの方が合うのではないかと思います。
 他にはK701、RS-1、SRH1840、SRS-4040等で聴いてみました。K701は3、4台目と比べるとヴォーカルの力強さに欠け、説得力でやや見劣りします。RS-1は全体的に明るめなこともあってか伴奏との調和がやや気になりますし、ヴォーカルのサ行等がやや痛い点も気になります。SRH1840はなかなか良いのですが、ヴォーカルがキンキンするような感じが若干気になることがあります。SRS-4040は力強いと言うより繊細で透明感がある傾向ですし、高域が少し目立つのが気になります。とは言え、これはこれで魅力的だとは思います。

・5台目 Image X10(Klipsch)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に伴奏との調和による説得力が良いです。他の点についても問題ないと思います。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK100PROはヴォーカルが力強い点は良いもののキンキンするような感じが若干気になることがある、e-Q7は力強いと言うより繊細で透明感がある傾向、SE535はImage X10と比べると伴奏との調和による説得力に欠ける等の不満がありました。
 他にはK374とHP-CN40が良かったです。どちらも伴奏との調和による説得力が良い傾向です。


 今回は比較的落ち着いた音色のものが選ばれていますが、これはヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力という探索条件の影響です。この条件をヴォーカルの透明感に変えるか、あるいはなくすだけでも選ばれるヘッドホンがだいぶ変わってくるのではないかと思います。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。ヴォーカルの力強さや伴奏との調和による説得力が感じられます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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