DTX900

音質
 ややドンシャリ。低域は開放型にしては厚みがあるし、量もそれなりに出る。中域は、低域に負けて若干曇り気味だが、普通に聴こえてくる。高域はbeyerdynamicにしてはかなりおとなしい印象。
 分解能、音場感はいまいち。原音忠実性は価格なりの価値はある。エッジはきつくなく、聴き疲れしない。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。やや曇っているように感じる。厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良い。ノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、なかなかバランスの良い音。暗いとまでは言わないが、あまり明るい音調ではない。響きは適度からやや豊か。やや柔らかめの音で、かなりウォーム。
 弦楽器はなかなか心地よく、繊細さもある程度感じられる。金管楽器は一般的な見方をするならそれなりの表現はしてくれるが、beyerdynamicにしてはおとなしい。打ち込み系の音の表現は悪くないが、低域の締まりが足りない。

装着感
 普通。側圧は普通からやや弱めだが、軽量でずれにくい。ヘッドバンドにはしっかりクッションがあるため痛くない。
 イヤーパッドはかろうじて耳を覆うサイズ、上下左右に角度が調節できる。材質は撥水性の良さそうな布製。
 ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。
 作りはCDH-507とそっくりで、非常に安っぽい。そのせいかデザインまで悪く見える。折りたたみ出来そうに見えるが、実は出来ない。イヤーパッドが手前に来る方向に回るスイーベル機構。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約5mmと非常に太い上、硬くて癖が付きやすいため扱いづらい。イヤーパッドのサイズは、外周92mm×92mm、内周48mm×48mm、深さ14mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
不定期コラム『第14回 1万円以下の開放型ヘッドホン比較』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

周波数特性グラフ


比較メモ
DR150
どちらもややドンシャリ。低域はDR150の方が厚み・量ともに上。ただし、ソースによってはDTX900の方が薄くぼやけて量だけは多く感じることもある。DTX900の方がローエンドまでフラットで、薄く癖がない感じ。DR150の方がかなり存在感のある低域で、ソースによっては締まりや塊のような量感を感じることもある。中域は、DR150が低域の量にやや負ける感じ、DTX900が低域の曇りにやや覆われる感じ。とは言えどちらも基本的には普通に聴こえてくる。質的にはDR150の方がやや高い音。高域は多少質が異なり、ソースによって聴こえ方が変わってくるので一概には言えないが、基本的にはDR150の方がやや鋭い音で量も多め。分解能はDR150の方がやや上。音場感は広さや明確さよりも質の違いが目立つ。DR150の方が前方定位する感じ、DTX900の方が左右に広い感じ。原音忠実性はほぼ同レベル。周波数特性上の癖のなさはDTX900の方がやや上、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはDR150の方がやや上。エッジはDR150の方がきつく、やや聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはDR150の方がやや上。厚みはDR150の方がある。温かみはほぼ同等だが、DTX900の方が刺激が少なく聴き疲れしにくいという点である意味温かみがあるようにも感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等だが、DTX900の方が低く落ち着いた音で擦れやサ行の痛さも気にならないので好印象。DR150の方がノリが良い。力強く、迫力や説得力がある。粗がないという意味で、DTX900の方が繊細。響きはほぼ同等。弦楽器はDTX900の方が心地よく安心して聴けるが、生楽器らしさが欲しいならDR150の方が良い。金管楽器はDR150の方が鮮やかかつ力強いが、やや癖があるので癖を嫌うならDTX900の方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はどちらもうまくないが、どちらかと言えばDR150の方が良い。低域の量感や明るい鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、心地よさ優先で聴き疲れを嫌うならDTX900、ノリの良さや生楽器らしさが欲しいならDR150。

DT231PRO
どちらもややドンシャリだが、DT231PROの方がやや高音より。低域はDTX900の方が厚みがあるし、高域はDT231PROの方がかなり出る。分解能、音場感、原音忠実性すべてDT231PROの方が若干上。どちらもややエッジがきつく聴き疲れするが、DTX900は一般的に聴ける範囲、DT231PROはかなり厳しいレベル。サ行の音等もDT231PROの方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはDT231PROの方が上。厚みはDTX900の方がある。温かみはDTX900の方が上、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、DT231PROはいささか擦れすぎにも感じる。どちらも一般的な意味では繊細と言って良いだろう。響きはどちらも適度。弦楽器はDTX900の方が滑らかで心地よいが、細い音を好む人にはDT231PROの方が合うかもしれない。金管楽器はDT231PROの方が一段高く鮮やか。上位機種ゆずりの見事な表現だが、一方DTX900はDT231PROと比べるとごく普通といった印象。、打ち込み系の音の表現はDTX900の方がうまい。DT231PROの方が高音よりでありながら、音が細くある種のウォームさがあるためだと思われる。得意分野はどちらもジャズ。使い分けるなら、ジャズはDT231PRO、それ以外はDTX900。DTX900は何でも聴けるが、DT231PROはジャズやクラシック以外には使えない。ただし、聴き疲れしないことに自信がある人ならDT231PROの方が一段上の実力を持っているように感じると思われる。

DT990 Edition 2005
DT990 Edition 2005はドンシャリ、DTX900はややドンシャリ。低域はDT990 Edition 2005の方が重心が低く厚みもある。DTX900の方がやや薄く曇ったような質。量は同程度。中域はDT990 Edition 2005の方がやや高い音で低域の曇りに覆われたりもしないが、それでいて低域・高域と比べると目立たずに引っ込んでいるように感じる面もある。高域はDT990 Edition 2005の方が高く鋭い音で量も多い。分解能はDT990 Edition 2005の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っているように感じる。音場感はDT990 Edition 2005の方が広い。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはDTX900の方が上、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはDT990 Edition 2005の方が上。エッジはDT990 Edition 2005の方がきつく聴き疲れしやすい。ヴォーカルのサ行にしろ高域にしろDT990 Edition 2005の方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはDT990 Edition 2005の方がやや上。厚みはDT990 Edition 2005の方がややある。温かみはDTX900の方がやや上だが、DT990 Edition 2005は高域の刺激や付帯音の多さで温かみが損なわれている面があるので、そのあたりが気にならないソースならほぼ互角。ヴォーカルの艶っぽさは判断が難しい。DT990 Edition 2005の方がサ行の痛さや擦れがかなり気になるので、そのあたりを気にするならDTX900の方が良いが、DT990 Edition 2005の方が擦れ含め魅力があるようにも感じる。DT990 Edition 2005の方が鳴りっぷりが良い。DTX900の方が粗がないという意味で繊細。響きはDT990 Edition 2005の方がやや豊か。DT990 Edition 2005の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はDTX900の方が心地よく安心して聴けるが、ヴァイオリン等の澄んだ感じや表現力を求めるならDT990 Edition 2005の方がやや良い。金管楽器はDT990 Edition 2005の方が高く鮮やかで楽しめるが、作ったような感じが強いのも確か。打ち込み系の音の表現はDT990 Edition 2005の方がややうまい。中高域から高域にかけての明るさやメリハリのある鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、基本的にはDT990 Edition 2005、DT990 Edition 2005では高域や聴き疲れが気になるならDTX900。

HD435
DTX900はややドンシャリ、HD435は低音より。低域はHD435の方が低い音で量も多い。中域はDTX900の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はDTX900の方が高く鋭い音を鳴らす。この2機種を比べた場合、DTX900の方が高音よりと言える。分解能はDTX900の方がやや上。音場感はDTX900の方が広く明確。原音忠実性はDTX900の方がやや上。DTX900の方がエッジがきつくやや聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはDTX900の方がやや上。厚みはHD435の方がややある。温かみはHD435の方がやや上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等レベル。DTX900の方が明るくノリが良い。響きは、低域はHD435の方が豊か、高域はDTX900の方が豊か。弦楽器はどちらも心地よいが、DTX900の方が生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はDTX900の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもあまり得意ではないが、どちらかと言えばDTX900の方が明るくメリハリがあってうまい。使い分けるなら、基本的にはDTX900、温かみや心地よさ重視ならHD435。

HP-AK101
DTX900はややドンシャリ、HP-AK101はやや低音より。低域はどちらも超低域まで出る。高域は全体的にDTX900の方が良く聴こえる。分解能はDTX900の方が上、音場感はHP-AK101の方が上。DTX900の方が原音に近いが、エッジもきつい。明瞭さはほぼ互角だが音の鮮やかさや厚みはDTX900の方が上。密度や情報量、温かみやヴォーカルの艶っぽさもDTX900の方が上。DTX900の方がノリが良くしかも繊細。響きはHP-AK101の方が豊かだが、それでも適度というレベル。弦楽器、金管楽器はいずれもDTX900の方が自然で魅力的。打ち込み系の音の表現はほぼ互角。得意分野はDTX900がジャズ、HP-AK101がポップス。使い分けるならポップスはHP-AK101、それ以外はDTX900だが、ポップスにしても傾向が違うもののそれほど差はないように感じる。

K242HD
DTX900はややドンシャリ、K242HDは低音よりのドンシャリ。低域はK242HDの方がやや量が多く、薄く曇ったような質。中域はDTX900の方がやや高い音で、低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。高域は質・量ともに似ているが、K242HDの方がやや細く高い音を鳴らす。分解能はほぼ同レベルだが、どちらかと言えばK242HDの方が良いか。音の分離はDTX900の方が若干良く、一つ一つの音の微細な描写はK242HDの方がやや細やかに丁寧にこなしてくれる。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベルだが、どちらかと言えばK242HDの方が広い。原音忠実性はDTX900の方がやや上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いで多少勝っている。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、どちらかと言えばDTX900の方が粗く疲れる。明瞭さはDTX900の方がやや上。K242HDの方がやや曇っているように感じる。音の鮮やかさはDTX900の方が若干上。厚みはほぼ互角だが、どちらかと言えばDTX900の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、ヴォーカルはK242HDの方がややスモーキーなのでそこで好みの差が出るかもしれない。DTX900の方がややノリが良く、K242HDの方がやや粗がなく繊細。こう書くといかにもbeyerdynamicとAKGの違いのようだが、この2機の違いは一般的に想像されるbeyerdynamicとAKGの違いよりもかなり小さいと思われる。響きはK242HDの方がやや豊か。弦楽器はどちらも心地よく聴けるが、K242HDの方がやや繊細。金管楽器は甲乙つけがたい。DTX900の方が若干力強く、K242HDの方が若干綺麗な表現。打ち込み系の音の表現はDTX900の方がややうまい。低域の質感や明るい鳴らし方で勝っている。あまり使い分けには向かない2機種だが、あえて使い分けるなら、低域の曇りを嫌うならDTX900、少しでも繊細な方が良いならK242HD。

RP-HT770
DTX900はややドンシャリ、RP-HT770はやや低音より。低域も高域もDTX900の方がしっかり出る。分解能はDTX900の方が上、音場感はほぼ互角。DTX900の方が原音に近いが、ややエッジがきつい。ただ、これはDTX900がきついというよりもRP-HT770がきつくないという表現の方が正しいだろう。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度、情報量、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてDTX900の方が良い。RP-HT770は霞がかかったような曇った音で、ノリが悪く繊細さにも欠ける。響きはDTX900はあっさり、RP-HT770は適度。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてDTX900の方がワンランク上の表現力。得意分野はDTX900がジャズ、RP-HT770がポップスだが、何を聴くにしてもDTX900の方が魅力的。

SR-60
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらも柔らかめで十分な量があり、基本的に良く似ている。量的にはSR-60の方が若干多めか。ただ、SR-60の方が抜けが良いので、それで帳消しになっている感がある。中域はどちらもやや低域に負けるが、それほど気にならないレベル。高域はDTX900の方が細く高い音で目立つ。分解能はDTX900の方がやや上。音場感はDTX900の方がやや広く立体感もある。原音忠実性は癖のなさという意味でSR-60の方が上。DTX900の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはほぼ互角。温かみはDTX900の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。SR-60の方がややノリが良い。響きはDTX900の方が豊か。DTX900の方が付帯音が多く、湿り気のある音。弦楽器はほぼ互角。金管楽器はDTX900の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもいまいちだが、どちらかと言えばSR-60の方が楽しめる。得意分野はDTX900がジャズ、SR-60がロック。使い分けるなら、しっとり地味に聴きたいならDTX900、爽やかに明るめに聴きたいならSR-60。ただし、極端な違いはないし、どちらもあまり明るい傾向ではない。

UR/40
どちらもややドンシャリ。超低域はDTX900の方が出る上、厚みもある。高域はUR/40の方が全体的に出るが、超高域はほぼ互角。UR/40の方がかなりシャリつく。まったく異なる音調。DTX900は暗め、UR/40は非常に明るい。分解能はほぼ互角、音場感はUR/40の方が広く明確。原音忠実性はDTX900の方が良いが、これはDTX900が良いというよりもUR/40は原音忠実など二の次で如何に楽しく聴かせるかに重点を置いた音作りになっているため。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、UR/40の方がかなりシャープな音で聴き疲れする人もいるかもしれない。ただし、サ行の音はDTX900の方がきつい。明瞭さ、音の鮮やかさはUR/40の方が上。厚みや密度はDTX900の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはDTX900の方が若干良い。ノリの良さならUR/40の方が上、繊細さならDTX900の方が上だが、どちらもなかなかバランスの良い音。DTX900は迫力がある一方、UR/40は若々しい。個人的にはUR/40の軽薄とも言える明るさが、他にはない魅力を持っているように思う。逆に、DTX900は落ち着いた安心感がある。響きはどちらもあっさり。弦楽器はDTX900の方が厚みがあり腰のすわった音で自然に感じられる。金管楽器はUR/40の方が鮮やかではあるのだが、粗があり聴き込むには向かない音。打ち込み系の音の表現はUR/40の方がうまい。力押しではなく、軽快で明瞭。得意分野はDTX900はジャズ、UR/40はポップス。使い分けるならクラシック・ジャズはDTX900、それ以外はUR/40。DTX900はなんでもそこそこ鳴らすが、UR/40はクラシックには元気が良すぎて大抵のソースには合わない。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第10回 Riverdance/Bill Whelan「Riverdance」より
第75回 フォレスト・レイン/木住野佳子「プラハ」より
第79回 City Lights/Fantastic Plastic Machine「contact」より
第82回 青きドナウの岸辺〜愛あればこそ/「2001 宝塚歌劇全主題歌集」より

曲別HP探索2
第9回 Travels/Pat Metheny Group「Travels」より
第10回 なごり雪/イルカ「イルカベスト」より
第29回 ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 3Dドラマ ティファニア編/「ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 キャラクターCD2 感じるティファニア」より
第36回 色彩のブルース/EGO-WRAPPIN'「色彩のブルース」より
第55回 チェロ協奏曲ニ長調Badley D1/ホフマン
第57回 Don't Know Why/Norah Jones「Come Away With Me」より
第64回 はじめて/一青窈
第72回 Different Trains/Steve Reich「Different Trains」より
第87回 Bewitched/Art Pepper「modern art」より
第94回 新大阪/ゴスペラーズ「G10」より





※生産終了。後継機はDTX910。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 10Hz〜22kHz 108dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
180g - 3m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 3 2 2 2 2 均(低、高) 11000円
※生産終了。後継機はDTX910。

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公開日:2005.3.7