SR-60

音質
 低音よりのドンシャリ。低域は雲のような印象で動きが分かりやすいとは言えないが、全体的に出る感じで量は十分。中域はやや控え目で、低域の強いソースではやや埋もれ気味になる。高域はGRADOにしてはかなりおとなしめな印象。癖はなく、あまり前に出てこない尖った感じのしない鳴らし方だが、必要量は出ている。
 分解能、原音忠実性は価格なり。低域がやや邪魔をする印象。音場感はいまいち。エッジはきつくなく聴きやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良い。ノリの良さと繊細さをある程度両立している。GRADOの上位機種と比べると抜けが悪く曇っているように感じるものの、一般的に見るなら及第点。かなり柔らかい音。響きはやや豊か。
 弦楽器はなかなか心地よいが、繊細さが足りない。金管楽器は鮮やかさにやや欠けるが、価格を考えればこんなものかもしれない。打ち込み系の音の表現はそれなり。低域の締まりが足りない。
 この価格にしてはかなり癖がなく、コストパフォーマンスは良い。

装着感
 普通。重量は軽めだが頭頂部に優しくない作り。側圧が自由自在に変えられるのは良いが、強いと耳が痛く弱くしすぎるとずれやすくなるのが難点。
 イヤーパッドは耳のせサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はざらざらのウレタンのため不快。長時間使用すると頭頂部と耳が痛くなる。その反面蒸れにくいという利点はある。
 SR-225等と比べるとイヤーパッドが一回り小さく軽いため、装着感はやや良いように感じる。

その他
 遮音性及び音漏れ防止はかなり悪い。
 作りはかなり無骨でかつ安っぽい。ハウジングがプラスチック製でバリが出ていたり、振動板と耳を隔てる布の隅がほぐれていたり、接着剤がはみ出していたりする。イヤーパッドに切れ目が入っているのも安っぽさに拍車をかけている。SR-60と比べれば、SR-225が高級に見えてしまうほど。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約3.5mm、合流後は約5mm、硬いが癖は付きにくい。イヤーパッドのサイズは、外周66mm×66mm、内周40mm×40mm、深さ8mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第44回 イヤーパッドの交換と音質の変化 2回目』
不定期コラム『第56回 ヘッドホンの破損と経年劣化』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

周波数特性グラフ


比較メモ
DTX900
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらも柔らかめで十分な量があり、基本的に良く似ている。量的にはSR-60の方が若干多めか。ただ、SR-60の方が抜けが良いので、それで帳消しになっている感がある。中域はどちらもやや低域に負けるが、それほど気にならないレベル。高域はDTX900の方が細く高い音で目立つ。分解能はDTX900の方がやや上。音場感はDTX900の方がやや広く立体感もある。原音忠実性は癖のなさという意味でSR-60の方が上。DTX900の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはほぼ互角。温かみはDTX900の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。SR-60の方がややノリが良い。響きはDTX900の方が豊か。DTX900の方が付帯音が多く、湿り気のある音。弦楽器はほぼ互角。金管楽器はDTX900の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもいまいちだが、どちらかと言えばSR-60の方が楽しめる。得意分野はDTX900がジャズ、SR-60がロック。使い分けるなら、しっとり地味に聴きたいならDTX900、爽やかに明るめに聴きたいならSR-60。ただし、極端な違いはないし、どちらもあまり明るい傾向ではない。

HFI-15G
HFI-15Gは低音より、SR-60は低音よりのドンシャリ。低域は、開放型のわりにはHFI-15Gの方が重低音という表現が合う一段低い音を鳴らす。高域は基本的にはSR-60の方が出るのだが、超高域はほぼ同量に感じる。分解能、音場感、原音忠実性すべてSR-60の方が若干上。どちらもエッジはきつくなく聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはSR-60の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHFI-15Gの方が上。ノリの良さならSR-60、繊細さならHFI-15G。響きはどちらもやや豊かだが、どちらかと言えばSR-60の方があっさり。SR-60はGRADOの中では音の抜けが良いとは言えない部類に入るが、HFI-15Gと比べたら抜けが良い。弦楽器はHFI-15Gの方が線が細く柔らかい音で心地よい。金管楽器は、かなり違う音を鳴らすので好みが分かれるところだろう。HFI-15Gの方が高く細い感じ、SR-60の方が原音に近く太い感じ。HFI-15GはPioneerの高域に少し似た癖がある。打ち込み系の音の表現は厚みと切れで勝るSR-60の方がうまいように感じる。得意分野はHFI-15Gがクラシック、SR-60がロック。使い分けるなら、クラシックやジャズはHFI-15G、ロックやポップスはSR-60。

iGrado
iGradoは低音より、SR-60は低音よりのドンシャリ。低域はどちらも十分出るが、多少違う鳴らし方。SR-60の方がやや低めの音で、抜けが良い。中域はSR-60の方が低域の曇りに覆われず、しっかり聴こえてくる。高域はSR-60の方がやや細く高い音を鳴らす。分解能、音場感、原音忠実性すべてSR-60の方がやや上。SR-60の方が全体的に細めの音で、音の分離にしろ微細な表現にしろ上のように感じる。また、どちらかと言えばSR-60の方がフラットでバランスが良い。iGradoが耳のすぐ近くで音を鳴らすのに対して、SR-60の方がまだ耳との距離があいている。エッジのきつさはほぼ互角。明瞭さ、音の鮮やかさはSR-60の方がやや上。厚みはほぼ互角。温かみは低音が出る分iGradoの方が上に感じる。ヴォーカルの艶っぽさはSR-60の方が上。どちらもノリが良いが、どちらかと言えばSR-60の方が線が細く繊細。響きはほぼ同等。弦楽器はSR-60の方がうまい。iGradoはやや塗りつぶしたように繊細さに欠ける面がある。金管楽器はSR-60の方が高く鮮やかな鳴らし方。打ち込み系の音の表現は好みによって評価が違ってきそう。iGradoの方が低音が多く圧力がある面は良いが、SR-60の方が切れやバランスが良い。得意分野はどちらもロック。基本的に似ているだけに、ほとんど何を聴くにしてもSR-60の方が良いように感じる。

MUSIC SERIES ONE
どちらも低音よりのドンシャリだが、SR-60の方がやや低音より。質は似ているが、低音はSR-60の方が量が出るし、高音はMUSIC SERIES ONEの方が出る。分解能、音場感、原音忠実性すべてMUSIC SERIES ONEの方がやや上。MUSIC SERIES ONEの方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはMUSIC SERIES ONEの方がやや上。厚みや密度はほぼ互角。温かみは低音が出る分SR-60の方がやや上か。ヴォーカルの艶っぽさはMUSIC SERIES ONEの方がやや上。どちらもノリが良い。SR-60は繊細さが足りないのに対してMUSIC SERIES ONEは繊細さも十分。響きはSR-60の方がやや豊か。MUSIC SERIES ONEの方が線の細い音で、曇りも感じない。弦楽器はSR-60の方が心地良いが、純粋に原音に近く澄んだ音を楽しみたいならMUSIC SERIES ONEの方が良い。金管楽器はMUSIC SERIES ONEの方が一段高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもそれなりだが、MUSIC SERIES ONEでは線が細くてしかも低音が不足気味に感じる人もいるかもしれない。得意分野はどちらもロック。使い分けるなら、基本的にはMUSICSERIESONEを使い、線が細すぎるとか低音が足りないとかいう場合だけSR-60か。

SE-A1000
どちらも低音よりのドンシャリ。低域は鳴らし方がかなり違うので一概には言えないが、SR-60の方が素直に全体的に鳴らす印象。高域はSE-A1000の方がやや強め。分解能はSE-A1000の方が若干良い。音場感はSE-A1000の方がかなり広く明確。原音忠実性はSR-60の方がやや上に感じられる。どちらもエッジはきつくなく聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはすべてほぼ互角だが、SE-A1000の方が若干良いように思う。どちらも基本的にはノリが良いのだが、繊細さも持ち合わせている。響きはSE-A1000の方が豊かで、音に広がりがある。SR-60の方が音がやや太く、ストレートに耳に届く。弦楽器はSE-A1000の方が繊細で心地よい。金管楽器は基本的にはSE-A1000の方が高く鮮やかなのだが、Pioneer独特の癖があるのは確か。打ち込み系の音の表現はSE-A1000の方が若干うまいように感じる。得意分野はSE-A1000がポップス、SR-60がロック。使い分けるなら、ロックはSR-60、それ以外はSE-A1000か。ただし、SE-A1000よりSR-60の方が癖のない音ではあるので、SE-A1000はSR-60と比べると合わないと言う人も多そう。

SR-225
どちらもドンシャリだが、SR-225の方が高音より。特に超低域はSR-60の方がかなり強い。高域は、線が細いこともありSR-225の方がかなり強いように感じる。分解能、音場感、原音忠実性すべてSR-225の方が一段上。どちらかというとSR-225の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みすべてSR-225の方が上。温かみは超低域が出る分SR-60の方が良いように感じるが、その点を差し引けばほぼ互角のように思う。ヴォーカルの艶っぽさはSR-225の方が上。SR-225の方がノリが良くしかも繊細に感じるが、超低域はSR-60の方が出るので、SR-225では超低域が不足と言う人にはSR-60はわりと合うと思われる。響きはSR-60の方が豊か。SR-225の方が明るくテンションが高く、音の抜けが良い。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてSR-225の方がうまい。ただし、超低域が欲しい曲の場合には、SR-60の方が相性は良い。得意分野はどちらもロック。ほとんど何を聴くにしてもSR-225の方が良いように思うが、前述の通り超低域の違いがかなりあるため、使い分けはできるように思う。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生






※07年にマイナーチェンジ。イヤーパッドがALESSANDROのMUSIC SERIES ONEと同様のものに変更。それにともない音質も変化。
  本レビューはマイナーチェンジ前のもの。


※09年春にマイナーチェンジ。外観が変更になった他、音質も若干変化した可能性あり。
  本レビューはマイナーチェンジ前のもの。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 20Hz〜20kHz 98dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
130g 40mm 2m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 3 1 1 2 2 低(高) 9800円

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公開日:2005.6.27