第56回 ヘッドホンの破損と経年劣化

 今回はある意味あまりおもしろくないお話です。ヘッドホンも物である以上、破損や経年劣化を免れることはできません。そこで、今回は私が所有しているヘッドホンがどのように破損や経年劣化をしてきたのか紹介したいと思います。


○ヘッドバンドの破損
 現在、どの機種も自分で補修してほとんど問題なく使用できる状態ですが、大変見苦しいので写真は割愛します。

PHX
購入年月:08年6月
破損年月:08年10月頃
破損部位:ヘッドバンドのハウジングに近いパーツ(LRが表記されている部分)。
破損原因:装着する際にヘッドバンドを広げすぎたため。
説明:破損部位はヘッドバンドのスライダー部と合わせて3枚におろせるような構造になっていて、外側の平たい2枚のプラスチックパーツが分かれてしまうような形で破損しました。DJ用は耐久性も重要なので、そういう意味では問題のある機種だと思います。

SE-M380
購入年月:04年12月
破損年月:04年12月
破損部位:ハウジングを支えるアームとヘッドバンドの接続部。
破損原因:装着する際にヘッドバンドを広げすぎたため。
説明:特に脆いようには見えませんが、購入した日に破損しました。破損部位はハウジングの左右方向の角度調節を行えるようにするために細いプラスチックの棒で繋がっているせいか、外観から想像されるよりは脆いようです。

ZUMREED PORTABLE HEADPHONE
購入年月:08年1月
破損年月:08年1月
破損部位:ヘッドバンドの頂上部。
破損原因:装着する際にヘッドバンドを広げすぎたため。
説明:ヘッドバンドの頂上部は細いビスで2つのプラスチックパーツを接続しているだけなので、見るからに脆そうです。私の場合、初めて装着する際に破損しました。

 破損原因は3台とも同じで、装着する際にヘッドバンドを広げすぎたことです。自分の頭の幅ギリギリで装着すれば壊れることはまずないのでしょうが、装着時は当然ある程度余裕を持って広げるものですし、それに加えて勢い良く広げたりすると機種によっては相当負荷がかかることがあるようです。


○イヤーパッドの経年劣化
 イヤーパッドの材質は機種によって様々ですが、本体のプラスチックや金属と比べるとかなり劣化が速いです。材質面だけでなく、直接肌と接触するため、汗や皮脂が付着したり擦れたりして劣化しやすいという面もあると思います。

SD-2900CD
購入年月:05年6月
撮影年月:09年6月
説明:購入した時点で、作られてからだいぶ時間が経っているような印象を受けました。購入から1年経った頃には、何となくイヤーパッドが劣化してきたように感じました。現在では少し触っただけで黒い粉がポロポロと落ちる状態です。

SP-K300
購入年月:05年3月
撮影年月:09年6月
説明:SD-2900CDほどではありませんが、購入した時点で作られてからある程度時間が経っているような印象を受けました。撮影の1年前は裂け目が1〜2本あるかなという程度でしたが、その後ほとんど使用していないにもかかわらずここまで劣化しました。

SR-60
購入年月:05年6月
撮影年月:09年6月
説明:写真は片側だけですが、反対側は更に酷い状態です。SD-2900CD同様、少し触っただけで黒い粉がポロポロと落ちます。また、この劣化がなくとも元々切れ目の入っているイヤーパッドは一見して破損しやすいと想像されました。現在はマイナーチェンジして違う形状・材質になっていますが、この辺りにも原因があったのかもしれません。

Z headphones
購入年月:05年1月
撮影年月:09年6月
説明:SD-2900CDほどではありませんが、購入した時点で作られてからある程度時間が経っているような印象を受けました。SP-K300と同様、撮影の1年前は裂け目が1〜2本あるかなという程度でしたが、その後ほとんど使用していないにもかかわらずここまで劣化しました。

 現状を見ると、スポンジ状のものやシワが気になる安っぽい人工皮革には耐久性が低いものがあるようです(すべてとは言い切れませんが)。今回の結果からは物によっては3〜4年でダメになるようにも見受けられますが、SR-60以外は購入した時点である程度時間が経っていた可能性があること、他の機種ではほとんど劣化が見られないことを考えると、大抵の場合はもう少し保つのではないかと思います。
 シワが気になる安っぽい人工皮革は、最初はシワと見間違えるような細かい裂け目ができ、これが酷くなってくると裂け目が大きくなってポロポロ剥がれ落ちてくるようです。
 それから、私が所有しているものにはまだ見受けられませんが、レザータイプの人工皮革は表面が硬くなってひび割れてくるようです。この劣化については、使用後に乾いた布で軽く拭くだけでもある程度防げるように思います。布については、使用時間が長いと表面が禿げてしまう劣化が多いようです。
 こういった明らかな経年劣化以外にも、押し潰されて厚みが薄くなったりする劣化もあります。イヤーパッドは交換できる機種も多いので、その場合には無理して使用せずに交換してしまうことをお勧めします。


○コードの着脱が可能な機種の接触不良
 ヘッドホンの機種によっては、コードの着脱が可能なものもあります。場合によっては便利なのですが、余計な接点が増えるために接触不良が発生してしまうという面もあります。

SE-MONITOR 10R
購入年月:04年10月
撮影年月:09年6月
説明:特に負荷をかけたつもりはありませんし使用時間も短い部類なのですが、いつのまにか接触が悪くなって徐々に悪化してきています(購入から2年以上は問題なかったと思います)。

T50RP
購入年月:04年11月
撮影年月:09年6月
説明:SE-MONITOR 10R同様、特に負荷をかけたつもりはありませんし使用時間も短い部類なのですが、いつのまにか接触が悪くなって徐々に悪化してきています(購入から2年以上は問題なかったと思います)。

 この2台の共通点は、ハウジングの下部ではなく外面に着脱部があること、ねじ込みではないこと、ロック機構(プラグを差し込んでから回転)があることの3点でしょうか。私は他にもコードの着脱が可能な機種を沢山所有していますが、今のところ接触不良が起きたのはこの2台だけです。そして、この2台以外はほとんどハウジング下部に着脱部があります。私の使い方の問題かもしれませんが、下部ではなく外面に着脱部がある方が接触不良が発生しやすいのかもしれません。


○ヘッドバンドの被覆剥がれ
 ヘッドホンの機種によっては、ヘッドバンドを覆う皮をアーム部のパーツに差し込んでいるものがあり、そういったものでは皮がはみ出してきてしまうことがあります。特に実害はないのですが、悪化すると見苦しくなりそうです。

CDH-508
購入年月:05年6月
撮影年月:09年6月
説明:片側のみ、反対側は問題ありません。購入から2年くらいは問題なかったと思います。

HP-M1000
購入年月:04年10月
撮影年月:09年6月
説明:片側のみ、反対側は問題ありません。CDH-508同様、購入から2年くらいは問題なかったと思います。

RP-21
購入年月:07年6月
撮影年月:09年6月
説明:両側、ただし片側は軽度です。購入から1年ほどではみ出してきたように思います。

 こうして見てみるといかにも発生しそうな劣化なのですが、メーカーはその辺り特に考えずにこういう作りにしているのでしょうか・・・・・・


○コードの被覆破れ
 これは比較的多い破損だと思います。

K181DJ
購入年月:06年3月
撮影年月:09年6月
説明:購入してから2年くらいは問題なかったと思います。おそらく保管時にコードの根元を片側に曲げた状態になっていたのが悪かったのだと思います。保管状態については多少は気をつけているつもりなのですが、さすがに200台以上のヘッドホンすべてについて万全というのは難しいです。

RS-1
購入年月:05年3月
撮影年月:06年8月
説明:GRADOの現行ヘッドホン(iGrado除く)はY字合流部をかしめてコードを潰したようになっていて、新品でもコードの被覆に切れ目のような跡がついています。私は同様の作りになっているGRADOのヘッドホンを5台(OEM含む)所有していますが、すべて購入時から左の写真のような状態でした。RS-1については使用しているうちにこの跡から被覆が破れていって、購入から1年半ほどで右の写真のような状態になってしまいました。使用時間はそれほど長くないと思いますし、購入時からこの部分に不安があったので丁寧に扱ってきたのですが、それでもこの有り様です。ちなみに、RS-1以外の4台はここまで酷くはないです。以前この問題について代理店のナイコムに問い合わせたことがありますが、その時点では認識がなかったようです。改善するようにお願いしておきましたが、現在も改善はされていないようです。

 もっと多いかと思ったのですが、私の所有しているものではこれだけだと思います。屋外でヘッドホンを使用することはあまりないのが理由でしょうか。


○その他
 他にもいくつか破損例がありますので、気づいたものをピックアップしてみます。

SE-MONITOR 10R
購入年月:04年10月
撮影年月:09年6月
説明:最初に書いた「ヘッドバンドの破損」に分類しようかとも思ったのですが、特殊な構造ですしヒビが入っているだけなので別にしました。今のところ使用上の問題はありませんが、今後どうなるかは分かりません。反対側は問題ありません。

SR-325i
購入年月:05年4月
撮影年月:09年6月
説明:金属の丸い棒がプラスチックのパーツに埋め込まれているのですが、これが抜けてしまいました。ねじ込んで使っていたのですが、しばらくするとまた抜けるような状態でした。現在は接着剤で補修したので抜けなくなっています。どうも初期の状態だと、プラスチックに金属の丸い棒をねじ込んでいるだけのようです。もしかしたら接着剤を使っているのかもしれませんが、抜けた状態で金属棒を観察しても接着剤らしき痕跡は見当たりませんでした。

 他にも塗装の剥がれや細かい傷はあると思いますが、それほど目立つものはありませんし、破損と言うほど酷いものはないと思います。


○断線
 ヘッドホンで最も多い故障はコードの断線だと思いますが、私はヘッドホンに凝るようになってからは一度もないと思います。これは丁寧に扱うようになったということも影響があるのでしょうが、1台1台の使用時間が短くなったことも大きな理由だと思います。
 昔は2千円くらいのイヤホンを半年に1台くらいのペースで断線させていました。毎日のように屋外で使用していたので仕方ないかもしれませんが、断線させすぎという気もします。私は元々物を大切にする性格だったので、決して手荒には扱っていないと思うのですが・・・・・・ ちなみに使っていたのはSONYの開放型イヤホンが多かったですが、断線のしやすさはどこのメーカーも大差なかったように思います(昔の話なので、今はどうなっているのか分かりません)。


 改めて振り返ってみると、やはりある程度の頻度で破損や経年劣化があるようです。1台1台の使用時間が短くてもこれですから、普通ならもっと早く破損や経年劣化が問題になるはずです。そう考えると、長期的に見たときのヘッドホンの耐久性はかなり重要な要求性能であるように思います。
 それから、GRADOのヘッドホンは破損や経年劣化が多いようです。見るからにチープでバリが出ていたりするのも気になりますし、製品としての作りは悪いと言わざるを得ません。
 さて、こんなところでしょうか。今回の内容が、破損や経年劣化の例というだけでなく、どうすればそれを防げるのかという意味でも参考になれば幸いです。








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