CDH-508

音質
 やや低音より。低域は厚みはそれほどないし、量も程々。イヤーパッドが布製の割には音の抜けが悪く、曇っているようにも感じる。DJ用に求められるような、いわゆる締まった低域や物凄い量の低域とは違う。良く言えば柔らかいが、悪く言えばぼやけている印象。中域は低域の曇りにやや覆われる感じ。高域は控え目であまりはっきり聴こえてこない。
 分解能、原音忠実性は価格なりか、それ以下。音場感はいまいち。エッジはきつくなく聴きやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。ノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、無難で癖のない鳴らし方。響きは豊か。切れが悪く、ウォームさがある。
 弦楽器は繊細さが足りないが、チェロ等を心地よく聴きたいときには、低域の柔らかい感触が合う。金管楽器は鮮やかさが足りない。金属的な鳴りとは正反対の印象。打ち込み系の音の表現はいまいち。全体的に切れがない上、低域は締りがなく、中域から高域は鮮やかさが足りない。
 DJ用ではなく、音楽鑑賞用の低音よりの機種と考えれば、価格なりの音質ではあるように思う。

装着感
 普通。側圧は普通。ヘッドバンドのクッションは薄いが、軽量なためあまり気にならない。また、かなりずれにくい。
 イヤーパッドはかろうじて耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はDTX900と似ている撥水性の良さそうな布製。
 長時間使用すると耳たぶが痛くなる。耳が大きい人にとっては装着感が悪いと思われる。ただ、イヤーパッドを少し変形させることができるので、上下に伸ばせば多少良くなる。

その他
 半密閉型という表記の通り、遮音性及び音漏れ防止は普通の密閉型と比べると悪いが、普通のセミオープンほど悪くはない。
 デザインはDJ用らしく、しかもCDH-507より人を選ばない印象。CDH-507の後継機という位置づけらしい。個人的には、音質・装着感・デザインすべてにおいてCDH-507より良くなっているように感じた。写真はブラックだが、ホワイトもある。作りは価格のわりにはなかなか良い。折りたたみ可能でスイーベル機構。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、布巻きで扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周78mm×78mm、内周44mm×44mm、深さ14mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
不定期コラム『第56回 ヘッドホンの破損と経年劣化』

周波数特性グラフ


比較メモ
CDH-507
CDH-507はドンシャリ、CDH-508はやや低音より。低域はかなり鳴らし方が違うので判断に困るところ。ソースによってかなり印象が代わるが、基本的にはCDH-508の方が柔らかい表現。中高域から高域はCDH-507の方が一段高い。一聴してCDH-507の方が高域が目立つ。分解能はCDH-507の方が線が細い分やや上に感じる。音場感は若干CDH-508の方が上。どちらも原音忠実とは言えない。CDH-507の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはCDH-507の方がやや上。CDH-508はやや曇っているように感じるが、CDH-507はそうでもない。温かみはCDH-508の方がやや上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリが良いが、刺激という意味ではCDH-507の方が上。響きはCDH-508の方が豊か。弦楽器はどちらもあまりうまくない。金管楽器、打ち込み系の音の表現はややCDH-507の方がうまい。得意分野はCDH-507はロック、CDH-508はジャズ。使い分けるなら、ジャンル以前にCDH-507の高域の癖とCDH-508の曇りの好みが問題だろう。

HP830
CDH-508は低音より、HP830はややドンシャリ。低域はCDH-508の方が量が多いが、厚みは薄い。中域はHP830の方がはっきり聴こえてくるし癖もない。CDH-508は中域まで低域の曇りに覆われる上にソースによっては嫌味が出る。高域はHP830の方がかなり強い。分解能、音場感、原音忠実性すべてHP830の方が上。HP830の方がエッジがきついが、CDH-508は曇りやこもり感が気になるため、どちらが聴き疲れするかは人によって違ってきそう。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてHP830の方が上。HP830の方がノリが良くしかも繊細。響きはCDH-508の方がやや豊か。弦楽器はHP830の方が繊細かつ心地よい。CDH-508は曇りが気になる上にあまりに不自然。金管楽器はHP830の方が圧倒的に鮮やか。HP830の後ではCDH-508は聴けたものではない。打ち込み系の音の表現もHP830の方がうまい。CDH-508は低域の量はでるが、全体的に切れがまったく足りない。得意分野はCDH-508がジャズ、HP830がポップス。ほとんど何を聴くにしてもHP830の方が良いように感じる。

HP-RX500
CDH-508はやや低音より、HP-RX500はかなりフラット。低域はCDH-508の方が量が多いし、やや低めの音を鳴らす。ただし、どちらも柔らかめな質感が感じられる点は似ている。中域はCDH-5008がかなり低域に覆われるのに対してHP-RX500はほとんどそんな感じを受けない。高域はHP-RX500の方がしっかり高い音を鳴らしてくれるし量も多い。分解能はほぼ互角。音場感はHP-RX500の方が立体低で明確。原音忠実性は癖のなさという意味でHP-RX500の方が上。HP-RX500の方がややエッジがきついが、CDH-508は低域の量が多くて疲れる部分があり、総合的な聴き疲れはほぼ互角。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-RX500の方が上。厚みはCDH-508の方がある。温かみは低域が出る分CDH-508の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。CDH-508の方が圧力がありノリが良い。響きは、低域はCDH-508の方が豊か、高域はHP-RX500の方が豊か。弦楽器はCDH-508の方が厚手でマイルドな感じで心地よく楽しめる。金管楽器はHP-RX500の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現は微妙。音の相性そのものはHP-RX500の方が良いように感じるが、厚みや圧力ではCDH-508の方が勝っている。どちらが上と言うよりは好みだろう。得意分野はCDH-508はジャズ、HP-RX500はポップス。使い分けるなら、厚みや低域の量重視ならCDH-508、音場感重視で爽やかな鳴らし方を好むならHP-RX500。

MDR-Z700DJ
CDH-508はやや低音より、MDR-Z7000DJはドンシャリ。低域は量はほぼ同量だが、ややMDR-Z700DJの方が低い音を鳴らす。質的にはどちらもあまり締まっているとは言えないが、MDR-Z700DJの方がまだ締まっている。CDH-508はDJ用とは思えないほど柔らかい低域。高域はMDR-Z700DJの方が一段高い音を鳴らす。分解能、原音忠実性はMDR-Z700DJの方が上、音場感はCDH-508の方が上。どちらもそれほどエッジはきつくない。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはMDR-Z700DJの方が上。温かみはCDH-508の方が上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。MDR-Z700DJの方がノリが良い。響きはCDH-508の方がやや豊か。MDR-Z700DJの方がストレートに音が届く感じで、圧力や迫力でかなり勝っている。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてMDR-Z700DJの方がやや勝っているように感じる。得意分野はCDH-508がジャズ、MDR-Z700DJがポップス。ほとんど何を聴くにしてもMDR-Z700DJの方が良いが、ジャズやクラシックはソースによってはCDH-508の方が良いだろう。

RE-575
CDH-508はやや低音より、RE-575はかなりフラット。低域はCDH-508の方が重心が低く厚みがあり、存在感にかなり差がある。量もCDH-508の方がやや多い。中域はRE-575の方が薄い低域の曇りに覆われる印象。RE-575はソースによっては張り出すような感じが気になるが、CDH-508にはそういう癖はない。高域はRE-575の方がやや高く明るい。CDH-508の方が太く、ややザラザラした質。分解能はほぼ同レベル。音場感は、広さは大差ないが、CDH-508の方がやや明確。原音忠実性はCDH-508の方がやや上。周波数特性上の癖のなさは大差ないのだが、CDH-508の方が原音の実体感がある。エッジはRE-575の方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはCDH-508の方がやや上。厚みはCDH-508の方がある。温かみはCDH-508の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベルだが、声の表現全体を見るとCDH-508の方が厚手、RE-575の方が細く繊細。CDH-508の方がノリが良い。低域の量感や音の厚みに基づく迫力や説得力がある。響きは、低域はCDH-508の方がやや豊か、高域はRE-575の方がやや豊か。CDH-508の方が抜けが悪い印象。弦楽器はCDH-508の方が厚手で心地よく、安心して聴ける。金管楽器はRE-575の方がやや高く明るいが、力強さという点ではCDH-508の方がかなり上。打ち込み系の音の表現はCDH-508の方がややうまい。音の質感の相性はRE-575の方が良いくらいなのだが、低域の量感や音の厚みはCDH-508の方がかなり上で、トータルとしてはCDH-508に分がある。使い分けるなら、基本的にはCDH-508、CDH-508では高域が物足りないとか暑苦しいという不満があるならRE-575。

SE-MJ5
CDH-508はやや低音より。SE-MJ5はドンシャリ。低域はCDH-508の方が低い音で、柔らかい質感。量はほぼ同量。中域はSE-MJ5の方がはっきり聴こえてくる。逆に、CDH-508はかなり曇りが気になる。高域はSE-MJ5の方が高く硬く、量も多い。分解能、音場感ともにSE-MJ5の方がやや良い。原音忠実性はどちらもいまいち。CDH-508は曇りが気になるし、SE-MJ5は中高域から高域の癖が気になる。SE-MJ5の方がややエッジがきつい上に、音の圧力があり聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはSE-MJ5の方がかなり上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはCDH-508の方がかなり上。ノリの良さならSE-MJ5、繊細さならCDH-508。響きは曇りのせいかCDH-508の方が豊かに感じるが、高域はSE-MJ5の方が響く。CDH-508は柔らかい音、SE-MJ5は硬い音。弦楽器はCDH-508の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はSE-MJ5の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はSE-MJ5の方がうまい。音の圧力や厚みが良く合う。得意分野はCDH-508はジャズ、SE-MJ5はポップス。使い分けるなら、クラシックやジャズはCDH-508、ポップスやロックはSE-MJ5。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



 


※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 半密閉 18Hz〜22kHz 110dB 50Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
230g 41mm 3m 片出し 折りたたみ可能

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2.5 3 3 3 4 3 均(低) 3400円

※生産終了

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公開日:2005.7.16