PHX

音質
 ややドンシャリ。細かい周波数特性にかなり癖がある。低域はトータルの量としてはやや多めなのだが、重心はあまり低くないし厚みも薄いので存在感はあまりない。多少ぼやけたり曇ったりする。中域はやや低めの音で、低域に埋もれ気味。それでいて、ソースによっては張り出したりして悪い意味で目立つ。高域はやや太く金属的で、中域よりは目立つ。低域・中域と比べると良質と言える。
 分解能は価格の割に悪い。一つ一つの音の微細な描写が不満。ただ、この価格のDJ用としてはこんなものか。音場感は外観通りで広さも明確さもいまいち。原音忠実性もいまいち。一聴して古いラジカセのような違和感がある。原音の粗や生っぽさは、最低限は感じられる。エッジのきつさは程々だが、中域が張り出すために疲れることがある。
 明瞭さ、音の鮮やかさはそれなり。厚みは普通からやや薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。どちらかと言えば明るくノリが良いが、DJ用ヘッドホンとしてはおとなしい。響きは適度からやや豊か、こもりや曇りが気になる。
 弦楽器は苦手。繊細さが足りないし、癖があって安心して聴けない。金管楽器はそれなりに鮮やかではあるが、多少癖が気になる。とは言え、弦楽器ほどではない。打ち込み系の音の表現はそれなり。音の質感の相性は悪くないが、低域の量感や音の厚みはやや不満。
 基本的に生楽器を聴ける音ではないし、ポップスやロックを聴くにしてもいまいち魅力に欠ける機種。

装着感
 悪い。側圧は普通で、特にずれやすいというようなことはない。ヘッドバンドのクッションは厚みはあるのだがやや硬めで、頭頂部が多少痛くなりやすい。
 イヤーパッドは耳のせと耳覆いの中間サイズ、上下左右に角度調節ができる。材質はレザータイプの人工皮革で、硬さは普通。

その他
 遮音性は普通、音漏れ防止は良好。
 作りは価格なりではあるのかもしれないが、1万円台のDJ用ヘッドホンと比べるとやや安っぽい。デザインなかなか良い。癖がなく万人受けするだろう。スイーベル機構で、折りたたみ可能。ヘッドホン本体側でもコードの着脱が可能で、カールコード(1.2m)、ストレートコード(3m)、ストレートコード(1.5m)の3種類が付属している。インピーダンスや音圧感度等のスペックは公開されていないが、実際に使用してみるとポータブル機器でも十分音量を取れるレベル。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さはいずれも約4mm、硬さは普通で、癖がついても簡単に戻せるので扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周88mm×88mm、内周46mm×46mm、深さ14mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ×3
1.5mストレートコード
3mストレートコード
キャリングポーチ
ベロアタイプイヤーパッド



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第56回 ヘッドホンの破損と経年劣化』

周波数特性グラフ


比較メモ
Alp Horn
Alp Hornはややかまぼこ、PHXはややドンシャリ。低域はPHXの方がやや量が多い。柔らかくぼやけている。重心の低さはほぼ同レベル。中域はAlp Hornの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域は微妙。ソースによってかなり印象が変わる。全体的な量は大差ないが、Alp Hornの方が線が太く明るい質で目立つことが多い。分解能はAlp Hornの方が若干上。一つ一つの音の微細な描写は大差ないが、音の分離はAlp Hornの方がやや上。音場感はPHXの方がやや広く、Alp Hornの方がやや明確。Alp Hornの方がやや頭内定位が気になりやすい。原音忠実性は微妙。どちらも一聴して違和感がある。原音の粗や生っぽさはAlp Hornの方がやや感じられる。エッジはAlp Hornの方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろAlp Hornの方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはAlp Hornの方がやや上。厚みはAlp Hornの方がややあるが、それよりもAlp Hornの方が硬く締まった音である点に目が行く。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはPHXの方がやや上。Alp Hornの方が切れやスピード感がある。PHXの方が低域の量に基づく迫力や力強さがある。響きはPHXの方が豊かでこもり感が気になる。弦楽器は微妙。どちらも音色が不自然。Alp Hornの方が生楽器らしさが感じられる点は良いが、PHXの方が柔らかく心地よい点は良い。金管楽器はAlp Hornの方が太く鮮やか。打ち込み系の音の表現はAlp Hornの方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量が欲しいならPHX、それほどでもないならAlp Horn。

ATH-PRO700
どちらもややドンシャリ。低域はATH-PRO700の方が重心が低く厚みもあるため、存在感がある。トータルの量は大差ないが、どちらかと言えばPHXの方が多い。中域はATH-PRO700の方が高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はATH-PRO700の方がやや高く明るい音で量も多め。この2機種を比べると、ATH-PRO700の方が高音よりと言える。分解能はATH-PRO700の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ差がある。音場感はATH-PRO700の方がやや広く明確。原音忠実性はATH-PRO700の方が上。一聴してやや違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。エッジのきつさはほぼ同レベル。高域はATH-PRO700の方がやや痛く、ヴォーカルのサ行等はPHXの方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-PRO700の方が上。厚みはATH-PRO700の方がややある。温かみはPHXの方がやや感じられるが、これは曇っていることによる部分が大きい。ヴォーカルの艶っぽさはATH-PRO700の方がやや上だが、スモーキーな感じを好むならPHXの方が良いだろう。ATH-PRO700の方が明るく元気でノリが良い。響きはPHXの方がやや豊かで、こもり感が気になる。PHXの方が全体的に柔らかくぼやけた音。弦楽器はATH-PRO700の方がうまい。PHXは生楽器らしさが不足。金管楽器はATH-PRO700の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はATH-PRO700の方がうまい。音の質感の相性、低域の量感、明るい鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはATH-PRO700、ATH-PRO700では明るすぎるとか高域が多すぎるといった場合にはPHX。

HD215
HD215はかなりフラット、PHXはややドンシャリ。低域は、トータルの量はPHXの方がやや多いが、HD215の方が重心が低く厚みがあるため存在感がある。中域はHD215の方が高い音で、低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。PHXは張り出したりして悪い意味で目立つことがあるが、HD215はそういうことはない。高域はHD215の方が高く明るい音。分解能はHD215の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ差がある。音場感はHD215の方が広く明確。原音忠実性はHD215の方が上。HD215の方が一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。エッジはHD215の方がややきつく、聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはHD215の方が上。PHXはHD215と比べると薄く曇っているように感じられる。厚みはHD215の方がややある。温かみは曇っている分PHXの方があるように感じられることもあるが、それを除けばHD215の方があるし、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではHD215の方が上。ヴォーカルの艶っぽさはHD215の方がやや上だが、スモーキーな感じを好むならPHXの方が良いこともあるだろう。HD215の方が明るく元気でノリが良い。響きはPHXの方がやや豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はHD215の方がうまい。PHXは不自然だし、HD215の方が生楽器らしさが感じられる。金管楽器はHD215の方がやや鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はHD215の方がうまい。音の質感の相性、切れ、明るい鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはHD215、HD215ではエッジがきついとか明るすぎるという不満があるならPHX。

HX-5000
HX-5000は低音よりのドンシャリ、PHXはややドンシャリ。低域はHX-5000の方がかなり重心が低く、量も多い。中域はHX-5000の方が癖がない。PHXは、ソースによっては張り出したりして悪い意味で目立つ。高域はソースによってかなり変わってくる印象だが、平均するとHX-5000の方がやや量が多く、細い質。PHXの方がやや金属的。広い目で見るとHX-5000の方がドンシャリという印象だが、細かい周波数特性の癖はPHXの方が大きいようにも感じる。分解能はHX-5000の方がやや上。音場感はHX-5000の方が若干広く明確。原音忠実性はHX-5000の方がやや上。PHXの方が一聴して違和感が大きい(特に中域)。原音の粗や生っぽさはHX-5000の方がやや感じられる。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、HX-5000は低域の量感で疲れることがあり、PHXは中域が張り出すために疲れることがある。明瞭さ、音の鮮やかさはHX-5000の方がやや上。厚みはHX-5000の方がある。温かみはほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさは大差ないが、HX-5000の方が癖がなく安心して聴ける。様々な点から見て、HX-5000の方がノリが良い。響きはPHXの方がやや豊か。弦楽器はどちらも苦手だが、HX-5000の方がやや心地よく、癖がなく安心して聴ける。金管楽器はどちらもなかなか鮮やかで楽しめるが、HX-5000の方がやや明るくシンプルな鳴らし方。打ち込み系の音の表現はHX-5000の方がうまい。音の質感の相性、低域の量感、音の厚み等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはHX-5000、HX-5000では低域が気になる場合にはPHX。

Z headphones
PHXはややドンシャリ、Z headphonesは低音よりのドンシャリ。低域はZ headphonesの方がかなり量が多く、ぼやけている。中域はPHXの方が低域に埋もれずはっきり聴こえてくるが、ソースによっては張り出したりして悪い意味で目立つ。音の高さにはあまり差がないが、PHXの方が癖がある音。高域はPHXの方が明るく金属的で目立つ。分解能はPHXの方がやや上。音の分離に差がある。音場感はPHXの方が広く明確。原音忠実性は微妙。Z headphonesの方が一聴して違和感がないが、それにしても低域の量が多すぎる。原音の粗や生っぽさはPHXの方が感じられる。エッジはPHXの方がややきつく、聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはPHXの方が上。厚みはZ headphonesの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはZ headphonesの方が上。どちらもノリが良い傾向だが、PHXは明るくやや軽い感じ、Z headphonesは低域の量に基づく迫力がある感じ。Z headphonesの方が粗がない。響きはZ headphonesの方が豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はZ headphonesの方が心地よく、癖がなく安心して聴ける。ただし、PHXの方が生楽器らしさが感じられる。金管楽器はPHXの方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はPHXの方がうまい。音の質感の相性で勝っている。使い分けるなら、PHXでは違和感が気になるならZ headphones、Z headphonesでは低域の量が多すぎるならPHX。あるいは、明るさや高域重視ならPHX、温かみや低域重視ならZ headphones。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



※生産終了。後継機はPHX USB。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック - - - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
265g 50mm 1.2m(カール) ※ 片出し 折りたたみ可能

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 2 3 4 4 3 均(低、高) 8600円

※非伸長時

※生産終了。後継機はPHX USB。

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公開日:2008.10.30