Alp Horn

音質
 ややかまぼこ。広い目で見ればそれほどバランスが悪いわけではないが、細かい周波数特性には癖がある。低域は若干少なめ。ローエンドは弱いが中低域はしっかり出る。どちらかと言うと締まっていてかつ曇り気味という独特の質。重心の低さは普通からやや高め。中域は低域に邪魔されず普通に聴こえてくるが、高いところが削られて鮮度に欠けるような癖がある。高域は中域と同量から若干少なめだが、明るめの質でそれなりに目立つ。線が太く伸びが悪い上、粗や癖が気になる。
 分解能は価格の割にやや悪い。音の分離はそれほどでもないが、一つ一つの音の微細な描写が不満。音場感は狭く明確さに欠けるし、頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はいまいち。周波数特性上の癖が大きく、一聴して古いラジカセのような違和感がある。原音の粗や生っぽさはそれなりに感じられる。エッジのきつさや聴き疲れは普通からやや悪め。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ鋭く刺さるようなことはあまりないが、やや粗っぽく痛い。
 明瞭さ、音の鮮やかさはそれなり。厚みはやや厚め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。全体的に粗があり繊細さに欠ける。どちらかと言うとノリが良い傾向。切れやスピード感は悪くないし、耳元でガンガン鳴らす感じのノリの良さがある。響きはややあっさりだが、その割にはこもり感が気になる。
 弦楽器は音色が不自然だし、繊細さや伸びにも欠ける。金管楽器は太く芯の通った音でそれなりに鮮やかかつ力強いが、やや癖があるし高域の伸びが足りない点も気になる。打ち込み系の音の表現はそれなり。音の質感の相性、切れ、厚み、低域の質等、様々な点から見て悪くない。もう少し癖がなく安定感があれば、なかなかうまいと評価できたと思われる。
 かなり癖が強いしコストパフォーマンスは悪いと言わざるを得ないが、低域の質や太く芯の通った中高域等、注目すべき点も持っている機種。

装着感
 悪い。側圧は普通からやや強めに感じられるが、構造上個人差がかなり大きいと思われる(頭の幅が広い人ほど急激に側圧が強くなる傾向がある)。ずれにくいが、ゴツゴツしていてあまりフィットしない印象。
 イヤーパッドはかろうじて耳を覆うサイズ、上下方向の角度調節ができない(ハウジング部がアームの根元から内側に折れ曲がる構造だが、角度調節とは言えないだろう)。左右方向は一応調節できるが、調節幅が狭い。人によってはまったく合わない可能性もあるだろう。材質はレザータイプの人工皮革で、かなり硬い。ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。ヘッドバンドが短いと言われているUR/40やDT770PROと比較しても明らかに短いため、要注意。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。ただし、音漏れ防止はきちんと密閉できた状態での評価であり、本機は装着状態によってはきちんと密閉できない可能性がある程度高いと思われるので、多少悪めに考えておいた方が良いかもしれない。
 作りは良いとは言えないが、デザインやカラーリングの個性によって安っぽさに目が行きにくい印象。ヘッドバンドの長さ調節の方法が変わっている。普通はヘッドバンドとハウジングを繋ぐアームがスライドしてヘッドバンドとハウジングの距離そのものが変わる構造になっているものだが、本機はヘッドバンドの下の頭部に当たるパーツだけが上下する。ヘッドホンはその用途からある程度フレキシブルなものが多いが、本機はフレキシブルとは言い難い。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約3mm、硬さはやや柔らかめで扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周84mm×62mm、内周50mm×32mm、深さ10mm。

付属品
1m延長コード



参考
周波数特性グラフ


比較メモ
HD201 Gaming
Alp Hornはややかまぼこ、HD201 Gamingはやや高音より。低域は微妙。ソースによってかなり印象が変わる。Alp Hornの方がやや曇り気味な質、HD201 Gamingの方がやや柔らかい質。重心はどちらかと言うとHD201 Gamingの方が低い。中低域はAlp Hornの方がやや出る。中域はHD201 Gamingの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はHD201 Gamingの方がやや量が多い。線が細く伸びが良い。どの帯域を見てもAlp Hornの方が癖がある印象。分解能はHD201 Gamingの方がやや上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はHD201 Gamingの方が上。音場感はHD201 Gamingの方がやや広く明確で癖がなく把握しやすい。Alp Hornの方がやや頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はHD201 Gamingの方が上。周波数特性上の癖が小さく、違和感がない。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはほぼ同レベル。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、基本的にAlp Hornの方が粗っぽい音でやや聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろAlp Hornの方が粗っぽく痛い感じ、HD201 Gamingの方がやや細く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはHD201 Gamingの方がやや上。厚みはAlp Hornの方がややある。温かみは中低域が出る分Alp Hornの方が感じられる印象だが、それを除けばほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさはHD201 Gamingの方がやや上。ただし、Alp Hornの方が低く落ち着いていていスモーキーなので、そういう表現を求めているならAlp Hornの方が良いこともあるだろう。HD201 Gamingの方が繊細。Alp Hornの方が耳元でガンガン鳴らす感じのノリの良さがある。響きはHD201 Gamingの方がやや豊か。Alp Hornの方がこもり感が気になる。弦楽器はHD201 Gamingの方がうまい。音色が自然だし、繊細で伸びも良い。金管楽器は弦楽器同様HD201 Gamingの方が自然。HD201 Gamingの方が細く綺麗。打ち込み系の音の表現はHD201 Gamingの方がややうまい。音の質感の相性で勝っている。ただし、線の細さが合わないように感じることがあるので、その場合にはAlp Hornの方が良いかもしれない。使い分けるなら、基本的にはHD201 Gaming、HD201 Gamingでは低域の質が合わないとか線が細すぎるという不満があるならAlp Horn。

PC-100
Alp Hornはややかまぼこ、PC-100はやや高音より。低域はほぼ同量だが、どちらかと言うとAlp Hornの方が多い。PC-100の方が締まっている。重心はPC-100の方がやや低い。中低域はAlp Hornの方がしっかり出る。中域はPC-100の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はPC-100の方がやや量が多い。PC-100の方が線が細く伸びが良い。Alp Hornの方が粗や癖が気になる。分解能はPC-100の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はPC-100の方がやや広く、明確で癖がない。Alp Hornの方がやや頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はPC-100の方が若干上。Alp Hornの方が周波数特性上の癖がやや大きく、違和感がある。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはほぼ同レベル。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、基本的にAlp Hornの方が粗っぽい音でやや聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろAlp Hornの方が粗っぽく痛い感じ、PC-100の方がやや細く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはPC-100の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみはAlp Hornの方が若干感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはPC-100の方がやや上。PC-100の方がノリが良くかつ繊細。PC-100の方が切れやスピード感がある。響きは、低域はAlp Hornの方がやや豊か、高域はPC-100の方がやや豊か。弦楽器は基本的にPC-100の方が繊細で良いが、Alp Hornの方が中低域が出る分チェロやコントラバスの音色が自然で心地よく感じられることはある。金管楽器はAlp Hornの方が太く芯が通っている感じ、PC-100の方が細く綺麗。打ち込み系の音の表現はPC-100の方がうまい。音の質感の相性で勝っている。使い分けるなら、基本的にはPC-100、PC-100では中低域が足りないとか高域が細く刺さるという不満があるならAlp Horn。

PHX
Alp Hornはややかまぼこ、PHXはややドンシャリ。低域はPHXの方がやや量が多い。柔らかくぼやけている。重心の低さはほぼ同レベル。中域はAlp Hornの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域は微妙。ソースによってかなり印象が変わる。全体的な量は大差ないが、Alp Hornの方が線が太く明るい質で目立つことが多い。分解能はAlp Hornの方が若干上。一つ一つの音の微細な描写は大差ないが、音の分離はAlp Hornの方がやや上。音場感はPHXの方がやや広く、Alp Hornの方がやや明確。Alp Hornの方がやや頭内定位が気になりやすい。原音忠実性は微妙。どちらも一聴して違和感がある。原音の粗や生っぽさはAlp Hornの方がやや感じられる。エッジはAlp Hornの方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろAlp Hornの方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはAlp Hornの方がやや上。厚みはAlp Hornの方がややあるが、それよりもAlp Hornの方が硬く締まった音である点に目が行く。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはPHXの方がやや上。Alp Hornの方が切れやスピード感がある。PHXの方が低域の量に基づく迫力や力強さがある。響きはPHXの方が豊かでこもり感が気になる。弦楽器は微妙。どちらも音色が不自然。Alp Hornの方が生楽器らしさが感じられる点は良いが、PHXの方が柔らかく心地よい点は良い。金管楽器はAlp Hornの方が太く鮮やか。打ち込み系の音の表現はAlp Hornの方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量が欲しいならPHX、それほどでもないならAlp Horn。

SE-900D
どちらもややかまぼこ。低域はSE-900Dの方が若干量が多い。Alp Hornの方が曇ったような質、SE-900Dの方が弾力があるような質。重心はSE-900Dの方が低い。中域はSE-900Dの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はSE-900Dの方が若干量が多い。SE-900Dの方が線が細く伸びが良い。この2機種を比べるとSE-900Dの方がドンシャリと言える。分解能はSE-900Dの方が上。特に一つ一つの音の微細な描写に差がある。音の分離も若干上。音場感はSE-900Dの方がやや広く明確で把握しやすい。Alp Hornの方がやや頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はSE-900Dの方が上。周波数特性上の癖が小さく、違和感がない。原音の粗や生っぽさはSE-900Dの方が若干感じられる。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、基本的にAlp Hornの方が粗っぽい音でやや聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろAlp Hornの方が粗っぽく痛い感じ、SE-900Dの方がやや細く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-900Dの方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSE-900Dの方がやや感じられる。SE-900Dの方がノリが良くかつ繊細。響きはSE-900Dの方がやや豊か。弦楽器はSE-900Dの方がうまい。音色が自然だし、繊細で伸びも良い。金管楽器はどちらも芯が通っていて鮮やかだが、Alp Hornの方が芯が太く、SE-900Dの方がやや明るい。打ち込み系の音の表現はSE-900Dの方がややうまい。音の質感の相性で若干勝っているし、癖がなく安定感がある点も良い。使い分けるなら、基本的にはSE-900D、SE-900Dでは低域の質が合わないとか高域が細く刺さるという不満があるならAlp Horn。

SK PRO
Alp Hornはややかまぼこ、SK PROは低音よりのドンシャリ。低域はSK PROの方がやや量が多い。Alp Hornの方が癖がある。SK PROの方がやや柔らかくぼやけたり曇ったりする。中域はAlp Hornの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中高域はAlp Hornの方がしっかり出る。高域はSK PROの方がやや量が多い。SK PROの方が線が細く粗がない。SK PROがハイハットをシャンと鳴らすところを、Alp Hornはチンと鳴らすような音色の違いがある。分解能はSK PROの方がやや上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写を丁寧に粗なくこなしてくれる。音場感はSK PROの方が広い。Alp Hornの方が頭内定位が気になる。原音忠実性はSK PROの方が上。一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさはAlp Hornの方がやや感じられる。エッジはAlp Hornの方がきつく聴き疲れしやすい。高域はAlp Hornの方が粗っぽく痛い感じ、SK PROの方が細く刺さる感じ。どちらかと言うとAlp Hornの方が痛い。ヴォーカルのサ行はAlp Hornの方がかなり痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはAlp Hornの方がやや上。厚みはAlp Hornの方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSK PROの方が上。Alp Hornの方がノリが良い。切れやスピード感がある。響きはSK PROの方がやや豊か。SK PROの方が響きが綺麗で柔らかい。弦楽器はSK PROの方が繊細かつ心地よいし、音色も自然。金管楽器はAlp Hornの方が太く鮮やかだが癖が大きい。打ち込み系の音の表現はAlp Hornの方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の締まりや明瞭さ重視ならAlp Horn、原音忠実性や聴き疲れのなさ重視ならSK PRO。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



 










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック - 20Hz〜20.001kHz 120dB 33Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
195g 40mm 0.5m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 2 4 4 4 2 均(中) 18300円

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公開日:2009.11.28