HP1000

音質
 ややドンシャリ。低域は厚みは薄いが、ローエンドまで伸びており、量もそこそこ出る。この低域が全体的な音調を決定付けているように感じる。中域は地味だが、特に埋もれたりしない。高域はやや尖った表現で、量も十分。ソースによってはややきつめに感じられる。
 分解能、音場感、原音忠実性すべてそれなりだが、価格を考えれば悪くない。エッジはそれほどきつくなく、基本的には聴き疲れしないが、高域がやや粗いためソースによっては疲れるかもしれない。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みは薄い。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはかなり良い。価格を考えればこれ以上は望めないレベルだろう。比較的繊細で、非常におとなしめで暗い音調。そういう意味ではbeyerdynamicと似ている。響きは豊かで、切れには欠ける。濃い音は期待できないが、心地よく温かみに溢れ、この価格帯ではほとんどお目にかかることの出来ないウォームで音楽性のある表現が楽しめる。
 弦楽器は繊細で且つ心地よいが、やや薄い音なのが気になる。金管楽器は鮮やかさが足りない。地味な表現。ただしハイハット等はしっかり聴こえてくる。打ち込み系の音の表現はうまくない。低域の厚みが足りないし、明るい表現が苦手。
 コストパフォーマンスはかなり良いが、打ち込み系の音等の無機質な曲には決定的に合わない可能性が高い。

装着感
 良好。側圧は普通で、ヘッドバンドの上下位置が調節可能な特殊な構造で頭頂部への圧迫感も少ない。欲を言えば頭頂部のスポンジをもう少し厚くしてほしかった。また、重量がやや重めだが、装着感が良くずれにくいためあまり気にならない。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はフカフカの布製で、肌触りは良いが夏場は少し暑いかもしれない。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。
 ヘッドホン本体側でもコードの着脱が可能なのは良いが、ロックできないためやや不安。デザインは正直いまいちで、作りも良いとは言えない。しかし、それを補って余りある音質と装着感を備えている。この価格では珍しく収納ケースが付属しているのがうれしい。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、硬くはないが、癖が付きやすく表面に細かいスリットが入っていて滑りにくいためやや扱いづらい。あまり雑に扱うと手が痛い。イヤーパッドのサイズは、外周110mm×102mm、内周60mm×44mm、深さ18mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
収納ケース



参考
不定期コラム『第6回 価格別favorite headphones』
不定期コラム『第9回 予算2万円の開放型ヘッドホン比較』
不定期コラム『第19回 収納ケース特集』

HPとHPAの相性『HP1000』

周波数特性グラフ


比較メモ
DR150
どちらもややドンシャリ。低域は質・量ともにそれなりに近いが、DR150の方が厚みがある。中域はどちらも癖なくはっきり聴こえてくる。中高域はDR150の方が量が多い。高域はDR150の方が太く金属的。HP1000の方が細く繊細。分解能はDR150の方がやや上。音場感は、広さにはそれほど差を感じないが、DR150の方が明確。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはHP1000の方がやや良いが、原音の粗や生っぽさはDR150の方が感じられる。エッジはDR150の方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはDR150の方が上。厚みはDR150の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP1000の方がやや上。DR150の方がエネルギッシュでノリが良い。HP1000の方が上品でおとなしい。響きは微妙。DR150の方が芯の通った音で切れも感じられるために響きがあっさりに感じる面もあるのだが、一つ一つの音の響きを細かく比べてみるとHP1000より響いていることが多い。これは、HP1000の方が柔らかくぼやけた音であることも一因だろう。ヴォーカルものや室内楽をしっとり聴きたいときにはHP1000の方が良いが、切れやスピード感の必要な曲はかなり苦手。そういう意味で、DR150の方がオールマイティー。弦楽器はHP1000の方が心地よいが、DR150の方が生楽器らしさがあり、どちらが良いかは好みが分かれるだろう。ただ、基本的にはどちらもなかなかうまい。金管楽器はDR150の方が鮮やかで力強い。打ち込み系の音の表現はDR150の方がうまい。音の厚み、切れ、ダイナミックさで勝っている。使い分けるなら、基本的にはDR150、ヴォーカルや弦楽器を心地よく聴きたいならHP1000。あるいは、聴き疲れを避けたいならHP1000、そうでもないならDR150。

DT880
HP1000の方が低音より。低音はHP1000の方が出るが、高音はDT880の方が出る。分解能はDT880の方が良い。音場感はほぼ互角。原音忠実性ではDT880の方が一歩上。どちらもエッジが若干きつめだが、刺激として楽しめるレベル。明瞭さはDT880の方が上。HP1000は低域が支配的で明瞭とは言えない。ただし、それでもハイハットなどの高域は非常に良く聴こえてくる。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらもなかなか良いが、どちらかと言えばHP1000が良い。DT880はさわやかで刺激的な音調だが温かみはある、HP1000は温かみと刺激を両立した音調。どちらもノリが良いのだが、音の伸びが良いのとウォーム過ぎる嫌いがあり打ち込み系の曲には合わない。音の厚みはともかくスピード感に欠ける。響きはDT880はあっさりめ、HP1000は豊か。弦楽器はほぼ互角。金管楽器はDT880の方が良い。得意分野はどちらもジャズで、ジャズならDT880の方が一枚上手。HP1000は温かみと刺激を両立させ、しかも女性ヴォーカルが非常に美しいので、女性ヴォーカルをじっくり聴き込むのに適していると思う。

HD595
HP1000はややドンシャリ、HD595はやや低音より。低域はどちらも超低域までしっかり出るが、どちらかというとHD595の方が強めなようだ。高域はHP1000の方がかなり出る。分解能はほぼ互角、音場感や原音忠実性はHD595の方がやや良い。HP1000の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さや音の鮮やかさはどちらもいまいちだが、若干HD595の方が良いか。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらも非常に良いが、若干HP1000の方が勝っている。どちらもノリが良いというよりは繊細。響きはHP1000の方が豊か。弦楽器はどちらも非常に心地よく楽しめるが、どちらか選ぶならHD595か。金管楽器はHP1000の方がやや高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はHD595の方がやや得意。得意分野はHP1000はジャズ、HD595はポップス。使い分けるならポップスや弦楽器メインの曲はHD595、それ以外はHP1000。

HD650
HD650はやや低音より、HP1000はややドンシャリ。低域はそれなりに似ているが、HD650の方がやや厚みがあり量が多い。中域はどちらもあまり前に出る感じではない。特に癖がない点も似ている。高域はHD650の方が太く金属的、HP1000の方が高く鋭い。分解能はHD650の方が上。音の分離に差がある。音場感はHD650の方が広く明確。原音忠実性はHD650の方がやや上。原音の生っぽさが感じられる度合いに差がある。エッジのきつさや聴き疲れはほぼ同レベル。ただ、ソースによってはHP1000の方がやや高域が尖っている点が気になることがある。明瞭さ、音の鮮やかさは微妙。HP1000の方が薄く曇っているように感じることもあるが、その反面ハイハット等の高域が目立つソースでは明るく感じられることもある。基本的には大差ないが、ソースによって多少違ってくるという印象。厚みはHD650の方がある。温かみはどちらも非常に良く感じられ、ほぼ互角。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。HD650の方がやや芯が通っている感じ、HP1000の方が付帯音が多い感じ。どちらも繊細で心地よいが、HD650の方がダイナミックで力強さが感じられる。響きはどちらも豊かで、ほぼ同レベル。クラシックを聴くなら、HD650はオーケストラ、HP1000は室内楽という印象。弦楽器はどちらも繊細かつ心地よい。HD650の方が生楽器らしさが感じられる。HP1000の方が心地よさに特化している印象。金管楽器はHD650の方が太く力強い。音の高さとしてはHP1000の方がやや高いのだが、特に明るく感じられるわけではない。ただし、ハイハットやシンバルはHP1000の方が目立つ。打ち込み系の音の表現はどちらもうまくないが、HD650の方が音の厚みやダイナミックな鳴らし方で良いことが多い。使い分けるなら、基本的にはHD650、高域の刺激やヴォーカル等の味付けが楽しみたいときはHP1000。

HP830
どちらもややドンシャリ。超低域はHP1000の方がかなり出るが、厚みはHP830の方がある。中高域はHP830の方がかなり出るが、高域〜超高域はほぼ同量。HP830の方が高音よりといった方が分かりやすいかもしれない。分解能、音場感、原音忠実性はすべてHP1000の方が上。HP830の方がややエッジがきつい。明瞭さ、音の鮮やかさはHP830の方が上、厚み、密度、情報量、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさ、繊細さはHP1000の方が上。響きはHP1000の方が豊か。弦楽器はHP1000の方が伸びが良く自然で心地よいが、金管楽器はHP830の方が一段高い音で鮮やか。打ち込み系の音の表現はHP830の方がうまい。得意分野はHP830はポップス、HP1000はジャズ。使い分けるならポップスやロック、ブラスメインの曲はHP830、それ以外はHP1000。メーカーが同じにしてはかなり違う音を鳴らしてくれるので、使い分けしやすい。また、どちらもなかなかコストパフォーマンスが良い。

PROline2500
PROline2500の方がドンシャリ。低域の厚みにしろ、高域の量にしろ勝っている。PROline2500の高域は癖があり、非常に金属的な音だが、HP1000はかなり自然。分解能、音場感ともにPROline2500の方がやや良い。原音に近いのはHP1000だが、PROline2500の方が音に生っぽさがあり、実体感では負けていない。どちらもエッジがややきつめで刺激的だが、刺激と言う意味ではPROline2500の方が上。明瞭さはほぼ互角。PROline2500は低域がかなり出る分高域も出るのに比べて、HP1000は低域が薄めで高域もそれほど出ていない。音そのものの鮮明さではPROline2500の方が上だが、全体的にはバランスの良いHP1000も負けていない。温かみやヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、PROline2500はサ行の音等がかなり痛いのに比べてHP1000はそれほどでもない。ノリの良さならPROline2500、繊細さならHP1000だが、HP1000にしてもそれほど繊細と言うわけではない。響きはPROline2500の方がかなり豊か。弦楽器はPROline2500の方が芯の通った生っぽい音だが、HP1000の方が流麗で美しい。金管楽器はPROline2500の方が良い。どちらも打ち込み系よりは生楽器の方が得意だろう。この2機種は聴く音楽のジャンルによって使い分けると言うよりも、どの程度の刺激を求めるかで使い分ける方が良いように思える。どちらも刺激的ではあるのだが、最高レベルの刺激はPROline2500、ほどほどの刺激はHP1000といった感じ。

SE-A1000
どちらもドンシャリ気味だが、低音の厚みは若干SE-A1000の方があるように感じる。これはどちらかというとHP1000が薄いようにも思う。HP1000は中域が凹んでいるわけではないが、SE-A1000はやや凹んでいる。分解能、音場感ともにHP1000の方が良好。どちらもあまり原音に近いとはいえず、意図的に味付けしてある。味付けは、SE-A1000が聴きやすさと迫力、HP1000が温かみと刺激。どちらかと言えばHP1000の方が自然で原音に近い。SE-A1000の方がエッジがきつくなく聴きやすいが、HP1000も刺激として楽しめる範囲。どちらもそこそこ明瞭だが、どちらかと言えばHP1000の方が明瞭。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHP1000の方が上。ノリの良さでは低域の厚みがある分SE-A1000の方が上。響きはSE-A1000は豊か、HP1000は適度。弦楽器はHP1000、金管楽器はSE-A1000の方が美しい。使い分けるならSE-A1000は打ち込み系等のポップス、HP1000はそれ以外といった感じか。

SHP8900
HP1000はややドンシャリ、SHP8900は低音よりのドンシャリ。低域はSHP8900の方がかなり厚みや量感がある。HP1000の方が薄く曇ったような低域。中域はどちらも低域に埋もれたりせずに聴こえてくるが、SHP8900の方がやや高い音で、ソースによっては張り出すような感じで目立つ。ただ、低域・高域と比べたときの相対的な量はHP1000の方が多い。高域はSHP8900の方が太く金属的で、やや粗がある。HP1000の方がハイハット等を細く繊細に鳴らしてくれる点に差が出る。分解能はほぼ同レベルだが、どちらかと言えばHP1000の方が良いか。音の分離はSHP8900の方がやや良く、一つ一つの音の微細な描写はHP1000の方が細やかに丁寧にこなしてくれる。音場感はSHP8900の方がやや広く明確で、見晴らしが良い。原音忠実性はHP1000の方がやや上。周波数特性上の癖のなさで勝っているし、中域が張り出したりしない点が良い。SHP8900はサラサラした音の質感が魅力的に感じられることも多いのだが、原音とは違うと感じる一因にもなっている。原音の粗や生っぽさはSHP8900の方がやや感じられる。エッジはSHP8900の方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはSHP8900の方が上。厚みはSHP8900の方がある。温かみはHP1000の方がかなり感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはHP1000の方が上だが、ポップス等の明るい女性ヴォーカルはSHP8900の方が魅力的。ただし、ソースによっては張り出すような感じが気になることがある。SHP8900の方が明るく元気でノリが良い。HP1000の方がしっとりと落ち着いている。響きはHP1000の方が豊か。SHP8900の方が抜けが良く爽やかで開放的。弦楽器はHP1000の方が繊細かつ心地よいし、伸びも良い。ヴァイオリン等の明るく瑞々しい感じを出して欲しいならSHP8900の方が良いが、粗は多少気になる。金管楽器はSHP8900の方がやや明るく鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はSHP8900の方がかなりうまい。音の質感の相性、低域の量感、音の厚み、元気の良い鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、クラシックやジャズはHP1000。ポップスやロックはSHP8900。あるいは、しっとり落ち着いた表現を求めるならHP1000、明るく爽やかに鳴らして欲しいならSHP8900。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第1回 dandelion/KOKIA
第17回 LEGEND/中島美嘉「Music」より
第32回 Left Alone/Mal Waldron
第34回 Sogna Fiore Mio (Ninna Nanna Sopra la Tarantella)/「La Tarantella」より
第36回 Change The World/babyface 「a collection of his greatest hits」より
第39回 川の流れのように/美空ひばり「川の流れのように〜不死鳥パートU〜」より
第42回 マタイ受難曲/バッハ
第50回 feel the moon/チェン・ミン「MOON-月亮心-」より
第68回 All The Love In The World/hard Romantic「Sincerely」より





※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 5Hz〜40kHz 106dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
330g 50mm 4m 片出し 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 2 2 3 1 均(高、低) 16000円
※生産終了

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公開日:2004.11.28