第32回 Left Alone/Mal Waldron
Mal Waldronは1950年代から約40年間に渡り活動したジャズピアニストです。
曲は、Billy Holiday の伴奏者であったMal Waldronが彼女に捧げた追悼曲です。Mal WaldronのピアノとJackie McLeanのアルトサックスが、悲しく重苦しい雰囲気を醸し出しています。
ヘッドホンとしては、悲しく重苦しい雰囲気をしっかり伝えてくれるものが良いでしょう。
・1台目 HP1000(PHILIPS)
思ったとおり、かなり相性が良いです。各楽器にしっかりと艶が乗って魅力的ですし、何より全体の雰囲気がマッチしています。HP1000はソースによってはやや高域が痛いことがありますが、今回の曲は高域が弱い(と言うかほとんど入っていない)ため、まったく気になりません。正直、1万円代前半のものとしては非常に良いと思います。
不満点は、もう少し低域に量感があっても良いか、という程度でしょうか。
・2台目 DT990PRO(beyerdynamic)
1台目の不満点を解消して、しかもこの曲の雰囲気を余さず伝えてくれそうな機種ということで選びました。
期待通りの鳴らし方です。1台目と比べてベースがしっかりと音楽全体を支えていますし、各楽器の艶の乗り具合も申し分ありません。
これでほぼ満足してしまいましたが、違う傾向の鳴らし方としてもう少しあっさりしていて粗のない鳴らし方も良いかもしれないと思いました。
・3台目 SR-007+SRM-717(STAX)
少し乱暴な気もしましたが、意外と合いそうだと思い選びました。
各楽器の艶は、コンデンサー型特有の質感もあるものの、なかなか良いように感じます。1、2台目と比べて確実に粗のない鳴らし方ですし、雰囲気の出し方や低域の量感という意味でも引けを取りません。コストパフォーマンスという見方をするなら2台目に負けるでしょうが、全体のパフォーマンスという意味ではほぼ同等で、傾向の違いの方が大きいように感じます。
今回のような曲にはDT990PROが非常に合うという考えを証明するような結果になりました。暗めの音調、低域の量感、艶といったものが、他の機種ではなかなか感じられない風合いを醸し出してくれます。
1台目のHP1000についてはDT990PROと比べると若干劣るようには感じますが、低域の量感以外の点についてはほとんど同レベルと言って良いでしょう。
また、SR-007+SRM-717についてはクラシックが得意というような印象がありますが、生楽器の表現力、低域の量感、繊細さというような点で、クラシックだけでなく今回のような曲にも合うように感じました。
このように、今回は価格に応じて3台の中から選べば良いというような結果になっていると感じます。
試聴は下のamazonのページで。
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