HP1000

AT-HA2002
 AT-HA2002をもってしてもHP1000の暗めの音調は払拭しきれないが、多少は明るくすっきりになるように感じる。HD650とAT-HA2002のような相性の悪さを若干感じるものの、基本的には悪くない。HD53ではローエンドまで伸びている低域が、やや塊になってしまうような感じ。もっとも、元が非常に薄いのでこれくらいの方が良いと言う人も多そう。高域は非常に綺麗に鳴らしてくれる。情報量はAT-HA2002の実力を出し切れていないように感じる。残響音はあっさりだが、HP1000自体の残響音が豊かなので、一般的な見方をするなら適度だろう。
 HD53やHA-1Aと比べてやや明るく芯が通った表現になるものの、HP1000の持つヴォーカルの艶っぽさはしっかり感じられる。曇りはある程度は晴れてくれるので、ソースによってはこれくらいの方が良いと感じる人もいるだろう。特にポップスを聴くならこの組み合わせが良さそう。コーラスは、分離は良いのだが、やや協調性に欠けるように思う。ピアノはHA-1AやHD53と比べてワンランク上の表現と言える。HP1000にしてはかなりしっかりした輪郭があり、それでいて心地よい。ロックはHP1000にしてはかなり切れが良く、低域の厚みや量もそれなりにあるため、楽しめる。HP1000でロックを聴くならこの組み合わせが良いだろう。打ち込み系の音との相性はHP1000とは思えないほど良い。低域の厚みが増し、中高域も鮮やか。オーケストラはバランスや各楽器の分離は良いが、ややあっさりした表現。ハイハット等の高域は、響きこそ物足りないものの粗がない表現はさすがAT-HA2002。ギターは軽快な表現が楽しめる。チェロ等の弦楽器はかなりあっさりだが、芯の通った感じや爽やかな感じを楽しみたいなら悪くないだろう。ブラスの表現は、HP1000の能力を考えればこれ以上望めないレベルと言って良い。オルガンはややあっさりで低域が物足りない感が残るものの、瑞々しい。

HA-1A
 非常にウォームで柔らかい音だが、高域の美しさもしっかり感じられる。HD53では紙のように薄いHP1000の低域だが、HA-1Aとの組み合わせではかなり厚みを増す。それでいて、あくまで柔らかい。情報量はそれほど豊かとは感じないが、それが気にならないくらい、とにかく心地よい。伸びが良く、残響音も非常に豊か。RS-1とHA-1Aの組み合わせのような音楽性を感じる。
 ヴォーカルはソースによっては曇りがちにはなるものの、非常に艶っぽい。曇りがちとは言っても、曇りさえ魅力的に感じさせる力を持っているように感じる。キンキンしたヴォーカルもあまり耳に痛くない。コーラスは分離が甘いものの、一体感が心地よい。ピアノの輪郭は甘いが、その反面、蕩けるように心地よい。ロックを聴くには残響音が豊か過ぎるし、音そのものも柔らかすぎる。打ち込み系の曲には合わないが、中高域の鮮やかさはHD53よりかなり良い。オーケストラは各楽器の分離はいまひとつなものの、雄大な表現を繰り広げる。ハイハット等の高域は低域に負け気味だが、それにしても美しい。全体的に、生楽器にはかなり合う。弦楽器の心地よさと言い、金管楽器の鮮やかさと言い十分。クラシックやジャズなら何でもそこそこ鳴らしてくれるだが、せっかく低域の厚みが増しているので、そこを生かしたいところ。ただし、ジャズはウッドベースの量感がHD53やAT-HA2002とそれほど変わらないように感じた。その点は残念なところ。ギターは響きが豊かで柔らかい。チェロはAT-HA2002の対極にあるような味わい深い表現が素晴らしい。ブラスはHD53ほどの粗はないが、AT-HA2002ほどの鮮やかさはない。オルガンはやや響き過ぎに感じるが、この辺りは好みだろう。濃い音が楽しめることは間違いない。
 HA-1A由来のノイズはやや気になるが、普通に音楽を聴く分には問題ないレベル。

HD53
 低域はローエンドまで伸びているのが心地よいが、厚みはかなり薄い。高域はややシャリつく。全体的に薄味。AT-HA2002と比べると情報量が少ないが、あまり差を感じない。これはHP1000の能力が限界ということだろう。HP1000とHD53の組み合わせでは、どちらから見ても互いの能力を良く引き出している。そういう意味でのコストパフォーマンスは最高レベル。HP1000にこれ以上のヘッドホンアンプはあまり意味が無いし、逆にHD53ではHP1000以上の能力を持つヘッドホンを十分鳴らしきるのは難しいだろう。その上で、HD53はHP1000の持つ能力をかなり引き出しているように感じる。ひとことで言えば、相性が良い。ただし、さすがにAT-HA2002やHA-1Aと比べるとやや粗があるようには感じる。残響音はHA-1Aほどではないものの、豊かと言ってよいレベル。
 ソースによっては曇っているようにも感じるが、しっとり系の女性ヴォーカルには、その曇りが温かみとなり、艶っぽさと合わさって絶妙なバランスで成立しているように感じる。ただ、かすれ気味のソースの場合にはかすれ過ぎに感じられることがある。HA-1Aと比べると硬いが、それでも十分柔らかい。コーラスは分離は悪くないが、粗が出やすい。ピアノはバランスは悪くないが、響きが豊かな割に密度が薄いためか、魅力に欠けるように感じる。ロックは低域の量はいいのだが、厚みが足りないためいまいち。打ち込み系の音は、あまり相性が良いとは言えない。低域は厚み不足だし、中高域の鮮やかさも足りない。ギターは意外と芯の通った音を鳴らしてくれる。ジャズはウッドベースが思ったよりなかなか良い量感。HP1000は基本的にかなり低域の厚みが薄いのだが、ウッドベースは何故かそれほど悪くない。オーケストラは、細部の表現にやや不満が残るものの、全体的なバランスは良い。ハイハット等の粗が残念。チェロ等の弦楽器はやや薄味で、AT-HA2002やHA-1Aと比べると一歩劣る感は否めない。ブラスは良くもなく、悪くもなくといった印象。目が覚めるような鮮やかさはない。オルガンは弦楽器同様やや薄味。

SXH2

 HP1000の低域の薄さがそのまま出る。SXH2との組み合わせでは他の機種との組合わせと比べてしっとりした滑らかな低域になっているように感じる。人によっては塗りつぶしたように感じて好きになれないかもしれないが、ある種の味わいがある。HP1000の高域は場合によってはややきつく感じることもあるが、SXH2との組み合わせではそのきつさは影をひそめる。全体的におとなしくまったりしていてどこか野暮ったい。エッジがきつくなくかなり聴きやすい反面、曇っていて明瞭さに欠ける。メリハリやノリの良さはまったく感じられない。非常に暗い音調と言って良いだろう。情報量は多くない。残響音は豊かと言って良いレベルだがHA-1Aほどではないし、それよりも伸びの良さや厚手のヴェールに包まれたような感覚が強い。元々ポップスやロックには向かない音調だが、その傾向は更に顕著になっている。
 ヴォーカルはなかなか艶っぽいが、曇りの魅力といった感じで、もう少し線の細さが欲しかったところ。曇っているヴォーカルはかなり曇りが気になる。かと言って、明るさや瑞々しさが求められるヴォーカルには合わないだろう。コーラスは分離がかなり悪い。ピアノのタッチは柔らかく、輪郭は甘い。ロックを聴くにはおとなしすぎる。厚み、切れ、刺激、テンションの高さ、スピード感といったものに欠ける。打ち込み系の音はとにかく低域の厚みと音の鮮やかさが足りない。オーケストラは低域の量があるだけはあり、それなりに迫力があるが、かなりアバウトな表現に感じられる。やはり音の厚みや高域の鮮やかさが足りない。ジャズは予想通りウッドベースの量感が足りないが、全体的には渋くまとまっていて悪くない。古い録音に合う。ギターは必要なエッジは感じられるが、基本的にぬるめ。弦楽器は非常に滑らかで心地よいのだが、全体的にもう少し原音の粗や生っぽさが欲しかった。金管楽器はシンバル等の高域は悪くないのだが、中高域はもう少し頑張って欲しかった。これはHP1000本来のものだろう。オルガンは厚みが足りず、するすると流れていってしまう。合うソースには合うのだが、大抵のソースには暗すぎるだろうし、万人に勧めるには苦しい組み合わせ。
 また、HD53のようなボリュームのガリノイズやHA-1Aのような無音時のノイズがないのは良い。







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