第50回 feel the moon/チェン・ミン「MOON-月亮心-」より

 チェン・ミン(陳敏)は上海出身の二胡奏者です。二胡とは中国の伝統楽器で、日本ではしばしば胡弓と混同されますが、胡弓は日本の伝統楽器であり二胡とは別の楽器です。
 今回取り上げる曲はアルバムのタイトル曲と言っても良い1曲目の「feel the moon」です。主役は二胡ですが、他にシンセもかなり入ってきます。
 ヘッドホンとしては、二胡の独特の音をうまく表現した上で、シンセの表現もこなしてくれるものが良いでしょう。シンセ含めて、全体的に柔らかく温かみのある仕上がりになると良いと思います。


・1台目 HP1000(PHILIPS)
 DR150と最後まで迷ったのですが、HP1000の方が柔らかい感じにまとまっていたので、こちらにしました。DR150はHP1000と比べるとややソースの粗を拾ってしまうようで、心地よさではHP1000には及ばなかったものの、なかなかの表現でした。
 不満点は、もう少し濃くてしっかりした音でも良いというくらいでしょうか。

・2台目 HD650(SENNHEISER)
 1台目の不満点を踏まえ、PROline2500やDT880でも聴いてみたのですが、PROline2500は主役の二胡が目立たずに駄目、DT880はHD650と比べると少し軽い感じがして駄目、ということでHD650を選びました。
 HD650で今回の曲を聴くと、HD650が低音よりで曇った機種であるというような風評がまったく気にならない音です。基本的には温かみに溢れ、全体のバランスも良くまとまっているのですが、各所に力強さが見受けられ、ぐいぐいとリスナーを引き込むのです。演奏の強弱をしっかり感じさせてくれるのも、良いヘッドホンの証だと思います。
 不満点はありません。HD650は温かみのある表現を重視して選んだので、少し違う聴き方もあるのではないかと思います。

・3台目 AH-D5000(DENON)
 温かみのある路線ではなく、透明感のある路線で選んでみました。二胡というのはヴァイオリン等と比べるとどこか濁っていて、それが独特の魅力を生んでいるのですが、AH-D5000はその濁りまで含めて透き通るようなピュアな音を聴かせてくれます。その上、HD650と同様全体のバランスが良いです。


 2台目と3台目でどちらが良いかは、好みの問題だと思います。それほどAH-D5000の鳴らし方も良かったと言えます。
 なお、今回は取り上げませんでしたが、STAXも素晴らしい表現でした。HD650の温かみとAH-D5000の透明感を兼ね備えたような表現です。
 そのあたりのバランスは好みだと思いますので、自分に合ったものを探してみてください。


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