第42回 Dance With My Father/Luther Vandross「Dance With My Father」より

 Luther VandrossはアメリカのR&B歌手です。ブラコン(ブラック・コンテンポラリー)の第一人者として知られています。
 今回取り上げるのは2003年発表のアルバム「Dance With My Father」の7曲目です。2004年のグラミー賞で「最優秀楽曲賞」「最優秀R&Bアルバム賞」「最優秀R&B歌唱賞(男性)」を受賞しています。基本的にはしっとりと聴かせるタイプの曲ですが、その反面高域がかなり刺激的なアレンジでもあります。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「男性ヴォーカルがいかにウォームかつリアルに聞こえるか、を重視して頂けるとうれしいです」とのことです。言い換えると、音色の自然さ、硬さ・柔らかさ等の質感、擦れの表現といった点が重要になってくるのではないかと思います。


・1台目 PortaPro(KOSS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。音色の不自然さや質感の硬さがなく聴きやすいです。擦れをある程度出してくれる上に、その擦れの質が耳障りではなくむしろ心地よい点も魅力です。
 他にはDT231PRO、MDR-XB700、PX100、SHP2500等で聴いてみました。DT231PROは最後までPortaProと迷いましたが、低域の量が多い上に高域の刺激が控えめなぶん全体としてはPortaProの方が若干ウォームで聴きやすいように感じられたのでそちらにしました。とは言え、ヴォーカルだけを見るならDT231PROの方が若干音色が明るいかもしれないという程度で、ウォームさにしろリアルさにしろ甲乙つけがたい印象です。MDR-XB700はPortaProと比べると質感がやや硬く擦れの質も魅力的ではありません。PX100は悪くないのですが、PortaProと比べると若干塗りつぶしたように擦れを出してくれないので外しました。SHP2500は擦れを出してくれる点は良いのですが、その擦れの質がPortaProやDT231PROと比べると不自然で耳障りです。
 不満点は特にありませんが、この方向性でより良いものを探してみたいと思います。

・2台目 MUSIC SERIES ONE(ALESSANDRO)
 特に擦れの表現が良かったので選びました。1台目と同様、耳障りではなくむしろ心地よい擦れです。質的には1台目よりも若干繊細で透明感がある傾向の擦れになります。音色の不自然さや質感の硬さも特に問題ありません。
 他にはATH-AD700、DTX900、SRH840、SW-HP10、T50RP等で聴いてみました。ATH-AD700は擦れの表現は悪くないのですが、音色がやや明るめなのでウォームさが不足気味ですし、高域が痛い点も多少気になります。DTX900は最後までMUSIC SERIES ONEと迷いましたが、MUSIC SERIES ONEの方が擦れの表現が若干繊細でリアルだったのでそちらにしました。とは言え、リアルさよりもウォームさを重視するのであれば、声がやや太く柔らかい分DTX900の方が若干有利な印象です。SRH840は落ち着いた音色で聴きやすいのですが、擦れはもう少し出して欲しい印象です。SW-HP10は悪くないのですが、MUSIC SERIES ONEと比べると擦れの質でやや見劣りします。T50RPはある意味ウォームなのですが、薄く曇っていて塗りつぶしたように擦れを出してくれないのでリアルとは言いがたいです。
 不満点は1台目と同様特にありません。引き続きこの方向性でより良いものを探してみたいと思います。

・3台目 RS-1(GRADO)
 特に擦れの表現が良かったので選びました。この点については今回聴いた中で最も良いように思います。音色の自然さはそれほどでもありませんが、違和感は特に酷くはありません。ただ、音色が明るめなので、音色の暗さによるウォームさはあまり感じられません。全体のバランスは悪くありませんし、ヴォーカルがしっかり前に出てくる点もどちらかと言うと長所になるでしょうが、高域の痛さはやや気になる傾向です。とは言え、擦れを含む質感のリアルさとそれによるウォームさは欠点を補って余りあると思います。
 不満点は、やや明るく高域の痛さも気になる点です。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。この点については適度に改善されます。音色の自然さや擦れの出し具合といった点でかなりバランスが良いように思います。3台目よりは2台目に近い印象です。
 他にはAH-D5000、EXH-313、HD650、PS500等で聴いてみました。AH-D5000は音色が自然でソースをそのまま鳴らすという意味ではリアルですが、あまりウォームではありませんし擦れの表現も特に魅力的ではありません。EXH-313はある意味ウォームなのですが、作ったように滑らかなところがあってあまりリアルではありません。HD650は最後までDT880と迷いましたが、もう少し擦れを出してくれても良いように感じたので外しました。とは言え、声の柔らかさや全体の聴きやすさを優先するのであればHD650の方が良いと思います。PS500は擦れの表現は悪くないのですが、音色にはやや癖がありますし、低域・高域ともに主張が激しく全体のバランスが良くありません。

・5台目 Westone3(Westone)
 かなり迷ったのですが、最終的にはこれになりました。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelは擦れの表現は良いもののウォームさはそれほどでもなく高域が痛い点も気になる、IE8はウォームで聴きやすいものの擦れの表現はそれほどでもない、SE535はHiDefJax AcousticSteelほどの擦れの表現もIE8ほどのウォームさもない等の不満がありました。HiDefJax AcousticSteelとIE8の良いとこ取りをしたいと考えた結果Westone3になったのですが、どっちつかずになってしまっている気もします。とは言え、単品で見ると決して悪くありません。
 他にはHP101とSHE9700が良かったです。どちらも音色の自然さと低域に基づくウォームさがある程度あり、擦れもそれなりに出してくれます。


 今回はどれも良かったように思います。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。ウォームかつリアルという条件にぴったりです。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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