第71回 ミラクルペイント/OSTER project feat. 初音ミク「OSTERさんのベスト」より
OSTER projectはニコニコ動画でVOCALOID(ヤマハが開発した音声合成技術)を使った楽曲を発表していることで有名なOSTERを中心とした音楽ユニットです。初音ミクは元々は単にVOCALOIDに対応したライブラリでしたが、現在はユーザーにより様々な展開がされており一言で表すのが難しい存在になっています。
今回取り上げるのは2012年発表のベストアルバム「OSTERさんのベスト」の15曲目です。ヴォーカルは初音ミクで、独特で人工的な女性ヴォーカルになっています。楽器としてはピアノ、ウッドベース、ドラムス、トランペット等(のような音)が使われています。曲調はジャジーです。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「ボーカロイド音源なんですが、このアルバムでは楽器を使っての演奏も行われているため、ボカロと楽器の融合的な部分をどんな感じで聴けばいいのかなと思いまして」とのことです。大雑把に分けると、初音ミクの声を人工的な感じに聴きたいのか、それとも普通の人間のように聴きたいのかでまったく違ってくるのではないかと思います。今回の曲ではあまり人工的だと楽器の演奏から浮いてしまう上に結果としてそういうヘッドホンでは楽器の音まで人工的になってしまう傾向だと思いますし、逆にあまり人間らしいと今回の曲の可愛らしさが感じられなくなってしまう上に別に初音ミクでなくても良いのではという話になりそうな気もします。その辺りはおそらく人それぞれで、今回のリクエストではどうなのか正確には分かりませんが、探索は色々聴きながらできれば良いとこ取りを目指してみたいと思います。
・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。ヴォーカルは人工的と言うよりは普通の人間のように鳴らしてくれる傾向ですが、それでいて可愛らしさが感じられないということはありません。ヴォーカルは演奏から浮きませんし、演奏もそれらしく聴こえます。ジャジーと言うかほとんどジャズという印象です。まとまりが良く違和感なく聴けますし、作り手はこういう風に聴いて欲しかったのではないかという気さえします。
他にはATH-TAD500、ATH-WS70、MDR-ZX700、PRO DJ100、PortaPro等で聴いてみました。ATH-TAD500は最後までDT231PROと迷いましたが、DT231PROの方が若干可愛らしくかつヴォーカルが演奏から浮かないように感じられたのでそちらにしました。ATH-WS70はすべての音が不自然で違和感しかありません。MDR-ZX700はヴォーカルが演奏から浮かない点は良いのですが、すべての音が丸めてある感じで可愛らしさも生楽器らしさもあまり感じられません。PRO DJ100は可愛らしさが感じられる点は良いのですが、ヴォーカルが演奏から浮き気味ですし、ジャズらしさがほとんど感じられず普通の初音ミクの曲という印象を受けます。PortaProはヴォーカルが演奏から浮かない点は良いのですが、低域の量が多すぎるせいかヴォーカルが演奏に埋もれるという印象の方が強くなります。
不満点は特にありませんが、もう少し明るく可愛らしさが感じられる傾向でも良かったかもしれません。
・2台目 ES-HF300(ONKYO)
1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。明るく可愛らしいだけでなく初音ミクらしい質感も感じられますが、その割に不自然な感じはあまり大きくありません。1台目と比べるとヴォーカルが演奏から浮きますしジャズらしさも感じられませんが、これは1台目ができすぎという面が強いと思いますし、明るく可愛らしいものを選んだ時点で仕方ない気もします。今回聴いた他の機種と比べると特に問題ないレベルです。
他にはDJ1 PRO、DTX900、MDR-1R、SRH840等で聴いてみました。DJ1 PROはヴォーカルが人工的な傾向で演奏から浮くので外しましたが、ある種のグルーヴ感のようなものがあって1台目とはまた違ったベクトルのジャズらしさが感じられますし、可愛らしさも十分でこれが最高と言う人もいるのではないかと思います。DTX900は1台目と似た傾向でなかなか良いのですが、明るいどころか若干暗くなってしまいます。MDR-1Rはヴォーカルが演奏から浮かない点は良いのですが、低域の量が多すぎるせいかヴォーカルが演奏に埋もれるという印象の方が強くなりますし、可愛らしさもあまり感じられません。SRH840は最後までES-HF300と迷いましたが、ES-HF300の方が若干明るく可愛らしいように感じられたのでそちらにしました。
不満点は、ウッドベースの質にやや癖がある点です。
・3台目 DT880(beyerdynamic)
2台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。2台目より1台目に近い傾向で、可愛らしさよりもヴォーカルが演奏から浮かない点や演奏がそれらしく聴こえる点が魅力です。ジャズらしさが感じられる点も似ていますが、1台目以上に違和感がない上、音場的な意味で窮屈さがなく聴きやすい面もあります。
不満点は特にありませんが、1台目と同じくもう少し明るく可愛らしさが感じられる傾向でも良かったかと思います。
・4台目 RS-1(GRADO)
3台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはしっかり改善されます。3台目と比べると全体的に明るいため受ける印象はかなり違ってきますが、それでいてジャズらしさはきちんと感じられます。ヴォーカルが演奏から浮くと言えばそうなのですが、それよりもヴォーカルを含めたすべての音が主張してくると言った方が適切な印象です。
他にはDT990 Edition 2005、HD650、SRH1840、SRS-4040等で聴いてみました。DT990 Edition 2005は高域が痛すぎます。HD650は悪くないのですが、あまり可愛らしさが感じられる傾向ではありません。SRH1840はHD650よりは可愛らしさが感じられますが、低域がやや物足りない感じでヴォーカルが演奏から浮き気味です。SRS-4040は可愛らしさが感じられる点は良いのですが、やや癖があり万人向けと言うより別の世界を作っているような印象です。不満点の関係もあってこういう結果になりましたが、3、4台目は正直どれが選ばれてもおかしくなかったように思います。
・5台目 Image X10(Klipsch)
最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。ヴォーカルは人工的と言うよりは普通の人間のように鳴らしてくれる傾向ですが、可愛らしさもそれほど悪くはありません。ヴォーカルは演奏から浮きませんし、まとまりが良く違和感なく聴けます。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK100PROはヴォーカル以外の音が目立ちすぎる、MDR-EX1000はヴォーカルが演奏から浮き気味、SE535は可愛らしさがあまり感じられない等の不満がありました。
他にはK374とHP-CN40が良かったです。どちらも最初に書いた条件をある程度満たしています。
今回はいつにも増して個人差の大きい曲・探索条件だったように思います。本文まで読んで考えてみてください。
ヘッドホンアンプは難しいところですが、可愛らしさ重視ならhpa200b(ハイエンド仕様)、ヴォーカルが演奏から浮かないこと重視ならHD-1L Limited Edition(RC1)といった感じになると思います。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴は下のamazonのページで。
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