第14回 ヴィオラ・ソナタ 作品147/ショスタコーヴィチ
今回はショスタコーヴィチです。暗い作品の多いショスタコーヴィチの曲の中でも、ヴィオラ・ソナタは特に暗く重苦しい部類に入ると思われます。ちなみにこの作品はショスタコーヴィチの最後の作品でもあります。今回とりあげたCDの演奏はキム・カシュカシャン(ヴィオラ)、ロバート・レビン(ピアノ)、録音は1990年です。録音状態も演奏技術もなかなか良いと思います。
曲の方はヴィオラとピアノだけのシンプルな構成です。Moderato,Allegretto,Adagioの3つの楽章から成ります。とにかく暗い曲調で、あまり主旋律らしい旋律も無く、どこか不安で不可思議な印象を受ける曲です。また、ピアノはかなり低域に偏っており、全体を通して見ても高域がほとんどないのも特徴です。
ヘッドホンとしては、無理に明るくするような機種は合わないでしょう。ヴィオラを原音に忠実に再現し、ピアノの低域の響きの再現の得意な機種が良いように感じました。
・1台目 MDR-CD900ST(SONY)
原音に忠実で、低域の響きが豊かということで選びました。悪くないのですが、どこか曇りを感じます。その割には聴き疲れしますし、音楽として魅力的かと問われると微妙なところです。
不満点としては、曇り、聴き疲れでしょう。と言っても、この曲自体非常に聴き疲れしにくい曲なので聴き疲れの方は大抵のヘッドホンなら問題ないと思われます。
・2台目 K501(AKG)
ちょっと極端だとは思いましたが、曇りのない弦楽器の表現という点では最高レベルのものを持っていると思い、選びました。
期待通りヴィオラの表現が見事です。ただ、やはりこの曲には少し明るくスッキリしすぎているように感じました。また、ピアノの低域が足りないのではないかと懸念していましたが、その点はそれほどでもありませんでした。ただ、響きはやはりあっさりです。
不満点としては、もう少しこの曲の暗さに合った表現をして欲しかったところでしょう。
・3台目 DT880(beyerdynaimc)
暗く、その上ヴィオラやピアノの表現にも優れる、ということで選びました。DT770PROやDT990PROを選ばなかったのは、低域が豊か過ぎなのと、曇りも感じやすいと思ったからです。
結果は非常に満足できました。ヴィオラを細部まで描写してくれる上、ピアノの響きも十分です。K501のような明るさや硬さもなく、それでいて曇りもそれほど感じませんでした。更に、この曲の魅力である悲壮感にたっぷり浸れます。
今回は客観的に見てもDT880が飛び抜けて良かったように思います。ただ、人によっては暗すぎたり曇りが気になったりするでしょう。そういう人にはRS-1をお薦めします。総合的にみてDT880と互角以上の表現で、抜けが良く明るめの表現になる点が違いますが、どちらも見事なことに変わりありません。
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