第34回 蒼氓/山下達郎「僕の中の少年」より

 山下達郎は非常に有名なシンガーソングライターで、ジャンルとしてはフォークやポップスに分類されることが多いです。
 今回取り上げるのは1988年発表のアルバム「僕の中の少年」の8曲目です。主役は山下達郎のヴォーカルで、楽器としてはシンセやドラムスが入ってきて後半はコーラスが多用されています。テンポは遅く、じっくりと聴き入るタイプの曲だと思います。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。ヴォーカルが自然に聴こえること、今回の曲の温かみをしっかり出してくれることを重視したいと思います。


・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。ヴォーカルは自然で聴きやすいですし、コーラスとの調和も良いです。温かみも十分感じられますが、味付けしすぎという面もあるかもしれません。
 他にはHP-RX900、MDR-XB700、PortaPro、SHP2500等で聴いてみました。HP-RX900はDT231PROと比べるとヴォーカルの自然さ・温かみともにやや見劣りします(とは言え、HP-RX900としては大抵のヴォーカル曲より普通に聴ける印象ではあります)。MDR-XB700とPortaProは悪くないのですが、低域の量が多すぎるためヴォーカルが所々埋もれ気味になったり、低域の量で聴き疲れしたりしやすい印象です。SHP2500は声の伸びが足りませんし、音が粗っぽいため落ち着いて聴けない感じです。
 不満点は、音の広がりがもう少し欲しい点です。

・2台目 SRH840(SHURE)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。1台目ほど味付けがされておらず、最初から最後まで落ち着いてじっくりと聴き入ることができる印象です。ヴォーカルの自然さ・温かみともに十分です。
 他にはATH-SX1、DR150、FA-002、HP-AURVN-LV、MDR-CD900ST等で聴いてみました。ATH-SX1は全体のバランスとして低域が足りない印象ですし、そのせいで温かみももう少しといった感じです。DR150は悪くないのですが、高域がやや悪目立ちする印象です。FA-002は1台目の不満点は改善されるのですが、ヴォーカルの自然さ・温かみともにやや見劣りします。HP-AURVN-LVは最後までSRH840と迷いましたが、SRH840の方が音の広がりが感じられたのでそちらにしました(ただし、声の伸びや張りを重視するならHP-AURVN-LVの方が良いと思います)。MDR-CD900STはリクエストに「山下氏はMDR-CD900STをラジオ番組でプッシュしておられたので、その氏の楽曲にマッチするヘッドホンはどんなものだろうということに興味があります」と書いてあったため聴いてみました。ヴォーカルが浮き彫りになるような感じで目立つ上に質的にも妙な生々しさがありますが、逆に言うとまとまりに欠け温かみについては見劣りしますし、今回の曲をじっくり聴き入るにはメリハリがありすぎる印象です。
 不満点は、声の伸びや張りがもう少し欲しい点です。

・3台目 AH-D5000(DENON)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。特に張りについては改善されます。音の広がりも良くなりますし、ヴォーカルの自然さ・温かみともに見劣りしません。今回聴いた中ではシンセとの相性が良い点も魅力です。味付けという意味で1台目より2台目に近い印象ですが、2台目ほどの落ち着きはなく、ポップスとして適度な明るさを保ちつつ温かみを維持しているような印象です。ただ、厳しく見るならローエンドの量の多さと音の広がりのせいでヴォーカルが若干引っ込んでしまうようなところがあります。
 不満点は、ヴォーカルがもう少し目立って欲しい点です。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。ローエンドの量が少ないこともあってヴォーカルが若干前に出るような印象です。味付けという意味では1台目に近いですが、1台目よりヴォーカルが自然で音の広がりが良く、全体的にランクアップしたような感じです。3台目と比べて総合的にどちらが良いかは微妙なところですが、温かみ重視でじっくり聴き入るならこちらの方が良いです。
 他にはATH-AD2000、HD650、K701、RS-1等で聴いてみました。ATH-AD2000はヴォーカルが薄く曇ったような感じで張りが足りません。HD650とK701は単品で聴くならどちらもなかなか良いのですが、DT880と比べて音場が広いせいか3台目の不満点があまり改善されない印象です。RS-1は今回の曲をじっくり聴き入るには明るすぎるように感じたため外しましたが、ヴォーカルが目立ちますし、これはこれでかなり魅力的です。

・5台目 IE8(SENNHEISER)
 温かみと音の広がりが良かったので選びました。低域の量は多いものの、ヴォーカルは普通に聴こえてくる印象です。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelは声の張りは良いもののやや硬い、Image X10は音の広がりが足りない、SE535はヴォーカルがはっきり聴こえてくる点は良いもののやや違和感がある等の不満がありました。とは言え、基本的にはヴォーカルの自然さと温かみについてはどれも悪くなく、どちらかと言うと好みの差の方が大きいのではないかと思います。
 他にはHP101とSHE9700が良かったです。上記の機種と比べてもそれほど見劣りしないのではないかと思います。


 今回はヘッドホンの機種による優劣があまり大きくなかったような印象を受けます。その理由としては、音源のバランスが良いせいか破綻することが少ない、あまり痛い音を鳴らさないため聴き疲れで引っかかることが少ない、テンポが遅いので切れやスピード感が要求されないといったあたりかと思います。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。自然で温かみも感じられます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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