IE8

音質
 低音より。低域はかなり量が多い。柔らかい質だが薄く曇っていて量だけ多い低域というわけではなく、濃く中身が詰まったような質で存在感がある。重心はやや低め。中域は低域に埋もれる感じだが、低域の量が多い割には普通に聴こえてくる。質的には落ち着いていて聴きやすい。高域は中域と同量から若干少なめ。あまり明るい感じではない。やや線が細く、粗のない質。どちらかと言うと中高域よりも高域の方が目立つ印象。
 分解能は価格なりからやや悪いレベル。音の分離はもう少し欲しかったところではあるが、一つ一つの音の微細な描写は丁寧にこなしてくれる。音場感はなかなか広い。明確さは普通。原音忠実性はそれなり。低域の量が多すぎる点は気になるが、それを除けばあまり違和感はない。原音の粗や生っぽさは必要量といった感じ。原音の実体感のようなものが比較的強く感じられる。エッジはあまりきつくなく、それほど聴き疲れしない。高域にしろヴォーカルのサ行にしろあまり痛くない。ホワイトノイズはやや大きい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはそれなり。厚みはやや厚め。温かみはしっかり感じられる。低域が多いだけでなく、全体的に柔らかく滑らかで心地よいため。ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良い。柔らかくややスモーキーで、うわずったり張り出したりすることがなく非常に聴きやすい。特に低い男性ヴォーカルやバラードに合う。ただし、ポップス等の明るい女性ヴォーカルを明るく瑞々しく鳴らして欲しい場合には向かない。低域の量感や音の厚みに基づくしっかりとした迫力や力強さがある。切れやスピード感はいまいち。音色としては暗めに感じられることが多い。粗がないという意味では繊細さもしっかり持ち合わせている。響きはやや豊か。曇りは多少気になるが、こもり感はそれほど気にならない。それよりも響きが綺麗な点に目が行く。重厚で濃密なので一部メタルとの相性が良い面がある一方、音場が広い上に音が適度に混ざり合うため交響曲に向いている面もある。
 弦楽器は滑らかで心地よい。チェロやコントラバスを濃厚に鳴らして欲しいなら良く合うが、ヴァイオリンを明るく澄んだ感じで聴きたいならもっと良いものが他にあるだろう。金管楽器は普通に聴けるが、あまり派手さはない。鮮やかさや力強さという意味でそれほど悪くはないが、明るく金属的な鳴りを求めるなら合わないだろう。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性や切れはもう少し欲しかったところではあるが、厚みや力強さで聴かせてくれることも多い。
 音場の広さ、重厚さ、粗のなさ、温かみといったものを求めるなら良い機種。
 なお、本機は低域の量を調節することができる。上記の内容はデフォルトである低域最小のときのもの。低域を最大に調節すると、低域以外はほとんど変化がなく、低域もローエンドの強いソースでなければ変化はかなり小さい。もう少し変化が大きくても良かったような印象。

装着感
 良好。カナル型だが、イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプではないので装着しやすいし、耳の穴が痛くなりにくい。ずれやすい、重い、コードが顔に当たりやすい等の不満もない。
 イヤーピースの材質はシリコンだが、普通のものと比べるとしっとりしておらず皮膚との接触具合が異なる印象。デフォルトのイヤーピースを含めて10種類のイヤーピースが付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。遮音性はカナル型としては普通。音漏れ防止はカナル型としてもやや良いレベル。
 作りは価格の割にやや安っぽい。デザインはやや個性的。プラグやY字合流部が半透明なので、好みに合わない人もいるだろう。本体がやや大きいので、装着すると多少目立つ。コードが着脱可能だが、固いので取り外すときには注意が必要。
 プラグはL型ミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は約 2mm(ただし1.5mmと2mmの割には太め)、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。

付属品
イヤーピース10種類
収納ケース
クリップ
イヤーフック
クリーニングツール



参考
周波数特性グラフ

赤:デフォルト 青:低域最大

比較メモ
CX95
CX95はややドンシャリ、IE8は低音より。低域はIE8の方がやや量が多い。IE8の方が柔らかい質。重心はIE8の方がやや低い。中域はCX95の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中高域はCX95の方がしっかり出る。高域はCX95の方がやや量が多い。硬く明るい質で目立つ。IE8の方が線が細く粗がない。分解能は微妙。音の分離はCX95の方が若干上。一つ一つの音の微細な描写はIE8の方が丁寧にこなしてくれる。音場感はIE8の方がやや広い。明確さは大差ない。原音忠実性はCX95の方が若干上。周波数特性上の癖のなさで勝っている。原音の粗や生っぽさはCX95の方がやや感じられる。エッジはCX95の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろCX95の方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはCX95の方がやや上。厚みはIE8の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはIE8の方が上。ヴォーカルはCX95の方が硬く明るい、IE8の方が柔らかくスモーキー。どちらもノリの良さが感じられるが、傾向は多少違う。CX95の方が切れやスピード感がある。IE8の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きは、低域はIE8の方がやや豊か、高域はCX95の方がやや豊か。IE8の方が重厚で濃密なので一部メタル等との相性が良い一方、音場が広く音が混ざりつつ分離してくれるためオーケストラに向いている面もある。弦楽器はCX95の方が生楽器らしさが感じられる、IE8の方が滑らかで心地よい。チェロやコントラバスを濃厚に鳴らして欲しいならIE8の方が良いが、ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならCX95の方が良い。金管楽器はCX95の方が金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はCX95の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、高域が欲しいならCX95、低域が欲しいならIE8。あるいは、明るさや切れを求めるならCX95、音場の広さや重厚さを求めるならIE8。

HP-TWF11R
どちらも低音より。低域はHP-TWF11Rの方が若干量が多い。どちらも柔らかく濃く中身が詰まったような質である点が似ている。重心はHP-TWF11Rの方がやや低い。中域はIE8の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はIE8の方が若干量が多い。IE8の方が線が細く粗がない。特にハイハットやシンバルはIE8の方が目立つ。分解能はIE8の方がやや上。音の分離はIE8の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はIE8の方が丁寧にこなしてくれる。音場感は、広さはほぼ同レベル、明確さはIE8の方がやや上。HP-TWF11Rの方が近くで音を鳴らす感じで頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はIE8の方がやや上。周波数特性上の癖のなさで勝っている。原音の粗や生っぽさは微妙だが、HP-TWF11Rの方が粗っぽい音で、IE8の方が微細な描写をこなしてくれるために生っぽいと感じられることが多い。エッジのきつさは微妙。高域にしろヴォーカルのサ行にしろIE8の方がやや細く刺さるが、基本的にはHP-TWF11Rの方が粗っぽい音で、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さ、音の鮮やかさはIE8の方が若干上。厚みはHP-TWF11Rの方が若干ある。温かみはどちらもしっかり感じられるが、HP-TWF11Rの方が暑苦しい感じ、IE8の方が心地よい感じ。ヴォーカルの艶っぽさはIE8の方が上。線が細くきめ細かい。HP-TWF11Rの方がノリが良く、IE8の方が繊細。低域に基づく迫力や力強さはHP-TWF11Rの方がある。響きはIE8の方がやや豊か。IE8の方が響きが綺麗。どちらも濃密だが、どちらかと言うとIE8の方があっさりに感じられることが多い。弦楽器はIE8の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-TWF11Rの方が太く力強い、IE8の方が細く明るい。打ち込み系の音の表現はIE8の方が若干うまい。音の質感の相性でやや勝っている。使い分けるなら、基本的にはIE8、IE8では繊細すぎるとかハイハットやシンバルが刺さるという不満があるならHP-TWF11R。

IE-20 XB
IE-20 XBは低音よりのドンシャリ、IE8は低音より。低域はIE-20 XBの方がやや量が多い。IE-20 XBの方が癖や歪みが気になる。重心はIE-20 XBの方がやや低い。IE-20 XBの方がかなり存在感がある。中域はIE8の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。質的にはどちらもあまり癖がないが、どちらかと言うとIE-20 XBの方が明るめ。高域はIE-20 XBの方が若干量が多い。IE-20 XBの方が硬く明るく、IE8の方が細く粗がない。ハイハットやシンバル等の高いところはIE8の方がしっかり出る。分解能はIE8の方が若干上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はIE8の方が丁寧にこなしてくれる。音場感はIE-20 XBの方がやや広く明確。原音忠実性はIE8の方が若干上。IE-20 XBは低域の量が多すぎる。原音の粗や生っぽさはIE-20 XBの方が若干感じられる。エッジはIE-20 XBの方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろIE-20 XBの方が若干粗っぽく痛い。明瞭さはIE8の方が若干上、音の鮮やかさはIE-20 XBの方が若干上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはIE8の方がやや上。ヴォーカルはIE-20 XBの方がやや明るく、IE8の方がやや柔らかい。IE-20 XBの方がノリが良く、IE8の方が繊細。IE-20 XBの方が低域に基づく迫力や力強さがあるし、切れやメリハリも若干感じられる。響きはIE8の方がやや豊か。IE8の方が響きが綺麗。弦楽器はIE8の方が繊細かつ心地よい。伸びが良く滑らか。金管楽器はIE-20 XBの方が太く鮮やか、IE8の方が細く綺麗。打ち込み系の音の表現はIE-20 XBの方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量やメリハリ重視ならIE-20 XB、粗のなさや温かみ重視ならIE8。

Turbine Pro Copper
IE8は低音より、Turbine Pro Copperはやや低音より。低域はIE8の方がやや量が多い。ただし、これは柔らかくぼやけているため量が多いように感じられる面も影響していると思われる。Turbine Pro Copperの方が締まっていて制動が良い。重心の低さはほぼ同レベルだが、かなり質が違うので重心の低さもソースによって印象が変わりやすい。中域はTurbine Pro Copperの方が明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。言い換えると、IE8の方が落ち着いていて聴きやすい。高域はほぼ同量だが、どちらかと言うとTurbine Pro Copperの方が多い。IE8の方が線が細い。Turbine Pro Copperの方が硬い質。分解能はTurbine Pro Copperの方がやや上。音の分離に差がある。一つ一つの音の微細な描写は大差ないが、IE8の方がやや丁寧にこなしてくれる感じ。音場感はIE8の方がやや広く、Turbine Pro Copperの方が明確。Turbine Pro Copperの方が音像がシャープで空間を感じさせる表現。原音忠実性は微妙。IE8は低域の量が多すぎる点が気になるのに対して、Turbine Pro Copperは中域が明るすぎる点が気になる。どちらかと言うとIE8の方が違和感が小さい印象。原音の粗や生っぽさはTurbine Pro Copperの方がやや感じられる。エッジはTurbine Pro Copperの方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろどちらも粗による痛さはないが、IE8の方が線が細いぶん痛いと感じることはある。明瞭さ、音の鮮やかさはTurbine Pro Copperの方がやや上。厚みはTurbine Pro Copperの方が若干あるが、それよりもTurbine Pro Copperの方が硬く締まった音である点に目が行く。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはIE8の方が感じられる。ヴォーカルは、IE8の方が柔らかく落ち着いていてスモーキー、Turbine Pro Copperの方が明るく瑞々しい。Turbine Pro Copperの方が明るく元気でノリが良い。切れやスピード感がある。響きはIE8の方が豊か。弦楽器はIE8の方が伸びが良く心地よい、Turbine Pro Copperの方が生楽器らしさが感じられる。チェロやコントラバスをゆったりと聴きたいならIE8の方が向いているが、ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならTurbine Pro Copperの方が向いている。金管楽器はTurbine Pro Copperの方がやや金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はTurbine Pro Copperの方がうまい。音の質感の相性、切れ、低域の質等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、温かみや響き重視ならIE8、明瞭さや切れ重視ならTurbine Pro Copper。あるいは、中域をおとなしく鳴らし欲しいならIE8、明るく鳴らして欲しいならTurbine Pro Copper。かなり違う音を鳴らすので、使い分けには向いている2機種。

Westone3
IE8は低音より、Westone3は低音よりのドンシャリ。低域はIE8の方が若干量が多い。IE8の方が濃く中身が詰まったような質、Westone3の方が薄く曇ったような質。重心はIE8の方が低い。中域はWestone3の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はWestone3の方が若干量が多い。どちらも線が細い傾向だが、Westone3の方が明るく鋭いため目立つ。分解能はWestone3の方が上。音の分離はWestone3の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はWestone3の方がある程度上。音場感はIE8の方が広い。明確さはWestone3の方が若干上。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはIE8の方が若干上。原音の粗や生っぽさはWestone3の方が若干感じられる。エッジはWestone3の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろWestone3の方がやや鋭く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはWestone3の方が若干上。厚みはIE8の方がある。温かみはIE8の方がやや上、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベル。ヴォーカルはIE8の方が柔らかくスモーキー、Westone3の方が明るく線が細い。IE8の方がノリが良いが、音色としてはWestone3の方が明るいと感じることが多い。IE8の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはIE8の方が若干豊か。弦楽器はIE8の方が滑らかで心地よい、Westone3の方が繊細。金管楽器はIE8の方が太く力強い、Westone3の方が細く明るい。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はWestone3の方が若干良いくらいだが、厚みと力強さでIE8の方がうまいと感じることも多い。使い分けるなら、しっかりした低域や厚みが欲しいならIE8、高域の明るさや線の細さが欲しいならWestone3。

サイン波応答

位相+高周波歪み

インパルス応答(CSD)

インパルス応答(録音波形)

100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生

曲別HP探索2
第23回 Sour Times/Portishead「Dummy」より
第29回 ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 3Dドラマ ティファニア編/「ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 キャラクターCD2 感じるティファニア」より
第33回 Mi Refugio/Gary Burton「Astor Piazzolla Reunion : A Tango Excursion」より
第34回 蒼氓/山下達郎「僕の中の少年」より
第57回 Don't Know Why/Norah Jones「Come Away With Me」より
第73回 メサイア/ヘンデル
第77回 聖乙女の祈り/「舞-乙HiME オリジナルサウンドトラックVol.2 乙女の祈り」より
第87回 Bewitched/Art Pepper「modern art」より
第100回 Main Theme Nile, Version II/喜多郎「Grammy Nominated」より





※生産終了。後継機はIE80。音質は若干異なる。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック - 10Hz〜20kHz 125dB 16Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
5g - 1.2m 両出し(Y型) 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4.5 5 4 5 3 5 25800円

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公開日:2010.7.18

※生産終了。後継機はIE80。