第33回 Mi Refugio/Gary Burton「Astor Piazzolla Reunion : A Tango Excursion」より

 Gary Burtonはアメリカのヴィブラフォン奏者です。これまでに6度グラミー賞を受賞しています。
 今回取り上げるのは1998年発表のアルバム「Astor Piazzolla Reunion : A Tango Excursion」の13曲目です。Gary BurtonのヴィブラフォンとAstor Piazzollaのバンドネオンのみで構成されています。ジャンルとしてはGary Burtonはジャズ、Astor Piazzollaはタンゴというイメージなのですが、両者ともジャンルで括れない面があり、このCDでの共演もこの2人だからこそという印象を受けます。ゆったりと落ち着いた曲です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、今回はリクエストされた曲ではないので私が決めたいと思います。ヴィブラフォンの柔らかい響きがしっかり感じられることと、今回の曲の哀愁を出してくれることを重視したいと思います。


・1台目 PortaPro(KOSS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。響きが非常に柔らかく、ほとんど芯が通っていないような印象です。ウェットで哀愁が感じられる上、それほど違和感がない点も良いです。
 他にはDT231PRO、HD435、HP-RX900、MDR-XB700、SE-M390等で聴いてみました。響きの柔らかさという点で順位をつけるなら、PortaPro、HD435、DT231PRO、SE-M390、MDR-XB700、HP-RX900といった感じです。HD435とDT231PROはPortaProに近いレベルだと思います。MDR-XB700とHP-RX900は若干ドライで硬めの印象ですが、ソースをそのまま鳴らすのであればこちらの方が近いのではないかと思います。
 不満点は、音の広がりがもう少し欲しい点です。

・2台目 T50RP(FOSTEX)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。1台目同様、響きが非常に柔らかく、ほとんど芯が通っていないような印象です。ただし、質的にはかなり違います。良く言えば幻想的でどこか浮世離れした美しささえ感じさせますが、悪く言うなら厚みが薄く実体感に欠けます。
 他にはDR150、DTX900、MUSIC SERIES ONE、SRH840、SW-HP10等で聴いてみました。響きの柔らかさという点で順位をつけるなら、T50RP、DTX900、MUSIC SERIES ONE、SRH840、DR150、SW-HP10といった感じです。DTX900は最後までT50RPと迷いましたが、DTX900は1台目の延長線上にあるような音なのに対してT50RPはまったく違う音なのでそちらにしました。MUSIC SERIES ONEはなかなか良いのですが、1台目の不満点はあまり改善されません。SRH840もなかなか良いのですが、T50RPやDTX900ほどの魅力はなく、良くも悪くも癖がない面があります。DR150は悪くはないのですが、今回聴いた中では若干硬さがあるように感じられます。SW-HP10は音色の不自然さがやや気になります。
 不満点は、癖が強いため合わない人には合わないと思われる点です。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはしっかり改善されます。1、2台目同様、響きが非常に柔らかく、ほとんど芯が通っていないような印象ですが、質的には2台目より1台目に近い印象です。2台目のような薄さや儚さではなく、1台目のような濃密さやウェットさがあります。1台目と比べると、響きのきめ細かさと音の広がりで勝っています。美しさと哀愁、そのどちらも十分に感じられるような印象です。最初に書いた条件と癖のなさを両立させたいなら、最も良い選択肢だと思われます。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 SR-007+SRM-717(STAX)
 色々聴いてみた結果これになりました。3台目は1台目に近い質感でしたが、これは2台目に近いです。哀愁よりも美しさにバランスが寄っているように感じられます。1〜3台目同様、響きが非常に柔らかく、ほとんど芯が通っていないような印象です。響きのきめ細かさと音がどこまでも広がっていく感じが非常に魅力的です。
 他にはAH-D5000、DT990PRO、EXH-313、RS-1等で聴いてみました。AH-D5000は悪くはないのですが、今回聴いた中では若干硬さがあるように感じられます。DT990PROも悪くはないのですが、響きが若干粗っぽい点が気になります。EXH-313は2台目に近い感じで魅力的ではあるのですが、癖の強さや厚みの薄さが気になります。RS-1は独特な響きの美しさがあるのですが、芯の硬さが若干気になります。響きの美しさと適度な芯の両立というような条件なら選ばれていたのではないかと思います。

・5台目 IE8(SENNHEISER)
 最初に書いた条件を最も満たしていると感じたので選びました。オーバーヘッド型の中だと3台目に近い印象です。響きが非常に柔らかく、濃密で、音の広がりが感じられます。色々と聴いてみたのですが、Image X10はIE8と比べて音の広がりがあまり感じられない、SE535とWestone3は若干硬さがある上ホワイトノイズが気になる等の不満がありました。ただし、どれも悪くはないと思います。
 他にはHP101とHP-CN40が良かったです。IE8ほどではありませんが、響きが柔らかく広がりも感じられる傾向です。


 今回はあまりシビアな条件を設けなかったので、聴いた範囲ではどのヘッドホンもある程度使えるレベルではあったと思います。これに「バンドネオンの生っぽさを出してくれること」という条件を加えると、かなり難しくなってまた違った探索結果になったことでしょう。
 ヘッドホンアンプはHA-1AとSXH2が良いです。ただし、PortaProやHD650を使用するのであれば濃すぎたり柔らかすぎたりすることはあると思われます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。














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