第73回 メサイア/ヘンデル
今回取り上げるのはヘンデルのメサイアです。指揮はコリン・デイヴィス、演奏はロンドン交響楽団とテネブレ合唱団で、2006年の録音です。
メサイアはオラトリオ(バロック音楽を代表する楽曲形式の一つで、オーケストラと声楽で構成される宗教音楽)で、ヘンデルの作品の中でも特に知名度の高いものになっています。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「最新の録音技術を駆使して制作されたSACDだとどのような結果(相性)になるのか知りたくて」「様々な音に対応し、宗教音楽なので(表現が難しいのですが)音に包まれる喜び(臨場感やスケールの大きさと言って良いのでしょうか?)みたいなものに感動できればと思います」とのことです。なお、今回は特殊な条件なので、特例としてSA-15S1を使ってSACDとして再生し、ヘッドホン出力はSA-15S1のものを使用します。
・1台目 HP-RX900(Victor)
前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。音場が広く音の広がりがあるため、音に包まれる喜びが感じられる傾向です。録音の良さもそれなりに感じられます。HP-RX900は曲によっては声の不自然さが気になることも多いのですが、今回の曲では比較的気にならない方だと思います。
他にはATH-TAD500、HI2050、MDR-ZX700、UR/40等で聴いてみました。ATH-TAD500は悪くないのですが、少し繊細であっさりしすぎているせいかあまり感動できる傾向ではない印象です。HI2050はヴァイオリンが悪目立ちしたり全体的にきつめの音で、音に包まれる喜びはあまり感じられません。MDR-ZX700は鳴っている音自体は悪くないのですが、頭内定位が気になるため音に包まれるという感じではありません。UR/40は最後までHP-RX900と迷いましたが、HP-RX900の方が音場が広く音の広がりがあるため音に包まれる喜びが感じられたのでそちらにしました。
不満点は特にどこがと言うより全体的に物足りない感じです。
・2台目 SE-A1000(Pioneer)
最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。ヴァイオリンが悪目立ちするところは若干ありますが、全体としてはそれほど大きな違和感はありません。今回聴いた他の機種と比べると、音場が広く音の広がりがあるため、音に包まれる喜びが感じられる傾向です。ただし、録音の良さが感じられることを優先するなら他にもっと良いものがあると思います。
他にはMDR-1R、MDR-MA900、SRH840、T50RP等で聴いてみました。MDR-1Rは低域の量が多すぎて違和感があります。MDR-MA900はあっさりしすぎているせいかあまり感動できる傾向ではない印象です。SRH840は録音の良さが感じられる点は良いのですが、音場の広さはもう少し欲しかったところです。T50RPは音に包まれる喜びが感じられる面はあるのですが、全体的に曇っているような感じが気になります。
不満点は1台目同様、特にどこがと言うより全体的に物足りない感じです。
・3台目 SR-007+SRM-717(STAX)
最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。これぞまさに音に包まれる喜びが感じられるということだと思います。音場が広く音の広がりがあるだけでなく、個々の音が繊細でしっかり聴こえてくる上、変に分離したりせず調和が取れています。録音の良さもある程度感じられます。1、2台目はどちらかと言うと消去法で選ばれた感じでしたが、これは1、2台目より良いものが沢山ある中から特に良いものが選ばれた感じです。
不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。
・4台目 HD650(SENNHEISER)
色々聴いてみた結果これになりました。音場が広く音の広がりがあるため音に包まれる喜びが感じられる傾向という意味では3台目と近いですが、鳴っている音自体はかなり違います。3台目の方が繊細で、4台目の方が音色の癖がありません。録音の良さが感じられることを優先するなら他にもっと良いものがあると思います。
他にはDT880、HD800、K701、SRH1840等で聴いてみました。DT880は悪くないのですが、3、4台目と比べると音に包まれる喜びはあまり感じられません。HD800は音場が広い点と録音の良さが感じられる点は良いのですが、やや音が硬めで響きが足りないせいか音に包まれる喜びはそれほど感じられません。K701とSRH1840はあっさりしすぎているせいかあまり感動できる傾向ではない印象です。
・5台目 IE8(SENNHEISER)
かなり迷ったのですが、最終的にはこれになりました。音場が広く音の広がりがあるため、音に包まれる喜びが感じられる傾向です。この点については今回聴いた中で最も良かったです。ただし、録音の良さが感じられることを優先するなら他にもっと良いものがあると思います。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK100PROは録音の良さが感じられる点は良いもののあまり音に包まれるという感じではない、HiDefJax AcousticSteelは悪くないもののIE8と比べると音の広がりがない、SE535は近くで音を鳴らす感じであまり音に包まれるという感じではない等の不満がありました。
他にはHP101とS1110が良かったです。IE8ほどではありませんが音に包まれる喜びが感じられる傾向です。
今回は1、2台目と3、4台目で大きな差があったように思います。これまで70回以上探索してきた中で、これほど大きな差を感じたことはほとんどありません。その意味で、今回の曲は高価なヘッドホンを使う価値が特に大きいと言えるのかもしれません。
ヘッドホンアンプは難しいところですが、消去法でAT-HA2002かHD-1L Limited Edition(RC1)あたりになると思います。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴はこちら。
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