第48回 異教徒の群れ/「グラディエーターオリジナルサウンドトラック」より

 今回取り上げるのは、2000年公開の映画「グラディエーター」のオリジナルサウンドトラックから13曲目です。
 音楽はHans Zimmer、「レインマン」「ライオン・キング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」等、多数の映画音楽を手がけていることで有名です。今回の曲はHans Zimmerらしくオーケストラを使った壮大なものになっています。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「この曲にふさわしい勇ましくスケールの大きい音を聴かせてくれるヘッドホンをぜひ教えていただきたいと思います」とのことです。言い換えると、低域の量感、音の厚み、音場の広さ、音の広がりといった点が重要になってくるのではないかと思います。


・1台目 HP-RX900(Victor)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの点についてもある程度満たしているように思います。他に、金管楽器が太く力強い点も魅力です。HP-RX900は中域の癖が気になることも多いのですが、今回の曲では比較的気にならない印象です(とは言え、今回聴いた機種の中では癖が強い方だとは思います)。
 他にはATH-TAD500、MDR-XB700、PortaPro、UR/40等で聴いてみました。ATH-TAD500は導入部の不気味な静寂の表現はうまいのですが、後半は音の厚みや重低音の量が足りないせいか迫力や力強さが足りない印象です。MDR-XB700は最後までHP-RX900と迷いましたが、重低音の量が多いせいで全体的に曇ったような感じになる上、金管楽器の力強さで見劣りするため外しました。PortaProは低域の量感や全体の印象は良いのですが、耳元で音を鳴らす感じでスケールの大きさにはやや欠けます。UR/40は悪くないのですが、HP-RX900と比べると全体的に見劣りする印象です。
 不満点は、こもり感と音色の癖が若干気になる点です。

・2台目 SRH840(SHURE)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されるように感じられます。最初に書いた条件についても悪くありませんが、あえて挙げるなら音場の広さが最も物足りない印象です。
 他にはAH-D1100、DR150、FA-002、SE-A1000等で聴いてみました。AH-D1100はこもり感が改善されませんし、低域が過剰な印象です。DR150は最後までSRH840と迷いましたが、SRH840の方が音色の癖が小さくそれによって全体の印象も壮大に感じられたのでのでそちらにしました。FA-002は1台目の不満点は改善されますし音場も広いのですが、重低音が不足気味で迫力に欠ける上にただ何となく鳴らしているような感じです。SE-A1000はこもり感については改善されますが音色の癖は大差ありません。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 最初に書いた条件に加えて、音色の癖のなさを評価して選びました。1台目と比べるとこもり感がなく音色の癖が気になりません。2台目と比べると音場の広さ、音の広がりで有利です。今回の曲は交響曲のように展開していくのですが、HD650はその展開が無理なく自然に行われる点も良いです。あえて挙げるなら特に導入部の不気味な静寂と中盤の重苦しい低弦が魅力で、そういったある意味で地味な部分をしっかりこなすが故に曲全体の質が向上しているような印象を受けます。
 不満点は特にありませんが、金管楽器がもう少し派手な方が良いと感じる人はいるかもしれません。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。3台目を若干高音よりにしたようなバランスです。重厚さでは若干見劣りしますが、金管楽器の鮮やかさでは勝ります。フィーリングですが、スケールの大きさでは3台目、勇ましさでは4台目に分がある印象です。
 他にはAH-D5000、HP-DX1000、PRO900、PS500等で聴いてみました。AH-D5000は悪くないのですが、3、4台目と比べると若干硬質で音が混ざり合わない面があり、それがスケールの大きさを阻害しているような印象です。HP-DX1000は最初に書いた条件についてはなかなか良いのですが、音色の癖が大きく勇ましいと言うよりやかましい印象になってしまいます。PRO900とPS500は最初に書いた条件についてはなかなか良いのですが、低域が過剰でこもり感がかなり気になりますし、全体的に音色の癖が気になるせいもあってスケールの大きさどころではない印象です。

・5台目 HP-TWF11R(radius)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。低域の量感、音の厚み、音場の広さ、音の広がりすべてある程度のものを持っているように感じます。ただ、人によっては低域が過剰に感じられるかもしれません。その場合にはIE8くらいがちょうど良いのではないかと思います。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelは悪くないものの高域が多すぎるせいでスケールの大きさよりも派手さが前面に出てしまう、IE8はHP-TWF11Rと比べると低域の量感や音の厚みが足りないため迫力に欠ける、Westone3はHP-TWF11Rと比べると全体的に見劣りする等の不満がありました。
 他にはATH-CKS90とS1110が良かったです。HP-TWF11Rほどではありませんが、最初に書いた条件をそれなりに満たしています。


 今回はあまり迷わずに選ぶことができたような印象ですが、それでも改めて振り返ってみるとちょっとしたことで結果が変わってくるように思います。いつものことですが、本文まで読んで自分に合ったヘッドホンを探してみてください。
 ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。「勇ましくスケールの大きい」というイメージに近いです。次点はHD-1L Limited Edition(RC1)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。














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