第62回 ヘッドホンの重さのメーカー公称値と実際

 ヘッドホンの音質や装着感はスペックを見てもほとんど分かりませんが、その中で比較的ストレートに参考になるのが重さだと思います。ただし、その重さについてもメーカー公称値と実際の値にある程度の開きがあるのではないかと、常々考えていました。今回はその重さを量ってみようという試みです。
 良い機会なので一応確認しておきますが、本サイトのレビューページに載せている重さはメーカー公称値(コード除く)で、その値が公開されていない場合には私が重さを量って載せています。ただし、コードが着脱できないものについてはコードを切断して量ったりはしていないので、量り方の微妙な違いによって数gの誤差は生じていると思われます。
 今回どの機種を量るかは多少迷いましたが、各メーカーからメーカー公称値が重いものを選んで量ることにしました。
 それでは結果を見ていきたいと思います。


国内メーカー
メーカー名 製品名 公称値(g) 実測値(g) 実測値-公称値(g)
audio-technica ATH-A900 350 345 -5
DENON AH-D5000 370 320 -50
FOSTEX T50RP 390 383 -7
Pioneer SE-A1000 280 298 18
SONY MDR-XB700 295 295 0
STAX SR-007 365 385 20
Technics RP-DH1200 360 360 0
Victor HP-DX1000 380 367 -13
平均 349 344 -5

海外メーカー
メーカー名 製品名 公称値(g) 実測値(g) 実測値-公称値(g)
AKG K701 235 305 70
beyerdynamic DT990 Edition 2005 250 290 40
Direct Sound EX-29 326 342 16
M-AUDIO Studiophile Q40 250 290 40
SENNHEISER HD800 330 371 41
SHURE SRH840 317.5 374 56.5
Stanton DJ Pro 3000 428 434 6
ULTRASONE PRO900 295 328 33
平均 304 342 38
※基本的にはコードを除く値だが、T50RP、EX-29、DJ Pro 3000はメーカー公称値がコードを含む値と推測されるので、実測値もそれに合わせて計量。
※T50RPのメーカー公称値は現在330g(コードを除いた値かどうか不明)に変更になっている。コードを除いた実測値は313g。
※DT990 Edition 2005のメーカー公称値は現在290gに変更になっている。
※HD800のメーカー公称値は370gと表記されていることもある。

 こうして見ると、思ったとおりメーカー公称値より実測値の方が重いものが多いですが、逆に実測値の方が軽いものもいくつかあります。また、海外メーカーの方が実測値よりも軽い表記になっていることが多いようです。
 SRH840の場合は「0.7 lb (317.5 g)」という表記なので、0.7ポンドをグラムに換算したために発生した差異だと分かります。他のメーカーでも、もしかしたらそういう操作が行われた結果なのかもしれません。それにしても、最終的にグラム単位で表記するのであればきちんと正しいグラム数を書いてもらいたいものです。しかもSRH840については実測374gであることを考えると0.8ポンド(362.9g)もしくは0.9ポンド(408.2g)と表記すべきです。

 今回調べた範囲で実測値とメーカー公称値の差が最も大きかったのはK701で、70gです。70gというのは手で持ってみるとそれほど大きな差には感じませんが、実用上は長時間使用した際の首の疲れ等に影響があります。235gなら3時間大丈夫な人でも、305gだと1時間くらいで首が疲れてくる、それくらいの違いが出てくるおそれがあります。70gも違う値になっている理由は分かりませんが、K701の元になったと思われるK501の公称値が235g(実測値は255g)でK701の公称値と同じなので、間違ってそのまま使ってしまったのかもしくは70gも重くなるのはまずいということであえてそのままにしたのかもしれません。
 K701とは逆に実測値の方がメーカー公称値と比べて軽いものとしてはAH-D5000が最大で、50gです。間違ってコードを含んだ重さを書いてあるのかとも思いましたが、コードを含んだ重さは実測412gなので、いずれにせよおかしいです。

 それから、メーカーと輸入代理店で値が違ったり、同じ製品でも時期によって値が違ったりすることがありますが、誤記の修正であれ何であれ結果としてユーザーに無用な混乱を招くことになるので極力統一して頂きたいものです。実際、某製品について本サイトの表記がメーカーやショップと違うという指摘を閲覧者の方から頂いたことがありますが、これはメーカー公称値の変更とショップの誤記が原因で、本サイトの表記は正しいものでした。


 さて、いかがでしたでしょうか。個人的には、今回の結果はそれほど意外なものではありませんでした。ヘッドホンを使っていて、「メーカー公称値より重いような・・・・・・」と思ったことが何度もあるからです。ただし、これは実際に使ったからこそ言えることであって、購入を検討していて重さを調べている人には分かるはずもありません。重さは装着感に影響を与える重要な項目なので、メーカーには正確な値を公開して頂きたいものです。また、メーカー公称値を見る際は鵜呑みにしないようにご注意ください。







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