EX-29

音質
 高音よりのかまぼこ。低域はかなり量が少なく、重心も高めで存在感がない。ローエンドに行くほど弱くなる。ただし、中低域はしっかり出る。中域は、若干中低域に邪魔されるところはあるものの基本的には普通に聴こえてくるし、低く落ち着いた音でうわずったり張り出したりしない点は良い。高域は質的にも量的にもあまり目立たないが、低域ほどの不足は感じない。
 分解能はなかなか良い。一つ一つの音の微細な描写はそれほどでもないが、音の分離はかなりのもの。音場感はモニター用としては広い方で、なかなか明確。原音忠実性はそれなり。低域がかなり少ない点がマイナスだが、それ以外に大きな癖はない。原音の粗や生っぽさはある程度感じられる。エッジはきつくなく、聴き疲れしにくい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろあまり痛くない。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。中低域がしっかり出る上に高域が控え目なので、やや曇っていて暗いような印象を受けることがある。厚みはそれなりにあるが、低域は量が少ないため不満に感じる人も多いかもしれない。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさは特に感じられる傾向ではないが、意外とソースの持っているものは出してくれるような印象。中低域がしっかり出る上に高域が控え目なので冷たいと言うよりは若干温かい傾向だし、ヴォーカルも低く落ち着いていて聴きやすい点は良い。モニター的な音で、地味で無骨。特にノリが良いとは感じないが、切れやスピード感はしっかりしたものを持っている。特にバスドラを連打するようなところは遅れずに鳴らしてくれて良い。響きはあっさりで、こもり感は特に気にならない。
 弦楽器はあまり味付けのない点は良いが、繊細さにしろ心地よさにしろそれほど良くない。金管楽器はやや太く力強い傾向で、明るさや鮮やかさには欠ける。打ち込み系の音の表現はいまいち。低域の量が少ない点が気になるし、音の質感の相性や明るさももう少し欲しかったところ。ただし、切れや付帯音のなさを最優先するならなかなか良い。
 低域がかなり少ない点は気になるし基本的には地味な音だが、長所や魅力も持っている機種。

装着感
 悪い。側圧がやや強い上、イヤーパッドだけでなくイヤーパッドを支えるアーム部までもが頭部に接触する。このアームによる側頭部への負担がかなり大きいように感じる(個人差はあるかもしれない)。ずれにくい点は良い。ヘッドバンドにはしっかりクッションが入っているが、ヘッドバンドの幅が狭くアーム部がつっかえるような形になって頭頂部とヘッドバンドが接することはないため、あまり意味は無い。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズ、左右方向の角度調節ができない。材質はMV1に似ていて、ゴムのようだ。肌触りはそれほど悪くないが、トータルとしては好みが分かれそうではある。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。特に音漏れ防止は非常に良い。
 作りはやや安っぽい。接着剤がはみ出していたりバリが出ていたりする。デザインは地味だが多少個性的ではある。また、装着するとヘッドバンドが浮くため、変わった外観になる。機構としては折りたたみ可能とは言えないだろうが、ある程度コンパクトにまとめることができる。L/Rの表記がなく、イヤーパッド内のフィルターの色で判断するしかないようだ(右が真っ赤、左が黒)。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約2.5mm、合流後は幅約5mm・厚さ約2.5mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周106mm×78mm、内周68mm×42mm、深さ18mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第62回 ヘッドホンの重さのメーカー公称値と実際』

周波数特性グラフ


比較メモ
CPH7000
どちらもかまぼこ。低域はCPH7000の方がやや量が多く、重心も低い。中低域はEX-29の方がしっかり出る。中域は、EX-29の方が中低域に邪魔されるものの低く落ち着いた音であるのに対して、CPH7000は中低域に邪魔されない上うわずり気味ではっきり聴こえてくる。中高域はCPH7000の方がしっかり出る。高域はCPH7000の方がやや明るく量も多い。分解能はEX-29の方がやや上。音の分離で勝っている。一つ一つの音の微細な描写はCPH7000の方が上のようにも感じられるが、EX-29と比べると粗っぽく適当に鳴らしている感が否めない。音場感はEX-29の方が若干広く明確。原音忠実性は微妙。CPH7000の方が一聴して違和感が大きい。CPH7000は中域がうわずって突き刺さってくる点が気になるのに対して、EX-29は単純に低域不足が気になる。原音の粗や生っぽさはCPH7000の方が若干感じられる。エッジはCPH7000の方がかなりきつく、中域がキンキン突き刺さってくることもあって聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろCPH7000の方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはCPH7000の方が上。厚みはEX-29の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはEX-29の方が上。CPH7000は明るく元気、EX-29はモニター的で地味。EX-29の方がかなり安定感がある。響きはCPH7000の方がやや豊か。弦楽器はEX-29の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はCPH7000の方が明るく鮮やか、EX-29の方がやや癖がなく力強い。打ち込み系の音の表現はCPH7000の方がややうまい。音の質感の相性や明るさで勝っている。使い分けるなら、低域・高域の量や明るさ重視ならCPH7000、癖のなさや聴き疲れのなさ重視ならEX-29。

HD280Pro
EX-29は高音よりのかまぼこ、HD280Proはややかまぼこ。低域はHD280Proの方が重心が低く、厚みや弾力がある。量もある程度多い。中低域はEX-29の方がややしっかり出る。中域はどちらも低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、EX-29の方が低く太く落ち着いた音なので、どちらかと言うとHD280Proの方が目立つことが多い。高域はHD280Proの方が高く鋭い音で量も多いためかなり目立つ。分解能はHD280Proの方が若干上。音の分離はEX-29の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はHD280Proの方がやや上。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベル。原音忠実性はHD280Proの方がやや上。一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。エッジはHD280Proの方がきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHD280Proの方がかなり痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHD280Proの方がやや上。EX-29は中低域がしっかり出る上に高域が控え目なので、やや曇っていて暗い印象。厚みはEX-29の方がやや上。温かみは微妙。EX-29の方が中低域がしっかり出る点は有利だが、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではHD280Proの方が上。ヴォーカルの艶っぽさはHD280Proの方が感じられる。どちらも切れやスピード感でノリの良さを感じさせるタイプで、そういう意味では甲乙つけがたくソースによって評価が変わってくる印象だが、バスドラを連打するようなところはEX-29に分がある。響きはHD280Proの方がやや豊か。どちらもモニター的な地味さがあるが、HD280Proの方が派手。HD280Proの方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はHD280Proの方が繊細で生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はEX-29の方が太く力強いのに対して、HD280Proの方が明るく鮮やか。打ち込み系の音の表現はHD280Proの方がややうまい。音の質感の相性でやや勝っている。使い分けるなら、基本的にはHD280Pro、HD280Proでは聴き疲れするとかドラムが遅れるという不満があるならEX-29。

K271studio
EX-29は高音よりのかまぼこ、K271studioはやや高音より。低域はK271studioの方がやや量が多く重心も低い。中低域はEX-29の方が若干しっかり出る。中域はどちらも低域に邪魔されず聴こえてくるし、変な癖もない。どちらかと言うとK271studioの方が高い音で、EX-29の方がソースによっては中低域に邪魔されることがある。高域はK271studioの方がやや線が細く量が多い。分解能はEX-29の方が若干上。音の分離はEX-29の方がやや上、一つ一つの音の微細な描写はK271studioの方が若干上。音場感はK271studioの方が横に広いが、耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性はK271studioの方がやや上。一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさはEX-29の方が若干感じられる。エッジは基本的にはEX-29の方が若干きついが、高域やヴォーカルのサ行はK271studioの方が若干痛い。どちらも聴き疲れしにくい。明瞭さ、音の鮮やかさはK271studioの方が若干上。厚みはEX-29の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはK271studioの方がやや上。EX-29の方がノリが良く、K271studioの方が繊細。EX-29の方が切れやスピード感がある。EX-29の方が地味で無骨、K271studioの方が音楽鑑賞向きの音。響きはK271studioの方が豊か。弦楽器はK271studioの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はEX-29の方が力強く、K271studioの方が明るく綺麗。打ち込み系の音の表現はEX-29の方が若干うまい。切れで勝っている。使い分けるなら、基本的にはK271studio、切れが足りないとか音楽鑑賞向けの味付けが不要という不満があるならEX-29。

MDR-7509HD
EX-29は高音よりのかまぼこ、MDR-7509HDはやや低音より。低域はMDR-7509HDの方がやや量が多い。ローエンドが弱い点は似ている。MDR-7509HDの方が柔らかくぼやけた質。中域はEX-29の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。これは低域が少ないだけでなく、分離が良い上に硬くしっかりとした質であることも要因だろう。高域はMDR-7509HDの方が若干量が多い。EX-29の方がやや太く金属的。EX-29の方がざらつく感じ。ハイハットやシンバルの高いところはMDR-7509HDの方がしっかり出る。分解能はEX-29の方が若干上。音の分離はEX-29の方がやや上、一つ一つの音の微細な描写はMDR-7509HDの方が若干上。音場感はEX-29の方がやや明確。広さは大差ない。原音忠実性はEX-29の方がやや上。周波数特性上の癖のなさでやや勝っている。どちらも一聴して多少の違和感があるが、どちらかと言うとEX-29の方が違和感が小さいことが多い。原音の粗や生っぽさはEX-29の方がやや感じられる。エッジのきつさは微妙。高域にしろヴォーカルのサ行にしろMDR-7509HDの方がやや細く刺さるが、基本的にはEX-29の方が粗っぽい音。総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはEX-29の方がやや上、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはEX-29の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-7509HDの方がやや感じられる。ヴォーカルはMDR-7509HDの方がスモーキーでありながら透明感があるような独特の違い。EX-29の方がノリが良い。切れやスピード感がある。どちらも明るさや派手さがない点は似ている。EX-29の方ががっしりとしていて飾り気のない音。響きはMDR-7509HDの方が豊か。弦楽器はEX-29の方が音色が自然、MDR-7509HDの方が繊細。金管楽器はEX-29の方がややうまい。EX-29の方が太く力強く、MDR-7509HDの方が若干明るい。打ち込み系の音の表現はEX-29の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、切れや味付けのなさを求めるならEX-29、低域の量感や繊細さを求めるならMDR-7509HD。

MV1
どちらも高音よりのかまぼこ。低域はどちらもかなり少なく、ローエンドに行くほど弱くなる点は似ている。どちらかと言うとMV1の方が量が多く重心も低い。中域はMVの方がやや高い音ではっきり聴こえてくるが、うわずったり張り出したりする癖が気になる。中高域はMV1の方がしっかり出る。高域はEX-29の方がやや線が細く量が多い。分解能はEX-29の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろある程度差がある。音場感はEX-29の方がやや広い。MV1の方が頭内定位がやや気になる。原音忠実性はEX-29の方が上。一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでもやや勝っている。エッジはEX-29の方がややきついが、MV1は中域がキンキン突き刺さって疲れるので、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろEX-29の方がやや鋭く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方がやや上。厚みはMV1の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはEX-29の方が上。EX-29の方がモニター的で地味、MV1の方が明るく元気。ただし、スピード感という意味ではEX-29の方がやや上。響きはMV1の方がやや豊か。弦楽器はEX-29の方が繊細で生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はEX-29の方が癖がなく、MV1の方が太く鮮やか。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はMV1の方が若干上、切れや癖のなさはEX-29の方がやや上。使い分けるなら、基本的にはEX-29、少しでも低域が欲しいとか明るさが欲しい場合にはMV1。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz 114dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
292g 40mm 2.75m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 2 4 5 3 2 中(高) 12800円

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公開日:2009.6.3