HD280Pro

音質
 ややかまぼこ。低域は全体的にかなり弱め。中域はややうわずり気味なもののはっきり聴こえてくる。高域はややシャリつく上、ハイハット等がかなり前面に出てくる感じ。SENNHEISERの中ではローエンドが弱めで、高域が強めの部類。
 分解能はかなり高い。音場感は特に広いというわけではないが、立体感のある鳴り方が楽しめる。原音忠実性もなかなか良い。エッジがきつく、ホワイトノイズが大きめで、ソースのノイズをかなり拾うため聴き疲れしやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはなかなか良い。厚みはそこそこあるのだが、低域が足りないため一聴して厚みが足りないように感じる人も多いかもしれない。温かみはいまいち、ヴォーカルの艶っぽさはそれなりに感じられる。特別ノリが良いわけでも繊細なわけでもない、ある程度モニター用らしい冷静な鳴らし方。ただし、意外と歯切れが良くスピード感があるし、線の細い部分もある。ノリの良さと繊細さを両立していると見ても良いかもしれない。響きはややあっさりで、低域も弱いためこもり感はあまり気にならない。ウォームさが感じられない、明るくさっぱりした音調。エージング前は霞がかかったような印象もあるが、エージングによって霞は嘘のように晴れる。一部のモニター用の機種に見られるような曇った感じはほとんどない。
 弦楽器は繊細で原音の粗もしっかり感じられるが、心地よさはいまいち。金管楽器はなかなか鮮やかで芯が通っていて楽しめるが、高域がシャリつくのが気になる。打ち込み系の音の表現はなかなかうまいのだが、中高域から高域は線が細いように感じるし、大抵のソースでは低域不足に感じると思われる。
 総合的に見てコストパフォーマンスは悪くない。

装着感
 普通。側圧は強めで重量も軽いためかなりずれにくい。ヘッドバンドは一応クッションがあるがあまり柔らかくない。側圧さえ我慢できれば装着感はかなり良いと言える。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質は紙っぽい質感の独特の人工皮革で、肌触りは良いが蒸れる。

その他
 遮音性は非常に良好で音漏れ防止もかなり良い。
 作り、デザインともに味気ないモニター用という感じでかなり地味。あまり頑丈そうには見えない。カールコードでスイーベル機構、折りたたみ可能など、ポイントはおさえてある。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、硬さは普通。イヤーパッドのサイズは、外周110mm×86mm、内周66mm×44mm、深さ18mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第15回 モニター用ヘッドホン比較』

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-D1100
AH-D1100は低音よりのドンシャリ、HD280Proはややかまぼこ。低域はAH-D1100の方がかなり量が多い。ローエンドよりもベースの帯域の差が大きい。HD280Proの方が締まりや制動が感じられる。重心はHD280Proの方がやや低い。中域はHD280Proの方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はAH-D1100の方が若干量が多い。HD280Proの方が線の細い質。分解能はHD280Proの方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろHD280Proの方が若干勝っている。音場感はHD280Proの方が若干広く明確。原音忠実性はHD280Proの方がやや上。AH-D1100は低域の量が多すぎる。原音の粗や生っぽさはHD280Proの方が若干感じられる。エッジはHD280Proの方がややきついが、AH-D1100は低域の量やこもり感で疲れる面があるため、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHD280Proの方が若干細く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはHD280Proの方がやや上。厚みはAH-D1100の方が若干ある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはAH-D1100の方がやや感じられる。ヴォーカルはAH-D1100の方が男性ヴォーカル向き。AH-D1100の方が若干ノリが良い、HD280Proの方が繊細。AH-D1100の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはAH-D1100の方がやや豊かでこもり感が気になる。全体的にAH-D1100の方が線の太い音。弦楽器は微妙。チェロやコントラバスを濃厚に鳴らして欲しいならAH-D1100の方が良い。HD280Pro方が生楽器らしさが感じられる。金管楽器はAH-D1100の方が若干太く力強い。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性は大差ない。切れはHD280Proの方が上。ただし、低域不足や高域の線の細さが合わないように感じられることがある。使い分けるなら、低域の量や迫力を求めるならAH-D1100、分解能や明瞭さを求めるならHD280Pro。

ATH-SX1
どちらもかまぼこ。HD280Proの方がやや低音よりだが、かなり近い周波数特性。低域はHD280Proの方がややでる一方、高域はATH-SX1の方が若干出る。HD280Proの方が太い音で強い圧力を感じる。分解能はATH-SX1の方が若干良い。音場感はHD280Proの方がやや良い。どちらも非常に原音忠実だが、どちらか選ぶならATH-SX1か。HD280Proの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-SX1の方が上。厚み、密度はHD280Proの方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD280Proの方が若干良い。響きはどちらも適度だが、どちらかと言えばHD280Proの方が豊か。弦楽器はHD280Proの方が濃い音で安心して聴ける。金管楽器はほぼ互角だが、どちらか選ぶならATH-SX1か。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまいが、HD280Proの方が低音が出る分楽しく聴けるところはある。かなり似た機種なので使い分けるのは難しいが、聴き疲れの少ないATH-SX1をメインに、迫力が欲しいソースの時にはHD280Proを使うのが良いかもしれない。

EX-29
EX-29は高音よりのかまぼこ、HD280Proはややかまぼこ。低域はHD280Proの方が重心が低く、厚みや弾力がある。量もある程度多い。中低域はEX-29の方がややしっかり出る。中域はどちらも低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、EX-29の方が低く太く落ち着いた音なので、どちらかと言うとHD280Proの方が目立つことが多い。高域はHD280Proの方が高く鋭い音で量も多いためかなり目立つ。分解能はHD280Proの方が若干上。音の分離はEX-29の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はHD280Proの方がやや上。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベル。原音忠実性はHD280Proの方がやや上。一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。エッジはHD280Proの方がきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHD280Proの方がかなり痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHD280Proの方がやや上。EX-29は中低域がしっかり出る上に高域が控え目なので、やや曇っていて暗い印象。厚みはEX-29の方がやや上。温かみは微妙。EX-29の方が中低域がしっかり出る点は有利だが、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではHD280Proの方が上。ヴォーカルの艶っぽさはHD280Proの方が感じられる。どちらも切れやスピード感でノリの良さを感じさせるタイプで、そういう意味では甲乙つけがたくソースによって評価が変わってくる印象だが、バスドラを連打するようなところはEX-29に分がある。響きはHD280Proの方がやや豊か。どちらもモニター的な地味さがあるが、HD280Proの方が派手。HD280Proの方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はHD280Proの方が繊細で生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はEX-29の方が太く力強いのに対して、HD280Proの方が明るく鮮やか。打ち込み系の音の表現はHD280Proの方がややうまい。音の質感の相性でやや勝っている。使い分けるなら、基本的にはHD280Pro、HD280Proでは聴き疲れするとかドラムが遅れるという不満があるならEX-29。

HD215
HD215はかなりフラット、HD280Proはかまぼこ。低域はHD215の方が量があるが、音圧はHD280Proの方がある。中域はHD280Proの方が前に出てくる感じ。高域は質・量ともにかなり似ているが、HD215の方がやや粗く量が多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてHD280Proの方がやや上。HD280Proの方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはHD280Proの方が上。HD280Proの方が密度が濃く、安定した鳴らし方。ただし、バランスはHD215の方が多少良いようにも感じる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。HD215の方が軽快である種のノリの良さはあるが、音圧はHD280Proの方があるので、ノリの良さを広義で考えた場合に、どちらがノリが良いかは微妙なところ。響きはHD215の方がやや豊か。こもり感はどちらもそれほど気にならない。弦楽器はHD280Proの方が低域の量が少ないにもかかわらず滑らかで心地よい。金管楽器はどちらも悪くない。HD280Proの方が原音に近く粗のないシンプルな音だが、HD215の方もそれはそれで楽しめる。打ち込み系の音の表現はHD280Proの方が音圧と切れで勝っているが、低域の量が不満。ほとんど何を聴くにしてもHD280Proの方が良いように感じるが、HD215もバランスが良く軽快である点は魅力的なので、その長所を活かしたいところ。

HD25-1
HD25-1はややドンシャリ、HD280Proはややかまぼこ。個別に見るとそうなのだが、2台並べて比較するとHD25-1の方が全体的にやや低音よりなだけにも感じる。低域はHD25-1の方が量も厚みもある。高域はHD280Proの方がやや線が細く高い音を鳴らすように感じるが、量はほぼ互角。分解能、音場感、原音忠実性すべてHD280Proの方が若干上。HD280Proの方がエッジがきつく聴き疲れする。HD25-1の方が音が太く、ストレートに伝わってくる感じ。明瞭さはHD280Proの方が若干上、音の鮮やかさはほぼ互角、厚みや密度はHD25-1の方がやや上。温かみはHD25-1の方がやや上、ヴォーカルの艶っぽさはHD280Proの方がやや上。HD25-1の方がノリが良い。HD280Proは若干低域が不足に感じるし、モニター的な鳴らし方をする。響きはHD25-1の方が豊か。弦楽器はHD25-1の方が心地よい。金管楽器はHD280Proの方がやや高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまく、好みで分かれるところだろうが、低域が欲しいならHD25-1、明瞭さが欲しいならHD280Proだろう。使い分けるなら屋内と屋外が本来の姿なのだろうが、無理やりジャンルで使い分けるならロックはHD25-1、それ以外はHD280Pro。

HD590
HD280Proはかまぼこ、HD590はややドンシャリ。低音は圧倒的にHD590の方が出る。中域〜高域はほぼ同量だが若干HD590の方が出る。分解能、音場感はHD590の方が上、原音忠実性は若干HD280Proの方が上。どちらもエッジがきつく聴き疲れするが、HD590の方がまだ疲れない。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度はすべてHD280Proの方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD590の方が上。ただ、ヴォーカルの艶っぽさの差はそれほど大きくない。ノリの良さはHD280Proの方が上。低域はHD590の方が出るのだが、スピード感が段違い。その代わり繊細さはHD590の方が上。響きはHD590の方がやや豊か。HD280Proの方が硬く芯の通った太い音。弦楽器はHD590の方が心地よい。金管楽器はほぼ互角だが、かなり違う鳴らし方。勢いのある音を求めるならHD280Pro、細く鮮やかな音を求めるならHD590。打ち込み系の音の表現はHD280Proの方がうまい。使い分けるならポップスはHD280Pro、それ以外はHD590。

SE-M870
HD280Proはかまぼこ、SE-M870はドンシャリ。超低域はSE-M870の方がかなり出るが、低域の厚みそのものはほぼ互角。高域はややSE-M870の方が出る。分解能、音場感、原音忠実性はすべてHD280Proの方が上。ただし、エッジがきつく聴き疲れする面もある。明瞭さはHD280Proの方がやや上だが、音の鮮やかさはほぼ互角。HD280Proの方が芯の通った厚い音。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSE-M870の方がやや良い上、ノリも良い。響きはSE-M870の方が豊か。弦楽器、金管楽器ともにHD280Proの方が原音に近いためやや良いように感じるが、単に楽しめるかどうかならほぼ互角。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまいが、低音が出る分大抵のソースではSE-M870の方が良いように感じる。使い分けるならポップスはSE-M870、それ以外はHD280Pro。ただし、聴き疲れを考えると常用するのはつらい。

SE-MONITOR 10R
HD280Proはややかまぼこ、SE-MONITOR 10Rはややドンシャリ。低域、高域ともにSE-MONITOR 10Rの方が若干出る。中域はHD280Proの方がしっかり聴こえてくる。ただ、かまぼことドンシャリとは書いたがそれほどの差は感じられない。HD280Proはかまぼこと言うには低音が強いし、SE-MONITOR 10Rはドンシャリのわりには低音が弱めで高域が強いため。分解能はほぼ互角だがSE-MONITOR 10Rの方が芯の通った音で明瞭でもあるためやや良いように感じる。音場感はHD280Proの方がやや良い。HD280Proの方が原音忠実。どちらもエッジがきつく聴き疲れするが、HD280Proはやや濁りがあるため疲れ、SE-MONITOR 10Rは硬く芯が通りすぎで疲れるという違いがある。そのため、どちらが聴き疲れするかはソースによって違ってくる。明瞭さや音の鮮やかさはSE-MONITOR 10Rの方がある。どちらも厚みのある音を鳴らす。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD280Proの方が若干ある。響きはHD280Proの方が豊か。弦楽器はHD280Proの方が原音に近くしなやかで良い。金管楽器はSE-MONITOR 10Rの方が鮮やか。ただしソースによってはやや安っぽい音になる。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなか良いが、どちらか選ぶならSE-MONITOR 10Rか。使い分けるなら、クラシックやジャズはHD280Pro、ポップスやロックはSE-MONITOR 10R。

T50RP
どちらもややかまぼこ。超低域はT50RPの方が出るが、低音の厚みはHD280Proの方がある。高域はHD280Proの方がかなり出る。分解能はHD280Proの方が上、音場はT50RPの方が広いが明確さという意味ではほぼ互角。HD280Proの方が原音忠実だが、エッジがきつく聴き疲れする。サ行の音等も痛い。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度、情報量等すべてHD280Proの方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、T50RPは生ぬるく、HD280Proはメリハリがある上での温かみ。ノリの良さならHD280Pro、繊細さならT50RP。響きはT50RPの方が豊か。弦楽器はT50RPの方が心地よいが、HD280Proの方が生っぽく良いという人も多そう。金管楽器や打ち込み系の音の表現はHD280Proの方が圧倒的に良い。使い分けるなら弦楽器はT50RP、それ以外はHD280Pro。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第25回 Joy/本田雅人「Growin'」より
第38回 ルシファー・サム/ピンク・フロイド「夜明けの口笛吹き」より

曲別HP探索2
第5回 雪解け沢/「知床・オホーツク」より
第28回 All the Things She Said/t.A.T.u.「200km/h in the Wrong Lane」より
第31回 交響曲第5番ニ短調/ショスタコーヴィチ
第95回 大地讃頌(カンタータ「土の歌」から)(混4)/「あの日教室で歌った 思い出の合唱曲 あの素晴らしい愛をもう一度」より













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 8Hz〜25kHz 102dB 64Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
220g - 3m(カール) 片出し 折りたたみ可能

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 3 5 4 3 3 均(中、低) 16800円

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公開日:2004.12.27