第28回 All the Things She Said/t.A.T.u.「200km/h in the Wrong Lane」より

 t.A.T.u.はロシアの女性2人組みユニットです。日本でも一時期大ヒットしたので、覚えている人も多いかと思います。
 今回取り上げるのは2002年発表のアルバム「200km/h in the Wrong Lane」の2曲目です。t.A.T.u.の代表曲の1つと言って良いと思います。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「この曲の1:24からの間奏がかっこよくて好きなんですが、特にここの音場感・分離感の良いHPお願いします」とのことです。分離感はともかく音場感の良さには色々ありますが、今回の曲としてはある程度の広さがあればあとは明確さの方が大事になってくると思います。


・1台目 SHP8900(PHILIPS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。音場感・分離感ともにこの価格帯としては十分なものを持っています。SHP8900はザラザラした質感があってそれが曲によっては合わないこともあるのですが、今回の曲とはどちらかと言うと相性が良く逆に魅力的に感じられるくらいです。ヴォーカルの表現、全体のバランス、かっこ良さといった点についても悪くないと思います(かっこ良さについては当然ながら主観によるところが大きいですが)。
 他にはATH-A500、HP-RX900、MDR-XD400、SHP2500等で聴いてみました。ATH-A500は最後までSHP8900と迷いましたが、SHP8900の方が全体のバランスやかっこ良さといった点で勝っているように感じたのでそちらにしました。HP-RX900は間奏の部分は悪くないのですが、ヴォーカルの音色・質感が不自然で耳障りなので外しました。MDR-XD400は間奏の音場感・分離感は悪くないのですが、空間の広さに対して音の量が足りていないような感じでスカスカして迫力に欠ける点が気になります。SHP2500もMDR-XD400同様間奏の音場感・分離感は悪くないのですが、こちらは音が割れるような感じで粗っぽいのが気になります。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 HD280Pro(SENNHEISER)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。音場感はかなり明確でしかも音像がシャープなので、性能的な意味だけでなく音場的な意味でも分離が良いです。全体的にまとまりに欠けるようなところがあるせいかバランスもあまり良くないように感じがちですが、ヴォーカルや個々の楽器の表現はそれほど癖がありません。
 他にはDJ1 PRO、EX-29、RP-21、SE-A1000等で聴いてみました。DJ1 PROは音場感・分離感ともにある意味なかなか良いのですが、音場感は癖がありますし音像もシャープとは言いがたいので外しました。ただ、間奏の部分はシンセでDJ1 PROとは独特の相性の良さがありますし、全体的な相性も人によってはかなり良いと感じるのではないかと思います。EX-29は音場感・分離感についてはHD280Proに匹敵するのですが、全体のバランスが悪くかなり違和感があります。RP-21は全体のバランスやかっこ良さといった点はかなり良いのですが、音場感・分離感についてはHD280Proと比べて若干見劣りします。SE-A1000は漠然と聴くには悪くないのですが、音像がぼやけていて音場的な意味で分離が悪い点が気になります。
 不満点と言うか希望は、1台目と2台目の良いとこ取りをしたいということです。

・3台目 HD800(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。音場感はかなり明確でしかも音像がシャープなので、性能的な意味だけでなく音場的な意味でもかなり分離が良いです。この点については2台目以上です。しかも音場が広く見晴らしが良いため、なおさらその傾向が強いように感じられます。最初に書いた条件に従うならおそらく最高の機種ですが、今回の曲を楽しむには空間の広さに対して音の量が足りていないような感じがありますし、もう少し近くでガンガン鳴らす感じの方が合うのではないかと思います。HD800の音の硬さ・切れも基本的には今回の曲と相性が良い傾向ではありますが、ヴォーカルの質感はもう少し艶や柔らかさが欲しい個所があります(癖がない点は良いのですが)。
 不満点は、上記の通り空間の広さに対する音の量、距離、ヴォーカルの質といったあたりです。

・4台目 ATH-A2000X(audio-technica)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。基本的には明確な音場と硬い音で3台目に近い傾向ですが、不満点についてはすべて少しずつ改善される印象です。最初に書いた条件はしっかり満たしてくれると思います。ヴォーカルはサビではなくAメロの表現が魅力的に感じられます。ただし、線が細く迫力に欠ける傾向なので、全体としては合わないと感じる人もいるでしょう。
 他にはHFI-780、HP-DX1000、MDR-SA5000、SR-325i等で聴いてみました。HFI-780は最後までATH-A2000Xと迷いましたが、ATH-A2000Xの方が音場が左右に広くヴォーカルも自然だったのでそちらにしました。とは言えATH-A2000Xでは線が細く迫力に欠けるという不満があるならこちらの方が合うと思います。HP-DX1000は音場感・分離感についてはかなり良いのですが、ヴォーカルの音色・質感が不自然で耳障りなので外しました。MDR-SA5000も音場感・分離感については良いのですが、低域不足でバランスが悪くガチャガチャとうるさいだけの鳴らし方になってしまいます。SR-325iは漠然と聴くには非常に良いのですが、今回選んだ他の機種と比べると音場的な意味で分離が悪い点が気になります。

・5台目 Turbine Pro Copper(Monster Cable)
 性能的な意味でも音場的な意味でも最も分離が良いように感じたので選びました。かなり音像がシャープです。全体のバランスや相性もなかなか良いと思います。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK10は比較的Turbine Pro Copperに近いものの線が細く迫力に欠ける点が気になる、HiDefJax AcousticSteelは全体のバランスやかっこ良さといった点についてはかなり良いもののTurbine Pro Copperと比べると分離では見劣りする、IE8は音場は広いものの音像も大きく音場的な意味での分離はいまいち等の不満がありました。
 他にはHP-FX500とAH-78が良かったです。ただし、エッジがきついため聴き疲れはやや気になります。


 今回は曲の内容と探索方針に多少のズレがあったような気がします。女性ヴォーカルのポップスとして普通に楽しむのであれば、今回選んだ機種よりもSR-325iやRP-21の方が良いと感じる人も多いのではないでしょうか。
 ヘッドホンアンプはHead Amp 2/MkII SEが良いと思います。切れが良く余計な付帯音が乗らない上、分離も良いです。次点はhpa200b(ハイエンド仕様)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。













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