第31回 交響曲第5番ニ短調/ショスタコーヴィチ

 今回取り上げるのはショスタコーヴィチの交響曲第5番ニ短調です。指揮はムラヴィンスキー、演奏はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団で、1973年の録音です。
 ムラヴィンスキーはこの曲の初演者で、いくつもの演奏がCD化されるほど高い評価を得ています。今回取り上げる演奏は緩急をしっかりつけた上で下品にならず緊張感と風格の感じられる仕上がりになっている印象です。録音としてはドライで鋭利、心地よさや滑らかさとは無縁です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。今回の曲・演奏・録音の緊張感や厳しさがしっかり感じられることを最優先したいです。その上で、音場が広くオーケストラの定位を再現してくれるものが好ましいです。


・1台目 CPH7000(Classic Pro)
 緊張感がしっかり感じられるという点において最も良かったので選びました。緊張感が感じられる理由は、切れが良いことと原音の粗が感じられることにあると思います。CPH7000は低域の量が足りないように感じられることも多いのですが、今回の曲は低域が多めの録音になっているおかげかそれほど気になりません(とは言え、どちらかと言うと足りないとは思います)。
 他にはMDR-XD400、SE-M870、SHP2500、UR/40等で聴いてみました。MDR-XD400はバランスは良いのですが、ただ何となく鳴らしているような感じで緊張感が出ません。SE-M870、SHP2500、UR/40はどれも低域の量が多すぎる上、切れが足りない印象です。どうも今回の曲には低域の量が多いものは(想像以上に)合わないようです。
 不満点は、重さや暗さが足りない点、周波数特性に癖があるため音色がやや不自然な点です。

・2台目 HD280Pro(SENNHEISER)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはどちらもある程度改善されます。その上で、切れが良く原音の粗が感じられるという傾向は同じで、緊張感がしっかり感じられます。今回聴いた中では音場が広い点も良いです。
 他にはATH-M40fs、K240monitor、K530、MDR-CD900ST等で聴いてみました。どれも1台目の不満点は改善されます。ATH-M40fsは曇っていてメリハリに欠けるため、緊張感と言うより厳しさが足りない印象です。K240monitorは切れや力感が足りないせいか緊張感があまり感じられません。K530は軽くて明るい印象で重さや暗さが不足気味です。MDR-CD900STは最後までHD280Proと迷いましたが、HD280Proの方が音場が広くシンバルの不要な痛さがなかったのでそちらにしました(シンバルの痛さについてはどちらかと言うとMDR-CD900STよりも録音に原因があると思いますが)。
 不満点は、オーケストラの定位を再現してくれない点です。それ以外は全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・3台目 HD800(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。前方定位する、音場が広い、遠くから音を鳴らす、音像がシャープといった特徴があり、今回聴いた中では最も生演奏に近い定位・音場です。切れが良く原音の粗が感じられることによって、緊張感もしっかり出ます。音色の癖のなさという意味でもかなり良いのですが、やや明るい傾向なので重さや暗さを重視するなら合わないと思われます。
 不満点は、全体的にもう少し低音よりで重さや暗さが感じられるとなお良いという点ですが、3台目の長所を保ったままこれを改善するのは不可能だと思います。

・4台目 ATH-AD2000(audio-technica)
 3台目の不満点を踏まえたという面もありますが、それよりもとにかく第4楽章の勢いが素晴らしかったので選びました。3台目と比べると薄く曇っていて音の輪郭もぼやけ気味なのですが、それでも勢いでは勝っている印象です。オーケストラの定位の再現については3台目の方がはるかに良いです。バランスとしては3台目と4台目の間くらいが最適なように感じます。
 他にはAH-D5000、DT880、HP-DX1000、SR-007+SRM-717等で聴いてみました。AH-D5000は音色は自然なのですが、ただ何となく鳴らしているような感じで緊張感が出ません。DT880は切れではなく雰囲気を出すことによって緊張感が感じられる面があるような印象ですが、高域の不要な痛さが気になります。HP-DX1000はあまり緊張感が感じられませんし、音色の癖も気になります。SR-007+SRM-717は音場の広さが長所なのですが、オーケストラの定位の再現ということになると3台目の方が有利ですし、深刻さに欠けるようなところも気になります。

・5台目 HiDefJax AcousticSteel(ATOMIC FLOYD)
 最初に書いた条件を最も満たしていると感じたので選びました。ある程度切れが良く原音の粗が感じられることによって緊張感が出ます。とは言え、切れや原音の粗だけなら他にもっと良いものがあります。これを選んだのは、そういった他の機種と比べて重さや暗さが感じられることによって緊張感が増している面があると感じたためです(とは言え、基本的には明るい傾向です)。音場が広い点も好印象です。色々と聴いてみたのですが、ER-4Sはあっさりしすぎていて重さや暗さが足りない、HP-FX500は緊張感がしっかり感じられるものの高域が痛すぎる、Turbine Pro Copperは明るすぎて重さや暗さが足りない等の不満がありました。
 他にはCX300とHP-FXC50が良かったです。どちらも切れが良く原音の粗が感じられることによって緊張感が出る傾向です。


 今回は正直満足できるものがありませんでした。HD800の定位・音場、ATH-AD2000の勢い、DT880の雰囲気をすべて兼ね備えたものがあればあるいは、と思わずにいられません。
 ヘッドホンアンプはHead Amp 2/MkII SEが良いと思います。切れが良く素のままの音を鳴らしてくれるため、緊張感もそのまま出るような印象です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。













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