ATH-AD2000

音質
 非常にフラット。低域はローエンドまで伸びていて、やや曇っているように感じる。量は適度。エージング前は高域がかなり不足に感じるが、エージング後はそれなりに出るようになる。それにしてもaudio-technicaにしてはかなりおとなしい。ただし、それほど不足には感じないし粗もない。
 分解能、音場感、原音忠実性すべてかなりのもの。特に音場は分かりやすい上にそれなりに広い。エッジはきつくなく聴きやすい。
 それなりに明瞭ではあるが、これまでのaudio-technicaの機種と違い作ったようなわざとらしい感じはしない。音の鮮やかさ、厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはそこそこ。ノリの良さと繊細さを両立している。響きは適度。
 弦楽器は音の伸びが非常に良く、繊細と言うよりも滑らかで心地よい音を鳴らす。金管楽器はaudio-technica独特の金物的な鳴りは感じられない。無難な表現。打ち込み系の音の表現はなかなかうまい。
 かなりオールマイティーだが、HD650やDT880が持っているようなある種のウォームさには欠ける。その分、力強さでは勝っている。ATH-W1000やATH-AD700等と比べると高音の癖がなくシャリつく感じもしないし、低音よりでおとなしい音作りになっている。audio-technica独特のスカスカした感じはほとんど感じられない。これまでのaudio-technicaの音が好きな人には正直あまりおすすめできないが、そうでない人にはおすすめ。

装着感
 良好。側圧は普通からやや強めで、重量も重くないためずれにくい。ウイングサポートで頭頂部をおさえない作りになっているのは良いが、やや頭全体を締め付けるような装着感になっている。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズだが、ATH-AD700等と同様イヤーパッドの内側が耳に当たる感じが気になる。上下方向の角度調節ができないが、それなりにフィットする構造なのであまり気にならない。材質はエクセーヌで、非常に肌触りが良い。
 ATH-W1000やATH-AD700同様、ハウジングが大きいため視界に入るのが気になる。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪いが、開放型のわりには音漏れは酷くない。
 作り、デザインともに良好だが、コードはやや安っぽい。収納ケースが付属していないのが残念。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードは両出しで、太さは合流前は約3mm、合流後は約4mm、硬さは普通だが癖が付きやすくやや扱いづらい。イヤーパッドのサイズは、外周106mm×106mm、内周54mm×54mm、深さ18mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第8回 10万円以下の高級ヘッドホン比較』
不定期コラム『第36回 周波数特性のグラフと実際』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

HPとHPAの相性『ATH-AD2000』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-AD700
情報量が圧倒的に違う。ATH-AD2000の圧勝。何を聴いても、この情報量の差の前では相性などと言う言葉は無意味。ATH-AD2000の方が若干低音よりだが、どちらもそこそこフラット。分解能、音場感ともにATH-AD2000の方が良い。原音忠実性という意味でもATH-AD2000の方が上。ATH-AD2000の方がエッジがきつくなく、聴きやすい代わり明瞭さではATH-AD700に劣る。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、サ行の痛さはATH-AD2000の方がない。温かみはATH-AD2000の方がある。ATH-AD2000の方が無駄に音が抜けておらず、音に厚みがあり、ノリが良い。ATH-AD700は音が細く、無駄に音が抜けている印象。響きは全音域に渡ってどちらも適度。弦楽器、金管楽器ともにATH-AD2000の方が厚みがあり良いように感じるが、音そのものはかなり近い音を鳴らす。使い分けるなら基本的にはATH-AD2000を使い、高域を楽しみたいソースのときだけATH-AD700を使うといった感じか。

FA-002
どちらもかなりフラット。低域はほぼ同量。どちらもソースによっては薄く曇ったような感じが気になることがあるもののそれでいて制動が良い点は似ている。重心はATH-AD2000の方が若干低い。中域はどちらも低域に邪魔されず普通に聴こえてくる。ソースによってはFA-002の方が若干不要な芯が通っている感じが気になることがある。高域はFA-002の方が若干量が多い。FA-002の方が若干明るく線が細い。分解能はATH-AD2000の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はFA-002の方がやや広く明確。FA-002の方が遠くから音を鳴らす感じで空間を感じさせる表現。FA-002の方が音像がシャープ。原音忠実性はATH-AD2000の方が若干上。周波数特性上の癖のなさはほぼ同レベル。原音の粗や生っぽさはATH-AD2000の方が若干感じられる。エッジのきつさや聴き疲れはほぼ同レベル。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さだが、どちらかと言うとATH-AD2000の方が粗っぽく痛い感じ、FA-002の方が細く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはATH-AD2000の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-AD2000の方がやや感じられる。ヴォーカルはATH-AD2000の方が厚手で、不要な芯が通っておらず聴きやすい傾向。ATH-AD2000の方がノリが良い。ATH-AD2000の方が耳元でガンガン鳴らす感じで鳴りっぷりが良い。響きはほぼ同レベル。全体のバランスはそれなりに近い。弦楽器はATH-AD2000の方が若干心地よく、FA-002の方が若干繊細。チェロやコントラバスを濃厚に鳴らして欲しいならATH-AD2000の方が良いが、ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならFA-002の方が良い。金管楽器は鮮やかさという意味では大差ない。ATH-AD2000の方が音の割れ方を出してくれる感じ、FA-002の方がシンプルで綺麗。打ち込み系の音の表現はATH-AD2000の方がややうまい。音の質感の相性にしろ切れにしろ大差ないが、厚みやダイナミックな鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、近くで音を鳴らして欲しいならATH-AD2000、遠くで音を鳴らして欲しいならFA-002。あるいは、厚みや温かみを求めるならATH-AD2000、高域の明るさや繊細さを求めるならFA-002。

HD595
どちらもかなりフラットだが、HD595の方がやや低音より。低域はどちらも薄い感じだが、HD595の方が全体的に出る。高域はほぼ互角だが、HD595の方が若干出るか。HD595はSENNHEISERにしてはかなり高音より、ATH-AD2000はaudio-technicaにしてはかなり高音がおとなしい。分解能、音場感はややATH-AD2000の方が良いが、耳の近くで音がなっているのが気になる。価格ほどの差は感じない。ATH-AD2000の方が若干原音に近い。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、ATH-AD2000の方がやや疲れる。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-AD2000の方がやや上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD595の方がやや良い。どちらもノリが良いというよりは繊細だが、どちらかと言えばATH-AD2000の方がノリが良い。響きはどちらも適度。弦楽器はどちらも伸びが良く非常に心地よく楽しめる。それでいて金管楽器もなかなか鮮やかに鳴らしてくれる。弦楽器も金管楽器も好みのレベルだろう。甲乙つけがたい。打ち込み系の音の表現はATH-AD2000の方がややうまい。HD595の方が透明感のある柔らかい音、ATH-AD2000の方が芯の通った硬い音。どちらも非常にオールマイティーなので、折角ならオーケストラ等の能力を存分に発揮できる曲を聴くのに使いたい。使い分けるなら、基本的にはATH-AD2000を使い、温かみが欲しいときにはHD595を使えば良いと思われる。

HD650
HD650の方がやや低音より。分解能、音場感ともにHD650の方が良い。どちらも原音忠実路線と言うよりは魅力的でしかも聴き疲れしないように味付けしてあるが、強いて言えばHD650の方が原音にやや近いように感じる。どちらもエッジはきつくなく非常に聴きやすいが、どちらかと言えばHD650の方が聴きやすい。明瞭さではATH-AD2000の方がやや上。ただし、これはHD650の方が低音が出る分どうしてもそう感じるだけで、低域のないソースではほぼ互角。どちらもあまり明瞭とは言えない。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD650の方が一歩勝っているが、どちらも非常に良いレベル。ノリの良さはほぼ互角だが、HD650の方が低域に厚みがありノリが良いと感じることが多い。低域が余り必要のないソースで、しかも打ち込み系の場合には逆転する。響きはどちらも適度だが、HD650の方がやや豊か。弦楽器は全音域に渡りHD650の方が良いが、金管楽器はほぼ互角か、ソースによっては若干ATH-AD2000の方が良いように感じる。使い分けるなら、ポップスはATH-AD2000、それ以外はHD650が良いだろう。

HD800
どちらもかなりフラット。低域はATH-AD2000の方が若干量が多い。ATH-AD2000の方が薄く曇ったような質、HD800の方が締まった質。重心はHD800の方がやや低い。中域はHD800の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はHD800の方が若干量が多い。硬く明るい質で目立つ。ATH-AD2000の方がざらつく感じ。この2機種を比べると、量と言うよりも質的にATH-AD2000の方が低音よりに感じられる。分解能はHD800の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろHD800の方が若干勝っている。音場感はHD800の方が広く明確で、見晴らしが良く把握しやすい。ATH-AD2000の方が耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性はHD800の方が若干上。HD800の方が一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさもHD800の方が若干感じられる。エッジはHD800の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHD800の方がやや鋭く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはHD800の方が上。厚みはほぼ同レベルだが、それよりもHD800の方が硬く締まった音である点に目が行く。温かみはATH-AD2000の方がやや感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベル。ATH-AD2000の方が柔らかくスモーキー、HD800の方が明るく澄んでいる。切れやスピード感はHD800の方があるし音色もHD800の方が明るいのだが、ATH-AD2000の方が耳元でガンガン鳴らす感じで鳴りっぷりが良い面があるためノリが良いように感じられることが多い。響きはATH-AD2000の方がやや豊か。弦楽器はATH-AD2000の方が滑らかで心地よい、HD800の方が繊細で生楽器らしさが感じられる。ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならHD800の方が良いが、チェロやコントラバスを心地よく聴きたいならATH-AD2000の方が良いことが多い。ただし音色はHD800の方が自然。金管楽器はHD800の方が鮮やかかつ癖がない。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性や切れは基本的にはHD800の方が良いのだが、ATH-AD2000には独特の相性の良さがあり音の近さが合うことも多い。使い分けるなら、音が近い方が良いならATH-AD2000、遠い方が良いならHD800。あるいは、基本的にはHD800、HD800では味気ないとか音が硬すぎるという不満があるならATH-AD2000。

K701
どちらもかなりフラットだが、ATH-AD2000の方がやや低音より。低域はどちらもローエンドまで出ている感じは似ているが、全体的にATH-AD2000の方が量が多い。中域はK701の方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。これは、どちらかと言うとATH-AD2000の方が普通よりもやや低めの音で、低域の曇りが多少気になるせいもあるだろう。高域はK701の方が細く高い音を鳴らす。分解能はほぼ互角だが、細部の描写はK701の方がうまい。音場感はK701の方が上。ATH-AD2000は耳の近くで音が鳴っているのが致命的に感じるが、それさえ気にしなければむしろATH-AD2000の方が明確な音場と感じる。原音忠実性はK701の方が上。ただし、どちらも原音の粗や生っぽさをあまり感じない点は似ている。K701の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはK701の方が上。厚みはATH-AD2000の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはK701の方が上。ノリの良さならATH-AD2000、繊細さならK701。響きはK701の方が豊か。弦楽器の表現力は基本的に何でもK701の方が良さそうだが、ATH-AD2000も独特の伸びの良さや低域があるので、心地よく弦楽器の低域を楽しみたいならATH-AD2000の方が良いように感じる。金管楽器はK701の方が高く鮮やかだが、力強さではATH-AD2000に分がある。打ち込み系の音の表現はATH-AD2000の方がうまい。K701と比べて音が太く低域の量も多いし、何よりダイナミック。使い分けるならポップスやロックはATH-AD2000、クラシックやジャズはK701。どちらもかなりフラットな割には違う音を鳴らす2機種で、使い分けも楽しめる。

SR-325i
ATH-AD2000はかなりフラット、SR-325iはややドンシャリ。低域はATH-AD2000の方がローエンドまでフラットな感じ。SR-325iの方が厚みがあり、かつ抜けが良い。ATH-AD2000の方が薄く曇っているような感じ。中域はSR-325iの方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はSR-325iの方が高く尖った音を鳴らす。分解能はSR-325iの方がやや上。音場感はどちらも耳の近くで音を鳴らす感じで、狭い点は似ている。ATH-AD2000の方が二次元的な広さがある。原音忠実性は微妙。周波数特性的にはATH-AD2000の方が癖がないが、原音の粗や生っぽさはSR-325iの方が感じられる。SR-325iの方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはSR-325iの方が上。ATH-AD2000の方が全体的に薄く曇っているような感じで、音の質感もソフト。厚みはほぼ互角。温かみはATH-AD2000の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは、どちらが上と言うよりも質の違いが大きい。ATH-AD2000の方がスモーキーな感じ。どちらもかなりダイナミックな鳴らし方でノリが良いが、ATH-AD2000の方が大口径らしい迫力がある。ATH-AD2000と比べると、SR-325iは耳元でジャカジャカうるさいだけのように感じることもある。響きはATH-AD2000の方がやや豊か。弦楽器は心地よさならATH-AD2000の方が上だが、生楽器らしさ重視ならSR-325iの方が良いだろう。金管楽器はSR-325iの方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はSR-325iの方がややうまい。音の質感や切れで勝っている。使い分けるなら、バランスの良さ重視ならATH-AD2000、切れや明るさ重視ならSR-325i。

SRS-4040
どちらもかなりフラットだが、ATH-AD2000の方がややかまぼこ。低域はSRS-4040の方がやや出るが、コンデンサー型独特の薄さのため圧迫感はATH-AD2000の方がある。高域はSRS-4040の方がやや強い。SRS-4040の方が低い音は低く、高い音は高く鳴らすような印象。分解能、音場感、原音忠実性はすべてSRS-4040の方がやや上。どちらもエッジはきつくなく非常に聴きやすいが、ATH-AD2000は音があまり柔らかくない点、SRS-4040は擦れが気になる点が、それぞれ疲れることもある。明瞭さはSRS-4040の方が上だが、音の鮮やかさはほぼ互角。厚み、密度はATH-AD2000の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSRS-4040の方が上。ノリの良さならATH-AD2000、繊細さならSRS-4040。響きはSRS-4040の方が豊か。弦楽器はどちらも伸びが良く心地よく楽しめる。サラサラした感じを楽しみたいならSRS-4040、音の濃さみたいなものを楽しみたいならATH-AD2000。金管楽器はどちらも明るく鮮やかで非常に魅力的。残響音を楽しみたいならSRS-4040、メリハリを楽しみたいならATH-AD2000。打ち込み系の音の表現はATH-AD2000の方が勢いがありうまい。ATH-AD2000はオールマイティー、SRS-4040はクラシックが得意。使い分けるならクラシックやヴォーカルものはSRS-4040、それ以外はATH-AD2000。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第12回 Untitled/Phat Phunktion「You & Me」より
第57回 Town-0 Phase-5/平沢進「救済の技法」より
第93回 星雲仮面マシンマン/「MoJoスーパーベスト」より
第100回 toi et moi/安室奈美恵「ポケットモンスター映画主題歌ソング集」より

曲別HP探索2
第14回 Black Winter Night/DragonForce「Valley of the Damned」より
第31回 交響曲第5番ニ短調/ショスタコーヴィチ
第56回 Whatever/oasis「Whatever」より













戻る





スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 5Hz〜45kHz 102dB 40Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
250g 53mm 3m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
5 4 2 2 4 1 49800円

TOP > ヘッドホンレビュー > ATH-AD2000

公開日:2005.1.14