MV1

音質
 高音よりのかまぼこ。低域は非常に弱い。中域はうわずる上に芯の通った感じが気になるが、はっきり聴こえてる。高域は十分量出るし、シャリついたりもしない。
 分解能は微妙。音の分離は悪くないのだが、微細な表現は苦手。音場感はごく普通。特に良くもなく、悪くもなくといった感じ。原音忠実性はそれなり。原音の粗は感じられるが、低域不足や一聴して不自然な感じが気になる。エッジはきつくないが、中域の芯の通った感じのせいで聴き疲れする。
 明瞭さは低域が弱いことと中域がうわずっていることからなかなか良いが、音の鮮やかさは微妙。厚みはそこそこある。あまりぼやけたりしない硬めの質感。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほとんど感じられない。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない、ある種モニター的な鳴らし方。響きはあっさり。
 弦楽器は繊細さにしろ心地よさにしろ不満。ヴァイオリンの澄んだ感じを楽しみたいときには使えるかもしれないが、それにしてもやや癖がある。金管楽器は力強くてなかなか良い。打ち込み系の音の表現は、質感や切れは合うのだが、いかんせん低域が不足しすぎ。
 PRO/4AAと同じく、他にはあまりない特徴的な音を鳴らす。中域から中高域がキンキンと耳に突き刺さってくるのが致命的に感じる。

装着感
 良好。側圧は普通。ヘッドバンドにはほとんどクッションが入っていないが、重量の割に頭が痛くなったりずれやすかったりはしない。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。ただし、イヤーパッドの内周はあまり広くないので、耳が当たる人は多いだろう。材質は普通のゴムのようだが、肌触りはそれほど悪くないし、中に空気が入っていて柔らかい。特に蒸れやすいとも感じない。
 ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 作り、デザインはなかなか良い。カールコード、スイーベル機構、折りたたみ可能。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周90mm×90mm、内周38mm×38mm、深さ20mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
収納ケース



参考
メーカー製品ページ
代理店製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-A900
ATH-A900はやや高音より、MV1は高音よりのかまぼこ。低域はATH-A900の方がかなり出る。中域は、低域が出ないこととうわずっていることからMV1の方がはっきり聴こえてくる。高域はATH-A900の方がやや高い音で、細くとがっていて目立つ。分解能及び原音忠実性はATH-A900の方がかなり上。特に微細な表現には差が出る。音場感はほぼ互角。ATH-A900の方がエッジがきついが、MV1は中域がキンキンと耳に突き刺さってきて疲れるため、総合的な聴き疲れとしてはMV1の方が悪いだろう。明瞭さはMV1の方が若干上、音の鮮やかさはATH-A900の方が上。ATH-A900に比べると、MV1は低域が弱いにもかかわらず曇っているように感じることがある。厚みはMV1の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-A900の方がかなり上。ATH-A900の方がかなり繊細で、ノリの良さにしても良い勝負。響きはATH-A900の方が豊か。弦楽器はATH-A900の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はATH-A900の方が高く鮮やかだが、力強さならMV1に分がある。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまいが、MV1は低域の量がまったく足りない。ATH-A900は低域の量はそれほど不足ではないが、質や音の低さには不満が残る。使い分けるなら、基本的にはATH-A900、よほど音の太さや厚みが欲しいときやATH-A900では高域が痛いときだけMV1。

DR-631
DR-631はかなりかまぼこ、MV1は高音よりのかまぼこ。低域はどちらもかなり少ないが、どちらかと言えばMV1の方が量が多い。中域はMV1の方がはっきり聴こえてくる。これは低域の量云々よりも音の質としてMV1の方が高く癖のある音を鳴らすため。高域はDR-631の方が細く鋭い音だが、MV1の方が量が多く明るい。分解能はDR-631の方が上。音の分離はあまり差を感じないが、一つ一つの音の微細な描写はDR-631の方が上。音場感はDR-631の方が明確。原音忠実性はDR-631の方が上。周波数特性上の癖のなさだけでなく、原音の粗や生っぽさが感じられるという点でも上。エッジはDR-631の方がややきついが、MV1は中域から中高域にかけてキンキンするような感じがあり、総合的な聴き疲れとしてはあまり変わらない。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方が上。厚みはMV1の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはDR-631の方が上。響きはDR-631の方がやや豊か。弦楽器はDR-631の方が繊細かつ心地よい。ただ、これはMV1が悪いため相対的にDR-631が良く感じるのだろう。金管楽器はMV1の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はMV1の方が良い。MV1の方が明るい表現。使い分けるなら、基本性能重視ならDR-631、明るい音の方が良いならMV1。

EX-29
どちらも高音よりのかまぼこ。低域はどちらもかなり少なく、ローエンドに行くほど弱くなる点は似ている。どちらかと言うとMV1の方が量が多く重心も低い。中域はMVの方がやや高い音ではっきり聴こえてくるが、うわずったり張り出したりする癖が気になる。中高域はMV1の方がしっかり出る。高域はEX-29の方がやや線が細く量が多い。分解能はEX-29の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろある程度差がある。音場感はEX-29の方がやや広い。MV1の方が頭内定位がやや気になる。原音忠実性はEX-29の方が上。一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでもやや勝っている。エッジはEX-29の方がややきついが、MV1は中域がキンキン突き刺さって疲れるので、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろEX-29の方がやや鋭く刺さる感じ。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方がやや上。厚みはMV1の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはEX-29の方が上。EX-29の方がモニター的で地味、MV1の方が明るく元気。ただし、スピード感という意味ではEX-29の方がやや上。響きはMV1の方がやや豊か。弦楽器はEX-29の方が繊細で生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はEX-29の方が癖がなく、MV1の方が太く鮮やか。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はMV1の方が若干上、切れや癖のなさはEX-29の方がやや上。使い分けるなら、基本的にはEX-29、少しでも低域が欲しいとか明るさが欲しい場合にはMV1。

HD215
HD215はかなりフラット、MV1は高音よりのかまぼこ。低域はHD215の方がやや強いが、質感は割と近く量も極端な差はない。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、MV1の方がうわずっていて無駄に目立つ印象。高域はHD215の方が細く高い音を鳴らす。分解能及び原音忠実性はHD215の方が上。特に微細な表現はかなり差がある。音場感はほぼ互角。HD215の方がエッジがきついが、MV1は中域がキンキン突き刺さってくるため、総合的な聴き疲れはほぼ互角。明瞭さ、音の鮮やかさはHD215の方が上。厚みはMV1の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHD215の方が上。HD215の方がノリが良くかつ繊細。響きはHD215の方が豊か。弦楽器はHD215の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHD215の方が高く鮮やかだが、力強さではMV1の方が上だろう。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまい。爽やかにバランス良く鳴らして欲しいならHD215、音の厚みが欲しいならMV1か。ただし、打ち込み系の曲をノリ良く楽しむにはどちらも低域が不足に感じる。その点はHD215の方がまだまし。使い分けるなら、基本的にはHD215、音の厚みが欲しいときはMV1。

PRO/4AA
どちらも高音よりのかまぼこ。低域は曇っているような感じがあるためPRO/4AAの方が出るように感じるが、ほぼ同量。中域はどちらもうわずって突き刺さるようにはっきり聴こえてくる点は良く似ている。高域はMV1の方がやや高い音を鳴らす。分解能はほぼ互角。どちらも音の分離は良いが微細な表現が下手なところは似ている。音場感はMV1の方が上。原音忠実性はPRO/4AAの方が上。どちらもエッジはきつくないが、中域がキンキンと突き刺さってくるため疲れる。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方が上。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはどちらもほとんど感じられないが、どちらかと言えばPRO/4AAの方が良いようだ。どちらもある種モニターライクな鳴らし方。響きはどちらもあっさりだが、どちらかと言えばPRO/4AAの方が豊か。弦楽器はどちらもうまくない。硬く芯が通っていて心地よさがまったく感じられない。金管楽器はMV1の方がやや高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はMV1の方がうまい。明るく切れがある。多少の違いはあるが、広い目で見ると似ている機種と言えよう。どちらか1台持っていれば十分な機種。

SE-900D
MV1は高音よりのかまぼこ、SE-900Dはややかまぼこ。低域はSE-900Dの方がかなり出る。中域は低域が出ないこととうわずっていることからMV1の方がかなり目立つ。高域はSE-900Dの方が高い音を鳴らすが、量的な差はあまり感じない。分解能及び原音忠実性はSE-900Dの方が上。MV1はとにかく低域が弱すぎるし、音の分離はともかく微細な表現ではSE-900Dの方がかなり上。音場感はMV1の方がやや上。SE-900Dの方がややエッジがきついが、MV1は中域がキンキンと突き刺さってくるのが痛く、総合的な聴き疲れはMV1の方が悪いだろう。明瞭さは低域が弱いことと中域がうわずっていることからMV1の方がやや良いように感じるが、音の鮮やかさはどちらもやや不満が残る。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSE-900Dの方がかなり上。ノリの良さにしろ繊細さにしろSE-900Dの方が良いように感じる。響きはSE-900Dの方が豊か。弦楽器はSE-900Dの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はどちらもなかなか鮮やかで力強いが、SE-900Dの方が高い音を鳴らしてくれるぶん楽しめる印象。打ち込み系の音の表現は、質感的にはどちらもなかなか相性が良いが、MV1は低域が不足しすぎ。その点、SE-900Dは適度な低域がある。使い分けるなら、基本的にはSE-900D、余程SE-900Dの高域の癖や音場感の悪さが気になるときだけMV1。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 10Hz〜25kHz 98dB 250Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
400g - 2.5m(カール) 片出し 折りたたみ可能

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3 4 4 4 4 3 中(高) 21800円

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公開日:2006.9.19