PRO/4AA

音質
 高音よりのかまぼこ。低域はバッサリ鳴らない。中域はソースによってはややうわずるし芯の通った感じが気になるものの、はっきり聴こえてる。高域は十分量出るし、シャリついたりもしない。
 分解能はなかなか良い。音場感は価格なり。原音忠実性は、低域が弱くて硬めの音を鳴らす点を除けばなかなか良い。エッジはきつくないが、中域の芯の通った感じのせいでやや聴き疲れする。
 明瞭さは低域が出ないこともあり、なかなか良い。ただ、その割には音の鮮やかさはいまいち。厚みはそこそこある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。極めてモニターライクな冷静な鳴らし方。響きはあっさりで、こもり感はそれほど気ならない。むしろ切れの良さに目が行く。良くも悪くもかなり癖の強い機種。芯の通ったしっかりした音を鳴らす。音楽鑑賞用にはあまり向かない。ただ、他にはない音を鳴らすのも確か。
 弦楽器は意外と滑らかで硬くなく、思ったほど悪くないが、低域が足りないのはやはり不満。金管楽器は特に鮮やかではないが、無難な音。打ち込み系の音の表現は厚みと切れの良さでそこそこ楽しめるが、低域が不足なのは否めない。

装着感
 普通。とにかく重い。側圧がやや強めだが、この重さでは仕方なかろう。また、重いわりにずれにくい(もちろんずれやすい部類ではあるが)。ヘッドバンドにはクッションがあるのだが、それでもこの重量では痛い。ヘッドバンド調節が固定できない(フリーアジャストでもない)のが不満。長時間装着すると頭頂部と首が痛くなる。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。空気を封入した独特のイヤーパッドが特徴的で、密封度が高く耳をすっぽり覆うため、長時間使用すると蒸れるが感触は良い。普通のイヤーパッドと違い、装着したときに冷たく感じる。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 独特のデザインとごつい作りが好みの分かれるところかもしれない。ただし他のヘッドホンにない魅力をかもし出しているのは確か。ミニプラグ用ジャックに接続するには変換プラグが別途必要なのは難点。インピーダンスが高く感度も低いため、音量がとりづらい。いろんな意味で使用者に優しくないが、それ故か魅力的でもある。
 プラグは標準プラグ。コードの太さは約3.5mm、柔らかく扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周112mm×84mm、内周64mm×36mm、深さ10mm。

付属品
無し



参考
メーカー製品ページ
代理店製品ページ

不定期コラム『第15回 モニター用ヘッドホン比較』
不定期コラム『第36回 周波数特性のグラフと実際』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-SX1
どちらもかまぼこ。低域は全体的にATH-SX1の方が出る。中域〜高域はほぼ同量。分解能はほぼ互角だがATH-SX1の方が若干良いか。音場感はPRO/4AAの方が良い。ATH-SX1の方が原音忠実。PRO/4AAの方がしっかり芯の通った硬い音でしかもエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはほぼ互角、音の鮮やかさ、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-SX1の方がある。響きはATH-SX1の方が豊かだが、これはPRO/4AAがあっさりすぎと言うべきだろう。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現等すべてATH-SX1の方が上。何を聴くにしてもATH-SX1の方が良いような気がするが、PRO/4AAはちょっと他にはない音なので、気分転換に聴くのは楽しそうだ。

DR-631
どちらもかまぼこ。超低域はPRO/4AAの方が出るが、低域はDR-631の方が出る。高域は量はほぼ同量だが、PRO/4AAの方がやや高い音を鳴らす。分解能、原音忠実性はDR-631の方が上、音場感はPRO/4AAの方が上。PRO/4AAの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはPRO/4AAの方が上。厚み、密度はDR-631の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらも微塵もない。どちらも極めてモニターライクな鳴らし方。響きはあっさり。DR-631は低域がでないのにどこか曇っているような音だが、逆にPRO/4AAは曇りがなさ過ぎる感じ。弦楽器はDR-631の方が心地よい。金管楽器はほぼ互角。打ち込み系の音の表現はどちらかと言えばDR-631の方がうまい。どちらも音楽鑑賞には向かない。モニター的な用途ならDR-631の方が良いだろう。

MDR-CD900ST
MDR-CD900STはフラット、PRO/4AAはかまぼこ。低域は圧倒的にMDR-CD900STの方が出るが、これはむしろPRO/4AAの低域が出なさ過ぎと言うべきだろう。高域はほぼ同量だが、様々な理由によりPRO/4AAの方が出るように感じられる。どちらもモニター用だが一聴して全然違う音調。分解能はほぼ互角だが、若干MDR-CD900STの方が良いか。音場感はPRO/4AAの方が良い。MDR-CD900STの方が原音忠実。どちらもかなり聴き疲れするが、エッジのきつさではMDR-CD900STの方が上。PRO/4AAは硬く芯が通り過ぎていて疲れる。明瞭さ、音の鮮やかさはPRO/4AAの方が良い。厚み、密度、情報量等はほぼ互角だが、かなり違う方向性なので、比較しない方が良いかもしれない。温かみやヴォーカルの艶っぽさはMDR-CD900STの方がある。PRO/4AAはよほどうがった聴き方をしない限り温かみやヴォーカルの艶っぽさはゼロと言って良い。響きはMDR-CD900STの方が圧倒的に豊か。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現等すべてMDR-CD900STの方が上。使い分けは難しい。まったく違う音なので気分で変えるのが良いかもしれないが、基本的には何を聴くにしてもMDR-CD900STの方が良いだろう。

MV1
どちらも高音よりのかまぼこ。低域は曇っているような感じがあるためPRO/4AAの方が出るように感じるが、ほぼ同量。中域はどちらもうわずって突き刺さるようにはっきり聴こえてくる点は良く似ている。高域はMV1の方がやや高い音を鳴らす。分解能はほぼ互角。どちらも音の分離は良いが微細な表現が下手なところは似ている。音場感はMV1の方が上。原音忠実性はPRO/4AAの方が上。どちらもエッジはきつくないが、中域がキンキンと突き刺さってくるため疲れる。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方が上。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはどちらもほとんど感じられないが、どちらかと言えばPRO/4AAの方が良いようだ。どちらもある種モニターライクな鳴らし方。響きはどちらもあっさりだが、どちらかと言えばPRO/4AAの方が豊か。弦楽器はどちらもうまくない。硬く芯が通っていて心地よさがまったく感じられない。金管楽器はMV1の方がやや高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はMV1の方がうまい。明るく切れがある。多少の違いはあるが、広い目で見ると似ている機種と言えよう。どちらか1台持っていれば十分な機種。

R/200
どちらもかまぼこ。PRO/4AAの方が低域も高域も出る。R/200はPRO/4AAをさらに腰高にしたような感じで、しかも高域が出ない。分解能はPRO/4AAの方が上、音場感はR/200の方が上。どちらもある意味原音とは程遠い音だが、まだPRO/4AAの方が原音の名残が感じられる。R/200の方がエッジがきつく、音が割れる感じで聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みすべてPRO/4AAの方が上。どちらも温かみやヴォーカルの艶っぽさは微塵もない。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない。響きはあっさり。古いラジカセに似たスカスカで曇っているような癖があるが、その癖の度合いはR/200の方が上。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてPRO/4AAの方がうまい。正直言ってどちらも音楽鑑賞にはあまり使いたくない。

SE-MONITOR 10R
PRO/4AAはかまぼこ、SE-MONITOR 10Rはややドンシャリ。低域、高域ともにSE-MONITOR 10Rの方が出る。分解能、音場感ともにほぼ互角だが、若干SE-MONITOR 10Rの方が良いか。原音忠実性はどちらもモニター用にしてはいまいちだが、まだSE-MONITOR 10Rの方が良い。エッジのきつさはほぼ互角、どちらもエッジと言うより芯が通り過ぎていて聴き疲れする。明瞭さはほぼ互角だが、音の鮮やかさはSE-MONITOR 10Rの方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSE-MONITOR 10Rの方がかなりある。SE-MONITOR 10Rの方がノリの良く、音楽鑑賞向き。響きはどちらもかなりあっさり。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現等すべてSE-MONITOR 10Rの方が上。何を聴くにしてもSE-MONITOR 10Rの方が良いと思われるが、PRO/4AAには独特の魅力があるのも確か。

UR/40
PRO/4AAはかまぼこ、UR/40はドンシャリ。低域はPRO/4AAは全然足りないが、UR/40は十分。中高域〜高域はPRO/4AAの方が出るが、超高域はほぼ同等。分解能や原音忠実性はPRO/4AAの方が上、音場感はUR/40の方が上。エッジはUR/40の方がきついのだが、PRO/4AAの方がキンキンしてかなり疲れる。明瞭さは低音が出ない分PRO/4AAの方が上だが、音の鮮やかさはUR/40の方が上。厚みはPRO/4AAの方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはUR/40の方がかなり上。UR/40の方がノリが良くしかも繊細。響きはどちらもあっさりだが、どちらかと言えばUR/40の方が豊か。どちらもある意味シャープな音だが、それでいてここまで違う音になるのも凄い。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてUR/40の方がうまい。弦楽器は伸びが良く繊細で楽しめる。金管楽器は非常に高く鮮やかな音。打ち込み系の音はやや力感に欠けるが、それ以上にスピード感があり楽しめる。何を聴くにしてもUR/40の方が魅力的。PRO/4AAは何を聴いてもスカスカ、キンキンした音になる。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 10Hz〜25kHz 95dB 250Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
595g - 3m(カール) 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3 3 5 4 4 1 中(高) 15500円

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公開日:2004.11.28