DR-631
音質
かなりのかまぼこ。低域はバッサリ鳴らない。中域から中高域はややうわずり気味だが、非常にはっきり聴こえてくる。高域は、低域ほどではないがかなり控え目。
分解能は非常に高いが、全体的にやや曇っているような音なので、実力よりも悪く感じるようだ。音場は狭いがかなり明確。曇りを除けば非常に原音忠実。ソースの粗もかなり分かりやすいが、意外なことにエッジはきつくなく、かなり聴きやすい。
明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。低域がバッサリ鳴らないのに明瞭さに欠けるように感じるのは、曇ったような地味な音作りとこもり感のせいだろう。厚みはそれなりにある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさには欠ける。極めてモニター的な冷静な鳴らし方で、良くも悪くも安心して聴ける。響きはあっさりだが、非常に密封度が高いために、こもり感がやや気になる。
弦楽器は繊細さが足りないように感じるものの、原音に近い上に意外と滑らかで心地よく楽しめる。金管楽器は曇っているような感じで鮮やかさが足りない。打ち込み系の音の表現は暗い上にややぼやけ気味で、低域が非常に不足しているように感じるためうまくない。
コストパフォーマンスは決して良いとは言えないが、モニター用途でMDR-CD900STではエッジがきつすぎると言う人には最適かもしれない。
装着感
悪い。側圧はかなり強め。ヘッドバンドは二本に分かれていて、頭頂部はあまり痛くない。重量は重めだがずれにくい。
イヤーパッドは一見耳覆いサイズに見えるが、内周がかなり小さいため、ある意味耳のせサイズ。左右方向の角度調節ができないが、装着感に影響は無いようだ。材質はレザータイプの人工皮革で、なかなか柔らかく心地よいため、側圧の強さが少しは緩和される。
イヤーパッドと耳との接触面積がかなり広い上、密封度も高いためかなり蒸れる。ヘッドバンドの長さ調節は細かくでき、ネジで締めて止める構造になっている。
その他
遮音性及び音漏れ防止は良好。特に遮音性は、側圧が強いこととイヤーパッドの接触面積が広いこともあるせいで、自分の鼓動がうるさく感じられるほど。
二十年以上前から業務用として活躍してきただけあり、一つ一つ手作りで仕上げたようなしっかりした作り。昔は某業界大手会社で大量に使用されていたらしい。デザインは一般的な意味で良いとはいえないが、非常に無骨な飾り気の無さが、個人的には好印象。
ハウジングには製造番号、製造年月日、インピーダンスが刻印されている。本レビューは50Ωのものだが、他に8Ω、600Ω、10kΩがある。少し変わったキャリングポーチが付属している。
プラグは標準プラグ。コードの太さは約5.5mm、特殊な布巻きで、太いわりには柔らかくて癖が付きにくく、扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周100mm×76mm、内周24mm×22mm、深さ18mm。
付属品
キャリングポーチ
参考
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』
周波数特性グラフ
比較メモ
ATH-SX1
どちらもかまぼこだが、ATH-SX1の方がフラット。低域も高域もATH-SX1の方が出る。ただし、低域は出方が全然違う。ATH-SX1は普通に薄いのに対して、DR-631は中低域はしっかり鳴らすのに、それ以下はバッサリ鳴らないのに加えて、ある種の曇りがある。分解能はDR-631の方が若干上に感じるが、線の細さや音の粒の細かさを求めているならATH-SX1の方が良い。音場感、原音忠実性はATH-SX1の方がやや上。ATH-SX1の方が線が細く聴き疲れする。明瞭さはほぼ互角、音の鮮やかさはATH-SX1の方が上。厚み、密度はDR-631の方がかなり上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはATH-SX1の方がかなり上。DR-631は極めてモニター的な鳴らし方なのに対して、ATH-SX1はモニター用とは思えないほど繊細で音楽鑑賞向きの音。響きはATH-SX1の方が豊かだが、これはDR-631がまったく響かないと言った方が適切だろう。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてATH-SX1の方が魅力的。音楽鑑賞に使うなら何を聴くにしてもほとんどATH-SX1の方が良いだろう。モニター的な用途以外では、DR-631は使えない。
MDR-CD900ST
DR-631はかまぼこ、MDR-CD900STはフラット。低域も高域もMDR-CD900STの方が出る。特に低域はMDR-CD900STの方がかなり出る。DR-631は中低域はしっかり鳴らすのに、それ以下はバッサリ鳴らない。分解能はDR-631の方が若干上に感じるが、線の細さや音の粒の細かさを求めているならMDR-CD900STの方が良い。音場感、原音忠実性はMDR-CD900STの方が上。MDR-CD900STの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはDR-631の方が上、音の鮮やかさはMDR-CD900STの方が上。厚み、密度はDR-631の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはMDR-CD900STの方がかなり上。DR-631は極めてモニター的な鳴らし方なのに対して、MDR-CD900STはモニター用にしてはフラットで響きが豊か。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてMDR-CD900STの方が魅力的。音楽鑑賞に使うなら何を聴くにしてもほとんどMDR-CD900STの方が良いだろう。モニター的な用途以外では、DR-631は使えない。
MV1
DR-631はかなりかまぼこ、MV1は高音よりのかまぼこ。低域はどちらもかなり少ないが、どちらかと言えばMV1の方が量が多い。中域はMV1の方がはっきり聴こえてくる。これは低域の量云々よりも音の質としてMV1の方が高く癖のある音を鳴らすため。高域はDR-631の方が細く鋭い音だが、MV1の方が量が多く明るい。分解能はDR-631の方が上。音の分離はあまり差を感じないが、一つ一つの音の微細な描写はDR-631の方が上。音場感はDR-631の方が明確。原音忠実性はDR-631の方が上。周波数特性上の癖のなさだけでなく、原音の粗や生っぽさが感じられるという点でも上。エッジはDR-631の方がややきついが、MV1は中域から中高域にかけてキンキンするような感じがあり、総合的な聴き疲れとしてはあまり変わらない。明瞭さ、音の鮮やかさはMV1の方が上。厚みはMV1の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはDR-631の方が上。響きはDR-631の方がやや豊か。弦楽器はDR-631の方が繊細かつ心地よい。ただ、これはMV1が悪いため相対的にDR-631が良く感じるのだろう。金管楽器はMV1の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はMV1の方が良い。MV1の方が明るい表現。使い分けるなら、基本性能重視ならDR-631、明るい音の方が良いならMV1。
PRO/4AA
どちらもかまぼこ。超低域はPRO/4AAの方が出るが、低域はDR-631の方が出る。高域は量はほぼ同量だが、PRO/4AAの方がやや高い音を鳴らす。分解能、原音忠実性はDR-631の方が上、音場感はPRO/4AAの方が上。PRO/4AAの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはPRO/4AAの方が上。厚み、密度はDR-631の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらも微塵もない。どちらも極めてモニターライクな鳴らし方。響きはあっさり。DR-631は低域がでないのにどこか曇っているような音だが、逆にPRO/4AAは曇りがなさ過ぎる感じ。弦楽器はDR-631の方が心地よい。金管楽器はほぼ互角。打ち込み系の音の表現はどちらかと言えばDR-631の方がうまい。どちらも音楽鑑賞には向かない。モニター的な用途ならDR-631の方が良いだろう。
ST-90
どちらもかなりのかまぼこだが、DR-631の方が高音より。低域はDR-631は本当にバッサリ鳴らないのに対してST-90は厚みが薄いものの最低限の量は出る。むしろ、中域も低域の曇りの覆われる感じ。逆に、DR-631の中域はうわずり気味で非常に前に出てくる。高域はDR-631の方が一段高い音で、量も多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてDR-631の方が上。どちらもエッジはきつくないが、DR-631はキンキンした中域で聴き疲れすることがあるのに対して、ST-90は低域の曇りとこもり感で聴き疲れすることがある。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはDR-631の方が上。温かみは低域が変に出る分ST-90の方が上のように感じる。ヴォーカルの艶っぽさはどちらも感じられないが、DR-631の方が繊細な部分があるため、多少はましに聴こえる。どちらもノリが良いわけでも繊細なわけでもない、極めてモニター的な鳴らし方。響きはST-90の方がやや豊か。弦楽器はDR-631の方が原音に近く瑞々しい部分があるが、曇っていても良いから心地よさだけを求めるならST-90の方が良い。金管楽器はDR-631の方が高く鮮やか。ST-90はほとんど聴こえてこない。打ち込み系の音の表現はどちらも苦手。低域の量だけならST-90だが、切れや厚みではDR-631の方が上。使い分けるなら、インドアとアウトドア、もしくは中域重視か低域も少しは鳴らして欲しいか、だろう。
サイン波応答
位相+高周波歪み
インパルス応答(CSD)
インパルス応答(録音波形)
100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生
曲別HP探索
第80回 「必殺仕掛人」 〜必殺!/「必殺 The BEST」より
曲別HP探索2
第24回 Rock Me Baby/B. B. King「Rock Me Baby 14
Great Hits」より
第26回 european son/velvet underground「velvet
underground & nico」より
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スペック
駆動方式 | 構造 | 周波数帯域 | 音圧感度 | インピーダンス |
ダイナミック | 密閉型 | 20Hz〜17kHz | - | 50Ω |
重量 | ドライバー直径 | コードの長さ | コードの出し方 | 備考 |
400g | - | 1.5m | 片出し | - |
評点
音質 | 装着感 | 遮音性 | 音漏れ | デザイン | 携帯性 | 音の傾向 | 参考最安価格 |
3.5 | 2 | 5 | 4 | 4 | 1 | 中 | 30000円 |
公開日:2005.6.13