ST-90

音質
 かなりのかまぼこ。低域は全体的にかなり控え目。その割にはかなり曇っているように感じる。中域も曇りに覆われる感じ。高域は低域同様控え目。
 分解能、音場感はいまいち。曇りを除けばなかなか原音忠実。ただし、原音の粗は感じられない。意外なことにエッジはきつくなく、聴きやすい。ただし、ソースによってはこもり感で聴き疲れする。
 明瞭さ、音の鮮やかさは悪い。厚みはやや薄め。温かみは曇りのためにそれなりにあるように感じるが、いわゆるウォームさのようなものは皆無。ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。極めてモニター的な冷静な鳴らし方で、良くも悪くも安心して聴ける。響きは適度だが、こもり感が気になる。地味で古臭い音作り。
 弦楽器はとにかく繊細さが足りない。金管楽器も鮮やかさがまったく感じられない。打ち込み系の音の表現は、古臭い音作りのせいでかなり苦手。
 コストパフォーマンスは決して良いとは言えないが、アウトドアで使うおとなしいヘッドホンを求めているなら、そこそこ使えるだろう。

装着感
 悪い。側圧はやや強め。ヘッドバンドのクッションは無きに等しいが、軽量のため頭頂部はそれほど痛くないし、意外とずれにくい。
 イヤーパッドは耳のせサイズ、上下左右に角度調節ができる。長時間使用するとかなり耳が痛くなる。材質はレザータイプの人工皮革。やや硬めなこともあり、装着感の悪さに拍車をかけている。
 また、ヘッドバンドの長さ調節が固定できないのが難点。ただし、側圧が強めなため、意外と気にならない。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 デザインは古臭く地味だが、他にはない魅力を持っているように感じる。作りも価格の割には悪くない。スペックから想像されるよりも、かなり音量が取りづらい。
 プラグは標準プラグ。コードの太さは約4mm。HP1000と同様、表面に細かいスリットが入っていて滑りにくいためやや扱いづらい。あまり雑に扱うと手が痛い。イヤーパッドのサイズは、外周64mm×64mm、内周26mm×26mm、深さ14mm。

付属品
無し



参考
メーカー製品ページ(pdf)

不定期コラム『第36回 周波数特性のグラフと実際』

周波数特性グラフ


比較メモ
DR-631
どちらもかなりのかまぼこだが、DR-631の方が高音より。低域はDR-631は本当にバッサリ鳴らないのに対してST-90は厚みが薄いものの最低限の量は出る。むしろ、中域も低域の曇りの覆われる感じ。逆に、DR-631の中域はうわずり気味で非常に前に出てくる。高域はDR-631の方が一段高い音で、量も多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてDR-631の方が上。どちらもエッジはきつくないが、DR-631はキンキンした中域で聴き疲れすることがあるのに対して、ST-90は低域の曇りとこもり感で聴き疲れすることがある。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはDR-631の方が上。温かみは低域が変に出る分ST-90の方が上のように感じる。ヴォーカルの艶っぽさはどちらも感じられないが、DR-631の方が繊細な部分があるため、多少はましに聴こえる。どちらもノリが良いわけでも繊細なわけでもない、極めてモニター的な鳴らし方。響きはST-90の方がやや豊か。弦楽器はDR-631の方が原音に近く瑞々しい部分があるが、曇っていても良いから心地よさだけを求めるならST-90の方が良い。金管楽器はDR-631の方が高く鮮やか。ST-90はほとんど聴こえてこない。打ち込み系の音の表現はどちらも苦手。低域の量だけならST-90だが、切れや厚みではDR-631の方が上。使い分けるなら、インドアとアウトドア、もしくは中域重視か低域も少しは鳴らして欲しいか、だろう。

HD25-1
HD25-1はややドンシャリ。ST-90はかまぼこ。低域は厚み・量ともにHD25-1の方が圧倒的に上。それでいて中域もはっきり聴こえてくる。逆に、ST-90は低域の厚み・量ともにないのに、曇っているのが気になる。高域もHD25-1の方が出る。分解能、音場感、原音忠実性すべてHD25-1の方がかなり上。HD25-1の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさ、ノリの良さ、繊細さすべてHD25-1の方が上。響きはどちらも適度だがHD25-1の方がやや豊かか。弦楽器はHD25-1の方が繊細かつ心地よい。金管楽器もHD25-1の方が一段高く鮮やかで力強い。打ち込み系の音の表現は、低域の量だけでなく、厚み・切れ等どんな見方をしてもHD25-1の方が上のように感じる。ほとんど何を聴くにしてもHD25-1の方が良いように感じる。

HP430
どちらもかまぼこだが、HP430の方がフラット。低域はHP430の方が厚み・量ともにあるが、ST-90の方が曇ったような感じがある。高域はHP430の方がやや高くはっきり聴こえてくる。分解能はHP430の方がやや上。音場感、原音忠実性はほぼ互角。曇りさえなければ、ST-90の方が原音に近い音を鳴らしているものと思われる。エッジはHP430の方がややきついが、聴き疲れしないレベル。むしろST-90のこもり感の方が聴き疲れするように感じる。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、ヴォーカルの艶っぽさすべてHP430の方が若干上のように感じる。HP430の方がノリが良くしかも繊細。響きはHP430の方がやや豊か。こもり感はST-90の方が気になる。弦楽器はHP430の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はほぼ互角だが、どちらかと言えばHP430の方が鮮やかに感じる。打ち込み系の音の表現はHP430の方がうまい。ほとんど何を聴くにしてもHP430の方が良いように感じるが、細かい粗が気になるのも確か。そういう人にはST-90の方が根本的に合うかもしれない。

K27i
K27iはかなり低音よりのドンシャリ、ST-90はかまぼこ。低域は厚み、量ともにK27iの方が圧倒的に上。中域はどちらもはっきり聴こえてくるとは言えない。K27iは低域の量が多いため、ST-90は低域が出ないにもかかわらず曇りが支配的なため。そうは言っても、どちらかと言えばST-90の方が聴こえてくるか。ソースにもよると思われる。高域はK27iの方がかなり細く高い音。分解能、音場感ともにK27iの方が良い。原音忠実性はST-90の方が上。これは、ST-90は曇りを除けば色付けの少ない地味な音であるのに対して、K27iは原音忠実よりも楽しく聴かせることに重点を置いた機種であるからだと思われる。K27iの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてK27iの方が上。K27iの方がノリが良くかつ繊細。響きはK27iの方が豊かで、こもり感がかなり気になる。弦楽器はK27iの方が繊細で心地よい。金管楽器はK27iの方が高く鮮やかで楽しめるが、作ったような音がいやならばST-90の方が合うかもしれない。打ち込み系の音の表現はK27iの方がかなりうまい。低域の量、音の厚み、迫力、スピード感すべて上。使い分けるなら、基本的にはK27iで、よほどドンシャリがいやな場合はST-90。

PX200
PX200はやや高音よりのかまぼこ、ST-90はかまぼこ。低域はST-90の方が曇っていて量が多いように感じるが、その点を除いた実質としてはほぼ同量に感じる。中域はPX200の方が曇りに覆われず高い音ではっきり聴こえてくる。高域はPX200の方が高い音で量も多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてPX200の方が上。PX200の方がエッジがきついが、ST-90は曇りで疲れる面があるため、総合的にどちらが疲れるかはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さ、音の鮮やかさはPX200の方がかなり上。厚みは質感が違うので判断に困るが、そう大きな差はない。ただ、PX200の方が分解能の高さや明瞭さのせいでスカスカに感じることはある。温かみは曇りがある分ST-90の方が良いように感じがちだが、良く聴いてみると実際はむしろPX200の方が温かみがあるように感じる。ヴォーカルの艶っぽさはPX200の方が上。PX200の方がノリが良くかつ繊細。ST-90は暗く地味で何となく鳴らしているだけに感じる。響きは曇りのせいで一聴してST-90の方が豊かに感じがちだが、しっかり聴くとPX200の方が豊か。弦楽器はPX200の方が繊細で楽しめる。ST-90は生楽器を鳴らしている感じがしない。金管楽器はPX200の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はPX200の方がうまい。ST-90は暗く、聴いていて全然楽しめない。使い分けるなら、基本的にはPX200、よほど派手さやスカスカした感じを嫌うならST-90。

ZM-DS4F
ST-90はかまぼこ、ZM-DS4Fはやや低音より。低域はZM-DS4Fの方がやや量が多い。重心が低くかつ柔らかくぼやけている。中域はどちらも薄く曇ってはっきり聴こえてこない割にはソースによっては張り出すような感じで目立つことがある点が似ている。どちらかと言うとZM-DS4Fの方がやや高い音で目立つことが多い。中高域から高域はどちらも質的にも量的にも控え目。どちらかと言うとZM-DS4Fの方が明るく目立つことが多いが、シンバル等の高域はST-90の方が量が多いように感じることがある。分解能はZM-DS4Fの方が若干上。一つ一つの音の微細な描写で若干勝っている。音場感はZM-DS4Fの方がやや広く、頭内定位が気になりにくい。原音忠実性は微妙。ST-90の方が一聴して違和感が小さいが、ZM-DS4Fの方が原音の粗や生っぽさが多少感じられる。エッジはどちらもきつくなく、あまり聴き疲れしない。基本的にはZM-DS4Fの方がやや粗っぽい音だが、高域はST-90の方が若干刺さる傾向。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはZM-DS4Fの方が若干上。どちらも曇ったように明瞭さに欠ける点が似ている。厚み、温かみはほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさはZM-DS4Fの方が若干上だが、ソースによっては張り出すような感じで目立つ点がマイナス。どちらもノリが良いわけでも繊細なわけでもない、地味で古臭い傾向だが、どちらかと言うとZM-DS4Fの方が明るく音楽鑑賞向きの印象。ST-90の方が安心して聴ける。響きはZM-DS4Fの方がやや豊か。弦楽器は好みの差だろう。ST-90の方が癖がなく安心して聴ける。ZM-DS4Fの方が多少生楽器らしさが感じられる。金管楽器はZM-DS4Fの方がやや明るいが、弦楽器同様ST-90の方が癖がない。打ち込み系の音の表現はZM-DS4Fの方がややうまい。音の質感の相性や明るい鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、低域が欲しいならZM-DS4F、かなり少なくても良いならST-90。あるいは、癖のなさ重視ならST-90、明るさ重視ならZM-DS4F。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 25Hz〜18kHz 112dB
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
160g - 2m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 2 4 4 3 2 5200円

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公開日:2005.10.23