MDR-CD3000

音質
 かなりフラット。低域は厚み・量ともに十分。適度に締まっていて、ぼわついたりはしない。中域は、低域が出る割にかなりはっきり聴こえてくるし、特に癖もない。高域はやや尖った感触で癖が有るように思うが、広い目で見れば癖がないと言えるレベルだし、十分量出る。
 分解能、音場感は非常に良い。特に音場感は、良く言われるようにコンサートホールを再現してくれるように思わせる。非常に広がりがあり、明確。ただ、音が遠くから鳴っていて迫力に欠けるような印象も受ける。その辺りはソースとの相性や好みの問題もありそう。原音忠実性はなかなか良い。エッジはややきつめだが、それほど聴き疲れしないレベル。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてそれなりで、突出した魅力がなく価格なりといった感じだが、これは古臭いながら脚色の少ない音作りの結果と捉えるべきだろう。基本的にモニター的な安定した鳴らし方だが、ノリの良さと繊細さを両立しているとも言える。響きは豊かだが、こもり感は気にならない。
 弦楽器はかなり原音に近い鳴らし方に感じる。繊細さは十分で、原音の粗っぽい感じをかなり再現してくれるが、そのぶん心地よさという点ではいまいち。金管楽器はそこそこ鮮やかではあるが、特別魅力的であるようには感じない。打ち込み系の音の表現はそれなり。地味な音作りと音の広がりのせいで、スピード感や力強さに欠ける。

装着感
 良好。側圧はかなり弱めで頭部のおさえもソフトなため重量の割には重く感じないが、首は疲れる。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はプロテインレザータイプで感触は悪くはないが、やや蒸れる。動くとずり落ちてくるような感じも多少気になる。
 また、巨大なハウジングが視界に入る。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 デザインは古臭く装着時の姿はかなりアレだが、十年以上前に発売されたものなので仕方ないだろう。むしろ十年以上前でこの音質というのがすごい。作りが安っぽいとは思わないが、イヤーパッドや頭部のおさえが材質的に耐久性に乏しそう。新品の独特のにおいがしばらく気になる。構造的に、慣れるまで装着しにくい。非常にしっかりした収納ケースが付属している。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、布巻きで扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周122mm×110mm、内周60mm×42mm、深さ20mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
収納ケース



参考
不定期コラム『第19回 収納ケース特集』
不定期コラム『第26回 MDR-R10試聴レポ』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

HPとHPAの相性『MDR-CD3000』

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-D5000
どちらもかなりフラットだが、AH-D5000の方がやや低音より。低域はどちらも柔らかめな点は似ているが、AH-D5000の方が若干低くて量も多い。中域はどちらも癖なくはっきり聴こえてくるが、どちらかと言うとMDR-CD3000の方が低域に邪魔されず聴こえてくる。高域は比較的似ているが、MDR-CD3000の方がやや細くとがった音で目立つ。分解能はほぼ同等。音の分離にしろ微細な描写にしろ大きな差はない。音場感はMDR-CD3000の方が広く、遠くで音を鳴らしている感じ。原音忠実性はAH-D5000の方がやや上。AH-D5000の方が中高域から高域の癖が少ない。ただ、原音の粗はMDR-CD3000の方が感じられる。MDR-CD3000の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さは低域が少なく高域が目立つMDR-CD3000の方がやや上に感じられる。音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはほぼ互角だが、MDR-CD3000の方が広い空間で鳴らしているため密度的に薄く感じがち。温かみはAH-D5000の方がやや上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角だが、MDR-CD3000の方がサ行の音等が痛い。どちらもノリの良さと繊細さをかなりのレベルで両立しているが、AH-D5000の方がやや繊細でおとなしい。響きはAH-D5000の方がやや豊か。弦楽器はAH-D5000の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMDR-CD3000の方がやや高い音で派手。打ち込み系の音の表現はほぼ互角で、どちらも微妙。AH-D5000はややおとなしい鳴らし方だし、MDR-CD3000は遠くから鳴らしていて迫力が足りない感じがする。全体的に、音場を除くと比較的近い音を鳴らす。使い分けるなら、音場重視ならMDR-CD3000、それ以外はAH-D5000。

HP-DX1000
どちらもかなりフラット。低域は全体的な量はかなり近いが、HP-DX1000の方が厚みがある。ドンと前に出てくるような感じ。MDR-CD3000の方がローエンドまでフラットな印象。中域はHP-DX1000がややうわずり気味なのに対して、MDR-CD3000は癖がない。中高域から高域はMDR-CD3000の方が高くて細い、刺激的な音を鳴らす。分解能はどちらも高く、甲乙つけがたいが、あえて上下をつけるならMDR-CD3000の方が若干上のように感じる。音場感もそれほど大きな差はないように感じるが、空間の広さや音の広がりはMDR-CD3000の方が上。ただし、明確さではむしろHP-DX1000の方が上のようにも感じる。原音忠実性は一概には言えない。一般的な意味で言うなら、低域から中域はMDR-CD3000の方が原音に近く、中高域から高域はHP-DX1000の方が原音に近い。原音の実体感という意味ではHP-DX1000の方が一段上。MDR-CD3000の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはHP-DX1000の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-CD3000の方が上。ヴォーカルはMDR-CD3000がなかなか艶っぽいのに対して、HP-DX1000は瑞々しいという印象。ノリの良さはHP-DX1000の方が上。厚み、切れ、軽快さ、スピード感すべてにおいて勝っている。MDR-CD3000の方が線が細いが、広い意味で繊細さを考えたときに、どちらがより繊細かは微妙なところ。響きはほぼ互角だが、音域傾向の関係上MDR-CD3000の方が豊かに感じやすいようだ。音の広がり、こもり感のなさはMDR-CD3000の方がやや上。ただし、こもり感はHP-DX1000もほとんど気にならないレベル。HP-DX1000の方が明るくメリハリがあり、新しい音作りになっているように感じるが、硬いと感じる人も多そう。弦楽器はMDR-CD3000の方が心地よいが、ヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しみたいならHP-DX1000の方が良い。金管楽器はHP-DX1000の方が力強い鳴らし方だが、ハイハット等はMDR-CD3000の方が刺激的で楽しめる。打ち込み系の音の表現はHP-DX1000の方がうまい。低域はHP-DX1000の方が厚み・締まりともに相性が良い。中高域から高域は、MDR-CD3000は細すぎるように感じる。使い分けるなら、地味な音を求めているときにはMDR-CD3000、明るい音を求めているときにはHP-DX1000か。どちらもかなりオールマイティーではあるが、空間表現のうまさから、クラシックが向いていると言えそう。あえてジャンルで使い分けるなら、クラシックはMDR-CD3000、それ以外はHP-DX1000という使い分けもありかもしれない。

MDR-SA5000
MDR-SA5000の方が高音より。特に超低域に差があり、MDR-SA5000はかなり弱いのに対し、MDR-CD3000はしっかり出る。また、高域はMDR-SA5000の方がやや強く、一段高い音に聴こえる。分解能、音場感ともにMDR-SA5000の方が良好。超低域が弱めなせいもあるが、それだけでなく単純な音の分離という点においてMDR-SA5000の方が勝っている。音場はどちらも遠くで鳴らしていて明確という共通点があるが、MDR-SA5000の方がより一層把握しやすい音場。原音に近いのはMDR-SA5000だが、MDR-CD3000の方が心地よく聴ける味付けがなされているといった感じで、音楽を楽しむという意味においてはその差はあまり大きくないように思える。MDR-SA5000の方が若干エッジがきつく、高音よりで分解能が高く非常に明瞭でもあるため、やや聴き疲れする。温かみやヴォーカルの艶っぽさはMDR-CD3000の方が良いが、ソースによってはサ行の音やブレスの音が若干気になる。ノリの良さはMDR-CD3000の方が若干上。MDR-CD3000は低域をしっかり鳴らしてくれるのに対して、MDR-SA5000は切れが良くしかも芯の通った音で対抗しているが、低域の不足は否めない。ただし、どちらもそれほどノリが良いわけではない。かと言ってそれほど繊細なわけでもなく、ある種のモニター的冷静さが特徴。響きはMDR-CD3000は適度、MDR-SA5000は控えめといった感じ。どちらも弦楽器、金管楽器ともにある種の癖があり、どんなソースであっても共通の色が出る。ただしその癖そのものには違いがあり、MDR-CD3000は聴きやすさ重視のマイルドさ、MDR-SA5000は原音の粗や生っぽさ重視の骨太さといった感じ。どちらもかなりオールマイティで、ジャンルを選ばない。

PROline750
MDR-CD3000はフラット、PROline750はドンシャリ。超低域はどちらも若干弱めだがMDR-CD3000の方が出る。厚みはPROline750の方がかなりある。高域は若干PROline750の方が出る。分解能や原音忠実性はMDR-CD3000の方がやや良い。音場感はPROline750の方が良い。PROline750の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはPROline750の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさは好みが分かれるところだろう。MDR-CD3000の方が癖がないことは確か。MDR-CD3000はモニター的な冷静さがあるが、PROline750は元気が良く明るい。弦楽器、金管楽器ともに原音忠実を求めるならMDR-CD3000の方が良いが、PROline750にはMDR-CD3000にはない魅力があるのも確か。打ち込み系の音の表現はどちらもあまり得意ではないが、PROline750の方が楽しめる。毛色は違うが、どちらも別の意味でかなりオールマイティー。ジャンルごとに使い分けるのではなく、基本はMDR-CD3000で、刺激が足りないときや飽きたときはPROline750を使うのが良さそう。

SE-900D
どちらもかなりフラット。SE-900Dの方がかまぼこ。低域は全体的にMDR-CD3000の方が出る。高域も若干MDR-CD3000の方が強い。分解能、音場感、原音忠実性すべてMDR-CD3000の方が上。どちらもエッジはきつくなく聴き疲れしないが、どちらかといえばMDR-CD3000の方が疲れる。明瞭さはほぼ互角だが、音の鮮やかさ、厚み、密度、情報量、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさ等すべてMDR-CD3000の方が上。MDR-CD3000の方がノリが良くしかも繊細。響きはMDR-CD3000の方が豊かだが、こもり感は感じない。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてMDR-CD3000の方がうまい。何を聴くにしてもMDR-CD3000の方が良いだろう。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第1回 dandelion/KOKIA
第65回 太陽/槇原敬之「SYMPHONY ORCHESTRA"cELEBRATION"」より


※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz 104dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
400g 50mm 3m 片出し 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4.5 4 4 4 2 1 均(中) 36500円
※生産終了

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公開日:2004.11.28