第26回 MDR-R10試聴レポ

音質
 かなりフラットだがやや高音より。低域は柔らかくて心地よく、それでいて厚み・量ともに必要量といった感じ。中域ははっきり聞こえてくるし、変な癖はない。中高域から高域はなかなか鮮やかな鳴らし方。
 分解能、音場感、原音忠実性すべてかなり良好。何かが特に際立っているとは感じないが、非常にバランスが良い。自然な音場と音の広がりがなかなか魅力的。原音の粗や生っぽさがしっかり感じられる。エッジはややきつめで、高域の尖った感じやヴォーカルの擦れ等が気になるが、基本的には問題ないレベル。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてそれなりのように感じる。ある意味変な着色の少ない音作りのためだろう。だからといって魅力のない鳴らし方にはなっていない。ノリの良さと繊細さを両立している。響きはやや豊か。
 弦楽器は低域から高域まで良く伸び、原音の生っぽさを持ちながら、豊かな表現力を感じる。金管楽器はハイハット等にやや癖を感じるものの鮮やかで楽しめる鳴らし方。打ち込み系の音の表現は特にうまいわけではないが、意外とそつなく鳴らす感じ。基本的に派手な音作りではないが、だからこそソースを選ばないという長所もある。のびやかに音楽を聴かせてくれる上、それでいて細部までしっかりと描き切っている。

装着感
 良好。側圧は弱めで頭部のおさえもソフトなため重量の割には重く感じないが、首は疲れる。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はレザータイプで柔らかく肌触りも良い。ずれやすい点を除けばかなり装着感が良い。

その他
 遮音性は普通、音漏れ防止は良好。
 作りは悪くないが、デザイン、特にハウジングの形状は人を選ぶだろう。
 プラグは金メッキの標準プラグ。コードの太さは合流前は約4mm、合流後は約5.5mm、布巻きで柔らかく扱いやすい。

参考
周波数特性グラフ


比較メモ
edition7
edition7はややドンシャリ、MDR-R10はやや高音より。低域はedition7の方がかなり出るし、質的にも一枚上手。中域はMDR-R10の方がしっかり聞こえてくる印象。高域はMDR-R10の方が細く高い音を鳴らす。分解能はedition7の方がやや良い。MDR-R10の方が線の細い鳴らし方なのだが、edition7の方が一つ一つの音がしっかり分離して聴こえる。音場感はどちらも非常に良く甲乙つけがたいが、自然な音の広がりや分かりやすさという意味でMDR-R10の方が良いように感じる。原音忠実性はedition7の方がやや上。MDR-R10は高域に不自然さを感じる。MDR-R10の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さは高音よりの分MDR-R10の方がやや上、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはedition7の方がかなりある。温かみはedition7の方が上、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-R10の方がやや上。edition7の方がノリが良く、MDR-R10の方が繊細。この2機種の決定的な違いは案外この点なのかもしれない。響きはMDR-R10の方が豊か。弦楽器はMDR-R10の方が繊細だが、ギター等を濃い音で楽しみたいならedition7の方が向いている。金管楽器はMDR-R10の方が明るく鮮やか。edition7の方が力強い。打ち込み系の音の表現はedition7の方がかなりうまい。MDR-R10は音が細すぎるように感じる。使い分けるなら室内楽や穏やかに聴きたい曲はMDR-R10、それ以外はedition7。特にロックやポップスはedition7の方が良い。

HP-DX1000
HP-DX1000はかなりフラット、MDR-R10はやや高音より。低域は厚み・量ともにHP-DX1000の方がかなり上。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、どちらかと言えばHP-DX1000の方がはっきり聴こえる。高域はMDR-R10の方が細く高い音を鳴らす。分解能、音場感、原音忠実性すべてMDR-R10の方が上。音場感については単なる広さならHP-DX1000の方が上かもしれないが、自然さと言う点ではMDR-R10の方が上。MDR-R10の方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさは方向性がかなり違うために表現しにくいが、HP-DX1000は明るく線が太いのに対して、MDR-R10は高音よりで線が細い。したがって、どちらも明瞭だし、音の鮮やかさも感じられる。厚みはHP-DX1000の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-R10の方が上。ノリの良さならHP-DX1000、繊細さならMDR-R10。響きはMDR-R10の方が豊か。弦楽器はMDR-R10の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMDR-R10の方が鮮やかかつ自然。打ち込み系の音の表現は線が細く低域の質感も良いためHP-DX1000の方がうまい。使い分けるならポップスはHP-DX1000、それ以外はMDR-R10。全く傾向の違う2機種だが、どちらが上かと問われればおそらくほとんどの人がMDR-R10と答えるだろう。

MDR-CD3000
MDR-CD3000の方がやや低音より。低域はMDR-CD3000の方が量が多いが、MDR-R10の方が動きが明瞭に分かる。MDR-R10と比べるとMDR-CD3000はやや曇っているように感じる。中域はどちらも癖がなくしっかり聞こえてくる。高域はMDR-R10の方が出る上、粗がない。分解能及び原音忠実性はMDR-R10の方が上。音場感はあまり大きな差はない。空間の広さはMDR-CD3000の方が感じられるが、明確さと言う意味ではMDR-R10の方がやや上のように感じる。どちらもややエッジがきついが、粗がない分MDR-R10の方が若干聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、ヴォーカルの艶っぽさはすべてMDR-R10の方が上。特に鮮やかさと厚みはかなり差がある。温かみは低域が出る分MDR-CD3000の方が上に感じるが、それ以上の差はない。MDR-R10の方がノリが良くしかも繊細。響きはMDR-CD3000の方がやや豊か。弦楽器はMDR-R10の方が原音らしさが感じられる。金管楽器はMDR-R10の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はMDR-R10の方がうまい。厚みと切れがある。どちらもかなりオールマイティーだが、MDR-R10と比べるとMDR-CD3000は退屈。







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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz 100dB 40Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
400g 50mm 3m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
5 4 3 4 3 1 均(高) -

 今回は、SONYの名機MDR-R10(生産終了)をお借りする機会がありましたので、その試聴レポです。形式は普段のヘッドホンレビュー+比較メモという形で行いたいと思います。

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