第24回 edition7試聴レポ

音質
 やや低音よりのドンシャリだが、濃くて力強い鳴らし方のためにそう感じる部分が多いだけで、広い目で見れば実際はかなりフラット。低域は十分な量と非常に高い質が楽しめる。メイン以外の音が非常に良く聴こえるせいで中域はやや控え目に感じることが多いが、凹んでいるわけではない。高域は作ったような明るさや鮮やかさはないものの十分な表現。
 分解能、音場感、原音忠実性すべて非常に良い。それほど線が細いわけではないが、音の分離と言う意味での分解能は素晴らしい。それぞれの音を異なる振動板で鳴らしているような錯覚を覚えるほど。一般的な意味での原音忠実性も十分良いし、原音の実体感と言う意味では最高レベルのものを持っている。エッジは多少きつめだが、それほど聴き疲れしないレベル。
 かなり明瞭な上、それ以上に音の鮮やかさや厚みが素晴らしい。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさは他の長所と比べるとそれほど目立たないが、十分なものは持っている。非常にノリが良いが、それでいて粗のなさという意味ではかなりのもの。響きは適度からややあっさりだが、それでいて残響音の最後の一粒までしっかり聴かせてくれる。良くも悪くも切れが良く、やや硬質な鳴らし方。もう少し柔らかく音が広がっている方が好きという人も多そう。
 弦楽器は低域の心地よさは非常に良いものの繊細さにはやや欠ける傾向にある。金管楽器は鮮やかと言うよりも力強い鳴らし方。打ち込み系の音の表現は非常にうまい。線の太さや低域の質感が良く合う。
 コストパフォーマンスを口にするのも憚られる、他にはない至上の音楽を聴かせてくれる機種。

装着感
 良好。側圧は強め。頭頂部にはきちんとクッションがあるのだが、それでも長時間使用すると少し痛い。多少動いてもずれない。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はMercedes-Benz Maybackリムジンシートにも使用されているエチオピアン・シープスキン。通常の天然皮革と比べて蒸れにくいように感じる。
 普通のDJ用同様ヘッドバンドの長さ調節が固定できないのに加えて、調節位置がずれやすいため何度も着けたり外したりする場合には調節が面倒。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 作りは悪くないが、価格を考えるとヘッドバンドのクッション等はもう少し気を使って欲しかったところ。デザインは癖が強く好みが分かれるところだろう。スイーベル機構で折りたたみ可能な構造は良いが、高級機には不要に感じる。
 プラグは金メッキの標準プラグ。コードの太さは合流前は約2.5mm、合流後は幅約5mm・厚さ約2.5mm、特に扱いづらさは感じない。

参考
周波数特性グラフ


比較メモ
HP-DX1000
edition7はややドンシャリ、HP-DX1000はかなりフラット。低域は厚み・量ともにedition7の方がかなり上。中域はHP-DX1000の方がややうわずり気味ではっきり聴こえる。高域はedition7の方がやや高いが、HP-DX1000の方が明るい鳴らし方に感じる。分解能、原音忠実性はedition7の方がかなり上。音場はHP-DX1000の方が広いが、明確さはedition7の方が上。edition7の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはHP-DX1000の方が上。音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてedition7の方が上。どちらも基本的にノリが良いが、editoin7は重厚で迫力があるのに対して、HP-DX1000は軽快で明るい。響きはHP-DX1000の方が豊かで、広がりもあるのでそういう要素が必要な曲はHP-DX1000の方が楽しめるだろう。弦楽器はedition7の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-DX1000の方が明るく鮮やかだが、edition7と比べると作ったような感じは否めない。打ち込み系の音の表現はedition7の方がかなりうまい。使い分けるなら、音の広がりが必要な曲はHP-DX1000、それ以外はedition7。

MDR-R10
edition7はややドンシャリ、MDR-R10はやや高音より。低域はedition7の方がかなり出るし、質的にも一枚上手。中域はMDR-R10の方がしっかり聞こえてくる印象。高域はMDR-R10の方が細く高い音を鳴らす。分解能はedition7の方がやや良い。MDR-R10の方が線の細い鳴らし方なのだが、edition7の方が一つ一つの音がしっかり分離して聴こえる。音場感はどちらも非常に良く甲乙付け難いが、自然な音の広がりや分かりやすさという意味でMDR-R10の方が良いように感じる。原音忠実性はedition7の方がやや上。MDR-R10は高域に不自然さを感じる。MDR-R10の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さは高音よりの分MDR-R10の方がやや上、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはedition7の方がかなりある。温かみはedition7の方が上、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-R10の方がやや上。edition7の方がノリが良く、MDR-R10の方が繊細。この2機種の決定的な違いは案外この点なのかもしれない。響きはMDR-R10の方が豊か。弦楽器はMDR-R10の方が繊細だが、ギター等を濃い音で楽しみたいならedition7の方が向いている。金管楽器はMDR-R10の方が明るく鮮やか。edition7の方が力強い。打ち込み系の音の表現はedition7の方がかなりうまい。MDR-R10は音が細すぎるように感じる。使い分けるなら室内楽や穏やかに聴きたい曲はMDR-R10、それ以外はedition7。特にロックやポップスはedition7の方が良い。

PROline750
どちらもややドンシャリだが、edition7の方がフラット。低域はPROline750の方が一段低めの音を鳴らすが、中域付近はedition7の方が出るため、楽器によってはedition7の方が豊かな低域に感じることがある。中域はedition7の方がかなりはっきり聞こえてくる。高域はPROline750の方がやや高いが、粗もある。分解能及び原音忠実性はedition7の方がかなり良い。純粋な音場感はそれほど違いが無いように感じるが、定位の良さと一つ一つの音をしっかり描き分ける力がedition7の方が上なので、必然的に音場感もedition7の方が良いように感じがち。PROline750の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてedition7の方が上。edition7の方がノリが良くしかも繊細。ただ、いわゆる重低音はPROline750の方が出るため、人によってはPROline750の方がノリが良いように感じるかもしれない。響きはPROline750の方がやや豊かだが、PROline750と違ってedition7は残響音の最後の一粒まで聴き取ることができるため、edition7の方が響きが豊かなのではないかと感じることもある。弦楽器はedition7の方が原音に近くしかも心地よい。金管楽器はPROline750の方が高く派手だが、edition7の方が力強くしっかりした鳴らし方。打ち込み系の音の表現は、変な付帯音がないためかedition7の方がうまいように感じる。ほとんど何を聴くにしてもedition7の方が良いように感じる。







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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 - - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
330g - 4.4m 両出し 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
5 4 4 4 3 3 均(低、高) -

 今回は、ULTRASONEの高級機edition7をお借りする機会がありましたので、その試聴レポです。形式は普段のヘッドホンレビュー+比較メモという形で行いたいと思います。

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