SR-007+SRM-717

音質
 非常にフラットだが、質的には若干低音よりからドンシャリに感じる。低域は柔らかい質感でそれなりに低い音を鳴らすが、量は程々。中域はやや低めの音でおとなしいが、低域に埋もれたりはしない。高域はかなり細く高い音を鳴らしてくれるが、量は特別多くはない。
 分解能、音場感ともに最高レベル。音の分離、微細な表現ともに素晴らしい。音場は全面駆動独特の非常に広く明確な音場であるのに加えて、SRS-4040等と比較して立体感があり、一段上のものを持っている。コンデンサー型独特の質感があることを除けばかなり原音に近いが、原音の粗っぽさ等は感じない。エッジはきつくなく非常に聴きやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはかなり良いが、柔らかめの音で派手さもないので、それほど優れているように感じない人もいるかもしれない。厚みは特別あるようには感じないが、コンデンサー型であることを考えるとかなりあるほうだろう。温かみやヴォーカルの艶っぽさは非常に良い。繊細だが力強さの必要な場面では相応のものを発揮してくれる。響きは豊か。
 弦楽器は非常に繊細かつ心地よい。チェロ等の低域からヴァイオリンの澄んだ表現まで文句なくこなしてくれる。金管楽器は、ダイナミック型の優秀な機種のような力強さや金属的な鳴りはないものの、高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現は線の細さや音の柔らかさが合わない印象だが、低域の量感や音の厚みは必要量あるし、これはこれで十分楽しめる。
 基本的な性能が高いだけでなく、音楽を楽しむことを決して蔑ろにしていない音作り。広大な空間に良質な音楽が満ち溢れている感触が味わえる。

装着感
 良好。外観から想像されるよりも重さを感じず、ソフトなかけ心地。側圧が弱いにもかかわらず、ずれにくい。ただし、その装着感の良さはヘッドバンドの面積の広さからきているため、逆に言うと髪形の乱れがかなり気になる。
 イヤーパッドは耳をすっぽり覆うサイズで、深さもあるため耳が当たることもほとんどない。上下方向にも左右方向にも角度調節ができないが、その代わりに前後で幅・厚みが異なるイヤーパッドを自由に回転させることができる。
 材質はレザータイプの人工皮革。

その他
 本レビューは、イヤースピーカー部SR-007(通称ΩU)と、ドライバ部SRM-717を組み合わせた際のもの。STAXのイヤースピーカーは単品では使用できずドライバが必要だが、SR-007についてはSRS-4040等と異なりセット販売されていないため、煩雑だがSR-007+SRM-717という表記を採用して、セットでの評価を行った。
 開放型のため、遮音性や音漏れ防止は良くない。特に音漏れは他社の一般の開放型と比較しても悪い。
 作りは悪くないがデザインはいまいち。特に色はどうにかして欲しかったところ。ハウジング部はかなり特殊な構造をしている。三層構造になっていて、外周にコード、中間にヘッドバンド、内周にイヤーパッドが付いている。それぞれ別個に回転させることが可能で、イヤーパッドを自分に合うように調整して装着する。このような構造ゆえ、コードやヘッドバンドの向きも前後方向に自由に変えられる。また、コンデンサー型のためケーブルが重く、オーディオ機器に直接接続できないなど、色々と使いづらい。
 コードは、合流前は幅約8.5mm・厚さ約2mm、合流後は幅約18.5mm・厚さ約2mm。イヤーパッドのサイズは、外周106mm×106mm、内周62mm×52mm、深さ24mm。

付属品
収納ケース



参考
メーカー製品ページ
メーカー製品ページ(pdf)

不定期コラム『第40回 ヘッドホンアンプの内部写真』
不定期コラム『第62回 ヘッドホンの重さのメーカー公称値と実際』

周波数特性グラフ


比較メモ
HD650
HD650はやや低音より、SR-007+SRM-717はかなりフラット。低域はHD650の方が全体的に量が多いし、低い音を鳴らすように感じる。中域はSR-007+SRM-717の方がはっきり聴こえてくる。中高域から高域はSR-007+SRM-717の方が細く高い鳴らし方で、量も多い。分解能はSR-007+SRM-717の方が上。音の分離でも微細な表現でも勝っている。音場感はどちらも非常に広く立体的で明確。ただ、やはり定点駆動のHD650と比べて全面駆動のSR-007+SRM-717の方が音の鳴り口が広く、一段有利なように感じる。原音忠実性は微妙。HD650はSENNHEISERらしいマイルドな味付けだし、SR-007+SRM-717はコンデンサー型特有の質感。ただ、原音の粗や生っぽさを考えるならHD650の方が原音忠実と言って良いだろう。SR-007+SRM-717の方がエッジがきついが、聴き疲れとしては問題ないレベル。明瞭さ、音の鮮やかさはSR-007+SRM-717の方が上。厚みはHD650の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらも素晴らしいが、温かみならHD650、ヴォーカルの艶っぽさならSR-007+SRM-717の方が上。ダイナミック型は力強く、コンデンサー型は繊細というような表現が良くされるが、この2機種についてもそれは当てはまる。HD650は繊細ながらも意外と力強さを持っているのに対して、SR-007+SRM-717はHD650以上に繊細で透明感に溢れている。響きはHD650の方が豊か。弦楽器は基本的にはSR-007+SRM-717の方が繊細で良いが、チェロ等の低域の量感を楽しみたいならHD650の方が向いているだろう。金管楽器はSR-007+SRM-717の方が高く鮮やかだが、HD650の方が金属的で力強い鳴らし方なので、好みによって評価が別れるだろう。打ち込み系の音の表現はどちらも微妙。ノリの良さや厚みや圧力ではHD650に分があるのだが、明るさや鮮やかさではSR-007+SRM-717に分がある。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、低域の量感や温かみを求めるならHD650、明瞭さや音の鮮やかさを求めるならSR-007+SRM-717。あるいは、基本的にはSR-007+SRM-717で、力強さや温かみが欲しいときやコンデンサー型特有の質感を嫌うならHD650。

HD800
どちらもかなりフラットだが、SR-007+SRM-717の方が細かい周波数特性に癖がある。低域はSR-007+SRM-717の方が若干量が多い。HD800はローエンドまで平らだが、SR-007+SRM-717は一部やや出っ張っている印象。HD800の方が締まっていて制動が良い。中域はどちらかと言うとHD800の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。ダイナミック型とコンデンサー型の音の質感の違いはあるが、それを除けば比較的近い音色。基本的には癖がなく、高いところがやや抑えられていて落ち着いている点が似ている。高域はほぼ同量。HD800の方が太く硬い質。ハイハットやシンバル等の高いところはSR-007+SRM-717の方がやや目立つが、それより低いところはHD800の方がやや目立つ。分解能はほぼ同レベル。音の分離はHD800の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はSR-007+SRM-717の方が若干上。音場感はHD800の方がやや明確。どちらも非常に広いが、どちらかと言うとHD800の方が広い印象。ただし、SR-007+SRM-717の方が全面駆動独特の音の鳴り口の広さがあるし、HD800はSR-007+SRM-717に比べて広い空間に音が散在しているような感じになるのがやや気になる。原音忠実性はHD800の方がやや上。周波数特性上の癖が小さいし、一聴して違和感がない。原音の粗や生っぽさもHD800の方が感じられる。エッジはHD800の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHD800の方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHD800の方がやや上。厚みはHD800の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSR-007+SRM-717の方が感じられる。ヴォーカルはどちらもやや引っ込み気味な点が似ている。HD800の方がノリが良く、SR-007+SRM-717の方が繊細。響きはSR-007+SRM-717の方が豊か。HD800の方が芯が通っているように感じられるが、これはSR-007+SRM-717の方に向こう側が透けて見えるような透明感があると言った方が適切だろう。弦楽器はHD800の方が自然で生楽器らしさが感じられ、SR-007+SRM-717の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はどちらもなかなか鮮やかだが、HD800の方が芯が通っていて力強く、SR-007+SRM-717の方が線が細く綺麗。打ち込み系の音の表現はHD800の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、癖のなさやを力強さを求めるならHD800、繊細さや柔らかさを求めるならSR-007+SRM-717。

K701
どちらもかなりフラット。低域は、量はそれほど差がないが、質感がかなり違う。SR-007+SRM-717の方が柔らかく、K701の方が圧力がある。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、K701の方がやや高い音。中高域は低域と同じで、量よりも質に違いが出る。K701の方が金属的。高域はSR-007+SRM-717の方が細く高い音を鳴らすため目立つ。分解能及び音場感はSR-007+SRM-717の方が上。音の分離にしろ、微細な表現にしろ、SR-007+SRM-717の方が一段上。音場はSR-007+SRM-717の方が広く立体的な上に全面駆動の音の鳴り口の広さが加わっているため、差が明確。原音忠実性はどちらも良いが、癖のなさという意味ではK701の方が良く、コンデンサー型独特の質感を除けばSR-007+SRM-717の方が良いように感じる。ただし、どちらも原音の粗は感じられない。SR-007+SRM-717の方がエッジがきついが、聴き疲れとしては問題ないレベル。明瞭さ、音の鮮やかさはSR-007+SRM-717の方が上。曇りのない表現。厚みはそれほど差がないが、圧力はK701の方があるように感じられる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSR-007+SRM-717の方が上。どちらも繊細だが、やはりダイナミック型のK701の方がノリの良さという点では分がある。響きはSR-007+SRM-717の方がやや豊か。弦楽器はSR-007+SRM-717の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はK701の方が力強く、SR-007+SRM-717の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はK701の方がややうまい。音に圧力があるだけでなく、締まりもあるため。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、基本的にはSR-007+SRM-717、余程音の圧力が欲しいときやコンデンサー型の質感を嫌うときはK701。

RS-1
RS-1はややドンシャリ、SR-007+SRM-717はフラット。低域はSR-007+SRM-717の方がローエンドまで出るが、厚みはRS-1の方があるし、全体的な量もRS-1の方が多い。中域はRS-1の方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はSR-007+SRM-717の方がやや高い音だが、量はRS-1の方が多い。分解能はどちらも非常に良いが、SR-007+SRM-717の方が若干粗がなく良好。音場感は、立体感はほぼ互角だが、SR-007+SRM-717の方が全体的に広く明確。原音忠実性はRS-1の方が良いように感じる。SR-007+SRM-717はコンデンサー型独特の質感がある上、原音の粗や生っぽさが感じづらく、低い音は低く高い音は高く鳴らしすぎる傾向があるように感じるが、RS-1はその点においてより癖がなく自然。エッジのきつさはほぼ互角。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはRS-1の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSR-007+SRM-717の方が上。ノリの良さならRS-1、繊細さならSR-007+SRM-717。響きはSR-007+SRM-717の方が豊か。RS-1の方がかなり抜けが良い。弦楽器はSR-007+SRM-717の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はRS-1の方が鮮やかで力強く楽しめる。打ち込み系の音の表現はRS-1の方がうまい。何と言ってもテンションの高さが違う。使い分けるなら、明るく楽しみたいときはRS-1、しっとりじっくり聴きたいときはSR-007+SRM-717。

SRS-4040
どちらも非常にフラットだが、どちらかと言うとSR-007+SRM-717の方がドンシャリ。低い音は低く、高い音は高く鳴らす。中域はSRS-4040の方がはっきり聴こえるように感じるが、これはSR-007+SRM-717の方が低域が多いせいではなく、中域そのものの音の高さがSRS-4040の方がやや高いため。ただし、それほど顕著な差があるわけではない。分解能はほぼ互角。音の分離は、低域の多いソースではSRS-4040の方が良いように感じるが、基本能力はむしろSR-007+SRM-717の方が高い。とは言え微妙な差。微細な表現はどちらも素晴らしく、一聴してSRS-4040の方が線が細く良好に感じるものの、聴き込むとSR-007+SRM-717の方が粗がないように感じられる。音場感はSR-007+SRM-717の方がかなり良い。SRS-4040は耳の近くで鳴っているのがやや気になるのに対して、SR-007+SRM-717はそんなことはまったくないし、立体感があり非常に明確。原音忠実性はどちらもコンデンサー型独特の質感があることを除けば非常に良い。原音の粗が感じられない点等、良く似ている。エッジのきつさはほぼ同等だが、ヴォーカルのサ行の音等はSRS-4040の方がやや痛く、高域はSR-007+SRM-717の方がやや痛い。明瞭さは低域が少なくやや高めの中域を鳴らすSRS-4040の方がやや良いように感じるが、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはSR-007+SRM-717の方がある。温かみはSR-007+SRM-717の方がやや上、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらも非常に繊細だが、あえて差をつけるなら、SR-007+SRM-717が力強さを感じさせる点があるのに対して、SRS-4040はひたすら繊細。響きはどちらも豊かでそれほど差はないが、低域の響きはSR-007+SRM-717の方が豊か。弦楽器はどちらも非常に繊細かつ心地よいが、低域の量感があることからSR-007+SRM-717の方が全体的な表現はやや上のように感じる。金管楽器は微妙に違う表現だが、どちらもそれぞれ鮮やかで楽しめる。SRS-4040の方が(悪い意味ではなく)音が割れ、SR-007+SRM-717の方がシンプルな鳴らし方。打ち込み系の音の表現は、どちらも線が細い点が合わないような印象を受けるが、SR-007+SRM-717の方が低域の量感や音の厚みで勝っているためややうまい。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、低域の量感や音場感を求めるならSR-007+SRM-717、明瞭さや繊細さを求めるならSRS-4040。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第32回 Left Alone/Mal Waldron
第35回 ナイトクルージング/フィッシュマンズ「空中キャンプ」より
第42回 マタイ受難曲/バッハ
第44回 THE MEMORY OF TREES/enya「THE MEMORY OF TREES」より
第78回 No Second Chance/Blackmore's Night「Shadow of the Moon」より
第81回 牧神の午後への前奏曲/ドビュッシー
第85回 若葉の頃 First of May/須川展也「sugar」より

曲別HP探索2
第2回 Svefn-G-Englar/Sigur Ros「Agaetis Byrjun」より
第9回 Travels/Pat Metheny Group「Travels」より
第25回 フィガロの結婚/モーツァルト
第29回 ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 3Dドラマ ティファニア編/「ゼロの使い魔 〜三美姫の輪舞〜 キャラクターCD2 感じるティファニア」より
第33回 Mi Refugio/Gary Burton「Astor Piazzolla Reunion : A Tango Excursion」より
第53回 white's dream/「鉄コン筋クリート オリジナル・サウンドトラック」より
第55回 チェロ協奏曲ニ長調Badley D1/ホフマン
第61回 交響曲第9番ニ短調/ベートーヴェン
第65回 Next Life/「THE IDOLM@STER MASTER SPECIAL 03」より
第73回 メサイア/ヘンデル
第77回 聖乙女の祈り/「舞-乙HiME オリジナルサウンドトラックVol.2 乙女の祈り」より
第87回 Bewitched/Art Pepper「modern art」より
第90回 水星/冨田勲「惑星」より
第100回 Main Theme Nile, Version II/喜多郎「Grammy Nominated」より


 


※生産終了。後継機はSR-007A+SRM-727A。
 










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
コンデンサー 開放型 6Hz〜41kHz 100dB 170kΩ
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
365g - 2.5m 両出し ドライバとセットで評価

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
5 4 2 1 3 1 159000+106800円
※生産終了。後継機はSR-007A+SRM-727A。

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公開日:2006.10.18