第61回 交響曲第9番ニ短調/ベートーヴェン

 今回取り上げるのはベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調です。指揮はバーンスタイン、演奏はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で、1979年の録音です。
 非常に有名な曲なので誰もが知っていることでしょう。今回の録音は、数多く出回っている第九の中でもかなり評価の高いものです。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「臨場感、迫力、濃密さ、そして、何よりも曲の持っているポテンシャルを最大限に発揮できるものをお願いします。震え上がる程の感動を、味わってみたいのです」とのことです。具体的にどんなヘッドホンが良いのかは難しいところです。あまり癖の強いものは合わないでしょうが、基本的にフィーリングによる部分が大きいのではないかと思います。今回の録音は伸び伸びと歌い上げるようなところがあると思うので、そういう良さがストレートに感じられるものという視点でも見ていきたいと思います。


・1台目 ATH-TAD500(audio-technica)
 色々聴いてみた結果これになりました。フィーリングによる部分が大きいのではないかと書きましたが、実際に聴き比べてみると音場の広さ、音の抜け、音色の自然さ、高域の伸び、一つ一つの音の微細な描写といった点がある程度重要になってくるように感じられます。ATH-TAD500はそのすべてにおいて、この価格帯では及第点かそれ以上だと思われます。
 他にはHI2050、HP-RX900、MDR-ZX700、UR/40等で聴いてみました。HI2050は悪くないのですが、高域の量が多く全体的に硬い音なので第4楽章の終盤がヒステリックに聴こえてしまう点が気になります。HP-RX900は音場の広さが魅力ですが、音の抜けの悪さがやや気になります。MDR-ZX700は声の質は悪くないのですが、近くで音を鳴らす感じで頭内定位が気になるのが難点です。UR/40は声の質感、特に合唱の入りのバリトンの癖が気になります。
 特にどこが不満ということはないのですが、震え上がるほどの感動には足りないような気がします。フィーリングの部分を含め、全体的に少しずつ改善していくしかないと思います。

・2台目 SE-A1000(Pioneer)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。1台目と比べると音色の自然さでは見劣りしますが、迫力では勝っています。また、フィーリングの部分でどちらが感動できるかと言うと、2台目だと思われます。
 他にはHP-AURVN-LV、MDR-MA900、SRH840、SW-HP10等で聴いてみました。HP-AURVN-LVは声の質は悪くないのですが、SE-A1000と比べると音場の狭さが気になります。MDR-MA900は音場の広さや音の抜けは良いのですが、SE-A1000と比べると迫力やフォーリングの部分での感動がありません。SRH840はなかなか良いのですが、音の抜けがもう少し欲しかったところです。SW-HP10は悪くないのですが、SE-A1000と比べると音場の狭さが気になります。
 不満点は、音の近さと音色の癖です。

・3台目 SR-007+SRM-717(STAX)
 曲の持っているポテンシャルを最大限に発揮できるもの、という印象に最も近かったので選びました。具体的に見ていくと、音場の広さ、音の抜け、一つ一つの音の微細な描写といった点が特に良い印象です。今回の録音の伸び伸びと歌い上げるようなところがストレートに感じられる点も魅力です。問題があるとすれば、人によってはコンデンサー型特有の質感が合わない可能性があるということくらいでしょうか。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 HD800(SENNHEISER)
 色々聴いてみた結果これになりました。3台目と同様、音場の広さ、音の抜け、一つ一つの音の微細な描写といった点が特に良い印象です。音色の自然さについては、コンデンサー型特有の質感がない点も含めて3台目よりも良い印象です。今回の録音の伸び伸びと歌い上げるようなところは3台目の方が感じられますが、その代わり4台目は無音がしっかり無音に感じられる点、切れが良くテンポの速い箇所を勢い良く鳴らしてくれる点が魅力です。
 他にはDT880、HD650、K701、SRH1840等で聴いてみました。DT880は音場の狭さがやや気になります。HD650は音の抜けの悪さがやや気になります。K701は悪くないのですが、3、4台目と比べるとこれといった長所がない印象です。SRH1840は声の質は良いのですが、3、4台目と比べると音場の狭さや音の抜けの悪さがやや気になります。

・5台目 ATH-CK100PRO(audio-technica)
 フィーリングで選びました。音場の広さ、音の抜け、音色の自然さ、高域の伸び、一つ一つの音の微細な描写どれも不満がありません。バランスド・アーマチュア型ですが、厚みのある音で低域の質もしっかりしているため迫力も十分感じられます。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelは全体的に曇っているような感じが気になる、MDR-EX1000はなかなか良いもののフィーリングの部分でATH-CK100PROに及ばない、SE535は頭内定位や高域の伸びの悪さが気になる等の不満がありました。
 他にはHP101とHP-CN40が良かったです。もっとも、これはどちらかと言うと消去法で選んだような感じで、ATH-CK100PROと比べるとだいぶ落ちる印象です。


 今回は震え上がるほどの感動という条件が入っていましたが、この点について厳しく選ぶと正直1台もないのではないかという気もします。そこはどうしてもフィーリングで個人差があるので仕方ないと言えば仕方ないのですが、一応フィーリングと具体的なポイントの両方をないがしろにせず可能な範囲で良いものを選んだつもりです。
 ヘッドホンアンプは使用するヘッドホンによってかなり変わってくるように思います。HD800ならAT-HA2002、HD650ならhpa200b(ハイエンド仕様)といった感じで、まずヘッドホンを選んでからその弱点を補うような形でヘッドホンアンプを選ぶやり方が、今回は特に有効なように思われます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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