第55回 チェロ協奏曲ニ長調Badley D1/ホフマン

 今回取り上げるのはホフマンのチェロ協奏曲ニ長調Badley D1です。演奏はヒュー(チェロ)とノーザン・シンフォニアで、1996年の録音です。
 ホフマンは古典派の作曲家です。今回取り上げる曲は古典派らしく上品で聴きやすい印象を受けます。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「通奏低音に使われているチェンバロの音を柔らかく聞きつつ、チェロの豊かな響きを楽しみたい」とのことです。低域がしっかり出るもので、あまりエッジがきつくないものが合うのではないかと思います。


・1台目 PortaPro(KOSS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。特にチェロの響きが良いです。チェンバロは柔らかいと言えるかどうか微妙なところですが、それほど癖はなくきちんと聴こえてきます。
 他にはATH-TAD500、HP-RX900、K121studio、MDR-ZX700等で聴いてみました。ATH-TAD500は全体的に繊細な傾向で、チェンバロは柔らかいと言うよりは鮮やか、チェロの響きは適度といった印象です。HP-RX900はチェロの質感が柔らかいだけという印象で響きを楽しむには微妙ですし、ヴァイオリンの音色の癖が気になります。K121studioはチェロが薄いような感じで質的に物足りない印象です。MDR-ZX700はチェロの響きを楽しむには低域の低いところがもう少し欲しい感じです。
 不満点は、音場が狭い点と、全体のバランスとしては低域の量が少し多すぎる点です。

・2台目 DTX900(beyerdynamic)
 最初に書いた条件を満たしつつ1台目の不満点を改善できるように感じたので選びました。1台目同様、特にチェロの響きが良いです。チェンバロについても柔らかいと言えるかどうか微妙なところですが、それほど癖はなくきちんと聴こえてきます。音場が狭い点は改善されますが、低域の量はもう少し少なくても良いのではないかと思います。
 他にはHP-AURVN-LV、MDR-1R、MUSIC SERIES ONE、SRH840等で聴いてみました。HP-AURVN-LVはチェンバロが柔らかくありませんし、チェロの響きを楽しむにはもう少し柔らかさが欲しい印象です。MDR-1Rは芯の通っていないチェロが個性的である種の魅力があるものの、低域の量が多すぎますし、チェンバロが聴こえてきません。MUSIC SERIES ONEは最後までDTX900と迷いましたが、チェロの響きを楽しむにはしっかりした量感のあるDTX900の方が良いように感じられたのでそちらにしました。SRH840は悪くないのですが、チェロの響きを楽しむには低域の低いところがもう少し欲しい感じです。
 不満点は、チェンバロをもう少し柔らかく鳴らして欲しい点と、全体のバランスとしては低域の量が少し多すぎる点です。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。この点については適度に改善されます。2台目と比べるとチェンバロが繊細で粗がなく悪目立ちしませんし、全体のバランスも良いです。低域の量が若干少なくなるためチェロの量感はわずかに落ちる印象ですが、それでも一般的に見れば十分な量感がありますし、音の広がりが良く細部の表現でも勝るため響きを楽しむという意味では2台目よりも良い印象です。
 不満点は特にありませんが、今回の曲を聴くには少し濃密で力強すぎる気もします。

・4台目 SR-007+SRM-717(STAX)
 色々聴いてみた結果これになりました。3台目と比べると他に良いものがなかったので、消去法でこれになったような感じです。チェンバロがコンデンサー型特有の質なのでこれを柔らかいとみなすかどうかは個人差があると思いますが、高域の量が多いダイナミック型のようなきつさはありませんし、線が細く魅力的に感じる人も多いのではないかと思います。チェロは3台目ほどの量感はないものの響きは十分ですし、音の広がりや細部の表現も良いです。全体としては、3台目のように濃密で力強すぎるということはなく、むしろ繊細で上品な方向です。
 他にはHDJ-2000、HP-DX1000、K242HD、PS500、SRH1840等で聴いてみました。HDJ-2000はチェロの柔らかさにある種の魅力があるものの、曇っていてチェンバロがもう少し欲しい印象です。HP-DX1000はチェンバロが柔らかいと言うよりは鮮やかで、チェロは響きより音そのものの質を楽しむのに向いている感じです。K242HDは悪くないのですが、チェロがやや薄いような感じで質的に物足りない印象です。PS500は低域の量が多すぎてバランスが破綻していますし、チェンバロの質に癖があります。SRH1840は悪くないのですが、チェンバロはもう少し量が少なくても良い気がしますし、逆にチェロはもう少し量感が欲しい印象です。

・5台目 Image X10(Klipsch)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。チェンバロとチェロ、どちらも適度な量と平均以上の質を備えていると思います。全体としては、良い具合に肩の力が抜けていてすんなり入っていける印象です。色々と聴いてみたのですが、IE8はチェロの柔らかさにある種の魅力があるものの全体としては低域の量が多すぎる、SE535はチェロの響きを楽しむには低域の量感がもう少し欲しい、Westone3はチェンバロが柔らかいと言うよりは鮮やかでやや悪目立ちする等の不満がありました。
 他にはATH-CKS90とHP-CN45が良かったです。全体としてはもう少し低域の量が少ない方が良いかもしれませんが、最初に書いた条件についてはそれなりに満たしています。


 今回は主にチェンバロとチェロに着目して探索しましたが、例えばヴァイオリンや全体のバランスを重視するならまったく違った結果になると思います(もちろん、今回もヴァイオリンや全体のバランスを完全に無視したわけではありませんが)。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。チェロの響きが殺されたりチェンバロがきつかったりということがありません。次点はDR.DAC2です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。













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