第44回 THE MEMORY OF TREES/enya「THE MEMORY OF TREES」より

 enyaはアイルランドの女性ミュージシャンで、ケルト音楽を下敷きに独自の音楽を展開して世界的な人気を得ています。様々な曲を発表していますが、中でもヴォーカルを幾重にも重ねた楽曲が特徴的です。
 今回取り上げるのはアルバム「THE MEMORY OF TREES」の1曲目で、歌詞らしい歌詞のないコーラスとおとなしいシンセサイザーから成ります。
 ヘッドホンとしてはコーラスの表現がうまいもので、特にこの楽曲の温かみを出してくれるものが良いでしょう。また、この曲は低域から中域のみで構成され高域はほぼ皆無なので、その辺りもポイントになるかと思います。


・1台目 TR-HP03B(shiroshita)
 今回は1台目を選ぶのに苦労しました。と言うのも、今回の曲は意外とヘッドホンを選ばないからです。最終的にTR-HP03Bを選んだ理由は、コーラスの表現のうまさ、低域の量感、密度の高さです。コーラスは好みがあるでしょうが、TR-HP03Bは飾らずにストレートで、かつマイルドで心地よい感じです。
 他にはATH-AD700、ATH-SX1、DR150、HP1000、MUSIC SERIES ONE、SE-A1000でも聴いたのですが、ATH-AD700、ATH-SX1、HP1000、MUSIC SERIES ONEは低域の薄さや量の不足、DR150はエッジのきつさ、SE-A1000はコーラスの表現ではねました。「低域は音楽を支える」というような表現がされることがありますが、この曲ではそのことを再認識させられます。また、SE-A1000はコーラスの表現がTR-HP03Bとはある意味対極で、サラサラと飾る感じです。これも悪くはないのですが、今回はソースがサラサラしている面があり、SE-A1000だと少し付帯音が多いように感じます。この点はアンプが違えばまた違った結果になるでしょう。
 不満点は、もう少し見晴らしの良さが欲しい点です。もっとも、この点については密閉型なので仕方ない部分が大きいと思いますが・・・・・・

・2台目 SR-007+SRM-717(STAX)
 音楽を支える低域を保ったまま見晴らしの良さを得るのは意外と難しいことです。今回はそれを両立している稀有な機種として、SR-007が真っ先に浮かびました。言うまでもなく、コーラスの表現も非常に美しいです。1台目と比較するとサラサラしていてこの点はむしろSE-A1000に近い感触ですが、それでいて自然で聴きやすいのはコンデンサー型ならではでしょう。
 不満点はほとんどありませんが、透明感とトレードオフの密度感の高さがもう少し欲しい点でしょうか。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 2台目の不満点を改善して、なおかつ低域の量感やコーラスの表現のことを考えるとなると、これくらいしか選択肢がないように感じました。
 実際聴いてみると、ほぼ期待通りの鳴らし方です。バランスとしては、これくらいが最も万人受けするのかもしれません。更に上を求めるなら、あとはアンプでしょう。今回の曲の場合は密度重視でAT-HA2002が合うように感じました。


 今回は取り上げませんでしたが、他にもDT880はかなり良いです。低域の量をあまり求めないなら、SRS-4040も良いと思います。前述の通りあまりヘッドホンを選ばない曲ですが、高いレベルを求めるならやはりある程度限られてきます。今回の内容を参考に、自分に合った機種を選んでみてください。


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