TR-HP03B

音質
 ややドンシャリ。低域は、量は多めだが下品な感じはしない。やや柔らかめの質感で、しっかり低い音を鳴らしてくれる。中域は、低域がしっかり出る割には明瞭に聴こえてくるし、変な癖もない。高域は、量は多めだが質的にはあまり金属的であったり細く尖っていたりはしない。
 分解能は価格なりの価値はある。音の分離は悪くないし、それ以上に微細な表現をしっかりこなしてくれる。音場感はあまり広くないが、それなりに明確ですっきりしているためか、あまり狭いとは感じない。原音忠実性はかなり良い。原音の粗はあまり感じられないが、生っぽさはあるし、それでいて音楽を楽しめるような鳴らし方になっている。エッジはきつくなく聴きやすい。これは、単にエッジがきつくないということにとどまらず、音そのものが柔らかく滑らかで心地よいレベルにまで達している。
 明瞭さ、音の鮮やかさはそれなりで、作ったような感じはなく、自然。厚みは普通。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良い。ノリの良さと繊細さをある程度両立している。響きはやや豊かだが、こもり感はあまり気にならない。
 弦楽器は繊細かつ心地よい。かなりうまいと言って良いだろう。金管楽器はあまり刺激や鮮やかさはなく、上品に聴かせてくれる。打ち込み系の音の表現は、柔らかい質感が合わない面はあるものの、基本的には悪くない。
 他にはあまりない変わった鳴らし方をする。モニター系の音であるとか、古臭い音であるとかいった表現が当てはまることは当てはまるのだが、それだけでは表現しきれない魅力を持つ機種。

装着感
 普通。側圧は普通からやや弱めで、多少ずれやすい。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズだが、深さが浅くほとんど耳にのせるような感じ。上下方向にも左右方向にも角度調節ができないため、人によってはまったく合わない可能性もあるだろう。材質はポリウレタン。柔らかく、肌触りも悪くない。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は普通。構造上あまりしっかり耳を覆わないので、音が出入りする感じ。
 作り、デザインともに安っぽい。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、硬さは普通で癖が付きにくく扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周104mm×80mm、内周34mm×34mm、深さ18mm。

付属品
無し



参考
不定期コラム『第70回 生産終了になったfavorite headphones』

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-D5000
AH-D5000はかなりフラット、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はTR-HP03Bの方がやや低い音で厚みや圧力がある。AH-D5000の方が柔らかくぼやけている感じ。中域はTR-HP03Bの方がやや高い音で低域の曇りに覆われない感じではっきり聴こえてくる。高域は比較的似ているが、AH-D5000の方がやや高い音を鳴らす。この2機種だけを比較した場合、AH-D5000の方が若干高音よりと考えて良いのかもしれない。分解能はAH-D5000の方が上。音の分離にしろ微細な描写にしろ勝っている。音場感はAH-D5000の方がやや広く明確。原音忠実性もAH-D5000の方が上。とにかく自然で一聴して違和感がない。ただ、原音の粗っぽい感じはTR-HP03Bの方が出してくれることもある。TR-HP03Bの方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さはTR-HP03Bの方がやや上、音の鮮やかさはAH-D5000の方がやや上。厚みはTR-HP03Bの方がある。温かみは、ヴォーカルの艶っぽさはAH-D5000の方が上。ノリの良さならTR-HP03B、繊細さならAH-D5000。響きはAH-D5000の方が豊か。どちらもある種の音楽性や心地よさを持っている点は似ているが、心地よさならAH-D5000の方が勝っている。弦楽器はAH-D5000の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はAH-D5000の方が鮮やかだが、力強さならTR-HP03Bに分がある。打ち込み系の音の表現はTR-HP03Bの方がうまい。低域の質感やメリハリで勝っている。使い分けるなら、ポップスやロックをノリ良く楽しみたいときはTR-HP03B、それ以外はAH-D5000。ただし、総合的な完成度はAH-D5000の方が高く、TR-HP03Bでクラシックやジャズを聴くときの不満と比べて、AH-D5000でポップスやロックを聴くときの不満は小さいように感じる。

ATH-A900
ATH-A900はやや高音より、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域は量はほぼ同量だが、TR-HP03Bの方がやや低い音を鳴らす。中域はどちらもあまり癖がなくはっきり聴こえてくる。高域はATH-A900の方が細く尖った鳴らし方。分解能及び音場感はATH-A900の方がやや上。線が細く細かいところまで聴こえてくる。原音忠実性はTR-HP03Bの方が上。ATH-A900は高域の癖が気になるが、TR-HP03Bの方はあまり気にならない。エッジのきつさはほぼ互角だが、線が細く高域が尖っているATH-A900の方が聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-A900の方が上。厚みはTR-HP03Bの方が上。温かみはTR-HP03Bの方がかなり感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等だが、どちらかといえばTR-HP03Bの方が上。ノリの良さならTR-HP03B、繊細さならATH-A900。響きはTR-HP03Bの方がやや豊か。弦楽器はTR-HP03Bの方が心地よく楽しめる。金管楽器はATH-A900の方が細く目立つ感じ、TR-HP03Bの方が力強い感じ。打ち込み系の音の表現は、音の質感的にはATH-A900の方が相性が良いように感じられるが、低域が強く厚みがある面ではTR-HP03Bの方がうまいように感じられる。ソースや好みによって違ってくるだろう。使い分けるなら、心地よく音楽を楽しみたいならTR-HP03B、一般的な性能重視ならATH-A900。

EXH-313
EXH-313はややかまぼこ、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はTR-HP03Bの方がしっかり低い音を鳴らすし、厚み・量ともに上。中域はどちらもはっきり聴こえてくる。EXH-313の方が低域が弱い分しっかり聴こえる面もあるのだが、おとなしい音であまり目立つ感じではない。質的にはTR-HP03Bの方がやや高く目立つこともある。高域は量的にはさほど差を感じないが、EXH-313の方が線が細い。TR-HP03Bの方が太く金属的。分解能はEXH-313の方が上。一つ一つの音の微細な描写に差がある。音場感はEXH-313の方が広く明確。原音忠実性はTR-HP03Bの方が上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。TR-HP03Bの方がエッジがきつくやや聴き疲れしやすいが、これはEXH-313があまりに聴き疲れしにくいと言った方が正しいだろう。TR-HP03Bの方が適度な刺激があるとも言える。明瞭さはEXH-313の方がやや上だが、非常におとなしく作ったような明るさとは無縁なので、一聴した感じTR-HP03Bの方が良いと感じることもある。音の鮮やかさはTR-HP03Bの方がやや上。厚みはTR-HP03Bの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはEXH-313の方が上。ノリの良さならTR-HP03B、繊細さならEXH-313。EXH-313の方がおとなしく、圧倒的に粗がない。TR-HP03BはEXH-313と比べると鳴らし方も音の細部もかなり雑。響きはTR-HP03Bの方が豊かだが、EHX-313の方が残響音の最後の一粒まで味わえるような良さがある。どちらもしっかり音楽を楽しめる魅力的な鳴らし方をしてくれるが、EXH-313が心地よさと細部を極限まで描き出すことによって聴かせてくれるのに対して、TR-HP03Bは個々の音にリアリティと魅力がありかつ音楽の芯をしっかりとらえることによって聴かせてくれる。TR-HP03Bの方が分かりやすくストレートな魅力と言えるかもしれない。弦楽器はEXH-313の方が繊細かつ心地よいが、生楽器らしさが欲しいならTR-HP03Bの方が良い。金管楽器は意外と似た音を鳴らすが、EXH-313の方が繊細で粗がなく、TR-HP03Bの方が金属的でやや鮮やか。打ち込み系の音の表現はTR-HP03Bの方がうまい。低域の量感、音の厚み、ダイナミックな鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、ノリの良さ重視ならTR-HP03B、繊細さ重視ならEXH-313。あるいは、低域の量がある程度欲しいならTR-HP03B、それほどなくても良いならEXH-313。

HFI-780
どちらもややドンシャリ。低域はHFI-780の方が重心が低く厚みがある。HFI-780は中低域が凹んでいるが、TR-HP03Bはそんなことはなく、TR-HP03Bの方が全体的に自然に出る感じ。中域はHFI-780の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中高域はTR-HP03Bの方が量が多く、高域はHFI-780の方が量が多い。HFI-780の方が高く明るい音。分解能はHFI-780の方が上。音の分離に差がある。ただし、一つ一つの音の微細な描写は、HFI-780が細かいところは鳴らさないのに対してTR-HP03Bはしっかりこなしてくれる。音場感はHFI-780の方が広く明確。原音忠実性は微妙。一聴して違和感が少ないのはTR-HP03Bだが、原音の粗や生っぽさはHFI-780の方が感じられる。エッジはHFI-780の方がきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはHFI-780の方が上。厚みはHFI-780の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはTR-HP03Bの方が上。HFI-780の方がノリが良く、TR-HP03Bの方が穏やかで心地よい。響きはTR-HP03Bの方が豊か。シャープで無駄のないHFI-780、柔らかく良い意味で無駄のあるTR-HP03Bという感じで、ある意味対照的。弦楽器はTR-HP03Bの方が心地よい。金管楽器はHFI-780の方が明るく鮮やか。打ち込み系の音の表現はHFI-780の方がうまい。音の質感の相性やスピード感で勝っている。使い分けるなら、明瞭さや基本性能重視ならHFI-780、温かみや心地よさ重視ならTR-HP03B。

MDR-CD900ST
MDR-CD900STはかなりフラット、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はMDR-CD900STの方がやや量が多いが、TR-HP03Bの方がしっかり低い音を鳴らす。中域はTR-HP03Bの方が低域に埋もれない感じで明確に聴こえてくる。高域はTR-HP03Bの方がやや高い音で量も多い。分解能はMDR-CD900STの方が上。音の分離はさほど違いを感じないが、細かい部分はMDR-CD900STの方が分かる。音場感はTR-HP03Bの方が上。明確で広がりがある。原音忠実性はMDR-CD900STの方が上。特に原音の粗を強く感じられる点が違う。MDR-CD900STの方がかなり聴き疲れする。これはエッジのきつさよりもこもり感の酷さの影響が大きいようだ。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてTR-HP03Bの方が上。TR-HP03Bの方がノリが良い。響きはMDR-CD900STの方が豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はTR-HP03Bの方が粗のない表現で心地よく聴ける。金管楽器はTR-HP03Bの方が鮮やかで力強く楽しめる。打ち込み系の音の表現はTR-HP03Bの方がうまい。音の厚みや低域の質感で勝っている。使い分けるなら、ほとんど何を聴くにしてもTR-HP03Bの方が良いだろう。

SE-900D
SE-900Dはややかまぼこ、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はTR-HP03Bの方がやや量が多く低い音で、弾力がある感じ。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、どちらかと言えばSE-900Dの方が低域が少ない上に高い音で目立つ。高域はSE-900Dの方が細く高い音で癖がある感じ。量的にはTR-HP03Bの方が多い。分解能及び音場感はほぼ互角。SE-900Dの方がシャープで分離が良いが、微細な描写はTR-HP03Bの方がしっかりこなしてくれる。どちらも耳の近くで音が鳴る点は似ている。ただ、TR-HP03Bの方が多少広がりがあるようだ。原音忠実性はTR-HP03Bの方が上。SE-900Dは特に高域の癖が原音とは違うように感じるが、TR-HP03Bはそこまでの癖はない。エッジのきつさはほぼ互角だが、SE-900Dは中域がキンキン突き刺さってくる感じで聴き疲れするのに対して、TR-HP03Bはそんなことはない。明瞭さはほぼ互角、音の鮮やかさはTR-HP03Bの方が上。厚みはSE-900Dの方がある。温かみはTR-HP03Bの方が上。これは低域が出るだけでなく、質感そのものにも差がある。ヴォーカルの艶っぽさは大きな差はないが、TR-HP03Bの方がやや上。ノリの良さならSE-900D、繊細さならTR-HP03B。響きはTR-HP03Bの方が豊か。SE-900Dの方が全体的に締まった音。弦楽器はTR-HP03Bの方が繊細かつ心地よい。弦を爪弾いた瞬間の感じや弦の振るえる様の描写にかなり差がある。金管楽器はSE-900Dの方がやや高い音だが、どこか地味で、鮮やかさや明るさという見方をするならTR-HP03Bの方が良いかもしれない。打ち込み系の音の表現は、音そのものの相性はSE-900Dの方が良いが、低域がやや足りないため、低域が欲しい場合にはTR-HP03Bの方が合う。使い分けるなら、基本的にはTR-HP03B、締まりやノリの良さを重視するならSE-900D。

SP-K300
SP-K300は低音よりのドンシャリ、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はSP-K300の方が量が多いが、TR-HP03Bの方がやや低めの音を上品に鳴らしてくれる。中域はTR-HP03Bの方が低域に埋もれずはっきり聴こえてくる。高域はSP-K300の方が高く金属的。分解能及び原音忠実性はTR-HP03Bの方が上。微細な表現をうまくこなしてくれるし、SP-K300ほど作ったような酷いドンシャリではない。音場感は大きな差はないが、TR-HP03Bの方がすっきりして明確に感じる。SP-K300の方がエッジがきつい上、圧力やこもり感があり聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはTR-HP03Bの方が上。厚みはSP-K300の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはTR-HP03Bの方が上。ノリの良さならSP-K300、繊細さならTR-HP03B。響きはSP-K300の方が豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はTR-HP03Bの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はSP-K300の方がやや高く力強い。打ち込み系の音の表現は、ノリの良さという意味ではSP-K300の方が良いのだが、あまりに低音の量が多くこもり感が酷いため、普通に楽しむならTR-HP03Bの方が良いかもしれない。使い分けるなら、基本的にはTR-HP03B、余程低域の量が欲しいときだけSP-K300。

SW-HP10
SW-HP10はやや低音より、TR-HP03Bはややドンシャリ。低域はSW-HP10の方がやや柔らかい質感。TR-HP03Bの方がやや厚みがありしっかり低い音を鳴らす感じ。ソースによっては質・量ともにほとんど差を感じないこともあるが、バスドラのアタック感等は顕著に差が出る(TR-HP03Bの方が重心が低くアタック感がある)。中域はSW-HP10の方が低く落ち着いた音。TR-HP03Bは低域と中域が分かれているように感じるが、SW-HP10は繋がっているように感じる。高域はTR-HP03Bの方が高く鋭い。SW-HP10の方が粗がない。分解能はTR-HP03Bの方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は広さ・明確さともにほぼ同等だが、音そのものの影響でTR-HP03Bの方が見晴らしが良いと感じることが多い。原音忠実性はTR-HP03Bの方がやや上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに多少差がある。エッジはTR-HP03Bの方がきつく、聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはTR-HP03Bの方が上。厚みはほぼ同レベル。温かみはSW-HP10の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは基本的にはあまり差はないが、SW-HP10の方が柔らかくサ行の音等も痛くないので好印象。TR-HP03Bの方が明るくメリハリがありノリが良い。SW-HP10の方が粗がなくマイルドでおとなしい。響きはSW-HP10の方がやや豊か。表現が難しいが、音の表面の質感等TR-HP03Bの方が強い個性があるように感じる。ただ、SW-HP10も少し違った方向性の個性はある。弦楽器はSW-HP10の方が心地よいが、生楽器らしさが欲しいならTR-HP03Bの方が良いだろう。ヴァイオリン等を澄んだ感じで楽しみたいときもTR-HP03Bの方が良い。金管楽器はTR-HP03Bの方が明るく鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はTR-HP03Bの方がややうまい。音の質感の相性がやや良いし、明るくメリハリがある。使い分けるなら、心地よく聴きたいならSW-HP10、明るくノリ良く聴きたいならTR-HP03B。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第44回 THE MEMORY OF TREES/enya「THE MEMORY OF TREES」より
第52回 交響曲第4番「ロマンティック」/ブルックナー
第65回 太陽/槇原敬之「SYMPHONY ORCHESTRA"cELEBRATION"」より


※生産終了。後継機はSW-HP10。音質・デザイン・コードの長さ・付属品が変更。
  SW-HP10よりもI AM WHITE(TR-HP03BのOEM品)の方がTR-HP03Bに音が近いと思われる。

 










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz 106dB 40Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
250g 40mm 1.6m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 3 3 3 2 1 均(低、高) 12500円
※生産終了。後継機はSW-HP10。

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公開日:2006.12.30