HD497

音質
 かなりフラットだが、やや低音より。低域はローエンドまで出るが、厚みは薄く、SENNHEISERらしい。量は程々だが、上位機種より控え目な印象。ただし、中域よりは強い。高域は質・量ともにそれなり。全体的にみて、薄い低域とハイハット等の高域が目立つ感じ。
 分解能は価格以上の価値がある。音場感はいまいちで狭いが、外見から予想されるより悪いということはない。原音忠実性はそれなりだが、SENNHEISERらしい自然な味付けはさすが。エッジはきつくなく、あまり聴き疲れしない。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みはやや薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良いが、ソースによってはかすれがやや気になる人もいるかもしれない。どちらかと言えば繊細。スピード感や音圧はあまりない。響きは適度からやや豊か。
 弦楽器は繊細さと心地よさをある程度持っているが、低域の量感には欠ける。金管楽器はなかなか鮮やか。この点は上位機種に勝っていると言って良いだろう。ただし、芯の通った力強さはあまり感じられない。打ち込み系の音の表現はそれなり。低域の厚みは足りないが、それでもなかなかバランス良く鳴らしてくれる。
 何でもそこそこ鳴らしてくれるが、ロックはやや苦手か。それにしても、SENNHEISERにしてはポップス向きの機種。コストパフォーマンスはかなり良い。しかもSENNHEISERらしい音作りは維持されているので、低価格で温かみ・ヴォーカルの艶っぽさ・繊細さ・音の伸びを求めている人には自信を持っておすすめできる。

装着感
 普通。側圧は普通からやや強め。ヘッドバンドはクッションがしっかり入っている上、軽量なので頭部への負担は小さい。しかも非常にずれにくい。
 イヤーパッドはかろうじて耳を覆うサイズ、自由自在に角度調節ができる。ヘッドバンドの幅が狭いため、頭の幅が広い人は耳の下に隙間ができるような装着感になると思われる。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は開放型にしてはかなり良いが、普通の密閉型と比べると悪い。
 作りは価格なり。デザインはかなり斬新で、K101と似た印象を受ける。悪くはないが、癖が強すぎるかもしれない。ヘッドホン本体側でもコードの着脱が可能。
 プラグはミニプラグ。コードの太さは約2mm、硬さは普通。イヤーパッドのサイズは、外周88mm×68mm、内周54mm×32mm、深さ14mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
不定期コラム『第14回 1万円以下の開放型ヘッドホン比較』
不定期コラム『第27回 価格別favorite headphones 3回目』

周波数特性グラフ


比較メモ
HD435
どちらもやや低音よりだが、HD497の方がフラット。低域はHD435の方がかなり量が多く、柔らかい質感。中域はHD497の方が曇りなく聴こえてくる。高域はHD497の方が量は出るのだが、音の高さはHD435の方がやや高いように感じる。分解能、音場感、原音忠実性すべてHD497の方がやや上。HD497の方がエッジがきついが、聴き疲れとしては問題ないレベル。明瞭さ、音の鮮やかさはHD497の方が上。厚みは質感が違うので比較が難しいが、それほど大きな差はないように感じる。温かみは低域が出る分HD435の方があるように感じる。ヴォーカルの艶っぽさはHD497の方がやや上。HD497の方が繊細であり、軽快さも感じる。HD435は温かみはあるのだがどこか重く、切れもないし、曇りも気になる。響きはどちらも適度だが、HD435の方が豊かに感じやすい音調。弦楽器はHD435の方が心地よさはあるのだが、繊細さや澄んだ感じはHD497の方がかなり良い。金管楽器はHD497の方が鮮やかで前に出てくる。打ち込み系の音の表現はHD497の方がうまい。HD435は低域の量は多いのだが柔らかい質感が打ち込み系の音には合わないし、スピード感がない。得意分野はどちらもクラシックだが、HD497の方がポップス向きと言えよう。使い分けるなら、低域の量が欲しいときはHD435、それ以外はHD497。

HD595
どちらもやや低音よりだが、どちらかというとHD497の方がやや高音より。低音はHD595の方が出るし、高音はHD497の方が出る。分解能、音場感、原音忠実性すべてHD595の方がやや上。HD497の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはHD497の方がやや上、厚み、密度、情報量、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHD595の方がやや上。どちらもノリの良さと繊細さを併せ持っているが、HD595の方がノリの良さにしろ繊細さにしろ若干上。響きはどちらも適度だが、どちらかといえばHD595の方が豊か。弦楽器はHD595の方が安定した心地よい音を鳴らす。金管楽器はHD497の方が一段高く鮮やかな音を鳴らす。打ち込み系の音とはHD497の方が相性が良い。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、ポップスやブラスメインの曲はHD497、それ以外はHD595。ただし、HD595の方がかなり完成度が高いので、何を聴くにしても良いと言う人もいるだろう。

K101
どちらもやや低音よりだが、超低域はHD497の方がかなり出る。中域〜高域はほぼ互角。分解能、音場感ともにHD497の方が良い。原音忠実性はHD497の方がやや上だが、生の粗っぽさはK101のほうがある。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、どちらかというとK101の方が芯が通っていてしかも粗のある音で疲れる。サ行の音等も痛い。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはほぼ互角。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHD497の方が上。K101はノリが良いわけでも繊細なわけでもないという印象を受けるが、HD497はノリの良さと繊細さを両立しているように感じる。K101は芯が通っているわりに超低域が不足していること等から、スカスカした感じがする。響きはHD497の方がやや豊か。K101の方が感度が低いためどうしてもボリュームを上げなければならず、ホワイトノイズが非常に気になる。弦楽器、金管楽器ともにHD497の方が魅力的。打ち込み系の音の表現もHD497の方がうまい。得意分野はHD497がクラシック、K101がポップス。ほとんど何を聴くにしてもHD497の方が良いように感じるが、あえてK101を使うなら芯の通った硬い感じが欲しいときくらいか。

RP-HT770
どちらもやや低音より。超低域はHD497の方が出るが、厚みは互角でどちらも程々。高域はHD497はそれなりに聴こえてくるがRP-HT770はあまり聴こえてこない。分解能はHD497の方が上、音場感はほぼ互角。HD497の方が圧倒的に原音に近く自然で魅力的。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、RP-HT770の方が曇っている分聴き疲れしない。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度、情報量、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさ等すべてHD497の方が上。HD497の方がノリが良くそれでいて繊細。響きはHD497の方がやや豊か。弦楽器、金管楽器ともにHD497の方が魅力的。弦楽器は生っぽさにはやや欠けるものの自然で伸びが良く温かみにあふれている。金管楽器にはSENNHEISERにありがちな曇った感じはなく、鮮やかで高い音を鳴らしてくれる。RP-HT770が曇っているため余計そう感じるのかもしれないが。打ち込み系の音の表現はHD497の方がうまい。得意分野はHD497がクラシック、RP-HT770がポップスだが、何を聴くにしてもHD497の方が上。使い分ける必要はない。

UR/40
HD497はやや低音より、UR/40はややドンシャリ。超低域〜低域はかなり近い感じだが、若干UR/40の方が出るか。高域〜超高域もUR/40の方がやや出る。分解能はHD497の方が若干上、音場感はUR/40の方がやや広い上に明確。HD497の方が原音に近い。UR/40は原音忠実は気にしていない音作り。どちらもエッジはきつくないが、HD497の方がややマイルドで聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはほぼ互角だが、UR/40の方が若干良いか。厚み、密度はHD497の方が上。温かみはHD497の方があるが、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。ノリの良さならUR/40、繊細さならHD497だが、どちらもノリの良さと繊細さを併せ持っている。響きはHD497の方がやや豊か。弦楽器はHD497の方が滑らかな質感で伸びが良く魅力的。金管楽器はほぼ互角。どちらも非常に鮮やかで元気の良い音。打ち込み系の音の表現はUR/40の方がややうまい。まったく違う音調のこの2機種だが、ソースによっては非常に近い音を鳴らしたりする不思議な一面もある。HD497は超低域まで出て温かみにあふれているのに曇っている感じはしない。UR/40はサラサラした独特の感触が魅力。得意分野はHD497がクラシック、UR/40がポップスだが、どちらも何でもそこそこ聴ける。使い分けるならクラシックとジャズはHD497、ポップスとロックはUR/40。どちらも非常にコストパフォーマンスの良い機種。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索2
第1回 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調/バッハ
第7回 ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49/メンデルスゾーン


※生産終了










戻る





スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 24Hz〜22kHz 112dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
130g - 3m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 3 2 2 4 3 均(低) 6400円
※生産終了

TOP > ヘッドホンレビュー > HD497

公開日:2005.2.28