第7回 ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49/メンデルスゾーン

 メンデルスゾーンは1800年代に活躍したドイツの作曲家です。有名な「結婚行進曲」を含む「夏の夜の夢」序曲を17歳にして作曲するなど若い頃から才能を発揮し、更に作曲家としてだけでなく指揮法を確立するなどの業績を残しています。
 今回取り上げるのは「鳥の歌-ホワイトハウス・コンサート」というタイトルのCDで、非常に有名なチェロ奏者であるカザルスが1961年にケネディ大統領に招かれてホワイトハウスで披露した歴史的な名演を収めたものです。有名なので、聴いたことのある人も多いのではないかと思います。編成はピアノ、チェロ、ヴァイオリンです。録音はモノラルで状態もあまり良くありませんが、演奏内容そのものは安定感のある堂々たるものだと思います。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。まず、古い録音でノイズがある程度大きめなので、なるべくノイズが気にならないものが良いと思います。演奏の質の高さが素直に感じられるような、あまり味付けのない音が良いのではないかと思います。また、モノラル録音なので音場はそれほど重要ではないと思います。


・1台目 HD497(SENNHEISER)
 前述の条件に最も当てはまるように感じたので選びました。基本的にあまり癖や味付けのない音ですし、各楽器の表現も価格を考えればかなり高いレベルだと思います。
 他にはATH-A500、HD215、HP-RX900、SE-M870、UR/40等でも聴いてみましたが、HD497と比べるとそれぞれ不満がありました。ATH-A500とHD215はやや作ったような明るさや明瞭さが気になります。HP-RX900とUR/40は逆にやや柔らかく明瞭さに欠ける傾向で、もう少しピアノの輪郭の明確さが欲しいような印象です。SE-M870は最後までHD497と迷いましたが、HD497の方がノイズが気にならなかったので、最終的にはそちらになりました。HD497よりも重厚で濃密な音を求めるならSE-M870が良いと思います。ただ、何となくですが、今回の曲はヘッドホンによって違いが出にくいような印象を受けました。その理由として、低域・高域ともに少なめで録音状態もあまり良くない点が挙げられるように思います。
 不満点は、スケールが小さい点、各楽器の表現力や実体感がもう少し欲しい点です。

・2台目 K240monitor(AKG)
 ノイズが気になりにくかったので選びました。この点については最高レベルだと思います。味付けが少なく音色も自然で各楽器が違和感なく聴けますし、ピアノの輪郭は適度に明確で弦楽器の細部の描写もそれなりにこなしてくれます。1台目よりスケールが大きい点も良いです。
 他にはATH-SX1、HD280Pro、HP-AURVN-LV、RH-300等で聴いてみました。ATH-SX1はどの楽器も音色に多少の違和感があります。HD280Proは原音の粗や生っぽさがしっかり感じられるのは良いのですが、ノイズがかなり気になります。HP-AURVN-LVは瑞々しい表現で魅力的なのですが、今回の曲を素のままで聴くにはK240monitorの方が良いと思いますし、ノイズも大きいです。RH-300はやや明瞭さに欠けますし、ピアノの質感に違和感があります。色々と不満を書きましたが、特に方針を定めずに聴くならどの機種も悪くないと思います。
 不満点は特にありません。次は少し違う傾向のものを選ぶしかなさそうです。

・3台目 K701(AKG)
 2台目でかなり満足してしまったので、3台目はとりあえず色々と聴いてみました。その結果選んだのがK701です。
 とにかく素のままで聴きたいなら2台目の方が良いと思うのですが、細部の描写や演奏の情感を求めるならK701の方が良いです。2台目と同様、ノイズがあまり気にならない点も良いです。2台目を聴いた時点ではかなり完成度が高くしかも最初に書いた条件を満たしていたため不満点はなかったのですが、K701を聴いてから比較するとチェロとヴァイオリンの細部の描写がもう少し欲しい印象になります。
 不満点は、付帯音やウォームさが若干気になる点です。

・4台目 AH-D5000(DENON)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。3台目と比べると、付帯音やウォームさがやや減ります。どの楽器も少し明るい音色になる印象で、ピアノの輪郭はやや明確な傾向です。ノイズはやや気になりますが、絶対値としては特に悪くはないです。総合的に見て、かなり自然で癖のない音と言えると思います。低域は若干多めですが、今回の録音は低域が少なめな印象なので、むしろちょうど良いのではないかと思います。
 他にはATH-AD2000、DR-631、KH-K1000等で聴いてみました。ATH-AD2000は若干曇っていてどの楽器も音色に多少の違和感がある点が気になりました。DR-631は音色の違和感が大きいです。KH-K1000はかなり良かったのですが、AH-D5000と比べると音色に若干の違和感がありますし、原音の生っぽさや実体感でも見劣りします。

・5台目 Image X10(Klipsch)
 ノイズが気になりにくく、全体的に自然で変な強調感のない鳴らし方が好印象だったので選びました。どの楽器もやや落ち着いた音色で、非常に聴きやすいです。ただ、あまり細部を細かく描写してくれるような傾向ではないので、そういうところを重視するならER-4S等、他にもっと良い機種があると思います。
 他にはHP101、HP-CN40等が良かったです。Image X10と同様、ノイズが気になりにくく自然で落ち着いた音色です。厳しく見れば細部の描写に不満が出やすいところも似ていますが、これは仕方ない面もあると思います。


 今回はK240monitorの良さが印象的でした。聴き方によっては、1万円台のヘッドホンで十分なことも多いという一例だと思います。ただし、細部の表現力や実体感等、求めるものによってはもっと他に良いヘッドホンがあるのも確かです。
 ヘッドホンアンプはHead Amp 2/MkII SEが最も良く、次いでHD-1L Limited Edition(RC1)という印象です。hpa200b(ハイエンド仕様)やHD53は少し冷たく無機質な感じが合わない印象です。ただ、このあたりは使用するヘッドホンによっても変わってきます。K701ならhpa200b(ハイエンド仕様)やHD53くらいの方が良いかもしれません。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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