第1回 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調/バッハ

 曲別HP探索2、スタートです。初回はだいぶ前から足りないと思っていたクラシックのソロ(及び小編成)を補填することにしました。リクエストされた曲から選ばなかったのは、初回なので探索のやり方を試すためです。
 曲はバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV1006、ヴァイオリンのソロ曲です。
 今回取り上げるCDの演奏はヒラリー・ハーン、録音は1997年です。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータは第2番ニ短調BWV1004(通称シャコンヌ)も有名ですが、ヒラリー・ハーンの瑞々しい演奏では今回の曲の方が魅力的に感じられたので、こちらを選びました。なお、このCDは録音が良いことでも有名で、オーディオ雑誌等で試聴盤として頻繁に使われています。その点もこのCDを選んだ理由の一つです。
 曲別HP探索2では、曲をリクエストして頂く際に「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」を一緒に書いてもらってそれに従って探索していく方針ですが、今回はリクエストされた曲ではないので私が「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」を決めたいと思います。ヴァイオリンを瑞々しく鳴らしてくれること、生楽器らしさが感じられること、原音からあまり外れないことの三点を重視したいと思います。


・1台目 HD497(SENNHEISER)
 前述の条件をすべてある程度満たしています。他の機種に対するアドバンテージとしては、強弱をしっかりつけてかつ滑らかに音が繋がってくれるため自然と音楽に身を任せられるような良さがあるところです。
 なお、曲別HP探索2で選択するヘッドホンは「本サイトでレビューが公開されているものの中から、その時点で入手可能なものであるか、入手できなくても音の似ている後継機が出ているもの」という条件がありますが、HD497は生産終了になっていて正式な後継機はないものの、eH350等比較的似た音を鳴らすヘッドホンがあるため選んでもOKという判断をしました。
 他にはK24PとATH-A500が良かったのですが、K24Pは若干不要な芯が通っているような感じが気になる点、ATH-A500は瑞々しいと言うより明るく冷たいと言った方が適切なように感じる点をマイナス評価としました。K24PにしろATH-A500にしろドンシャリでポップス向きというような印象を持っている人も多いかと思いますが、個人的には今回の曲との相性が良いのは予想通りでした。今回の曲では低域は関係ありませんし、K24PとATH-A500は中域から中高域にかけての明るさがある上それほど変な癖がないためです。CPH7000、HP-RX900、K55、PortaPro、SE-M870、SHP8900、UR/40等でも聴いてみましたが、前述の機種と比べると癖があったり瑞々しさに欠けたりと、明らかな不満がありました。
 HD497の不満点は正直あまりありませんが、贅沢を言うなら若干曇っているように感じることがある点、生楽器らしさがもう少し感じられるとなお良いと思われる点です。

・2台目 HP-AURVN-LV(CREATIVE)
 2台目も色々聴いてみましたが、最も瑞々しく魅力的に感じられたのでこれを選びました。生楽器らしさもある程度しっかり感じられますし、変な癖もありません。1台目の不満点はほぼ解消されます。
 他にはK240monitor、MUSIC SERIES ONE、DR150も良かったです。HP-AURVN-LVと比べて、もっと味付け少なく鳴らして欲しいならK240monitor、明るく切れが良すぎると感じるならMUSIC SERIES ONE、生楽器らしさ(生楽器の粗っぽさ)が足りないならDR150という具合にそれぞれ良い点があります。ただ、今回の曲を瑞々しく魅力的に鳴らしてくれるという点ではHP-AURVN-LVが一番だと感じましたし、生楽器らしさが感じられること、原音からあまり外れないことという条件まで含めてトータルでも他の機種に引けを取らないと思います。ATH-A900、K181DJ、RH-300、SW-HP10等でも聴いてみましたが、違和感があったり瑞々しさに欠けたりという不満がありました。
 HP-AURVN-LVの不満点は特にありません。あとは好みでしょう。もう少し柔らかくウォームな表現を好む人も多そうです。

・3台目 DT660 Edition 2007(beyerdynamic)
 3、4台目は悩みました。AH-D5000、ATH-W1000、DT660 Edition 2007、DT990 Edition 2005、edition7、HD650、HP-DX1000、K701、KH-K1000、MDR-SA5000、RS-1、SR-4040と聴きましたが、どれもそれぞれ魅力的で、重視するポイントが変われば評価がガラリと変わるのは明らかでした。そこで、最初に書いた三つの条件に優先順位を付けることにしました。この順位付けも人によって当然変わってくるでしょうが、私は今回の曲の魅力を引き出すという意味で「瑞々しさ>生楽器らしさ>原音忠実性」という順位にしました。その結果、最も良かったのがDT660 Edition 2007です。
 DT660 Edition 2007の瑞々しさは素晴らしいものがあります。青々とした若草のような質とでも言いましょうか、綺麗なだけでなく粗や汚いところまで含めて生きていると主張するかのような生命力に溢れた音です。2台目と比べると同等以上の瑞々しさがある上、生楽器らしさが更に感じられるようになっています。
 不満点はありません。

・4台目 RS-1(GRADO)
 3台目と同様の基準で選び、ほぼ同点だったのでこれにしました。3台目と同様、原音忠実性という意味では特別優れているわけではありませんが、瑞々しさと生楽器らしさという点では素晴らしいものを持っています。3台目とかなり近い傾向の鳴らし方です。抜けが良く爽やかであるという共通点もあります。抜けの良さや爽やかさと瑞々しさはイコールではありませんが、今回の曲を聴く限りある程度の相関があるように思いました。
 違いはRS-1の方が音に芯が通っておらず、響きが豊かという点です。この点については、今回の曲を鳴らすのに特にどちらが良いということはないと思います。微妙なバランスで評価が別れる程度の違いでしょう。

・5台目 ER-4S(Etymotic Research)
 5台目はイヤホンです(念のため書いておきますが、この5台目だけはHD53ではなくiPodを使用します)。
 ER-4Sは非常に瑞々しく、生楽器らしさもしっかり感じられるという点で魅力的です。私が所有していないイヤホンまで探索範囲に含めても、ここまで相性の良いイヤホンはほとんどないと思われます。別にER-4Sを手離しで絶賛するつもりはないのですが、今回の曲は偶然ER-4Sの得意ジャンルにピッタリはまってしまったような印象です。
 他にはATH-CK10も良かったですが、ER-4Sと比べると若干癖があるように感じます。
 価格帯の違うものを見てみると、ER-6、HP-FX500、HP-FXC50等が良かったです。ただ、少しやりすぎな感はあります。明るく硬すぎて、原音忠実性が多少損なわれている印象です。聴いてみてそういう不満がある場合には、CX95、HP101、SHE9700あたりの方が柔らかく聴きやすいでしょう。


 今回は瑞々しさ、生楽器らしさ、原音忠実性という見方で選びましたが、別の角度から見るとまた違った結果になっておもしろいです。例えば明るく清涼な鳴らし方という観点なら、MDR-SA5000、ATH-W1000、edition7あたりが有力です。ただ、これらの機種は言い換えるとやや冷たい傾向です。上品さを求めるなら、SRS-4040、K701、KH-K1000が良いです。ただし、これらの機種は生楽器らしさをあまり出してくれない傾向です。なお、今回は前述のような方針で選んだので漏れましたが、漠然と聴いて総合的に最も優れているのはK701ではないかとも思います。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。瑞々しい感じや生楽器らしさを出してくれますし、癖もありません。ただ、若干音楽鑑賞向けチューニングのようなものは感じるので、それがない方が良いのであればHead Amp 2/MkII SEが良いです。もう少し上品に鳴らして欲しいならSA-15S1(SACDプレーヤーのヘッドホン端子)になると思います。
 以上で終わりです。初回なので少し気合を入れすぎたでしょうか・・・・・・ 毎回この量でやるのは正直しんどいですし、次回以降はもう少し文字数控え目で行きたいと思います。
 1回やってみてようやく「曲別HP探索2が始動したんだなぁ」という実感が湧いてきました。次回からはリクエストして頂いた曲を取り上げていきますが、今回のような不足成分の補填も数回に1回くらいの割合でやっていきたいと思います。


試聴は下のamazonのページで。













戻る





TOP > 曲別HP探索2 > 第1回