ATH-A500

音質
 ややドンシャリだが、かなりフラット。低域は全体的にやや強めだが、厚みも量もそれほどでもない。高域はややシャリつくものの、基本的には細くて硬い、audio-technicaらしい金属的な鳴りが楽しめる。中域もしっかり聴こえる。
 分解能、音場感、原音忠実性すべて価格以上のものを持っているが、耳の近くで音が鳴っているのが気になる人もいるかもしれない。エッジがきつめでやや聴き疲れするが、許容範囲だろう。
 明瞭さ、音の鮮やかさはなかなか良い。厚みや温かみには欠ける。ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。冷静な鳴らし方で、ノリの良さも繊細さも突出してはいないが、バランスは良い。かなりシャープで硬い音のせいか、低域が出る割には冷たい印象を受ける。響きは適度で、基本的にはこもり感もそれほど感じないが、低域の強いソースではかなり気になる。
 弦楽器は細く澄んだ表現で、柔らかさや心地よさにはやや欠ける。金管楽器はなかなか鮮やか。打ち込み系の音とは相性が良いし、特に低域が不足に感じたりもしない。ポップスメインで聴く人には、かなりコストパフォーマンスが良いだろう。
 ただし、上位機種と比べると粗がある感は否めない。

装着感
 良好。側圧は普通、ウイングサポートで頭のセンターを押さえない構造になっているため、ソフトな着け心地になっている。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズ、上下左右に角度調節ができる。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。
 装着感には影響はないが、ハウジングが大きいため少し視界に入る。ATH-A900と比べると軽いため、側圧やウイングサポートの圧力が弱めになっているようで、全体的にソフトでしかもずれにくい。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 作りは価格のわりに良い。デザインはかなり地味だが、ハウジングの大きさを除けば悪くない。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、ATH-A900と比べると安っぽい材質だが布巻きで扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周114mm×114mm、内周58mm×48mm、深さ16mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第13回 1万円以下の密閉型ヘッドホン比較』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-A900
全体的に非常に近い音。どちらもかなりフラットだが、ATH-A500の方がややドンシャリ。audio-technica特有のスカスカした感じはATH-A900の方が酷い。分解能はATH-A900の方がやや上、音場感はほぼ互角。原音忠実性やエッジのきつさ、明瞭さはほぼ互角。音の鮮やかさや厚みはATH-A500の方が若干上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。ATH-A500の方がノリが良く、ATH-A900の方が繊細。響きはどちらも適度だが、広がりはATH-A900の方があり、こもり感も少ない。弦楽器はほぼ互角だが、低域の滑らかな感触など、ATH-A900の方が若干良いように感じる。、金管楽器は粗があるもののATH-A500の方が瑞々しい。ただし、上品さを求めるなら逆の評価になる。打ち込み系の音の表現はどちらもうまく、ほぼ互角だが、低音が出ること、ノリが良いこと、音の粗がマッチすること等からATH-A500の方が楽しめることは楽しめる。得意分野はどちらもポップス。どちらか片方持っていれば十分の機種。

CPH7000
ATH-A500はややドンシャリ、CPH7000はややかまぼこ。低域はATH-A500の方が量が多く、質的にもやや低めの音を鳴らす。中域はCPH7000の方が低域に邪魔されない上、やや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はATH-A500の方が細く高い音を鳴らす。分解能はATH-A500の方が上。音の分離はさほど差がないが、一つ一つの音の微細な描写はATH-A500の方がこなしてくれる。音場感はどちらも耳の近くで鳴らしている感じだが、どちらかと言えばATH-A500の方が広がりが感じられる。原音忠実性はほぼ互角。原音の粗や生っぽさはCPH7000の方がやや感じられるように思うが、中域がうわずって突き刺さってくる点はマイナス。ATH-A500の方がエッジがきつくやや聴き疲れしやすい。明瞭さはCPH7000の方が上、音の鮮やかさはATH-A500の方が上。厚みはCPH7000の方がやや上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-A500の方が感じられる。ATH-A500の方がノリが良くかつ繊細。響きはATH-A500の方が豊か。弦楽器はATH-A500の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はATH-A500の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもうまいが、低域が出る分ATH-A500の方が良いように感じる。使い分けるなら、基本的にはATH-A500、ATH-A500では低域の量が多すぎたり聴き疲れする場合にはCPH7000。

HD215
ATH-A500はややドンシャリ、HD215はかなりフラット。低域はATH-A500の方がかなり出る。中域はどちらもしっかり聴こえてくるが、HD215の方が癖のない感じ。高域はATH-A500の方が細く硬く金属的な鳴り方をする。分解能はATH-A500の方が上、音場感はHD215の方が上、原音忠実性はほぼ互角。ATH-A500の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはほぼ互角、音の鮮やかさはATH-A500の方が上。厚みはATH-A500の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHD215の方がやや上。ATH-A500の方がノリが良くしかも繊細。響きはどちらも適度だが、低域が出る分ATH-A500の方がこもり感が気になる。弦楽器はATH-A500の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はATH-A500の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもうまいが、低域が出る分ATH-A500の方がやや相性が良いように感じる。得意分野はどちらもポップス。使い分けるなら、ジャンルよりも温かみやヴォーカルの艶っぽさが欲しいときはHD215、それ以外はATH-A500という使い分けが良さそう。

HP830
どちらもややドンシャリだが、HP830の方がフラット。低域はほぼ互角、超低域及び高域〜超高域はATH-A500の方が若干強い。分解能、音場感ともにATH-A500の方がやや良い。どちらも価格のわりにはかなり原音忠実だが、絶対的な評価ではやはりATH-A500の方が上。ただし、audio-technica特有の作ったような高域の癖があるので、それが気になる人も多いだろう。HP830の方がエッジがきつくなく聴きやすい。明瞭さや音の鮮やかさはATH-A500の方がやや上。厚みはHP830の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHP830の方がやや上。どちらも基本的にノリが良いが、それでいて繊細さも持ち合わせている。響きはどちらも適度で好印象だが、こもり感が気になる。特にATH-A500は低域の強いソースでは酷い。どちらも弦楽器、金管楽器ともになかなか魅力的で、価格を考えれば素晴らしいと言って良いレベル。ただ、弦楽器はどちらも違った癖があるので好みが分かれるところだろう。HP830の方が生っぽい粗があり、厚みのある音だが、繊細さや心地よさに欠ける。金管楽器はATH-A500の方がやや高い音で鮮やかだが、やや不自然で粗が目立つ部分がある。打ち込み系の音の表現はどちらも非常にうまい。刺激が欲しいならATH-A500、ノリよく気持ちよく聴きたいならHP830。得意分野はどちらもポップス。どちらもかなりオールマイティ。使い分けるなら、ジャンルよりも求める刺激の度合で分けるべきという気がする。

HP-RX900
ATH-A500はややドンシャリ、HP-RX900はかなりフラット。低域はATH-A500の方が重心が低い。中低域はHP-RX900の方がしっかり出る。HP-RX900の方がローエンドまで平らで、柔らかく曇り気味な低域。中域はATH-A500の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はATH-A500の方が高く鋭い音を鳴らす。分解能はATH-A500の方がやや上。音場感はHP-RX900の方が立体感があって良い。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはHP-RX900の方が良いが、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはATH-A500の方がやや上。エッジはATH-A500の方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-A500の方が上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさは基本的にはHP-RX900の方が感じられるが、HP-RX900のヴォーカルは太い芯が通っていて良くないと感じることがあり、そういうソースではATH-A500の方が良い。ATH-A500の方が明るく元気。HP-RX900の方がおとなしくて地味。響きはHP-RX900の方がやや豊かで、響き方がどこか不自然。弦楽器はHP-RX900の方が心地よく聴けて良い。金管楽器はATH-A500の方が明るく鮮やか。HP-RX900はATH-A500と比べると音が低く地味。打ち込み系の音の表現はATH-A500の方がうまい。音の質感の相性や明るい鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、明るい鳴らし方を求めるならATH-A500、おとなしい鳴らし方を求めるならHP-RX900。

SE-M870
どちらもややドンシャリだが、SE-M870の方がやや低音よりではあるもののフラット。ATH-A500はaudio-technica独特の高域の癖があるが、SE-M870は癖がなくやや大人しめ。高域の癖を除くとかなり近い音量バランスになる。分解能及び音場感はATH-A500の方が若干良いが、どちらも耳の近くで鳴っているのが気になる人も多そうだ。原音忠実性は若干ATH-A500の方がある。SE-M870の方がエッジがきつくなく、かなり聴きやすい。明瞭さや音の鮮やかさはATH-A500の方がやや上だが、音の厚みはSE-M870の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSE-M870の方がかなり上。ノリの良さならSE-M870、繊細さならATH-A500。どちらも響きは適度だが、密閉型特有のこもり感はある。どちらも弦楽器、金管楽器ともになかなか魅力的。弦楽器はSE-M870の方が伸びが良く心地よい。金管楽器はATH-A500の方が若干高い音で鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもかなり得意だが、ATH-A500だとソースによってはエッジがきつすぎでしかも音の厚みが足りないように感じることがある。SE-M870はそういったこととは無縁。得意分野はどちらもポップス。使い分けるなら金管楽器メインならATH-A500、それ以外はSE-M870だと感じたが、どちらもなんでもそこそこ鳴らしてくれる。総合的に見てどちらも非常にコストパフォーマンスの良い機種。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索2
第13回 トッカータとフーガニ短調/バッハ





※生産終了。後継機はATH-A500X。イヤーパッドの材質が変更。音質も異なる。











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 5Hz〜30kHz 100dB 64Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
290g 53mm 3m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 4 4 4 4 1 均(高、低) 7900円

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公開日:2005.2.28

※生産終了。後継機はATH-A500X。