AH-C700

音質
 低音よりのドンシャリ。所謂重低音が非常に豊か。柔らかい低域で、締まりとは無縁。中域は、低域が豊かな割には聴こえてくるが、それでも基本的には低域の量に押される。中高域から高域はやや細めではあるものの上質でかつしっかり高い音を鳴らしてくれる。ただし、低域があまりに強いため、相対的にあまり目立たない。
 分解能はなかなか良い。低域が強すぎるためにその良さが損なわれている部分もあるものの、それでもやはり良さは感じられる。音場感はなかなか立体的で広がりがある。特別良いとは感じないが、それなりのものは持っている。原音忠実性は、低域が過剰な点を除けばかなり良い。ただ、あまり原音の粗が感じられる傾向ではなく、癖のない音といった良さ。エッジはきつくないのだが、ソースによってはこもり感のせいで聴き疲れする。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みは普通からやや厚め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良い。これは低域が豊かなことによるものだけでなく、しっかりした能力を持っている。低域が支配的なため大抵のソースではノリが良いように感じてしまいがちだが、音そのものは繊細で落ち着いた鳴らし方。響きは豊かで、こもり感が気になる。この点は、特に低域が強いソースでは顕著。
 弦楽器は繊細かつ心地よい。金管楽器は上品で控え目なので、明るく楽しみたい人にはあまり合わないだろう。打ち込み系の音の表現はそれなり。低域の量やあまり余計な飾りのない質感は合うのだが、低域の質が合わないし切れやスピード感も不満。
 価格分の価値があるかどうかは微妙だし、低域が多すぎでバランスも悪いが、長所もたくさん持っている機種。
 カナル型全般に言えることではあるが、この機種は特に装着状態によって音が変わりやすい。浅く装着すると低域の量が多く、深く装着すると少ない(ただし、ぐらつくほど極端に浅く装着すると当然低域は少なくなる)。上記の内容は一般的な装着方法と思われる浅く装着したときのもの。

装着感
 良好。カナル型だが、イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプではないので装着しやすいし、耳の穴が痛くなりにくい。ただ、少し本体が大きく重いため気になる人もいるかもしれない。特にずれやすいわけではないが、少しずれただけでも音がかなり変わるため注意が必要。重い、コードが顔に当たりやすい等の不満はない。
 イヤーピースの材質はシリコン。3サイズ付属している。

その他
 遮音性は良好だがカナル型にしては良くない。音漏れ防止は普通(カナル型にしては悪い)。カナル型だが背面が開いているため、密閉型とは考えない方が良いだろう。
 作り、デザインはなかなか良い。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3.5mm・厚さ約1.5mm、やや硬いがそれほど扱いづらくはない。

付属品
イヤーピース3種類



参考
不定期コラム『第39回 価格別favorite headphones インナーイヤー版』

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-C260
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はAH-C700の方が若干量が多い。AH-C260の方が若干弾力のある質。重心はAH-C260の方が若干低い。中低域はAH-C700の方がしっかり出る。中域は基本的にはAH-C260の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、ソースによってはAH-C700の方が張り出すような感じで目立つことがある。高域はAH-C700の方が若干量が多い。AH-C260の方がやや線の細い質。分解能はほぼ同レベル。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大差ない。音場感は、AH-C700の方がやや広い、AH-C260の方がやや見晴らしが良い。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはAH-C260の方が若干上。原音の粗が感じられる度合いは大差ないが、生っぽさはAH-C700の方が若干感じられる。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、AH-C700の方が音の圧力やこもり感で若干聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さだが、AH-C260の方が細く刺さる傾向、AH-C700の方が粗っぽく痛い傾向。明瞭さ、音の鮮やかさはAH-C260の方がやや上。厚みはAH-C700の方がややある。温かみはAH-C700の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。AH-C260の方が線の細い女性ヴォーカルに合う、AH-C700の方がややスモーキー。AH-C260の方がやや上品で繊細、AH-C700の方がやや濃密で迫力がある。響きはAH-C700の方が若干豊かでこもり感が気になる。弦楽器は、AH-C260の方がやや繊細、AH-C700の方がやや心地よい。ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならAH-C260の方が良いが、チェロやコントラバスを濃厚に鳴らして欲しいならAH-C700の方が良い。金管楽器はAH-C700の方が若干太く力強い。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はほぼ同レベル。切れはAH-C260の方が若干上、厚みはAH-C700の方が若干上。使い分けるなら、明瞭さや繊細さを求めるならAH-C260、濃密さや迫力を求めるならAH-C700。

ATH-CK7
AH-C700は低音よりのドンシャリ、ATH-CK7はややドンシャリ。低域はAH-C700の方が柔らかくぼやけていて量が多い。中域はどちらも低域の量に押される感じはあるが、低域の量の割にはどちらもそれなりに聴こえてくる。ただ、低域の量が少なく中域がややうわずっているATH-CK7の方がはっきり聴こえてくる感はある。中高域から高域は、音の高さはそれほど差はないが、ATH-CK7の方が粗がある。分解能はほぼ互角だが、どちらかと言えばAH-C700の方が上。音場感も大きな差はないが、AH-C700の方がやや立体的。原音忠実性は低域の量が過剰な点を除けばAH-C700の方が良い。ATH-CK7の方が作ったような音。ATH-CK7の方がエッジがきついが、AH-C700は低音が出すぎでこもりのせいで疲れるため、どちらが聴き疲れするかはソースや聴く人によって違ってくるだろう。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-CK7の方がやや上。厚みはATH-CK7の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはAH-C700の方がやや上。どちらもノリが良いように感じるが、AH-C700は低音で押している感じで鳴らし方そのものは意外と上品であるのに対して、ATH-CK7は鳴らし方そのものが元気な感じ。響きはAH-C700の方が豊かでこもり感が気になる。その他気になる点としては、ATH-CK7の方がドラムや破裂音などが前に出てくる感じで目立つというのが挙げられる。弦楽器はAH-C700の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はどちらもなかなか鮮やかで楽しめるが、ATH-CK7の方が派手で、分かりやすい魅力がある。打ち込み系の音の表現はATH-CK7の方がうまい。音の締まりや低域の質で勝っている。使い分けるなら、低域が出すぎでも良いから作ったような音や硬い音を避けたいならAH-C700、そうでないならATH-CK7。

DTX50
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はDTX50の方が低い音で、ぼやけていて量が多い。AH-C700の方がまだ締まりや制動の効いた低域と言えるだろう。DTX50は特にベースが目立つのが印象的。中域はAH-C700の方が低域に邪魔されずやや高い音ではっきり聴こえて来る。高域はAH-C700の方が高い音で金属的。この2機種を比べた場合、AH-C700の方が高音よりと言えるだろう。DTX50は低域が強いソースでは明らかにはバランスが破綻するのに対して、AH-C700はそれなりにバランスが保たれる。分解能はAH-C700の方が上。音の分離に差がある。音場感はどちらかと言えばAH-C700の方が明確。原音忠実性はAH-C700の方が上。AH-C700の方が周波数特性的にの癖がないだけでなく、原音の生っぽさも感じられる。AH-C700の方がややエッジがきついが、DTX50の方が低域が出すぎで疲れるため、総合的な聴き疲れはソースによって変わってくる。明瞭さ、音の鮮やかさはAH-C700の方が上。厚みはほぼ同レベル。温かみはDTX50の方が感じられる。柔らかい音で低域の量も多いため。ヴォーカルの艶っぽさはAH-C700の方が感じられる。どちらもノリが良い傾向。響きは、低域はDTX50の方が豊か、高域はAH-C700の方が豊か。DTX50の方がこもりが気になる。弦楽器はAH-C700の方が繊細かつ生っぽさが感じられる表現で良い。金管楽器はAH-C700の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はAH-C700の方がうまい。音の質感がAH-C700の方が合うし、中高域の明るさでも差が出る。使い分けるなら、ベース重視等の理由で低域の質がはまる場合のみDTX50、それ以外はAH-C700。

E4c
AH-C700は低音よりのドンシャリ、E4cはフラット。低域はAH-C700が柔らかく量も非常に多いのに対して、E4cは締まっていて量は適度。中域はE4cの方がやや高い音で低域に邪魔されずに非常にはっきり聴こえてくる。中高域から高域はAH-C700の方が細く高い音。E4cの方が太く明るく元気で目立つ。分解能はE4cの方が上。微細な描写はAH-C700も良いのだが、分離ではE4cの方がかなり上。音場感はE4cの方がやや明確に感じるが、それほど大きな差はない。原音忠実性は低域の量の多さを除けばAH-C700の方が良い。E4cは明るすぎて、原音の生っぽさ等があまり感じられない。E4cの方がエッジがきついが、AH-C700は低域の量が多すぎてこもりで聴き疲れするため、聴き疲れのしやすさはソースや聴く人によって違ってきそう。明瞭さ、音の鮮やかさはE4cの方がかなり上。厚みはE4cの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはAH-C700の方が感じられる。どちらもノリが良い傾向だが、AH-C700は低域の量で押す感じなのに対して、E4cは音そのものが元気な鳴らし方。響きはAH-C700の方が豊かでこもり感が気になる。弦楽器はAH-C700の方が心地よい。金管楽器はE4cの方が明るく鮮やか。打ち込み系の音の表現はE4cの方がうまい。切れやスピード感が段違い。使い分けるなら、低域が多すぎても良いから心地よさを求めるならAH-C700、それ以外はE4c。

HP-FX77
どちらも低音よりのドンシャリ。低域は、柔らかくぼやけていて量がかなり多い点は似ているが、HP-FX77の方がやや量が多い。中域はAH-C700の方がかなりはっきり聴こえてくる。これは低域の量の問題よりも、基本的な能力の差が大きいだろう。高域はAH-C700の方がやや控え目で粗のない鳴らし方。分解能及び音場感はAH-C700の方が上。音の分離にかなり差がある。音場感はAH-C700の方が立体的で明確。原音忠実性はどちらも良いとは言えないが、どちらかと言えばAH-C700の方が上。HP-FX77の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さはAH-C700の方が上。音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはAH-C700の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリが良いが、AH-C700の方が厚みや圧力で勝っているため総合的に見てノリの良さで勝っているし、粗の少ないしっかりした鳴らし方という点で繊細でもある。響きはどちらも豊かでほぼ同等レベル。弦楽器はAH-C700の方が粗がなく心地よい。金管楽器はHP-FX77の方が派手だが、AH-C700の方がしっかり芯の通った丁寧な鳴らし方。打ち込み系の音の表現はAH-C700の方がうまい。使い分けるなら、基本的にはAH-C700、粗があっても良いから派手さを求めるならHP-FX77。

IE-20 XB
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらも量が多く、重低音がしっかり出る点等似ているが、AH-C700の方がやや重心が高め。中域はAH-C700の方が高い音ではっきり聴こえてくる。高域はどちらも質・量ともに十分出るが、AH-C700の方がやや細い感じ。分解能はほぼ互角。音場感はIE-20 XBの方がやや広いが、大きな差はない。原音忠実性はどちらも低音が出すぎでいまいちに感じるが、その点を除けば悪くないところも似ている。AH-C700の方がやや硬めで原音の粗や生っぽさが出る感じ。IE-20 XBの方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さはAH-C700の方が上、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはIE-20 XBの方がやや良い。どちらも圧力のある鳴らし方でノリが良い。響きはどちらも豊かでほぼ同等レベル。弦楽器はIE-20 XBの方が滑らかで心地よい反面、AH-C700の方が澄んでいて生っぽい音。金管楽器はどちらも高く鮮やかで甲乙つけがたいが、同じというわけではなく、IE-20 XBの方が太くて録音の粗が気になりにくい感じ。打ち込み系の音の表現は好みの差。どちらも低域の量や音の圧力が十分あり楽しく聴ける点は似ている。使い分けることもできるだろうが、基本的にどちらも重低音を非常にしっかり鳴らしてくれる機種ということで、どちらか片方持っているなら違う機種をすすめたい。

MDR-EX90SL
AH-C700は低音よりのドンシャリ、MDR-EX90SLはややドンシャリ。低域はAH-C700の方がやや低く量も多い。中域はMDR-EX90SLの方が癖がなくはっきり聴こえてくる。AH-C700は中域から中高域にかけて潰れてキンキンと痛いような傾向がある。高域はMDR-EX90SLの方が細く尖っている。分解能はMDR-EX90SLの方がやや上。音場感はMDR-EX90SLの方が広く明確。原音忠実性はMDR-EX90SLの方がかなり上。AH-C700の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはMDR-EX90SLの方が上。厚みはAH-C700の方がある。温かみはほぼ互角、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-EX90SLの方が上。どちらもノリが良い傾向だが、ノリの良さならAH-C700、繊細さならMDR-EX90SLといった感じ。響きはMDR-EX90SLの方が豊か。自然に音が広がって消えていくのが分かる。こもり感はAH-C700の方が気になる。弦楽器はMDR-EX90SLの方が繊細。金管楽器はどちらもそれなりに鳴らしてくれるが、MDR-EX90SLの方が高い音でしかも自然な感じ。打ち込み系の音の表現はどちらも低域の質感や切れに不満がある点は似ている。低域の量や音の圧力が欲しいならAH-C700、バランスの良さを求めるならMDR-EX90SLか。使い分けるなら、基本的にはMDR-EX90SLで、余程低域の量や音の厚みが欲しいときだけAH-C700。

v-moda vibe
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらもかなり量が多いが、AH-C700の方が厚みがありしっかり低い音を鳴らす。v-moda vibeは量だけが多くぼやけて曇っているような感じ。中域はAH-C700の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるし、変な癖もない。高域はどちらもやや金属的な点は似ているが、AH-C700の方が明るくて目立つ。分解能はAH-C700の方が上。音の分離に差がある。音場感はAH-C700の方が二次元的にも三次元的にも広くて明確。原音忠実性はAH-C700の方が上。v-moda vibeは原音の粗や生っぽさがほとんど感じられない。AH-C700の方が若干エッジがきついが、v-moda vibeはこもりや音の圧力で疲れるため、総合的な聴き疲れはv-moda vibeの方が酷いように感じる。明瞭さ、音の鮮やかさ、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてAH-C700の方が上。厚みはほぼ同レベル。AH-C700の方がノリが良くかつ繊細。響きはv-moda vibeの方が豊かでこもり感が気になる。弦楽器はAH-C700の方が繊細かつ心地よいし、生楽器らしさも感じられる。金管楽器はAH-C700の方が明るく鮮やか。打ち込み系の音の表現はAH-C700の方がうまい。音の質感や切れで勝っている。ほとんど何を聴くにしてもAH-C700の方が良いだろう。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索2
第13回 トッカータとフーガニ短調/バッハ


 


※生産終了。後継機はAH-C710。
 










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック - 12Hz〜24kHz 104dB 16Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
6.6g - 1.2m 両出し(Y型) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 4 4 3 4 5 低(高) 12000円

※生産終了。後継機はAH-C710。

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公開日:2007.1.19