第39回 Bright Moments/John Swana「Bright Moments」より

 John Swanaはアメリカのトランペット奏者です。ジャンルとしてはジャズで、その中でも比較的最近のストレート・アヘッドなジャズになります。
 今回取り上げるのは2008年発表のアルバム「Bright Moments」の6曲目です。かなりテンポが速く、あまり主旋律らしい旋律のない曲です。楽器としてはトランペットの他にテナーサックス、ピアノ、ウッドベース、ドラムスが入ってきます。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「とにかく熱く楽しく聴きたいです」とのことです。テンポの速い曲ですし、それを熱く聴くとなるとあまり低音よりで柔らかい音を鳴らすヘッドホンは合わないと思いますが、あとは実際に聴いてみてフィーリングで選ぼうと思います。


・1台目 HPS5000(BEHRINGER)
 スピード感が素晴らしかったので選びました。今回の曲はかなりテンポが速いですが、まったく遅れずに鳴らしてくれます。各楽器の音色もあまり癖がなく、それほど違和感なく聴くことができます。ただ、今回の曲はウッドベースが弱めの録音になっているのか少し物足りない感じはしますし、高域ももう少し出るともっと熱く楽しく聴けるのではないかと思います。
 他にはATH-WS70、DT231PRO、HX-5000、SHP2500、PortaPro等で聴いてみました。ATH-WS70は各楽器がくっきり分離する上にそれぞれの音色にやや癖があるせいか一体感に欠ける印象です。特にウッドベースの癖が気になります。DT231PROはトランペットの空気感が魅力的ですが、熱く楽しくと言うよりもしっとり浸りたいときに向いているような印象です。HX-5000とSHP2500は悪くないのですが、DT231PROのような楽器の魅力はありませんし、HPS5000と比べるとスピード感が足りません。PortaProはウッドベースが質・量ともに魅力ですが、HPS5000と比べるとワンテンポ遅れているような鳴らし方です。
 不満点は、低域・高域ともにもう少し主張して欲しい点です。

・2台目 RP-21(Equation Audio)
 かなり迷いましたが、最終的にはこれになりました。比較的1台目に近い傾向で、素直にランクアップできるような印象です。特に各楽器の音色・質感の自然さで勝っています。その代わり1台目の不満点改善という意味ではあまり適切ではありません。とは言え、1台目の不満点を改善できるもので総合的に見てより良い物が見当たりませんでした。
 他にはDR150、EX-29、HA-MX10-B、K181DJ、SE-A1000等で聴いてみました。DR150は1台目の不満点は多少改善されますし、刺激的である意味かなり熱いように感じられるのですが、スピード感はそれほどでもないのと高域が耳障りに感じられたので外しました。EX-29はスピード感は良いのですが、1台目の不満点は改善されません。HA-MX10-Bは音色が明るいためある意味楽しい傾向ですが、低域が足りませんし、熱いかと言われると微妙なところです。K181DJは最初に書いた条件と1台目の不満点改善を考えるなら最適なようにも感じられますが、どの楽器も音色の癖が気になったので外しました。SE-A1000は1台目の不満点は改善されますが、スピード感が足りませんし、音色の癖も気になります。
 不満点は、もう少し刺激が欲しい点です。

・3台目 DT770PRO(beyerdynamic)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはしっかり改善されます。特に高域はかなり刺激的ですが、あまり不快な感じではなく、むしろリアルな質感であるように感じられます。この質感のリアルさというのはトランペットやウッドベースについても同じようなことが言える印象で、音色には多少癖があるもののそれを苦にしないような魅力があります。スピード感や一体感については2台目より若干劣るかもしれませんが、臨場感や熱さでは負けていません(これは感覚的なものなので当然個人差はあると思われますが)。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 RS-1(GRADO)
 色々聴いてみた結果これになりました。2台目よりは3台目に近い傾向ですが、より明るく爽やかです。重心が上がっているので深みでは劣りますが、軽快さを求めるなら3台目より良いと思います。音色に多少癖があるものの質感のリアルさでそれを感じさせないようなところは少し似ているように思います。
 他にはAH-D5000、DT990PRO、HD25-1、PROline750等で聴いてみました。AH-D5000は悪くないのですが、スピード感や一体感がもう少し欲しい印象ですし、熱く楽しく聴くには少し端正すぎるような気もします。DT990PROはDT770PROと迷いましたが、DT770PROの方が若干スピード感があるように感じられたのでそちらにしました。HD25-1は比較的2台目に近い傾向でスピード感や一体感が魅力なのですが、今回聴いてみた印象としてはスピード感や一体感を若干犠牲にしても3台目や4台目のような刺激や音色の明るさがあった方が良いように思います。PROline750は音色の癖が気になりますし、スピード感や一体感も足りません。

・5台目 HiDefJax AcousticSteel(ATOMIC FLOYD)
 ここまでスピード感、一体感、各楽器の音色・質感の自然さ、刺激といったキーワードが出てきましたが、HiDefJax AcousticSteelはそれらすべてについてある程度のレベルに達していると感じたので選びました。色々と聴いてみたのですが、m5はスピード感がやや不足な上に各楽器の音色・質感が不自然、 Turbine Pro Copperはスピード感は良いものの一体感に欠ける、Westone3は各楽器に実体感や力感が足りない等の不満がありました。とは言え、深く考えずに感覚だけで聴くならm5やTurbine Pro Copperもそれはそれで魅力的だと思います。
 他にはHP-FX500とBI-RACKEARが良かったです。どちらも先ほどのキーワードすべてについて大きな不満は出ませんが、中でもスピード感と刺激についてはなかなかのものです。


 今回は探索方針が感覚的なものだったので、人によっては同意できない部分も多々あるかと思います。それでも個々のキーワードについては参考になる部分もあると思いますので、選ばれたヘッドホンだけでなく本文まで読んで自分に合ったヘッドホンを探してみてください。
 ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。一体感や力感に秀でています。次点はHD-1L Limited Edition(RC1)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。













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