第21回 A Moment So Close/Bela Fleck & The Flecktones「Live at the Quick」より

 Bela Fleck & The Flecktonesはバンジョ―奏者Bela Fleck率いるジャム・バンド(即興演奏を重視するバンド)です。主要メンバーはバンジョーに加えてベース、パーカッション、サックスですが、それに多数のゲストが加わることが多いようです。
 今回取り上げるのは2002年発表のライブアルバム「Live at the Quick」の11曲目です。楽器としては、paradise guitar(どういう楽器なのか分かりませんが、普通のギターと比べるとエッジが丸く柔らかい音です)、ベース、synth-axe drumitar(シンセ、ドラム、ギターを融合させたような独自の楽器)、テナーサックス、タブラ(太鼓の一種)、バスーン、オーボエ、キーボードに加えてヴォーカルとホーミーが加わります。編成を見ても分かる通りなかなか個性的な曲です。雰囲気としてはオリエンタルと言うのが割と近いと思います。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていませんでしたが、リクエストした理由はホーミーにあるということだったのでまずはホーミーをリアルに鳴らしてくれることを重視したいと思います。あとは各楽器がそれぞれきちんと聴き取れるもので、独特の雰囲気を壊さないものが望ましいです。


・1台目 SHP2500(PHILIPS)
 ホーミーの喉からひねり出す感じをしっかり出してくれる点が良かったので選びました。温かみがあって今回の曲の雰囲気を壊さない点、音場の広さや抜けの良さがそこそこあってライブ感を出してくれる点も好印象です。
 他にはDT231PRO、HP-RX900、MDR-XB700、SE-M870、UR/40等で聴いてみました。DT231PROはなかなか良かったのですが、SHP2500と比べると音場が狭くライブ感が出ません。HP-RX900とMDR-XB700はホーミーの喉からひねり出す感じを出してくれませんし、濁った音も綺麗にしてしまうような感じで雰囲気があまり出ません。SE-M870はなかなか良かったのですが、SHP2500と比べると音場の広さや雰囲気という点でやや見劣りします。UR/40はこれはこれで魅力的だと思いましたが、あっさりしているせいか今回の曲の雰囲気を出すにはSHP2500の方が良いと感じました。
 不満点は、やや聴き疲れしやすい点、もう少し音場が広く個々の楽器が聴き取りやすいとなお良いと思われる点です。

・2台目 RP-21(Equation Audio)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。聴き疲れと個々の楽器の聴き取りやすさがある程度改善されます。ホーミーの喉からひねり出す感じもしっかり出してくれます。ただし、雰囲気は1台目ほどしっかりとしたものは感じられない印象です。
 他にはDR150、DTX900、SRH840、SW-HP10等で聴いてみました。DR150はなかなか良いのですが、1台目の不満点である聴き疲れが改善されないので外しました。DTX900は最後までRP-21と迷いましたが、RP-21より1台目に似ていて雰囲気を出してくれるものの、個々の楽器の聴き取りやすさという点で見劣りしたので外しました。SRH840とSW-HP10は聴き疲れや個々の楽器の聴き取りやすさは改善されますが、どちらかと言うとHP-RX900やMDR-XB700に近く、濁った音も綺麗にしてしまうような感じで雰囲気があまり出ません。
 不満点は、もう少し音場が広く今回の曲の雰囲気を出してくれたらなお良いと思われる点です。

・3台目 DT770PRO(beyerdynamic)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。良さそうと思ってこれを聴いた後に他の機種も色々聴いてみて、改めて2台目の不満点を改善するのにこれ以上の機種はちょっとないのではないかと思いました。
 どの楽器の表現も悪くないですが、特にヴォーカルは擦れをしっかり出してくれてリアルです。1台目と比べると音場が広く個々の楽器が聴き取りやすいですし、ホーミーの喉からひねり出す感じや雰囲気も見劣りしません。2台目と比べると個々の楽器の聴き取りやすさは同レベルですが、音場が広く雰囲気を出してくれます。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 PROline750(ULTRASONE)
 ホーミーを野太く鳴らしてくれる点が良かったので選びました。音場の広さや雰囲気といった点もなかなかのものです。ただ、音色にはかなり癖があるので、その点を重視するなら3台目の方が良いと思います。
 他にはDT990PRO、HD650、PRO900、RS-1等で聴いてみました。DT990PROはDT770PROと迷いましたが、DT770PROの方が低域の締まりや切れが良い点が今回の曲に合うように感じられたのでそちらにしました。また、DT770PROはDT990PROと比べると音色が不自然に感じられることも多いですが、今回の曲ではあまり気になりませんでした。HD650はそれほど悪くないのですが、今回の曲ではもう少し切れや高域の刺激が欲しい印象です。PRO900はPROline750と迷いましたが、PROline750の方が低域の量が適度で、濁りや雰囲気を出してくれるように感じられたのでそちらにしました。RS-1はなかなか良いのですが、今回はここまで低域がしっかり出る機種を聴いてきたこともあってか低域不足で軽すぎるように感じました。

・5台目 HP-FX500(Victor)
 ホーミーの喉からひねり出す感じをしっかり出してくれる点が良かったので選びました。雰囲気も出してくれますし、個々の楽器も聴き取りやすいです。特に不満点は見当たりません。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteel、IE-20 XB、m5どれもホーミーの喉からひねり出す感じをHP-FX500ほど出してくれませんでした。音色の自然さ、雰囲気、個々の楽器の聴き取りやすさといった点について総合的に見てもHP-FX500だと思います。
 他にはIE-1とHP-FXC50が良かったです。ホーミーの喉からひねり出す感じをしっかり出してくれます。ただし、雰囲気や各楽器の表現はHP-FX500の方がやや良い印象です。


 今回選んだ機種はどれもそれぞれの良さがあると思いますが、改めて振り返ると比較的聴き疲れしやすい機種が並んでいる印象です。これは、ホーミーのリアルさを重視したこと、今回の曲があまり聴き疲れしやすい感じではなかったことが理由だと思います。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。各楽器をきちんと鳴らしてくれますし、雰囲気も出してくれます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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