第19回 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/ベートーヴェン

 今回取り上げるのはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。指揮はシュタイン、演奏はグルダ(ピアノ)とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で、1970年の録音です。
 曲別HP探索はかなりの曲数をやってきましたが、意外なことに(?)ベートーヴェンは初めてです。日本でも広く知られている作曲家なので紹介の必要はないでしょう。ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は協奏曲としては編成が大きく演奏時間も長めで、その名の通り華やかな曲です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「重視する点はオーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さの両立です。現状ではHD650 & PERIDOTで聴いてますが、イマイチ両立できていないように感じます。ダイナミックさは十分すぎるぐらいあるのですが・・」とのことです。大雑把な話をすると、ダイナミックさは低域の量感があった方が有利ですし、ピアノの明瞭さは低域の量が少ない方が有利ですが、それだけで決まるものでもないので、聴きながらより良いものを探して行きたいと思います。また、リクエスト文から察するとHD650と比べてダイナミックさでは劣っていてもピアノが明瞭なものをお望みのようなので、そういう方向で探索していきたいと思います。


・1台目 SHP8900(PHILIPS)
 HD650の不満点改善という視点で見ると最も適切だと感じたので選びました。HD650と比べてピアノの輪郭が明確で若干明るい音色であるため、ピアノがくっきりはっきり聴こえてきます。HD650のことは抜きにしてオーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さの両立だけを考えてもなかなか良いと思います。今回の曲を聴くには音色の自然さや音場の広さも大事になってきますが、SHP8900はそういった点でもかなり高いレベルです。
 他にはATH-A500、HD215、HP-RX900、SE-M870等で聴いてみました。ATH-A500とHD215はピアノの明瞭さという点では良いのですが、SHP8900と比べて各楽器の音色が不自然でまとまりにも欠ける点が気になるので外しました。HP-RX900はピアノ単品の明瞭さは悪くないのですが、全体としては曇っていて明瞭さに欠ける点が気になります。SE-M870はピアノの明瞭さはそれほど良くありませんし、音場が狭いせいでオーケストラだとスケールが小さく迫力に欠ける面があります。
 不満点は特にありませんが、オーケストラのダイナミックさ、ピアノの明瞭さ、音色の自然さ、音場の広さといった点についてより高いレベルで満足してくれるヘッドホンがあれば良いとは思います。

・2台目 RP-21(Equation Audio)
 総合的に見て最も良いと感じたので選びました。厚みやメリハリがあって力強い傾向です。1台目と比べると、オーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さでは若干勝っていて、音色の自然さはほぼ互角、音場の広さでは負けているといった感じです。
 他にはATH-AD700、DR150、SE-A1000、SRH840等で聴いてみました。ATH-AD700はそれなりに自然で聞き流す分には良いのですが、厚みが薄くメリハリに欠け、オーケストラのダイナミックさにしろピアノの明瞭さにしろそれほど良くない印象です。DR150は低域に基づく迫力があって全体として最もHD650に近く、そういう意味ではなかなか良いのですが、ピアノの明瞭さが改善できるかと言うと微妙なところです。SE-A1000は1台目と比較的近い音ですが、メリハリに欠けピアノの明瞭さでもやや劣ります。SRH840はRP-21と比べてややメリハリに欠けピアノの明瞭さでも劣ります。
 不満点は、1台目のときと同じで総合的にもう少し上を目指せないかというところです。

・3台目 HD800(SENNHEISER)
 総合的に見て最も良いと感じたので選びました。ピアノの明瞭さ、音色の自然さ、音場の広さについては非常に良いです。それに加えて今回の曲の華やかさを出してくれるのも大きな長所です。HD650と比べると低域に基づく迫力という点では劣りますが、切れやスピード感で勝るため、ダイナミックさという意味では人によって評価が変わってくるレベルだと思います。
 不満点は特にありませんが、理想を言えばHD800のピアノの明瞭さや華やかさを維持したまま厚みや低域の量をプラスして迫力を出せたら良いと思います。

・4台目 HP-DX1000(Victor)
 非常に悩みましたが、最終的にこれになりました。今回はピアノの明瞭さが最優先であること、そして今回の曲の華やかさをしっかり出してくれることが選んだ理由です。3台目と比べて音色が不自然なのは大きな欠点ですが、「ピアノの明瞭さや華やかさを維持したまま厚みや低域の量をプラスして迫力を出せたら良い」という意味ではかなり良いと思います。
 他にはAH-D5000、ATH-AD2000、DT880、DT990 Edition 2005、K701等で聴いてみました。AH-D5000は不満点の少ない鳴らし方なのですが、選んだ2台と比べるとピアノの明瞭さや音場の広さでやや見劣りします。ATH-AD2000はピアノの質感が不自然ですし、その欠点を補って余りあるような長所は見当たりませんでした。DT880は悪くないのですが、HD650の不満点改善という意味ではいまいちです。DT990 Edition 2005は最後までHP-DX1000と迷いましたが、ピアノの明瞭さと今回の曲の華やかさを出してくれるかという点で見劣りしたので外しました。K701はHD650の不満点をマイルドに改善できるのですが、他の機種と比べてオーケストラのダイナミックさで劣るのが難点です。

・5台目 HiDefJax AcousticSteel(ATOMIC FLOYD)
 総合的に見て最も良いと感じたので選びました。オーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さの両立という意味でなかなか良いのはもちろんのこと、音色の自然さ、音場の広さ、ピアノの質感のリアルさといった点でも優れています。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK7はピアノの明瞭さは良いものの音色の不自然さが気になる、IE-20 XBとm5はオーケストラのダイナミックさは良いもののHiDefJax AcousticSteelと比べるとピアノの明瞭さに欠ける、Image X10はオーケストラのダイナミックさもピアノの明瞭さもそれほど良くない等の不満がありました。
 他にはHP-FX500とKH-C311が良かったです。オーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さだけならHiDefJax AcousticSteelと比べても見劣りしません。


 今回はピアノの明瞭さを優先したのでこのような結果になりましたが、オーケストラのダイナミックさを優先するならDT990 Edition 2005やIE-20 XBも魅力的でした。単に低音の量が多いだけではなく、厚みや力感があります。
 ヘッドホンアンプは単品でオーケストラのダイナミックさとピアノの明瞭さの両立を目指すならHD-1L Limited Edition(RC1)が良いでしょうが、HD800やHP-DX1000を使うならAT-HA2002の方が濃密さをプラスしてくれる等の理由により相性が良いと思います。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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