iCans
音質
高音よりのドンシャリ。低域はかなり低い音で、量も十分出るが、それほど過剰ではない。中域はやや引っ込んでいるように感じる。高域は同社のPROlineシリーズ同様ざらつく感じで、鮮やかではあるが粗が感じられる。
分解能はそれなりだが、単純に価格のわりにどうかと考えるといまいちか。音場感は小型のわりにはかなり良い。原音忠実性は悪い。エッジがきつくやや聴き疲れする。
明瞭さ、音の鮮やかさはなかなか良い。厚みはかなりある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。非常にノリが良く、繊細さにはやや欠ける。響きは適度。
弦楽器はあまりうまくない。特にAKGのような上品な鳴らし方を好む人には合わないだろう。金管楽器はなかなか鮮やかだが、原音とは違う。打ち込み系の音との相性はあまり良いとは言えないが、それでもそこそこ聴かせてくれる。
コストパフォーマンスは良くないが、小型・軽量で持ち運びしやすいULTRASONEのPROlineシリーズの機種と考えれば納得がいく。
装着感
普通。側圧は普通。ヘッドバンドのクッションがないが、軽量のためそれほど頭頂部は痛くならないし、ずれやすいということもない。
イヤーパッドは耳のせサイズ、角度調節ができないため、人によっては合わない可能性が高い。材質はナイロンのような人工布で、柔らかくて肌触りは良いし、蒸れない。
ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。
その他
遮音性及び音漏れ防止は悪い。
作りは価格のわりに安っぽいが、デザインは良い。ただ、ハウジングのロゴは相変わらずで、どうかと感じる。平たく折りたためて、かなり小さくなるため、持ち運びには便利。
プラグは金メッキのL型ミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3mm・厚さ約1.5mm、特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周62mm×62mm。
付属品
収納ケース
参考
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』
周波数特性グラフ
比較メモ
HFI-15G
HFI-15Gは低音より、iCansは高音よりのドンシャリ。低域の量はHFI-15Gの方がかなり出るが、厚みはiCansの方がある。HFI-15Gは曇っているように感じる低域であるのに対して、iCansは曇りを感じない。どちらも中域はやや引っ込んでいるように感じる。高域はiCansの方がかなり強くしっかり聴こえてくる。分解能はほぼ同等、音場感はiCansの方が上。HFI-15Gは耳のすぐそばで音が鳴っているように感じるのに対して、iCansはそんなことはない。原音忠実性はHFI-15Gの方が上。低音よりではあるものの、おとなしく癖のない鳴らし方。iCansの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはiCansの方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHFI-15Gの方が上。iCansはかすれが気になる。iCansの方がかなりノリが良い。響きはHFI-15Gの方がやや豊か。切れはiCansの方が良い。弦楽器はHFI-15Gの方が癖がなく繊細で心地よい。金管楽器はiCansの方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもそれほど得意とは言えないが、どちらかと言えばiCansの方がうまい。得意分野はHFI-15Gがクラシック、iCansがポップス。使い分けるなら、ポップスやロックはiCans、クラシックやジャズはHFI-15G。この2機種は同一メーカーながらまったく違う鳴らし方で、HFI-15GがHFIシリーズらしい鳴らし方とするなら、iCansはPROlineシリーズらしい鳴らし方。
iGrado
iCansは高音よりのドンシャリ、iGradoは低音より。低域はiGradoの方が量が多いが、iCansの方がどっしりとした低い音を鳴らす。中域はiCansの方が低域の曇りに覆われず、やや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はiCansの方がかなり高い音で量も多い。分解能はiCansの方がやや上。音場感はどちらも小型の耳のせのため大差ないと言えば大差ないのだが、iCansの方が多少広いように感じる。原音忠実性はiGradoの方が上。iCansはとにかく作ったように不自然。iCansの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはiCansの方が上。厚みはどちらもしっかり感じられるが、iCansの方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはiGradoの方が上。どちらもノリが良いが、どちらかと言えばiGradoの方が粗がなく繊細。響きはiGradoの方が豊か。弦楽器はiGradoの方が心地よい。金管楽器はiCansの方がかなり高く鮮やかだが、癖のある音で受け入れられない人も多そう。打ち込み系の音の表現は、低域の質感や切れの無さが合わない部分があるものの、それなりに楽しく鳴らしてくれる点は似ている。得意分野はiCansはポップス、iGradoはロック。使い分けるなら、癖があっても良いから明るく楽しみたいならiCans、癖のなさや温かみを求めるならiGrado。
MUSIC SERIES ONE
iCansは高音よりのドンシャリ、MUSIC SERIES
ONEは低音よりのドンシャリ。低域は、量はかなり近いが、iCansの方が一段低い音を鳴らす。中域はMUSIC SERIES
ONEの方がはっきり聴こえてくるし癖もない。高域はかなり質が違うが、iCansの方が量が多く癖も強い印象。分解能はMUSIC SERIES
ONEの方が上、音場感はiCansの方が上。原音忠実性はMUSIC SERIES
ONEの方が上。iCansの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさは、厚みはiCansの方がやや上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMUSIC
SERIES ONEの方がやや上。どちらもノリが良いが、iCansはノリの良さだけといった感じなのに対して、MUSIC SERIES
ONEは繊細さも十分持ち合わせている。響きはMUSIC SERIES ONEの方が豊か。弦楽器はMUSIC SERIES
ONEの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はどちらもなかなかうまいが、鮮やかさや力強さならiCans、原音に近くうまくまとまっているのはMUSIC SERIES
ONE。打ち込み系の音の表現はどちらも一長一短。iCansはある意味かなり魅力的なのだが、相性が良いとは言えないし、MUSIC SERIES
ONEはiCansを聴いた後では刺激に欠けるように感じる。得意分野はiCansはポップス、MUSIC SERIES ONEはロック。基本的にはMUSIC
SERIES
ONEの方が癖がないしそつなく鳴らしてくれるので使いやすいが、刺激や独特の音場感が欲しくなったらiCansを使うといった感じか。
PROline2500
どちらもドンシャリ。全体的に見てかなり似た傾向の音。低域の量はiCansの方が若干出るようだが、PROline2500の方が若干低い音を鳴らすように感じる。中域はiCansの方がはっきり聴こえてくるが、これはうわずっていて癖がある点が大きいだろう。高域の鳴らし方はかなり似ているが、量はiCansの方がやや多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてPROline2500の方が上。特に原音の実体感は雲泥の差。どちらもややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さは中域から高域が強い分iCansの方が上。音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはPROline2500の方が上。どちらもノリが良いが、PROline2500の方が圧力がある感じ。響きはほぼ同等。弦楽器はPROline2500の方が繊細で心地よい。金管楽器はかなり似た鳴らし方だが、iCansの方がチープ。打ち込み系の音の表現はどちらもあまり得意ではない。この点は同レベルと見てよいだろう。ほとんど何を聴くにしてもPROline2500の方が上。iCansはPROline2500の小型・軽量版という印象。
サイン波応答
位相+高周波歪み
インパルス応答(CSD)
インパルス応答(録音波形)
100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生
※生産終了
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スペック
駆動方式 | 構造 | 周波数帯域 | 音圧感度 | インピーダンス |
ダイナミック | 半開放 | 20Hz〜20kHz | 101dB | 35Ω |
重量 | ドライバー直径 | コードの長さ | コードの出し方 | 備考 |
82g | 30mm | 1.15m | 両出し | 折りたたみ可能 |
評点
音質 | 装着感 | 遮音性 | 音漏れ | デザイン | 携帯性 | 音の傾向 | 参考最安価格 |
3 | 3 | 2 | 2 | 4 | 3 | 高(低) | 11800円 |
公開日:2005.11.10