第72回 安価なカナル型イヤホンの左右の音質差

 以前、不定期コラム第57回で個体差について取り上げましたが、今回はそのバリエーションのようなことをやってみようと思います。不定期コラム第57回では単一製品の複数個体について測定したわけですが、それに対して今回は複数製品の単一個体について左右の音質差を見ていきます。
 このコラムをやろうと思った理由は、沢山の製品を買っていく中で左右の音質差が気になる製品がたまってきたためです。そもそもヘッドホンはその製造工程で左右で同じ音が鳴るかどうかチェックしたりしないのが普通で、左右で音量・音質が異なることはそれほど珍しくありません。特に安価なものでは多少の違いは仕様の範囲内と言えるのではないかと思えてくるほどです。
 今回は耳で聴いた印象として左右の音質差が大きいものを3つほど選び、それらと近い価格のものから左右の音質差があまり大きくないものを比較対象として選んで測定してみます。測定項目は周波数特性のみです(あれこれ測定するには数が多いですし、周波数特性だけでもはっきり違いが見られると推測しました)。測定条件は基本的にレビューページに載せているものと同じですが、新たに測定しなおしています。まず各製品のL側をセットして1kzHzで音量を調節してから測定し、その後ボリューム位置を変えずにイヤホンだけセットしなおしてR側を測定します(したがって、音量の違いまで含めて見られるようになっています)。

 まずは耳で聴いて左右の音質差が大きいものを3つ、RP-HJF3Siberia In-Ear Headphonej-JAYSです。





 単に音の大きさが違うと言うより、周波数特性そのものが大きく異なっている印象を受けます。これくらいの違いがあると、何も考えずに聴いていても違和感を覚える人が多いでしょうし、モノラル音源を使って左右別々にきちんと聴き比べればどういう違いがあるかも分かると思います。

 次に、この3つと近い価格のものから左右の音質差が比較的小さいように感じられるHA-FX11KH-C311MDR-XB41EXです。





 一見して、先ほどの3台と比べると左右の音質差が小さいことがわかります。ただ、細かく見ていくと多少違いはあります。もっとも、これは測定誤差もありますしどこまであてになるか分かりません。実際に聴いた印象としては、左右の音質差はほとんど気にならないレベルです。

 言うまでもありませんが、今回の結果は私の所有している個体でたまたま左右の音質差が大きかったというだけのことで、他の個体についてどうなのかは不明です。
 また、今回選んだ3台はすべて5千円以下でしたが、これは半分は偶然、半分は安価なものほど左右の音質差が大きい確率が高いため必然ということだと思います。実際、5千円以上だと左右の音質差の大きいものに当たる確率はだいぶ低くなります。音の良し悪しの問題はさておき、左右の音質差を気にするのであれば5千円以上のものを買うようにした方が良いでしょう。
 今回は以上です。見てのとおり「耳で聴いて左右の音質差が大きいものを測定してみたらやっぱり違いが大きかった」というだけの内容ですが、あまり多くのイヤホンを買ったことのない人には新鮮だったのではないでしょうか。ちなみに、もし左右の音質差が大きいものに当たってしまった場合、真っ当な店ならすんなり交換してもらえるので遠慮せずに言いましょう(どんな製品でも不良はあるものです、店員さんもいちいち気にしません)。困るのは違いが微妙なときですが、その製品の価格と今回の内容を基準に考えてみても良いかもしれません。







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